日曜日やで。
朝っぱらからどうぞよろしく。
今回はゲームの崩壊と、原作で不憫だったアレです。
指定ポケットカードで思い思いに遊んでいた日々が嘘のようだ。
"念能力者専用の究極のゲーム"と銘打たれたグリードアイランドは、各プレイヤーに次々と発見されたバグによって、地獄の様相を呈していた。
開発者のジン=フリークスは、見つかったバグは全て仕様だと言い張って島中を逃げ回っているが、捕らえられるのも時間の問題だろう。
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[致命的なバグその1 ダーティディーズダンダートチープ]
発見者:フランクリン=ボルドー
ある日のことである。
ジョネスは自分に向かって高速で駆けて来る複数の念獣の存在を察知して、警戒を最大限に高めた。
というのもジョネスはここ数日、何らかの指定ポケットカードによって送り込まれて来る、強力な念獣達に襲撃され続けていて、身も心もボロボロな状態なのだ。
明らかに何者かが自分を狙っている。
[仕返し商店]No.055。ランクA、カード化限度枚数20。
店主に日頃の恨みを告白すれば、その程度に応じて恨んでいる相手に報復してくれる。金額を上乗せすることで、より重い仕返しも可能。
ジョネスを襲っていた念獣達は、フランクリンにゲインされた仕返し商店の行使する能力だ。バグで一度ターゲットを設定したら報復が成功しても失敗しても、恨みが消えたとしても、延々と仕返しを続ける恐怖の呪いと化している。
ジョネスはここ数日何度も繰り返した念獣との戦闘に辟易としながらも大人しく対応した。
「しつこいんだよクソムシ共が!! まさか無限に出て来るのか!? いつになったら終わるんだ!!」
一体一体がかなり強い黒いスーツを着たライオンのような念獣を鉤爪で引き裂きながら、ジョネスは半泣きになって叫んだ。
念獣がこれ程強力なのも、ジョネスが無限だと錯覚する程の数が出ているのも理由があった。
フランクリンはとあるカードのコンボを使って大量の資金を稼ぎ出し、店主に天文学的な賄賂を支払っている。
[致命的なバグその2 糞喰い中央銀行]
発見者:フランクリン=ボルドー
[金粉少女]No.046。ランクA、カード化限度枚数13。
全身から金粉を吹き出す少女。1日1回の入浴で約500gの金が取れる。非常に内気でずっと家から出ない。
[シルバードッグ]No.098。ランクS、カード化限度枚数08。
絶滅寸前の珍獣。銀色の毛を有し、糞が銀でできている。1日5gの金をドッグフードに混ぜて与えると、1kgの銀糞を出す。
フランクリンは1人の金粉少女から出た金を、100匹のシルバードックに食わせて銀糞を大量生産している。
更に金粉少女に500gの銀糞を食わせると、5kgの金糞をひり出してくれるという非常に汚く致命的なバグが発見された。
今ではフランクリンは"糞の錬金術師"という二つ名で全プレイヤーに恐れられている。
ジョネスはやっと全ての念獣を撃退できたと思った所で、彼に向かって飛んで来る光弾を察知した。
ジョネスの顔が絶望に染まる。
「ジョネスさん!! 大人しく独占しているカードを渡して下さい!!」
「いい加減諦めなよ」
ジョネスのそばに素早く降り立ったクロロとシャルナークは、手に持った杖を掲げて呪文を唱えた。
「「天罰のつえ!! ジョネス!!」」
[天罰のつえ]No.082。ランクA、カード化限度枚数15。
罰を与えたい人の名前を唱えながらこの杖を天にかざすと、使用者か相手のどちらかに強い災いが降りかかる。どちらに降りかかるかは、今まで行った悪行の数によって決定される。
天罰のつえが発動した瞬間、空中に天秤が具現化された。
使用者とターゲットの悪行の数を計る裁きの天秤だ。
既に何度かこのつえによって雷をくらっているが、今回のジョネスには勝算があった。指定ポケットカードでジョネスを痛め付ける程に、クロロ達の悪行は積み上がって行っている筈だ。
耐え続けていればいつかは臨界点を迎える。今度はそちらが雷をくらう番だ!!
