流星街の解体屋ジョネス   作:流浪 猿人

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書けました。
新章1話目でござい。

今回は何が起こるのか……。

ネテロ会長は"ネテロ"表記で、息子は"ビヨンド"表記にしています。


グリードアイランドの解体屋
57.ニンゲン×ト×ハンター


 

 

 

 父親であるネテロがニヤニヤとしながら、思いがけず発生したコントを見守っている中、ビヨンドは器用にもすっと冷や汗を収めて、ジョネスに向き直った。

 

「いや、冗談だ。将来的には人類がそこまで発展したらいいなあって話であって……」

 

「いや、渡航を計画してるってパリストンがはっきり言ったじゃん? いつ行くの?」

 

「……」

 

 意外と粘着質なジョネスの詰問を受けて、ビヨンドが恨めしげにパリストンを睨む。パリストンもいつの間にか冷や汗を収めて、笑顔のまま言った。

 

「ビヨンドさん、すみません」

 

「紹介しておこうか、こいつはワシの息子のビヨンドじゃ。確か40年くらい前か? クカンユ王国が秘密裏に行った"外側"の調査で、唯一五体満足で帰って来た調査隊の生き残りじゃ」

 

「おい」

 

 容赦なくペラペラと事情を語り出したネテロに対して、ビヨンドが「このクソ親父が……」と内心で悪態を吐きながらツッコミを入れた。

 

「その時の調査では、希望(リターン)である錬金植物メタリオンを持ち帰ることに成功しましたが、メタリオンは1週間も持たずに枯れ果てて、逆に厄災(リスク)であるゾバエ病を人間界に引き入れる結果に終わりました」

 

「おい」

 

 腹を括って、ビヨンドで遊びながら、ジョネスに全てを正直に話して納得させるという方針に切り替えたパリストンが、ネテロに便乗するように情報を明かし始めた。ビヨンドは相棒の裏切りにツッコミを入れた。

 

 ジョネスが小馬鹿にしたように言い放つ。

 

「そりゃそうだろ。そもそも案内人がオレらを絶望させる為に、希望も厄災もわざと持ち帰らせたんだろ? あんたが生き残ったのは実力でも運でも何でもなく、案内人がくじ引きか何かで決めただけだと思うぜ?」

 

「……分かってるよ、それでもだな……」

 

「再挑戦したいと。オレより馬鹿だがハンターの鑑だな」

 

 ジョネスはそう言って笑うと、ぐいっとコップに入った紹興酒を飲み干してから、何か話したそうにしているネテロに顔を向けた。

 

「ワシの目が黒い内には再挑戦は許可しておらん」

 

「つまりネテロ会長が死んだ時が、計画始動の合図です」

 

 ネテロとパリストンの言葉を聞いて、ジョネスは眉をしかめて「ハア〜」と深いため息を吐いた。

 

 頬杖をつきながらビヨンドにジト目を向けて、少ししてから口を開いた。

 

 

 

 

 

「フリだろ」

 

「は?」

 

 

 

 

 

 ジョネスの突然の意味不明な発言に、流石のビヨンドも間の抜けた声を漏らした。ジョネスは机に並んだカキン料理を豪快に食べ進めてから、その場の注目が自分に集まっていることに気付いて再び口を開いた。

 

「揃いも揃って真面目か。"行くな"って言ってるんなら、"行け"ってことだろ? こいつは生きてる内に自分の息子と盛大に遊びたいんだよ」

 

 そう言ってジョネスに肩を叩かれたネテロに対して、その場にいる全員の視線が突き刺さった。ネテロは照れくさそうに顔を赤くしてそっぽを向いた。

 

 ジョネスが爆笑しながら続ける。

 

「ぎゃはははは!! お父さんかわいいなあ!!」

 

「やかましいわ!! 渡航に反対なのは本心じゃからな!!」

 

 図星を突かれたネテロが顔を赤くしたまま叫んだ。

 

 ジョネスはなぜそこまで自分の内心を見透かすことができるのか?

