流星街の解体屋ジョネス   作:流浪 猿人

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作者が書くやん?
6月にエルデンリングDLC出るやん?
DLC遊び終わった頃にハンタ再開するやん?
恒久機関が完成しちまったなあ!!

はい、お待たせしました。
今回は、息吹と雑談と、スポーツと、最後の挑戦開始です。



66.スポーツ×ト×キネンビ

 

 

 

「いってえ……。あのジジイ、あんなにキレなくてもいいじゃねえか」

 

 頭に無数のタンコブを作ったボロボロのジョネスは、海辺の街ソウフラビに程近い漁村にて、怒りを滲ませながらそう溢した。

 

 "一坪の密林"を独占したことがバレて、イベントを楽しみにしていたネテロと喧嘩になったのだ。ジョネスは思い掛けず発生したハンター試験に続いての第2ラウンドに、これは棚からぼたもちだと嬉々としてネテロに立ち向かったが、結果はご覧の有様である。

 

 ネテロが油断せずに本気で百式を行使したら、流石のジョネスでも手も足も出ずにボコボコにされる。現実は厳しいね♡

 

 ジョネスは「初めから使うつもりだったしい!! 使わされたんじゃねえしい!! 覚えてろよ!!」と、完全なザコのセリフを吐いて"一坪の密林"を1枚ゲインすると、そのまま戦略的撤退を図った。

 

「ジョネス、大丈夫?」

 

 マチが今すぐジョネスに抱き付きたいのをぐっと我慢して、距離10センチくらいから心配そうな声色で問い掛けた。

 

 近い。

 

 マチは仲間達からのアドバイスを受けて、しばらくジョネス好みのクールな態度を取っていたが、ボロボロのジョネスを見ると、すぐにその態度は崩壊して、そのままいつものマチに戻った。かわいい奴め。

 

「大丈夫だ。そろそろヒソカが来るし」

 

「ヒソカ? あんな変態に頼らなくても、あたしがきちんと縫ってあげるのに……」

 

 ヒソカという名を聞いた瞬間、マチは冷たい表情を浮かべて、すっと雰囲気が鋭くなった。

 

 ジョネスはそれを見て、「めっちゃ美人じゃんこの子」と内心でドキドキしたが、口には出さず黙ってそのまま続けた。

 

「いや、"大天使の息吹"のテストも兼ねてるからな。テキスト通りの性能があるならそっちのが早いし」

 

「……フン!!」

 

 言外にお前は不要だと言われたマチは、腕を組んで拗ねたようにそっぽを向いてしまった。この仕草もジョネス的にどストライクである。

 

 いいぞマチ。行けるぞマチ。逆レイプ未遂をやらかしたアレな子とは思えない成長ぶりだ。

 

 マチの機嫌が悪くなったことを察したジョネスは、昔からのクセで慌てて声を掛ける。

 

「いや!! マチ、普段ならお前を頼るよ!? でも超回復アイテムなんて面白そうじゃん。それにテストプレイが今の仕事だからな!?」

 

「……ジョネス、他にも大事なこと忘れてない?」

 

 一向に機嫌を直してくれないマチの言葉に、ジョネスは当然のように即答した。

 

 

 

 

 

「分かってるよ、お前の誕生日だろ? クリスマスイブと一緒だ。ゲームの外に2つプレゼント用意してるよ」

 

「好き!!」

 

 

 

 

 

 余談だがジョネスは大事な人の誕生日とクリスマスを一緒くたにして、1つのプレゼントで済ませたりはしない。人間の鑑かこの野郎……。

 

 マチの機嫌が秒で直って、いつもの如く、娘と父のような気安さで抱き付かれた。

 

 先は長そうである。

 

「やあ、お熱いね♡ 見せ付けられる方の立場にもなって欲しいけど♧」

 

「二人だけで何やってんの? ……オレは接触禁止中なのにズルい……」

 

 いつの間にか近くまで来ていたヒソカが、抱きしめ合う二人を見て、軽薄な口調で茶化した。ヒソカと一緒に来たイルミはジト目を向けて、恨みがましくそう溢す。

 