(ククク……。オレ程の善人に大した悪行の数がある訳ないだろ? やはり
自分が悪いことをしているとは全く考えていない真の悪のジョネスは、自信満々な二人を鼻で笑った。
ガチャガチャと音を立てていた天秤が振り切れる。
「ば、馬鹿な……!? ……あり得ない……このオレが……!?」
当然というか自業自得というか、天秤はジョネスの方が悪行が多いことを指し示した。ジョネスは驚愕して絞り出すような声で命乞いした。
「……もう……悪いことしません……」
「ごめんね。もう発動しちゃったから、オレ達にも止め方分かんない」
「ジョネスなら耐えられるって」
ジョネスに厄災が降り掛かる。
「ぎゃあああぁぁぁ!!!!」
どこかから降って来た雷と隕石によって、ジョネスは地面に倒れ伏した。
ややあってからムクッと起き上がったジョネスは、鬼の形相で激しい怒りを込めて言った。
「……殺してやる……殺してやるぞシャルナーク……!!」
「……やっぱり集中攻撃で来るか」
「シャル!! 急げ!!」
シャルナークはクロロの呼び掛けを受けて、咄嗟に懐から取り出した大量のサイコロを振った。
20面の内一つだけが大凶で非常に低確率だが、これだけ振ったら流石にいくつかは大凶の目が出た。
ジョネスはそれを見て瞠目した。一体何を考えている?
[致命的なバグその3 闇のリスキーダイス]
発見者:シャルナーク=リュウセイ
[リスキーダイス]No.025。ランクB、カード化限度枚数30。
20面体のサイコロ。1面が大凶で19面が大吉。大吉が出ればとてもいいことが起こる。ただし大凶が出るとそれまでに出た大吉分がチャラになるほどの不幸が起こる。
[闇のヒスイ]No.073。ランクA、カード化限度枚数15。
悪魔の加護を受けた宝石。持ち主に危機がふりかかりそうになると、他人にその厄災を渡してしまう。
シャルナークが大凶を出したことによる不幸が、闇のヒスイの効果でクロロとジョネスに向かう。クロロはこちらも闇のヒスイで不幸を跳ね返した。
ジョネスに全ての厄災が譲渡された。
「厄災に正義は無い」
「悪との区別も無い」
ジョネスに2発目の雷が落ちた。
ジョネスはうつ伏せになって地面を叩きながら悔しがった。
「クソォォォ!!!!」
「さあジョネスさん、早く
ジョネスはクロロの言葉を聞いて素早く顔を上げた。それだけは何としても阻止しなければならない。
[致命的なバグその4
発見者:シズク=ムラサキ、フランクリン=ボルドー
これが大流行したことによって、現在テストプレイヤー達のフリーポケットはスカスカである。
「来るならこい!!
「ゲイン!! ゲイン!! ゲイン!!」
「なにっ!?」
てっきり呪文をぶっ放して来ると思ったジョネスは、クロロの行動に怪訝な表情を浮かべた。まだ何か指定ポケットカードで痛め付けて来る気か?