 

 こいつこそが本当に自分に似ている男だからだろう。愛する我が子と世界を巻き込んで盛大に遊びたいが、同時に外側への渡航には乗り気でない。人の心は複雑である。

 

「オレも反対だ。行っても全員死ぬだけだからな。行くんなら下手に生き残らず向こうで死んでくれ」

 

 まだ人間界に持ち込まれた厄災を何一つ解決できていないのに、新たな厄災を持ち帰られても困る。そもそも本当に希望だけを手に入れるなら、案内人をぶっ殺して、人類が独力で探索しなければならないとジョネスは思っている。

 

 "案内"されたら何回やっても行き着く場所は同じだ。

 

「……現実的に準備が足りねえ。行くとしても10年以上後になる。ジョネス、計画に協力してくれねえか?」

 

 見たことがないほど取り乱す父の様子を見て、ジョネスの言っていることが間違っていないことを察したビヨンドが、できるだけ早く計画の実行を決意すると、意を決してジョネスに問い掛けた。

 

 ジョネスは彼の持つ資産と見合っていない、究極に安そうな両切り煙草に火を付けて、煙を吐き出しながら答える。

 

 

 

 

 

「やだ」

 

「ワシもやだ。遊びたいなら準備は自分でせい」

 

 

 

 

 

 並んで座るジョネスとネテロが、意地悪そうに笑うという似たような表情で言った。

 

 ジョネスは渡航に反対だし、まずは人類の進化と既に持ち込まれた厄災の解決を優先したい。

 

 ネテロも渡航に反対だが、息子と遊べるのなら百歩譲って渡ってやるのもやぶさかではない。しかし積極的に協力してやるほど乗り気でもないし、優しくもない。

 

 にべもなく断られて渋面を浮かべるビヨンドに対して、ジョネスがお構いなしに続ける。

 

「まあ、オレも鬼じゃない。渡航計画のことは黙っといてやるよ。だが気になるのは、あんた一人が好奇心を満たして、冒険を思う存分楽しもうってとこで終わってる部分だな」

 

「駄目なんですか? ハンターならそれでいいでしょ?」

 

 パリストンはジョネスから、いつも通りとっても楽しいトンチキな発言が飛び出すことを察してそう尋ねる。

 

 ジョネスはコップに注ぐのが面倒臭くなったのか、紹興酒をラッパ飲みしてから、酒臭い息を吐きながら言った。

 

 

 

 

 

「やるんなら徹底的にやれ。行って帰って来るなんてケチ臭いこと言うな。具体的には暗黒大陸に恒久的な拠点を建設して、人類の新たな生存圏を確立しろ。無理だろうがな」

 

「お主一人が満足して、人類の歴史に名を残した所で何になると言うんじゃ? 20年後、30年後にお主に続く第2陣となる人材を育てよ」

 

 

 

 

 

 ネテロまでもがジョネスに便乗してお得意の無理難題を吹っ掛けた。

 

 ジョネスがネテロのコップに清酒を注ぐと、ネテロもジョネスに注ぎ返した。仲良しか。

 

「……頭の片隅には置いておく……」

 

 ビヨンドはそう言って、もう語ることは無いと悟って席を立った。

 

 パリストンも「支払いはボクがやっておきます」と言い残して、ビヨンドの後を追う。

 

 個室内には残った二人の楽しげな笑い声が響いていた。

 

 店の外に出て、足早に夜の街を歩くビヨンドに追い付いたパリストンが問い掛けた。

 

「何一つ説得されませんでしたね。良かったんですか?」

 

「説得した所で無駄だ。あいつらは同類だからな」

 

 パリストンは我が意を得たりといった風に満面の笑みを浮かべて、ビヨンドに黙って続きを促す。パリストンがあの二人のことが大好きなのは、自分はその同類ではないからなのだろう。