「ガルル……!!」

 

 マチはからかわれたことに苛立って、唸りながら変態ピエロとヤリチン暗殺者を睨み付けているが、一向にジョネスから離れようとしないので、全然迫力が無かった。

 

「ようヒソカ、イルミ。早速だが実験してみてくれ」

 

 ジョネスがマチの頭を撫でながら、こともなげにそう言うと、ヒソカは(バインダー)からカードを取り出して、間髪入れずにゲインした。

 

「"大天使の息吹"♡ ゲイン!!」

 

 カード化が解除されてヒソカの頭上に神々しいモヤがかかる。

 

 モヤはやがて人の形を取ったかと思うと、何とも美しい女性の声色で問い掛けた。

 

「私を呼び出したのはお主か? どの者の体を治せばいい?」

 

「えぇ……。これが天使?」

 

「思ったより見た目がグロいね……♧ ていうかイラストと全然違うじゃん♤」

 

「キモっ!!」

 

 現れたのはバグで(またか、いい加減にしろ)グラフィックが間違えて差し替えられた、巨大な胎児のような姿の怪物だった。

 

 キモ過ぎてイルミとヒソカとマチがドン引きしている。

 

 しかし、それを見たジョネスは驚愕して、何故か目をキラキラさせながら感嘆した。

 

金色疋殺地蔵(こんじきあしそぎじぞう)じゃん!! 完成度高えなオイ!!」

 

 ジョネスのこういう謎の発言は今に始まったことじゃないので、マチは無視して、カードを持つヒソカに「気にすんな早くやれ」と目だけで合図を送った。

 

「そこにいるジョネスの体を治してあげて♡」

 

「お安い御用。ではその者の体、治してしんぜよう」

 

「声と見た目が合ってねえ!! ていうか"息吹"ってまさか……!!」

 

 巨大な胎児がジョネスに向けて、キラキラ輝く吐息を吹き掛けた。毒ガスではない。

 

 

 

 

 

「なんかやだあああぁぁぁ!!」

 

 

 

 

 

 ジョネスの体が立ちどころに治った。性能は確かである。

 

「このカードと天空闘技場があれば永遠に戦い続けられるね♡」

 

「確かに……。お前も鬼にならないか?」

 

「何それ?」

 

「イルミ、無視無視。ジョネスの言うことは半分だけ聞いたらいいから」

 

「爺ちゃんと一緒だね」

 

 その後しばらくして、パリストンから"ブループラネット"入手成功の報告が掲示板に届いた。クロロは何故かキレ気味だった。

 

 そこから更にしばらくして、ネテロから"一坪の密林"入手成功の報告が掲示板に届いた。写真に写るネテロは見るからに疲れ切っていた。

 

 たぶんジョネスのようにアイテムを上手く使えず、百式で時間いっぱいゴリ押ししたのであろう。

 

 ネテロの隣に写っているアンナの青褪めた顔を見れば一目瞭然だった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「そういえばジョネス。さっきクリスマスイブだって言ってたけど、あたしの誕生日は正しくはクリスマスだからね? あんた毎年間違えてるよね」

 

「あれ、そうだったっけ? おかしいな……イブは誰の誕生日だったか……」

 

「一番近いパクでも1月後半だから、ジョネスに近しい人ではいないと思うけど?」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 漁村にある魚が美味いことで有名な小さな酒場にて、15人のテストプレイヤー達が最後のカードを入手する為に再び一同に会していた。

 

 早速ジンが切り出す。

 

「"一坪の海岸線"は、15人以上のプレイヤーが同行(アカンパニー)を使って、同時にソウフラビに行くことが条件だ」

 

「はあ? 分かる訳ねえだろ」

 

 ジョネスがその場にいる全員を代表して、呆れたように呟いた。

 

「……"妖精王の忠告"をソウフラビで使ってだな」

 

「だからそのカードを入手するのが死ぬほど面倒臭えんだって!! 貴重なSランクカードをわざわざ使うかよ!! 限度枚数10枚だし!!」

 