「オレの
クロロは現れた弓を構えて微笑んだ。
[致命的なバグその5
発見者:クロロ=ルシルフル
[挫折の弓]No.086。ランクA、カード化限度枚数11。
装備すると残っている弓の数だけ「離脱」を唱えることができる。弓は10本入り。「離脱」を唱えるたびに1本減っていく。
「
「
……ふざけんなあああぁぁぁ!!!!」
ジョネスがゲーム外に離脱した。
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ゲームが停滞して各プレイヤーが嫌がらせに終始するようになったのはいつ頃からだったか。
間違いなくあのバグが見つかってからだろう。
[致命的なバグその6 無敵の首飾り]
発見者:フェイタン=ポートオ
[致命的なバグその7 無敵のマント]
発見者:フィンクス=マグカプ
とある2種類の指定ポケットカードを身に付けていると、永遠にカードを奪われなくなるという、このゲームを根幹から覆すシロモノだ。
[聖騎士の首飾り]No.084。ランクB、カード化限度枚数60。
これを身につけた使用者は3回まで呪いを跳ね返すことができるうえ、触れたカードの呪いも解くことができる。
[秘密のマント]No.095。ランクA、カード化限度枚数20。
身につけていると3回まで「暗幕」の効果が得られる。
この二つが全然3回までじゃ無かった。バグによってテキストとは違い、永遠に使用者を守り続けてくれるぶっ壊れカードと化していた。
特に前者の聖騎士の首飾りは、本来なら懸賞都市アントキバの月例大会でしか手に入らないカードなのだが、とある男が発見した裏技によって全プレイヤーに爆発的に普及した。
[致命的なバグその8 堕天]
発見者:ジョネス=スタージャンク
対象プレイヤー1名のランクB以上のカードをランクD以下の好きな番号のカードに変身させる、
これにより全プレイヤーがあっという間に無敵の首飾りを手に入れた。
そして現在、新たな防御呪文系のバグが掲示板に投下された。発信者はノブナガである。
Q:発見!! "千里眼の蛇"にSランクカード食べさせると、
[致命的なバグその9
発見者:ノブナガ=ハザマ
[千里眼の蛇]No.096。ランクA、カード化限度枚数12。
ランクC以上のカードを1枚食べさせると、代わりに「念視」のカードを吐き出す蛇。
[
防御・継続・対攻撃呪文用
指定したページのポケットに入っているカードは、ポケットに入っている限り永続的に呪文による奪取・破壊の対象にならない。
(指定できるページは1から11までのいずれかに限り、フリーポケットのページは選べない。)
このバグにより、各チームが独占しているカードを奪取できる確率が限りなく小さくなり、全プレイヤーが同時に詰んだことを意味していた。
Q:マジで? このゲーム終わったな。
Q:どうなってんだい? このゲーム……。
Q:ジンの野郎どこ行ったんだよ。責任取れよ。
Q:あーもう無茶苦茶だよ。
Q:ジンさん最近掲示板に顔出してくれませんよね?
Q:そろそろあやつをとっ捕まえねば話が進まんのう。
Q:アレキと息吹とブルプラと一坪は結局条件不明だしな。
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発見者はヒソカとイルミとパリストンである。この時点でもう嫌な予感しかしないのだが、それは全プレイヤーの懸念通り、このゲームに完全にトドメを刺す致命的なバグだった。
いや、正確にはヒソカとイルミが見つけたバグは仕様と言える。むしろ呪文カードでの奪い合いが事実上不可能となっていたこのゲームに、最後の希望を与えるものだった。
[ヒソイルの裏ワザその1 領域展開]
発見者:ヒソカ=モロウ、イルミ=ゾルディック
[クラブ王様]No.062。ランクA、カード化限度枚数20。この店の中にいる間は、店内の誰もが使用者の命令を聞いてくれる。ただしこの店での1時間は店外の1日を意味する。
[ヒソイルの裏ワザその2 強制洗脳椅子]
発見者:ヒソカ=モロウ、イルミ=ゾルディック
[コネクッション]No.030。ランクB、カード化限度枚数21。