 

 同族嫌悪にも悩まされず、純粋な気持ちで遊べる相手だ。

 

 

 

 

 

「あいつらはハンターじゃない。自分の好奇心より人類が大事なんだからな」

 

「ですね〜。分かってはいましたが、やっぱりお二人とも人間が大好きなんでしょう」

 

 

 

 

 

 ビヨンドは本気で二人のことを軽蔑してそう吐き捨てた。

 

 パリストンは二人に羨ましさを感じて、そうなれない自分と彼らとの違いから、少しだけ妬心を抱いた。

 

 ビヨンドとパリストンはそれ以上何も語らず、そのまま夜の闇の中に消えて行った。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 少し時は過ぎて、好奇心と仕事の為に今年新たに誕生した国家、[メテオール首長国]に入国したダブルハンターのジン=フリークスは、ガイド兼監視役の案内を受けながら綺麗に区画分けされたゴミ山の間を歩いていた。

 

「噂とは随分違うな? あっちは可燃、あっちは不燃、あっちは金属の山か」

 

「それどころじゃないほど分別しています。劇物は目に見える所に置いておけないですしね。……全て、世界の罪が堆積した山です」

 

 ジンはその言葉を聞いて渋面を浮かべた。環境問題と遺跡を始めとした文化財の保護は密接に繋がっている。ジンにとっても無関係ではない話なのだ。

 

 息子を捨てたクズの癖に(大事なことなのでもう一回言った)何とも高尚なことを考えて眉をひそめたジンに、ガスマスク姿のガイドはマスクの中で笑みを浮かべた。

 

「あなたが気にすることではないです。分野が違いますが、あなたの活動も文化を守る為に必要なことです。お噂はかねがね聞いておりますよ」

 

「オレのことを知ってんのか?」

 

「幻影旅団の情報網が星を二つ持つほどのハンターを見逃すはずがないでしょう? あなたと敵対するなら、息子さんと故郷の島を人質に取る手筈になっております」

 

「そいつは怖えな」

 

 ガイドの爆弾発言を受けても、ジンはそれを気にした様子もなく、不敵な笑みを浮かべてあっけらかんと答えた。

 

 しばらくすると迎えの車が来た。

 

 元々は"流星街"と呼ばれていたメテオール首長国は、6000平方km程の広さを持つ立憲首長制国家である。主な産業は金融と農業と廃棄物の処理、傭兵とスクラップと再加工品の輸出である。

 

「でかい建物だな」

 

「"工場"と呼ばれている、街にとって重要な意味を持つ施設です。東西南北の各地区に第1から第10まで合計40個あります。主な役割は廃棄物の処理と再利用ですね」

 

 街の中心部に向かうにつれ、背の高い建物が増えて来た。建物の多種多様なデザインは、この国が世界で最も多様な人種が住む国だということを証明している。

 

「建築様式も飲食店も統一性が皆無か……」

 

「最近は捨てられた訳じゃない移民も多いですしねえ。居場所がない人は、どんな時代にも掃いて捨てるほどいるようです」

 

「色々と行き詰まった現代じゃ珍しく、確かな未来がある国だ。当然の帰結だろうな」

 

 車から降りて、そのまま煩雑な市街地を歩く。

 

 交通ルールなんて皆無だ。甲高いクラクションを鳴らしながら、道のそこら中を改造車が走り回っている。ジンは歩道に乗り上げて来た車を躱しながら呆れたように呟いた。

 

「ヘンテコな車ばっかだな!! どうなってんだ!?」

 

「廃棄物を利用した魔改造は、この街で長年続く一番の娯楽ですからね。最近では純正パーツも出回るようになって来ましたが、安全で無難で優等生過ぎて、そういうのはあまり人気がありません」

 

 高速で突っ走る暴走車に轢かれかけて、冷や汗を流すジンの横を、セダンを2台積み重ねたようなモンスターマシンが通り過ぎた。

 