 相変わらずなジンに対してジョネスが怒りの声を上げた。ジンは不敵な笑みを浮かべたまま答える。

 

「そんくらい何とかしろよ。ハンターだろ?」

 

「こいつこんなこと言ってますよ。プロハンターのネテロさんとパリストンさん」

 

 これさえ言っとけばいいという感じの決めゼリフを聞いたジョネスは、茶化したように協会のトップの二人に問い掛けた。

 

「明らかにやり過ぎじゃな」

 

「そもそもジンさんは何の目的があってこのゲームを作ったんですか?」

 

 口々に不満を漏らす二人に対してジンが答える。

 

「……ハンターの訓練用のシミュレーターとして作ったんだよ。そもそもクリアできるように作ってねえ。制約の関係でクリア報酬をポンポン外に持ち出されると、そのうちゲームを丸ごと作り直さなきゃいけねえしな」

 

 パリストンは「なるほど」と言って笑顔を浮かべた。確かに怪物カードやイベントは良く考えられていて、凡百のプロハンターではまともにプレイできない難易度となっていた。

 

 ジンが求めている人材というのは、まさにこのゲームのあらゆる要素に集約されているのだろう。

 

 そしてそれが将来的に何に使う人材なのか。恐らく自分と見ている場所は同じだ。

 

 ネテロもそれを察して渋面を作った。

 

 本気で"警告"したつもりなのに、夢を追う冒険家連中にとってはやはりガソリンにしかならなかったようだ。

 

 ちなみにネテロが強引に引き止めないのはその誠実さ故である。自分は行った癖に他人には行くなというのは己の流儀に反する。

 

 ジョネスはその会話を鼻で笑うと、にわかに真剣な表情になって更にジンを問い詰めた。

 

「隠すんじゃねえよジン。それだけじゃねえだろ? 

 

 この島は"中継地点"だ。10年後か20年後か、それよりもっと早いか。世界中からの瞬間移動に、島の中だけで使える神の如き能力。

 

 信頼する仲間達を永遠にただのゲームに縛り付けて置く訳もねえ。

 

 アップデートによって、いずれこの島は"拠点"であり"防壁"に変わる」

 

「……さてな……。お前どこまで……苦手だぜ……」

 

 ジョネスからの詰問に、ジンはあくまで冷静な態度のままとぼけたが、内心では冷や汗をかいていた。

 

 そこまで見破った奴は初めてだ。やはりこいつは頭がいいのではないか? アホに見えて核心だけ突いて来るのがここまで厄介だとは。いや、アホに見せかけているだけの最悪のクセモノなのかも知れない。

 

「まあ、備えているだけマシな方か。考えなしに渡って帰って来るよりはな」

 

 ジョネスはそう言って会話を切り上げると、そのまま黙ってビールを飲み干した。

 

 そして酒場を見渡すと、一番気になっていたことに触れる。

 

 

 

 

 

「フィンフェイはなんでまた女になってんだ?」

 

「……いや、その……」

 

「……黙秘権を行使するね……」

 

 

 

 

 

 Sランクカードをわざわざ使う奴はいる。

 

 どハマりした奴とか。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

[一坪の海岸線]No.002。ランクSS、カード化限度枚数3。

「海神の棲み家」と呼ばれる海底洞窟への入り口。この洞窟は入るたびに中の姿を変え侵入者を迷わせる。

 

 

 

 

 

 ゲームマスターであり"一坪の海岸線"のイベントを任されているレイザーは、日課の筋トレをしながら初めての"来客"の気配を感じ取った。

 

 まだ自分以外の死刑囚も雇えていないのだが、どうしたものか。

 

 そして部屋の中に入って来た集団を見て絶望した。

 

(えっ!? オレ今からアレとやり合うの!?)