このクッションに誰かを座らせれば、その人は一回だけ使用者のお願いを聞いてくれる。座った人の能力を超えてのお願いは不可能。
相手から20m以内で[クラブ王様]をゲインし、必中必殺で相手を操作下に置いて、欲しいカードを根こそぎ快く譲って貰う。
もしくは
暴力で脅して無理矢理
問題はやはりパリストンが見つけたバグだった。
[さまようルビー]という指定ポケットカードを手に入れる為に、5000万ジェニーを支払うというイベントがあるのだが、フリーポケットの数が一人45枠しか無いので、当然
パリストンは敢えてイベントを途中まで進めた状態で、ネテロに1万ジェニーだけ引き落とさせて、
これによりパリストンの口座残高は、存在しない筈の負数の1万ジェニーとなり、ゲームの計算がバグって、パリストンは∞万ジェニーを所持している判定を受けた。
結果、全プレイヤーが1万ジェニーをカード化できなくなった(絶望)。
[致命的なバグその10 1万ジェニー独占副会長]
発見者:パリストン=ヒル
最後のバグで遂に全員の堪忍袋の尾が切れて、城下町リーメイロにあるゲームマスターの城に突撃する運びとなった。
移動呪文の範囲外となっている城の中に引き篭もって、一人だけゾラクエで遊んでいたジンが発見され、ボイコットを兼ねた集団リンチが始まった。
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ジン「前が見えねえ……」
ジョネ「そんでどうすんだよ? これじゃゲームにならねえぞ。主にパリストンのせいで」
パリ「ボク一人に責任を押し付けないで下さいよ。皆さんも相当でしょう?」
ネテ「ワシは何もバグらせてないもーん」
シズ「お爺ちゃんと私は優等生だもんね?」
フラン「シズク……、
シズ「?」
クロ「やっぱり覚えてないんだ……」
シャル「まあ、悪用したのはこっちだし……」
フィン「いい加減リセットしてくれよ。デバッグは十分だろ?」
フェイ「最後にSSランクカードの入手条件を教えるね」
ウボォー「オレとマチは無罪だもんな?」
マチ「だね。何もバグらせてないし」
ノブ「おい!! 千里眼の魔物はお前も加担してたろうが!!」
ウボォー「オレはゲインしただけだ!! Sランク食わせるのは冗談で言ったんだよ!! 本当に食わせる奴があるか!!」
イル「そろそろ契約期間終わりなんだけど?」
ヒソ「ボクもね♧ まだ何かやって欲しいことがあれば、早めに言ってよ♤」
ジン「チッ、分かったよ……。全員のデータをリセットしてやる。そんで最後にまだ誰もやれてねえイベントが残ってる。そいつらをテストして来てくれ」
ジョネ「具体的には?」
ジン「"奇運アレキサンドライト"はもうオレがテストした。ノブナガがバグまで見つけてくれたしな。
"支配者の祝福"は他の99種揃えた時のイベントアイテムだ。
"一坪の海岸線"は15人全員で行く必要がある。
"一坪の密林"はソロプレイが条件だ。ジジイかジョネス辺りが行ってくれ。
"ブループラネット"は条件が難解だ。クロロかパリストンが行ってくれ。
"大天使の息吹"は
ジョネ「分かる訳ねえだろ!!」
ジン「……ヒントはもう少し増やすか……」
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[一坪の密林]No.001。ランクSS、カード化限度枚数3。
「山神の庭」と呼ばれる巨大な森への入り口。この森にしかいない固有種のみが数多く生息する。どの動物も人によくなつく。
ジョネスは
これでジョネスはソロプレイ判定を受け、最初の条件は達成である。
「これだけだったら偶々達成するプレイヤーもいるだろうが……。ここからが気付ける訳ねえだろう……。ジンの野郎はアホか?」
ヒントとしては、島内の全ての街に一つずつ存在する動物に関わるイベントを全て達成すると、入手フラグが立った上に、最後に達成したイベントのNPCからこのカードにまつわる話を聞ける。
そんなん気付くか!! と思うだろうが、指定ポケットカードの[妖精王の忠告]をこの村で発動すると、妖精王がイベント発生条件を話してくれるらしい。