「不死身のジョーの車ですね。毎年行われるコンテストで2連覇中の超イケてるマシンです」

 

「……オレには良く分からん……」

 

 ジンは早くもこの国に来たことを後悔し始めた。しかし目的の男に会うまで帰る訳にはいかない。

 

 様々な出店が立ち並ぶ賑やかなバザーを抜けて、ジンは当初の目的である、とある男がいるというレストランを訪れた。

 

 店の周りには人混みができていて、ガラス越しに彼の姿を拝もうという住人達が群がって、口々に何かを噂していた。

 

 ジンは人混みを遠慮なしに分け入って店の中に入ると、店主に待ち合わせがあると伝えて、目的の男がいる席にまで案内された。

 

 熱々の鉄板に乗った一切れのステーキを「ナポ……」と、一口で頬張ってしまった男の対面に座ったジンは、不敵な笑みを浮かべて口を開いた。

 

 

 

 

 

「あんたがジョネスか? 楽しい楽しい念能力者専用のゲームを作ってみたんだ。テストプレイが必要だ。選りすぐりの念能力者達を紹介してくれ」

 

 

 

 

 

 一目で強烈な印象を残した、圧倒的な危険性を感じさせる威圧感と、父親のような包容力を併せ持ったオーラを身に纏う男に対して、ジンは新たな遊びの予感を感じてワクワクしながら問い掛けた。

 

 

 

 

 

 ジョネス=スタージャンク。

 

 

 

 

 

 巨大念能力者集団、"幻影旅団"を抱えるメテオール首長国の顔役であり、ハンター試験合格と同時にシングルのライセンスを手に入れた稀代の怪物。(いたち)として十二支んの特別メンバーにも召集されている。

 

 ネテロ曰く世界で十指に入る念能力者であり、彗星の如く現れたかと思うと、あっという間に世界中に根を張った"SCP財団"の理事長でもある。

 

 ジョネスはゆっくりと紙ナプキンで口元を拭くと、おもむろに切り出した。

 

 

 

 

 

「あの……、依頼なら旅団のホームページからやってくれない?」

 

「うおっ!? いきなりまともなこと言うじゃん!?」

 

 

 

 

 

 ジョネスは故郷でのバケーション中にいきなり突撃して来た、前世で大好きだった某白書の主人公にそっくりな男を見て、ワクワクしながらも困惑してそう回答した。

 

 突撃して来た名前に聞き覚えがある男、ジン=フリークスが語ったのは何とも突飛な内容だった。

 

 相互協力型(ジョイントタイプ)の念能力を駆使して作り上げた究極のゲーム、[グリード・アイランド]。

 

 丁度、暇になって来たタイミングで、何とも面白そうな話が舞い込んで来た。

 

 店のメニューを差し出した後、店員を呼び出してジンに食事を奢ると、爪楊枝で歯の隙間をつつきながら、建国初期の繁忙期を終えて、こちらも暇になって来ていた知り合い達に順番に連絡して、ゲームへの参加を呼び掛けた。

 

 依頼以外では決して動かない。と言っておきながら、ジョネスの命令ならけっこう動く幻影旅団の中核メンバーと、外様の数人の実力者がテストプレイへの参加を快諾した。

 

 ジョネスは連絡を終えると、メニューの中で一番値段が高いステーキをちゃっかり腹に納めたジンに対して、呆れたように問い掛けた。

 

「何でわざわざ会いに来たんだ? 確かに選りすぐりの能力者を紹介してくれってんなら、旅団じゃなくてオレに直接言わなきゃいけねえが……。それならオレのサイトに書き込んでくれりゃいいんだぞ?」

 

「えっ? あのシンプル過ぎるホームページ、本当にお前のなの?」

 

「うん。ちゃんと毎日、目を通してるぞ」

 

「お前ほどの裏社会の大物で、シングルハンターのホームページがアレ? 今冗談みたいな軽さが話題になって、ネットのおもちゃにされてるんだが……」

 