 

 自分と互角の奴とか自分より強い奴とかがうじゃうじゃいる。いくらスポーツとは言えこれは流石に……。

 

 賑やかな集団の先頭に立って、ニヤニヤと満面の笑みを浮かべるジンの顔面を思いっ切り殴り付けてやりたくなった。

 

「スポーツ対決だってな? お手柔らかに頼むぜ」

 

「あ、ああ。ジンから聞いたのか。オレはレイザーだ、よろしく頼む」

 

 レイザーは集団から歩み出て、笑顔で手を差し出して来た、恐ろしく強そうな男に気圧されながらも、何とか平静を保って握手をした。

 

 その瞬間、レイザーの手がとてつもない力で握り締められる。

 

「腕が潰れてスポーツができるかな?」

 

「なっ!? ぐ、ぐあああぁぁぁ!!」

 

 手を取った男、ジョネスは大して力んでいないように見えるが、それとは裏腹にレイザーの方は、産業機械に巻き込まれたのと相違ない状態に追い込まれて、たまらず絶叫した。

 

「慢心、挟まれ、巻き込まれ〜♪ ヨシッ♫」

 

 ジョネスが鼻歌を歌いながら徐々に力を強めて行った所で、流石にそれは無いと感じた他の人間達からストップがかかった。

 

「おい、イベントにならねえだろうが!! 離してやれ!!」

 

 ジンが慌ててその場で手を開かせる能力を作製する。

 

「そこまでにしとけよ……」

 

 ジョネスに握られるという同様のトラウマな経験があるウボォーギンは、レイザーを気の毒に思って、ジョネスの手を開かせようと全力で組み付いた。

 

 何人かの協力で無事にジョネスを引き剥がすことに成功したレイザーだったが、真っ黒になった手を見て唖然として震え上がった。

 

(命がいくつあっても足りねえ!!)

 

 ジョネスの荒技に恐怖したレイザーが大きな声で宣言する。

 

 

 

 

 

「種目は野球だ!! 9対9のチームに分かれて、勝った方に"一坪の海岸線"をやろう!! 人数が足りない分はオレの念獣で補填する!!」

 

 

 

 

 

 レイザーはスポーツから逃げて保身に走った。

 

 レイザー自身が対決しないことを宣言されて、ジンが「設定と違うぞ!!」と怒り出したが、命には代えられない。

 

 突然の野球回が始まる……!!

 

 

 

 

 

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 ジョネスチーム      

 1(二)フィンクス    

 2(遊)フェイタン    

 3(中)ノブナガ     

 4(右)ウボォーギン   

 5(三)ジョネス     

 6(投)マチ       

 7(捕)シズク      

 8(一)デメちゃんマーク2

 9(左)レイザーの念獣 

 

 ネテロチーム

 1(遊)イルミ

 2(三)クロロ

 3(投)ヒソカ

 4(捕)ネテロ

 5(二)ジン

 6(右)フランクリン

 7(左)シャルナーク

 8(一)パリストン

 9(中)レイザーの念獣

 

「プレイボール!!」

 

 審判役のレイザーの掛け声と共に始まった念能力者達による野球は、予想外の、いや、予想通りやはり混迷を極めた。

 

「ちくしょう!! こんなん無理だろ!?」

 

「残念ハズレ♡」

 

 ヒソカの投げた球はゴムの精密な操作によって異常な変化を見せて、1番(二)のフィンクスが盛大に空振った。三振である。

 

「ヒソカさん!! ナイッピー!!」

 

「フィンクス!! 振んなきゃ当たんないっピ!!」

 

「振ってんだよ!! 3回な!!」

 

 1塁を守るパリストンとベンチで打順を待つジョネスが、それぞれ賞賛と野次を飛ばした。

 

 明らかにふざけているジョネスをフィンクスが怒鳴り付ける。

 

「どんどん行くよ♤」

 

 ヒソカはそう言うと、チラッとパリストンの方を見てサインを確認した。

 

 パリストンはバッターの精神状態を読み取って、投げて欲しくない球や場所を細かにヒソカに伝えている。

 

「っ!!」

 

 2番(遊)のフェイタンは何とかくらい付いたが、結果的に上空に高く打ち上げてしまった。

 

 その時、ベンチに座っていたシズクがジョネスの指示を受けて、打ち上げたボールを吸い取って落下地点をずらそうとする。

 

「ギョ〜!!」

 

