流星街の解体屋ジョネス   作:流浪 猿人

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やっと書けました。苦戦したなあ……。
オレにはもう二次小説が……よく分からんのよ……!!

ボノさんと、やきうと、運命の収束です。


67.シュウソク×ノ×トキ

 

 

 

 12月17日

 

「敵の情報が少な過ぎるわ……。ここまで徹底した情報工作を行えるとなると、思ったよりも大きな組織が彼らを狙っているのかも知れないわね……」

 

 センリツがファミリーレストランのテーブルに座って、深刻な面持ちでそう溢した。

 

 裏社会ではクルタ族関連の情報が激しく飛び交っており、襲撃は近いはずなのに、肝心の実行犯の姿が影も形も掴めていなかった。

 

 ボノレノフが疑問に思って訝しげな表情で問い掛ける。

 

「そもそも狙われていないのではないか? オレらの早とちりだったとか……」

 

「……いえ、念には念を入れた方が良いでしょう。私からジョネスに連絡しておくわ」

 

 センリツはそう答えると秘匿回線でジョネスにメッセージを送った。すぐにジョネスから返信が返ってきた。

 

『センリツの懸念はもっともだ。情報が極端に少ないからこそ、それが可能な敵に対しては極限の警戒を持って当たらねばならない。

 

 こちらの勘違いで徒労に終わったとしても、その時はその時で笑い話で済むことだ。

 

 既にサラサにもしもの時の為の荷物を持たせて、そちらに向かわせた。

 

 お前らはとりあえず予定通り"協力者"と合流してくれ。既に話は通してある』

 

 ジョネスからの心強い返信を受けて、センリツが少しだけ明るい表情を取り戻した。

 

 ボノレノフは真剣な面持ちで、何かあったら絶対に自分が全員を守ると改めて覚悟を入れ直す。

 

 ややあってから、偵察に出ていたシーラが"協力者"を連れ立ってレストランを訪れた。

 

「狼男の好きな物は?」

 

「アサショーリューとハンシンとマンシティ」

 

「もっと好きな物は?」

 

「スシとギンザと女子高生」

 

 その男は先にシーラと会っている為、既にセンリツ達がジョネスに指定された協力者だと認識しているが、ジョネスを茶化す目的で、もう一度謎過ぎる合言葉を確認した。

 

「ジョネスに雇われた暗殺者のシルバ=ゾルディックだ。君達がSCP財団の3人だな?」

 

 "ゾルディック"という姓を聞いて、その場にいる全員がゴクッと唾を飲み込んだ。

 

 自分達には知らせずにジョネスはこんな怪物を用意していたのか。

 

 独自の諜報網を持つシルバから新たな情報が提示された。

 

「クルタ族を狙っているのは3人組の盗賊だ。追加で依頼されたオレのターゲットでもある。奴らは既にこの街に潜んでいるはずだ。君達の能力で索敵を頼む」

 

 彼らには知る由も無いが、3人組の強盗という誤った情報はドルチェによる情報操作の結果である。

 

 周回した経験から、どうしても情報の流出は避けられないと覚悟を決めたドルチェは、十人囃子のメンバーの内3人を囮として敢えて矢面に置いた。

 

「この街でその3人を始末したら、オレは飛行船で逃げたもう一人の男を追う予定だ。協力してくれるか?」

 

「……ええ、当然よ」

 

 センリツは本当のことを言うと、どれ程の悪人であっても殺さずに捕えるだけで済ませたいのだが、既にジョネスとシルバの間で話が進んでいることを察して、渋々了承した。

 

 その後、シルバからの情報を元に、センリツとシーラが能力を使った索敵を行い、無事に3人の"敵"の居場所が割れた。

 

 

 

 

 

 作戦が始まる。

 

 狙われている3人は、他の7人を守る為に怪物の前に差し出された生け贄である。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 12月19日

 

 リーダーであるドルチェからの指示で、モンテール市郊外の森を調査していた一人の男が異変を察知した。

 

「笛の音?」

 

 ツンツンの赤い髪を揺らしながら、ユウザンが音の聞こえる方向に振り返った。

 

 こんな森の中で演奏とは酔狂な物だ。しかし、もしかしたらクルタ族かも知れない。だとすればそいつを捕えてアジトに誘拐すれば、それで自分の任務は完了だ。

 

 やがてユウザンは音の発生源と対峙した。

 

 木々の間から高速で飛び出して来た男は、既に戦闘体勢に入っている。

 

 

 

 

 

戦闘演舞曲(バトレ・カンタービレ)序曲(プロローグ)

 

 

 

 

 

 独特な意匠の鎧を身に纏ったボノレノフが、手に持った槍で激しく攻撃を仕掛けた。

 

 ユウザンは手傷を負いながらも獰猛な笑みを浮かべて、こちらも能力を行使して対抗する。

 

 ベルト代わりにしていた柔らかい長剣を引き抜くと、剣はまるで生きているかのようにその身をくねらせて、ボノレノフに激しく襲い掛かった。

 