ちなみに動物イベントで手に入るのはフリーポケットカードだし、[妖精王の忠告]は手に入れるのが非常に面倒臭いSランクカードである。両方わざわざやらねえよ。
ちなみにクロロは、各町に動物イベントが用意されていることには気付いていたらしい。貰えるのがザコカードばかりなので、このカードとは結び付かなかったようだが、やはりあいつは凄い。
ジョネスは愚痴を溢しながら、
[トラエモン]No.022。ランクA、カード化限度枚数22。
絶滅寸前の猛獣。腹の袋に物を詰め込む習性がある。超貴重なアイテムが複数入っているケースも少なくない。
[カメレオンキャット]No.035。ランクS、カード化限度枚数6。
絶滅寸前の珍獣。飼い慣らせば様々な動物に変身してくれる。ただし体積を変化させることはできないので、小さな象や大きなハムスターになってしまう。
[シルバードッグ]No.098。ランクS、カード化限度枚数08。
絶滅寸前の珍獣。銀色の毛を有し、糞が銀でできている。1日5gの金をドッグフードに混ぜて与えると、1kgの銀糞を出す。
[メイドパンダ]No.099。ランクS、カード化限度枚数06。
絶滅寸前の珍獣。大変きれい好きで、料理が趣味。個体によっては洋裁やガーデニングもたしなむ。何よりも人間の子どもの面倒を見るのが得意。
テキストに"絶滅寸前の"という文言が入っているカード達だ。ジン曰く、こいつらをゲインして村人に質問したら次のフラグが立つ。
ちなみにパリストンはこの共通する文言については気付いて、何かのイベントに関わるのではと疑っていたらしい。ザコカードをわざわざ集めていなかったので、動物イベントの方には気づかなかったようだが、やはりあいつは凄い。
「オラッ!! 暴れんな!! 暴れんな!!」
ジョネスは好き勝手に動き回ろうとする動物達をボコって従順にさせると、それぞれに首輪を着けてそのまま村の中へ引っ張って行った。
村の門番に[一坪の密林]について質問すると、呆気なくイベントに関わる答えが返って来た。
「……村の長老、ヒダに話を聞くといい。……あなたほど動物を愛している人なら、あるいは……」
ジョネスはさっき動物を虐待して従わせたところである。
「おお、マジでイベント進んだ。スッキリするなあ……」
ジョネスはそう言って笑みを深めた。
実は1週間くらい前にマチとシズクを連れて、この村で聞き込み調査をしてみたのだが、その時には欠けらも出て来なかったセリフだ。
ジョネスは村の中央にあるヒダというNPCの自宅に行くと、すぐに話を聞かせて貰えた。
「何と……!! 絶滅危惧種の動物達がこんなにも……。あなた程の愛を持つ人ならあるいは……」
ジョネスはさっき動物を虐待して従わせたところである。
更に言うとこのヒダという長老は、以前の調査で明らかに重要そうなキャラなのに、何のヒントも貰えないことにキレたジョネスによって、一度殺害されている。
今のヒダは顔も声も同じだが、再生された二代目である。
再生するまでの間はイベントがバグっていた。
「山神の庭は多くの精霊達が集まる聖地です。この村にも多くの加護を与えて来ました。
しかしどれ程の聖地であろうと時が流れれば澱むもの……。既に庭の中には精霊達と生態系に害を及ぼす、悪霊に取り憑かれた怪物達が蔓延り始めています。
故にこの村では100年に一度、森の中央にある祭壇で、村の赤子の中から選ばれる"森の巫女"によって、不浄なる者達を一掃する
「ふ〜ん、早くやればいいじゃん?」
「今までは悪霊達が強力になる前に儀式を行えていたのですが、森の巫女を務められる程の霊力を持った赤子が、なかなか生まれて来なかったのです。
最近ようやく生まれましたが、儀式が遅れに遅れたせいで、我々にはどうすることもできない程、悪霊達が強力な状態での儀式を敢行しなければならなくなりました。
そんな途方に暮れていた所に現れたのがあなたです」
「へえ。そんでどうするの?」
「森の巫女を祭壇に連れて行き、儀式によって精霊達の力を集めて、悪霊達を打ち祓って下さい。山神の庭は正常な状態を取り戻し、村の加護も100年は安泰となるでしょう。あなたは精霊達に祝福され、いつでも庭に歓迎される身となります」