 半魚人のような見た目の念獣、デメちゃんマーク2が勢い良く吸引を開始した。

 

 いま皆さんは「なんだこいつ!!」と思っただろうが、それはちょっと置いておこう。

 

 

 

伸縮自在の愛(バンジーガム)

 

 

 

 デメちゃんマーク2の吸引によって軌道が不規則に変わろうとしていたボールが、素早くヒソカの手元に吸い寄せられた。

 

「んーダメダメ♡ フライは真っ直ぐ落ちて来なきゃね?」

 

繧繧縺(クソが)……」

 

 念の為全力で走って、既に一塁に到達していたフェイタンが、呪詛を吐きながら舌打ちした。ツーアウトである。

 

 このまま三者凡退で終わるかと思われた次の打席。ノブナガが意外な才能を見せる。

 

 

 

 

 

「見て、切ったらいいんだろ?」

 

 

 

 

 

 ヒソカが投げたジグザグに変化する異常な球を、ノブナガがいとも容易く打ち返した。

 

 グラウンドにバットの快音が響き渡る。

 

「「「うおおおぉぉぉ!! カッケー!!」」」

 

 ベンチから野太い歓声が響いた。全然嬉しくない。

 

 しかし、ノブナガが1塁を回って2塁まで狙おうとした瞬間、唐突に嫌な予感を感じて、ノブナガは咄嗟にその場に踏み止まった。

 

 ちなみに"円"で感知した訳ではない。つーか4mが限界なので。

 

 次の瞬間には2塁手のジンのグローブが、凄まじい轟音を立てて、気付いた時には既にボールが捕球されていた。

 

「……クッション能力用意しとかなかったら折られてたな……」

 

 ジンは引き攣った笑みを浮かべながら一筋の汗を垂らすと、外野の深い位置から送球して来た男を恨みがましく見つめた。

 

 

 

 

 

「投球は放出系の領分だぜ」

 

 

 

 

 

 凄まじいレーザービームを投げた、本当の意味でのレーザービームを放つこともできる男、フランクリンは不敵な笑みを浮かべてそう呟いた。

 

 同時に地獄耳な強化系連中が、フランクリンの言葉にピクッと同時に反応した。

 

「調子に乗んなフランクリン!! 投球は強化系の領分だ!!」

 

「そうじゃそうじゃ!!」

 

「お前にピッチャーやれんのかよ!!」

 

 誰がとは言わないが、脳筋達が口々にブーイングを浴びせる。フランクリンは自信満々なまま目をつぶって、どこ吹く風と言った様子でその雑音を無視した。

 

 投げるのが得意なのは放出系なのか強化系なのか。実の所これは念能力界隈で永遠に決着のつかないテーマである。

 

 オーラを込めるのが得意なのは放出系だが、物理的な速度と硬さを出せるのは強化系である。

 

 その後、4番(右)のウボォーギンが意気揚々と打席に立つ。

 

 しかし、かっこ付けて盗塁を試みたノブナガが、捕手のネテロによる神速のジジイキャノンに刺されて敢えなくスリーアウトとなった。

 

 ノッブは足がそんなに速くない。普通に余裕で間に合ってなかった。

 

 2塁手のジンは再び冷や汗を流した。

 

 こんな球を受け続けて自分の左手はいつまで持つのか。ジンはベンチで一旦メモリをリセットして、事前に作った即席の能力をより頑丈な捕球能力に作り直し始めた。

 

 独断で盗塁を試みて無様に死んだノブナガに、ウボォーギンが激怒しながら詰め寄って、いつもの如く喧嘩が始まった。

 

 ノブナガが殴られた。ノブナガが蹴られた。ノブナガが投げられた。

 

 ノッブはステゴロが非常に弱い。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 1回裏、マウンドに立ったのはマチだった。キャッチャーはシズクである。

 

 てっきりジョネスかウボォーギン辺りが、豪速球で勝負して来ると思っていた面々はその采配に首を傾げた。

 

 1番(遊)のイルミがまず相手の出方を窺う。

 