「マジで?」

 

 回線の遅さを競うゲームでジョネスの知名度は急上昇中だ。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 キルア=ゾルディックは父親に見守られながら、ゆっくりと1週間かけて精孔を開いた。そのまま、あっという間に"纏"を成功させる。

 

「これでいいのか? 親父」

 

「流石だ。オレだって精孔を開くまで2週間かかったのだがな……」

 

 ジョネスのやらかしで唐突にやって来た新時代に対応する為に、一足早くキルアとアルカに念の使い方を仕込んでいたシルバが、息子が持つその才能に瞠目した。

 

「アルカは生まれた時から使ってたじゃん!! 最近はますますあの黒い触手に手も足も出ないし!! オレはアルカを守るために、アルカより強くならなきゃいけないの!!」

 

「……アルカは特別だ。ああいう怪物を超えた怪物と真面目に向き合おうとするな、自信を無くすだけだ。念使いに取ってそういう感情はあまり良くない」

 

「……分かったよ……」

 

 キルアは最近、大好きな妹が放つ黒い触手に手も足も完全に絡め取られて、身動き一つ取れない状態で好き勝手に甘えられている。

 

 その状況が兄としては悔しくてしょうがない。そのため訓練に入る熱もひとしおだった。

 

 

 

 

 

「お兄ちゃん!! 遊んで〜!?」

 

「キルアー、遊んでー?」

 

 

 

 

 

 その時、訓練室に高速で飛び込んで来た()()の妹を見て、ギョッとしたキルアは、いつもと同じく、成す術もなくじゃれつかれることを察して、部屋の中を必死で逃げ回った。

 

 シルバはその微笑ましい光景を腕を組んだまま棒立ちで眺めているだけで、止めてくれる様子はない。

 

 部屋に入って来たアルカの背中から瞬時に黒い触手が飛び出したかと思うと、彼女は触手を脚のように使い、まるで蜘蛛のように高速で地面を這って移動して、訓練室の中を逃げ回る大好きなお兄ちゃんをがっしりと捕獲した。

 

「うわあっ!? 親父!! 助けて!!」

 

「兄弟仲がいいのは素晴らしいことだ」

 

「「好き〜!!」」

 

「親父いいいぃぃぃ!!」

 

 妹にまるで敵わないという残酷な現実を突き付けられたキルアは、胸元に縋り付いた妹達を撫で付けて、その情けなさに半泣きになりながら、満足げに頷く父親を恨みがましく見つめた。

 

 

 

 

 

 キルアの休息はアルカのターゲットが、新しく生まれた妹に向いている時だけだ。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 ジョネスと親父とかいう、何とも性が合わない野郎共との不快な飲み会を終えて、しばらくしてから、ビヨンド=ネテロはとある島に降り立った。

 

 暗黒大陸のどの方向に渡航するのかはまだ決まっていないが、この島は人間界の外縁部にある。方向にもよるが"その時"が来たなら調査隊第一陣の最後の補給拠点になり、更にはサポート部隊や増援部隊の本拠地となる可能性があった。

 

 豊かな自然に恵まれたちっぽけな漁村があるだけの小さな島が、将来的には人類の最前線に変わるかも知れないという事実に、妙に可笑しさを感じてビヨンドは顎をさすりながら笑った。

 

 島民から訝しげな顔を向けられながら、村外れの大きな森に分け入って、倉庫や基地の建設予定地点を調査する。

 

 地形や座標などを綿密に記録しながら、手に入れた情報を素早く紙に書き込んで行くビヨンドに近付く一つの影があった。

 

 その気配を察していたビヨンドが木陰に殺気を飛ばして、大事な仕事の邪魔をしようとした愚か者を威圧する。

 

「クマ公が……。取り込み中だって分からねえのか……!! まったく、何でオレは昔からこう動物に好かれちまうんだ?」

 