「カードが手に入る訳だ」
「……儀式には条件がいくつかあります……」
ジョネスはヒダ長老の話を最後まで聞くと、森の巫女と呼ばれる赤子のNPCとゲインした動物達を連れて、足早に祭壇に向かった。
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「ギャオオオォォォ!!」
「うえええぇぇぇん!!」
醜悪な怪物がジョネスの一撃によって葬り去られると、大きな叫び声を上げてカード化した。ランクはAで、このゲームの中だとかなり強い怪物だ。
間近で発生した激しい戦闘を見て、ジョネスにおぶわれていた森の巫女が泣き出してしまった。
ジョネスは祭壇に向かう道中にて、いきなりイベントを失敗させていた。
「巫女を泣かせたら精霊の力が散るって……。戦えって言ってんのか、あやせって言ってんのか、いきなり矛盾してるじゃねえか……」
ジョネスは眉をひそめて途方に暮れた。
そんな時、引き連れていたメイドパンダが何か物欲しそうにこちらを見つめているのが目に入った。
「成程な」
ジョネスは一つ頷くと、背中で泣きじゃくっていた巫女を慎重にメイドパンダに渡した。メイドパンダは巫女を優しく抱き締めると、頭を数回撫でただけで、すぐに巫女を落ち着かせてくれた。
つまりはゲインした動物達を利用して、儀式を成功させろということだ。それぞれに役割があると考えたら、巫女だけじゃなく、動物達まで守る必要が出て来た。一人で……。
「どう考えても手が足りねえぞ……」
ジョネスは祭壇に辿り着くと思わずそう溢した。あのなかなか強力な怪物達が一匹ずつ来てくれるならいいが、怪物達が蔓延っているとヒダ長老は言っていた。戦力を逐次投入してくれるとは希望的観測だろう。
しかし、悩んでいても何も始まらない。ジョネスはとりあえず試しにイベントを進めてみることにした。
儀式の合図として長老に渡された水晶玉を祭壇に設置する。
置いた瞬間、水晶玉が割れた。
「……となると、あれしかねえか……」
ジョネスは近くにいたトラエモンのポケットにおもむろに手を突っ込むと、何か硬い感触があったので、そのままそれを取り出す。
新しく出て来たのは紫色の水晶玉だった。
ジョネスはそれを祭壇に置いて儀式を始める。
「キイイィィン」という甲高い音が鳴ったかと思うと、森の木々がざわめき出した。
周囲から無数の怪物が飛び出して来る。
ジョネスはいきなり全開でオーラを纏い、怪物達を一瞬で殲滅した。
「精霊達の力が集まるまで1時間だったな……。こりゃ普通にバテるぞ」
ジョネスが愚痴を溢すも、休憩する暇もなく、散発的に怪物達が襲撃して来る。動物達が怪物に襲われそうになると、慌てて念弾を飛ばしてそちらを優先的に始末した。
このままじゃ手が足りないと感じたジョネスは、一か八か思い付きでカメレオンキャットに触れて念じた。
「クソ猫!! サボってねえで変身しろ!! オレを手伝え!!」
ジョネスが頭の中で"一番頼りになる奴"を思い浮かべると、カメレオンキャットが俄かにその姿を変えた。
「ウボォー!! でもやっぱり小せえ!?」
現れた家猫サイズのウボォーギンは、やはり役に立ちそうも無かった。
ジョネスは余りの忙しさに悲鳴を上げながら、ミニウボォーギンを担いだまま、引き続き怪物達を処理し続ける。
しばらくして、トラエモンを助けようとした時だった。ジョネスはトラエモンが何かを言いたそうな目付きで、こちらを睨み付けているのに気付いた。
すかさずポケットに手を突っ込み新たなアイテムを取り出す。
ジョネスの手に握られていたのは草だった。
草である。
「何でやねん!! 草生えるわ!!」
ジョネスは最早ヤケクソで、肩に乗っていたミニウボォーギンに草を食わせてみた。
「何とかなれー!!」
ジョネスとしては完全にフィーリングだったが、それは"ドーピングマタタビ"というアイテムだった。
ミニウボォーギンが突然巨大化したかと思うと、ジョネスと一緒になって怪物達を殲滅し始めた。
ジョネスはメイドパンダと巫女に迫っていた怪物を蹴り飛ばしながら、それを見て感嘆する。