 マチが投げた球はそのとんでもない速度に加えて、凄まじい回転数を誇り、イルミの手元で大きくホップした。

 

 リリースした後にボールに巻いた糸を引き絞る。要するにベーゴマの原理である。

 

「いい球だけど、ヒソカ程はぶっ飛んでないかな? ……いや……」

 

 ネクストバッターサークルのクロロが訝しげに呟いた。

 

 次に投じられた球はヒソカの投球を再現するように、カクカクと空中であり得ない変化を起こして、そのまま勢い良くキャッチャーミットに吸い込まれた。

 

 糸による回転、糸によるレール、糸による操作に、一塁を守るデメちゃんマーク2の吸引を加えた複雑過ぎる変化だ。

 

 それでもイルミは途中まで確実に球を捉えていたが、バットを振った瞬間に、ボールがビクッと何かに引っ張られたような挙動で速度を落として、そのまま豪快に空振りしてしまった。

 

「これはキツイなあ……」

 

 イルミは無表情だが悔しそうな声色で呟く。そしてバッターボックスの外に出ると、おもむろに自分の体に針を刺し始めた。

 

「えぇ……何してるの?」

 

「ギョギョッ!?」

 

 そばで見ていたシズクがドン引きしながらイルミに尋ねた。一塁のデメちゃんマーク2までもが感情を剥き出しにして驚愕している。

 

「反応速度とか瞬発力とかいじってんだよ。原理は企業秘密」

 

 イルミは一通り体を改造し終えると、再びバッターボックスに立つ。

 

「えっ、教えてよ。秘密って言われたら余計気になるよ」

 

「うるさいなあ、流星街の女の子ってみんなそうなの?」

 

 

 

 

 

 ゴシャッ!!

 

 

 

 

 

 シズクに気を取られたイルミの側頭部に、突然マチの豪速球が突き刺さった。ヘルメットが容易く粉砕されている。

 

「投げ方のコツは掴んだし、あんたはもういいよ。この変態」

 

 流星街に帰って来た親友のサクラのあんまりな惨状に、静かに憤っていたマチが冷たい声で言い放った。

 

「「しゃあああぁぁぁ!!」」

 

「リア充死すべし!!」

 

「ナイスだマチ!!」

 

 守備陣から歓声が上がる。

 

 イルミの味方のベンチからも歓声が上がる。

 

 そのままぶっ倒れたイルミを心配したヒソカが慌てて駆け寄って来た。本人達曰く友達では無いらしい。

 

 イルミが回復するまでの間、代走の為にレイザーが新しい念獣を出した。

 

 その後、2番(三)のクロロがとある性犯罪者から押収中の能力を使い、見事にヒットを放つ。

 

「見ましたか? これが"ノロノロビーム"の力です」

 

「全然かっこ良くねえ……」

 

 ジョネスは落胆して肩を落とした。

 

 ノブナガのヒットはかっこ良かった。しかしクロロのエロ同人誌も真っ青な能力は全然スタイリッシュじゃない。

 

 ともあれこれでノーアウト1・2塁。初回から早くもピンチだ。

 

 マチも心なしか不安そうにしている。

 

「大丈夫だ!! 何点取られても取り返してやるからよ!! 大船に乗った気でやれ!!」

 

「……ジョネス……。うん!! あたし頑張るね!!」

 

「……マチってジョネスと話してる時キャラ変わるよな」

 

「……先は長そうね」

 

 二遊間で核心を突く会話が為された。

 

 それはともかく、そこから更に調子が上がったマチは、3番のヒソカを変幻自在の変化球で追い込むと、最後に激しくホップする速球でバットの上を通過させるという豪快な三振を勝ち取った。

 

 ヒソカはマチの投球を見て、自分の投球にも活かせないかベンチで真剣に考え始めた。

 

 そして次の打者が問題だ。

 

 

 

 

 

「野球なぞ70年ぶりじゃわい」

 

 

 

 

 

 ハンター協会会長。野球の神様ボブ=ロイスより年上な男、アイザック=ネテロ降臨。

 

 守備陣に緊張が走る。

 