 木陰から様子を窺っていたキツネグマがビヨンドの威圧を受けて、瞬時に命の危険を感じ、どこかに高速で逃げ出して行った。

 

 ビヨンドはキツネグマが逃げて行った方向とは反対側の茂みにも顔を向けて、隠れてこちらの様子を窺っている小さな影を大声で怒鳴り付けた。

 

「そっちもだ!! どこぞの刺客か!? "絶"が甘くてバレバレなんだよ!!」

 

 耳が壊れてしまいそうなほどの大声で怒鳴り付けられた小さな影は、ガサガサと茂みを揺らして、大人しくビヨンドの前に姿を現した。

 

「ごめんなさい……。見たことがない人だったから気になっちゃって……」

 

「何だ、子供じゃねえか……? この島の住人か?」

 

「うん、よくこの森で遊んでるんだ」

 

「こんな時期にヘビブナの群生地に入る奴があるか。オレがいなきゃ死んでたかもな」

 

 現れたのはツンツンの黒髪が特徴的な少年だった。センスは感じるが立ち振る舞いはまだまだ未熟で、ネテロやジョネスが遊びで送り込んで来た刺客だとは思えない。

 

 しかし先ほど茂みの中に隠れていた時、この少年は確かに上手く気配を消していた。

 

「お前、なんで"絶"が使える?」

 

「……? "ぜつ"って何?」

 

「……天然でそれか。無い話じゃねえがとんでもねえな」

 

 少年は怪し過ぎる格好のビヨンドに対して何の差別も偏見もなく、純粋な好奇心から真っ直ぐ目を合わせた。

 

 ビヨンドは腕を組んで、真っ直ぐにこちらを見つめて来る少年を眺めながら、飲みの席での会話を思い出した。

 

 

 

 

 

「……人を育てろ……か……」

 

 

 

 

 

 ビヨンドは何となく気まぐれで決意した。新しいことに挑戦すれば見えて来る景色も変わるかも知れない。

 

 そもそも未知と未踏への挑戦こそが自分の信念だ。良く考えたらこちらの世界でも、まだ自分が経験していない未踏はそこら中に転がっている。

 

 

 

 

 

「オレはプロハンターのビヨンド=ネテロだ。お前、オレの弟子になれ」

 

「プロハンターって何? オレはゴン=フリークス。弟子って何の弟子にしてくれるの? それとヘビブナって何? 何が危ないの?」

 

「……お前、何も知らねえなあ。お前にとっちゃこの島の中だけでも、未踏に溢れてるって訳だ。羨ましいぜ」

 

 

 

 

 

(それにしても"フリークス"か。何の運命のイタズラだろうな)

 

 

 

 

 

 ビヨンドは肌身離さず持ち歩いている一冊の本に服の上から触れて、唐突に辺りに満ちた不思議な感覚にぶるっと総身を震え上がらせた。

 

 これは、関羽が始めた物語である。

 

 

 

 

 




険悪な飲み会。
ただ楽しみたい奴らにも色々とスタンスがありまして。
人間が好きな二人。ネテロ会長の意志を完璧に継いでいるのはジョネスだけですね。
ワシが死ぬまで渡航禁止って……、作者はあれフリだと思う。

ジンの新興国旅行とグリードアイランド編開幕。
メンバーはどうしようかな。

キルアの修行。世界が変わっちゃったから念を教えないとね。
妹達に愛されて楽しそうやね。

トロフィーを獲得しました[原作1話目]
なおバタフライエフェクトで原作が崩壊中な模様。
30巻超えてから師匠キャラが突然再登場するのも熱いと思います。

1作目主人公ドン=フリークス
2作目主人公アイザック=ネテロ
3作目主人公ビヨンド=ネテロ
4作目主人公ジン=フリークス
5作目主人公ゴン=フリークス

4作目辺りからちょこちょこ名前が出て来るやばいおっさん。
ジョネス=スタージャンク
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