「うおっ、ウボォー並に強え!? 何が起こったんだ!?」
「にゃ〜!!」
「そしてキメえ!!」
ジョネスはメイドパンダとトラエモンを一箇所に纏めると、未だに使い道が分からないシルバードッグを担ぎ上げて、ウボォーキャットと共に怪物達と戦い続けた。
しばらくしてから小休止があったかと思うと、一際大きな怪物が森の奥から姿を現した。
ジョネスは動物達に近付かれる前に速攻で狩りに行ったが、不思議なことにジョネスの全力の一撃を受けても、怪物には傷一つ付かなかった。
「……また面倒臭え。どうせお前の出番なんだろ? 早く何か出せ!!」
「ッアーーー!!!」
ジョネスは怪物の攻撃を回避しながら一旦距離を取って、担いでいたシルバードッグの尻の穴に指を突っ込んだ。
しかし、いくらほじくってもシルバードッグはおっさんのように喘ぐだけで、銀糞すらも出す気配が無かった。
ジョネスは訝しげな表情を浮かべると、迫って来ていた怪物を全力で蹴り飛ばしてから、困った時のトラエモンの元に向かった。
ジョネスがポケットに手を突っ込もうとすると、トラエモンに尻の穴をほじくった手を思いっ切り払い除けられた。
「あっ、ゴメン」
ジョネスは流石に悪いことをしたと思って素直に謝ると、もう片方の手で改めて新しいアイテムを取り出した。
出て来たのは金色の短刀だった。
「成程!! この短刀ならあの怪物を倒せるんだな!! とでも言うと思ったか!!」
ジョネスはそう言って金の短刀をシルバードックの尻の穴、じゃなかった。口の穴に入れて丸呑みさせた。
しばらく怪物と戦って時間稼ぎしていると、シルバードッグがぷるぷると震え出して、糞の代わりに新たに銀の短刀をひり出した。
ジョネスは絵面的にあんまり触りたくなかったが、覚悟を決めて短刀を拾い上げると、攻撃を掻い潜りながら、超速で大きな怪物に接近して、そのまま心臓があると思われる位置に短刀を突き立てた。
やっとダメージが通り、大きな怪物はカード化した。
「後30分くらいか……」
ジョネスはげんなりとしながら、新たに一枚のカードをゲインする。
現れた[長老の精力増強剤]を一瓶丸ごと飲み干すと、アソコを中心とした体中のあらゆる部位に力が漲って来るのを感じた。
「実験しといて良かったぜ。これならまだまだやれるな」
「にゃー!!」
ジョネスはウボォーキャットと並び立ちながら、新たにこちらに向かって来る怪物を真剣な表情で見据えた。
銀の短刀が効かない怪物と、短刀しか効かない怪物を的確に見分けながら、その後も襲撃を撃退し続ける。
やがて、儀式の時間が残り10分を切ろうかという時だった。
「グオオオオォォォォ!!!!」
今まで現れた怪物を全て合体させたかのような、巨大な
ジョネスはその怪物の強さを瞬時に感じ取ると、自らの体を十字に切り裂いて獰猛な笑みを浮かべた。
「ラスボスだ!! ラスボスだろう!? なあラスボスだろうお前!? なあ!! 首置いてけ!!」
ジョネスは目にも留まらない速度で飛び掛かったかと思うと、怪物が繰り出して来た迎撃を物ともせず、そのまま一撃で怪物の首を引き裂いた。
しかし、怪物の傷口が体の内側から盛り上がったかと思うと、千切れた筈の首が瞬時に再生した。
「再生能力か!! 最後まで体力勝負って訳だ!! ひゃははははは!!」
ジョネスは長く続いた戦いと薬の影響で、少々テンションがおかしくなっている。
「解体の時間だ!!」
神聖なる山神の庭に暴力の嵐が吹き荒れた。
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「なーんか、元気無くなっちまったな。あと2分くらい残ってるっていうのに……」
「……グ……ギャ……」
本気のジョネスに8分以上解体され続けた怪物は、無限の再生能力を持つ筈なのに、気力を失ってしまったようだ。
途中でまともに動かなくなり、今はジョネスに踏みつけられてピクピクと痙攣している。
「十分楽しんだし、終わりにすっか」
ジョネスはそう言って新たに一枚のカードをゲインすると、現れたメガネをすちゃっと手早く装着した。
[スケルトンメガネ]No.021。ランクB、カード化限度枚数27。