 マチがゴクッと唾を呑み込んでから、決死の覚悟で1球目を投じる。

 

 ストライクゾーンから大きく曲がってボールゾーンに逸れて行くような球だ。

 

 ネテロはそれを完璧に見切ると、そのまま見送った。

 

「もっと打ち易い所に投げんかい」

 

 ネテロが軽薄な調子で言った。

 

 その態度に苛立ったマチのオーラが更に膨れ上がる。その気迫を前にネテロもにわかに真剣な表情を浮かべる。

 

「こんの……エロジジイが!!」

 

 とんでもない速度の球がスライダー気味にキレのある変化をした。

 

 ネテロはそれを何とかバットに当てるも、打球は見当違いの方向に大きく外れて、そのままファールゾーンに飛んで行った。

 

(ワシが球威で押されるか……。ジョネスは育成の才能があるのう)

 

 心の中で感嘆しながらも、ネテロは集中を切らさず前だけを見ていた。

 

 その時、後ろから声が聞こえた。

 

「お爺ちゃん、打たないで」

 

「ほえ?」

 

 致命的な油断。

 

 

 

 

 

 "(ストライク)"

 

 

 

 

 

 一瞬ネテロがそう覚悟したのも無理はない。

 

 それ程に容易く悠然とボールは、ネテロの死線を横切った。

 

「ツーストライク!! 行けるぞマチ!!」

 

「ギョギョギョギョ!!」

 

 ジョネスとデメちゃんマーク2の声援により、再び時が動き出す。

 

 あと本人に言うとキレるが、ジョネスの情緒は知能の低い念獣と同レベルのようだ。

 

 孫のシズクのささやき戦術によって、一瞬気が抜けてしまったネテロが渋面を浮かべた。まさか追い込まれるとは。

 

 孫ではない。

 

「お爺ちゃん、駄目だよ。打ったら点が入っちゃうかも? 私負けたくないもん」

 

「……ぬう……」

 

 引き続き繰り出されるシズクの懇願に対して、ネテロは心を鬼にして何とか無視した。

 

 そうこうしているうちにマチから、ここ一番の投球が繰り出される。

 

 巻き付けた糸を順番に勢い良く解いて行くことで、空中で数段に分けて変化しながら加速する異次元の魔球だった。

 

(落ち着け、スポーツは武術と一緒じゃ。ボールは相手の手足の動き、もしくは重心の動きじゃ)

 

 ネテロはボールがバットの射程距離に入るまで"円"を広げて、極限の集中力で対戦相手(ボール)の動きを観察した。

 

 その時、右翼と三塁から突然、途轍もなく大きな音が、バッターボックスに向けて放たれた。

 

 

 

 

 

「「あ゛っ!!!」」

 

「どわあっ!?」

 

 

 

 

 

 ボールだけに集中していたネテロの"円"が、余りの空気の振動にジャミングされ、捉え切っていたはずのボールを打ち損じてしまった。

 

 引っ張られたボールは神速のゴロとなって3塁側に飛んで行った。

 

 打ち損じて尚、捕り損ねたらそのままフェンスにまで突っ込んで行きそうな、凄まじい威力の打球だった。

 

 

 

 

 

 しかし、飛んだ先はある男の正面である。

 

 

 

 

 

「マチ、ナイスだ。あとネテロもナイス」

 

 ジョネスはマチを褒めつつネテロを煽った。スポーツマンシップの欠けらも無い男である。

 

 グローブで捕球したらそのまま破れてしまうと判断したジョネスは、グローブを嵌めていない右手でボールを鷲掴みにすると、そのまま3塁を踏んでフォースアウトにせずに、わざわざ2塁から飛び出したレイザーの念獣に高速で接近した。

 

「必殺!! 地獄甲子園!!」

 

 ジョネスのタッチアウトというか、石握りパンチ的な攻撃を受けた念獣は、跡形も無く爆発四散して消失した。

 

 そのまま2塁のカバーに入ったフィンクスが、ジョネスからの送球を受けて、ジョネスの真似をしてクロロをパンチアウトにしようとしたが、クロロが逃げ出したので、そのまま2塁を踏んでフォースアウトにした。