物が透けて見えるメガネ。メモリで強弱の加減ができる。唯一、魔法都市マサドラで購入できる呪文カードの袋だけは透けて見えない。
カードの存在が判明した瞬間、女性陣から即行で使用禁止が言い渡されたカードである。
余談だがこのカードはゲームマスターのリストとドゥーンが、"ジンが一番好きなカード"と虚偽の噂を流している曰く付きの品だ。
ジョネスは怪物の体をメガネで入念に観察すると、ある一点を貫手で突き破り、中に隠れていた一人の人間の首根っこを掴んで、そのまま勢い良く引きずり出した。
「んん? 不審な女だなあ。このまま八つ裂きにしちゃおっかなあ?」
「ひ、ひい!! 許してぇっ!!」
宙吊りにされながら、ゼロ距離でジョネスにガンを付けられて、引きずり出された水色の短い髪をした女性は既に半泣きだった。
今の戦いでジョネスのことが完全にトラウマになってしまっている。
ジョネスはにわかに笑顔になると、掴み上げていた女性を地面に放り投げながら言った。
「はっはっは!! 冗談だ!! ジンの仲間だろう?」
「ぐへっ!! ……うぅ……、こんなのゲームマスターとして屈辱よ……」
「オレは"ジョネス"という者だ。よろしくな」
「……私は"アンナ"、ジンの仲間でゲームマスターよ。主に怪物やNPCのシステムを担当してるわ」
アンナは羽織っていた作業着を整えながら答えた。
上着の前を全開にしているので、黒いブラジャーに包まれた大きな胸が丸見えだ。袖も裾も大きく捲っている。
(こいつは作業着の意味を理解してんのか? 何でオレが会う女はどいつもこいつも馬鹿みてえな格好してんだ?)
ジョネスは顎に手を当てながら品定めするようにアンナを見つめた。
アンナはその視線にドキッとして、慌てて両腕で体を包んで顔を赤くした。アンナは強いおじさんがタイプである。
しかし、アンナはこのシーンもテストプレイとして録画されていることを思い出すと、強がってキリッとした表情を取り戻した。仲間達に情けない姿は見せられない。
「ちょっと!! 何ジロジロ見てんのよ!! 変態!! エロ親父!!」
「……その恥じらいがあるなら、何で前開けるんだよ……。メンチといい、エルマといい、オレにはもう女が良く分からん……」
二人がのんびり話しているのを尻目に、やがて森の巫女が精霊の力を集め終わり、その力が巫女の一番近くにいたメイドパンダに注がれた。
メイドパンダがフワッフワッになって眩い光を放ち始める。
「おお、ケサランパサランみてえだ」
「何よそれ?」
ジョネスの軽口にアンナがツッコミを入れた。この世界に願いを叶える毛玉は存在しない。願いを叶える妹なら存在するが。
そのまま太陽の如き光が山神の庭を包んだかと思うと、すぐに全ての悪霊達が祓われて、そのまま森の巫女と4匹の動物達が「ボフンッ!!」という音を立てて一枚のカードに変わった。
「"一坪の密林"、ゲットだ。面倒臭いだけで簡単だったな」
「……あんたが強過ぎるのよ。シングルハンターでもキツい難易度設定なのよ?」
「そうなのか? オレもシングルだけど……」
「えっ、今のシングルってこんなにレベル高いの?」
「難易度上げた方がいいんじゃねえか?」
「……ジンに相談してみるわ……。ってちょっと、何で即行で
「独占しなきゃ、独占しなきゃ、独占しなきゃ……」
「……駄目だこいつ……!! 既にこのゲームに脳を破壊されてる……!!」
ゲームマスターの一人であるアンナは、血走った目で複製を続けるジョネスにドン引きした。誰のせいだと思ってるんだ。このゲームは人の心を荒ませる。
ちなみにツェズゲラとかいうシングルハンターのおっさんには、このイベントは難易度的に達成不可能である。
最近、文字数の増加が止まりませんね……。
10000文字前後なら許容範囲だと信じております。
ゲームがバグると妙に笑える。
バグというより仕様っぽいのも混じってるからこのゲームは怖い。
みんなはどのバグが気に入ったかな?
そしてウワサの密林へ……。
フラグの難易度がヤバい。イベントの難易度がヤバい。
宝籤(ロトリー)で出たとか草生える。
リスキーダイスでも出ないからマジの豪運ですね。