 

 ネテロは未だにキーンと鳴っている耳に手を当てながら、爆音の犯人であるジョネスとウボォーギンを順番に睨み付けた。

 

 しかし二人がマチに駆け寄って、「よくやった!!」と思い思いに頭を撫で回している微笑ましい光景を見て、何も言わずクールにベンチに去って行った。

 

 マチも大変嬉しそうである。

 

 ネテロはベンチでパリストンとジンのおもちゃにされた。

 

 

 

 

 

 12月24日 早朝

 

 

 

 

 

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【デメちゃんマーク2】

 後天的な特質系能力。

 シズクの具現化系能力である掃除機、"デメちゃん"がある日突然進化した姿。

 二足歩行の全体的に丸っこい太っちょの半魚人で、念と生物以外の物を何でも吸い込む。自分の意思を持ち、シズクの近くで自由に行動する。

 しかしシズクの命令は絶対聞く上に、二人はテレパシーのようにいつでも以心伝心である。

 格闘戦が鬼強い。シズクより遥かに強い。両手の平で空間を削り取ることができる。

 

 デメちゃんはメテオールの国民達の信仰を一身に受けて神となった。

 

 しかし、実は普通の掃除機のデメちゃんも同時に出せる。一匹と一人は主従関係のようで、マーク2は自分より低性能な掃除機に頭が上がらない。

 

 

 

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 11月25日

 

 十人囃子のメンバーが廃ビルに集結した。

 

(……気休めでしかないけどね……)

 

 今回は徹底的に情報統制をした上に、集合場所も複数用意してサイコロを使ってランダムで選んだ。

 

 経験から言って運命を変えるには運任せが最も有効的だ。

 

 これだけやっても何一つ安心できない。あの暗殺者達の目は欺けたのか、あの強過ぎる自称漁師の行動を阻害できたのか。

 

 それは最後の日まで分からない。

 

 

 

 

 

「……最初の仕事を、始めましょう……」

 

 

 

 

 

 もしくは最初で最後の。

 

 ドルチェは憔悴し切った内心を表に出さないように、メンバー達に4回目の宣言をした。

 

 

 

 

 





大天使の息吹も大概クソだな。
スペルって40種あるんだよ?

ジョネスはブリーチは知っているのに、なぜハンターハンターは知らないのか。これは巨大な伏線だ……!!
はいそんなこと無いです、すみません。
単に作者の好みとポリシーの問題です。

マチはジョネスに甘えたくて仕方ない。これが男と女か……?

12月24日? マチの誕生日は25日だよ?
一体誰の記憶だろう?

ギャグ優先で書いてたら、ジンは何がやりてえんだろってなって来たので、早めに擁護しときました。実際友達のゲームマスターを永遠にゲームに縛り付ける気はないと信じてる。原作だと渡航計画の順序が狂ったんだよ。

突然のやきう回。
9回全部丁寧に書いたら名作(迷作)になる予感がしてますが、作者はそこまで書く気はありません。飛ばし飛ばしになると思います。
今回で終わらせるつもりでしたが、1回が終わっただけとは……。

文字数が多くなり過ぎたんで、今回はこの辺で区切っときます。

ゲームの外編を先に進め過ぎちゃったせいで、ゲーム内の話が連続していましたが、ようやく戻って来ました。

原作のあらゆる部分を救済したら、原作沿いには書けないというジレンマ。
多分、近い内に書くジョネスのハンター試験官編でとりあえずの完結とします。時間が飛ぶので、その前後に小話を追加して行く形式になるかも。

原作年代は人間界に持ち込まれた厄災解決くらいしか、やることないかなあ。
オリジナル要素が多過ぎて、書けるか、書いたとして面白くなるか未知の領域ですが、気合いと気分次第で書きたいです。

原作が更新されればなあ……。

当初の構想にあった心源流道場編は章って程には膨らみませんでしたね。ネテロ会長とビスケとの絡みとかそこで書く予定だったんですが、他の章を濃厚にする為に、既にカードを切ってしまった状態です。
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