「ハッハァ!! 不意打ちとは随分な歓迎だな!! テメェは何者だ!? クルタ族の能力者か!?」

 

「貴様に名乗る名など無い!!」

 

 両者の間で甲高い音が響いて火花が散る。

 

 ユウザンはボノレノフの攻撃で徐々に押し込まれて、更にダメージを負った。

 

 接近戦では分が悪いと悟ったユウザンが舌打ちをして距離を取ると、新たに先が無数に枝分かれした刃を取り出して、持っていた長剣と組み合わせた。

 

 "ウルミ"。

 

 ミンボの武術で使われる柔らかい鉄で作られた独特の剣である。

 

 この剣は金属でありながら鞭のようにしなり、攻撃した相手に複雑な傷を与える。

 

 ユウザンは操作系能力によって、自身が愛用するこの武器を自由自在に操る能力者だ。

 

 しかし、距離を離したことはボノレノフにとっても願ってもないことだった。

 

 そろそろ序曲(プロローグ)による強化が切れる。新たに演奏して次の演目に移らなければならない。

 

 鎧が消失したボノレノフが、森の中に美しい音色を響かせながら華麗に踊り始めた。

 

「全身に穴!? 気持ち悪い奴だな!!」

 

「……(クズ)の戯言などオレの心には響かない」

 

 長剣による中距離からの攻撃を不規則な動きで躱しながら、ボノレノフは踊り続ける。

 

 流石に全ては躱し切れない。激しい攻撃によってボノレノフの体に痛々しい傷がついた。

 

 しかし彼はその傷を意に介さず、リズムも音色も完璧なまま、新たな演奏を終えた。

 

 

 

 

 

 痛みなど恐ろしくは無い。

 

 いつだって恐ろしいのは誇りを奪われることだ。

 

 

 

 

 

 ボノレノフは脳裏に先に逝った同胞達と、美しい緋色の瞳を幻視して、激しい怒りを孕んだ声で言った。

 

「これ以上は何も奪わせん……!!」

 

 ボノレノフの頭上に具現化された2つの半球が打ち合わされる。

 

 その瞬間、辺りが激しい光に包まれた。

 

「なっ!?」

 

 

 

 

 

戦闘演舞曲(バトレ・カンタービレ)月光(ムーンライト)

 

 

 

 

 

「……青……い……」

 

 不可避の殺人光線にその身を貫かれたユウザンが、無傷にも関わらず何故か即死してその場に倒れ伏した。

 

 包帯を巻き直した戦士は精霊に祈りながら呟いた。

 

「終曲だ」

 

 

 

 

 

 その後、残りの二人の盗賊を早々に片付けたシルバは、連れて来ていた子供達を紹介してから、飛行船で逃げ回るカキン帝国の要人を追って早々に街を出て行った。

 

 SCP財団の3人は敵を無事に退けたことに満足すると、慎重にクルタ族との交流の準備を始めた。

 

 それとは裏腹に、闇に潜む7人の盗賊も着々と準備を進めていた。

 

 

 

 

 

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「5番サードクロえもん!! やってやんよ!!」

 

 ジョネスがよく分からないことを叫びながら打席に立った。

 

 この前の打席でシンプルに運動神経がいい4番のウボォーギンが、2塁打を放ち塁に出てくれているので、絶好のチャンスである。

 

 ジョネスに入る熱もひとしおだった。

 

「スポーツは得意なのかな♢」

 

 ヒソカが一投目を投げた。

 

 相変わらずの凄まじい変化だ。

 

「ふんぬ!!」

 

 ジョネスが盛大に空振った。スイングの余りの威力に周囲で大型トラックが通過したかのような暴風が巻き起こった。

 

「デタラメな男じゃのう……」

 

 ネテロが呆れたように呟いた。ウボォーギンや自分でも流石にこの威力で振るのは無理だ。

 

 危険度を正しく認識したヒソカが、にわかに真剣な表情になって、全力で新たな球を投じる。

 

「ぬおっ!?」

 

 ヒソカの渾身の投球を前にして、ジョネスは何とかバットに当てたものの、明らかにドン詰まりでグラウンドに鈍い音が響き渡った。

 

 

 

 

 

 ガシャン!!

 

 伸び続けた打球がファールポールに直撃して、そのままポールを粉砕した。

 

 ホームランである。

 

 

 

 

 

「「「えっ?」」」

 

 何処からともなく間の抜けた声が上がった。

 

 明らかにバットの芯を食っていなかったぞ? それがホームラン? ふざけているのか?

 

「よっしゃあああぁぁぁ!!」

 

 ジョネスはふざけた男なので、さもありなんである。当たりさえすれば入れられる男は、歓喜の雄叫びを上げながらベースを回った。

 

「「イェーイ!!」」

 

 ホームベースを踏んだジョネスは先に回っていたウボォーギンとハイタッチした。

 

「これは参ったなあ♧」

 

「2点先制だ!! 続けマチ!!」

 

「ああ、来な……」

 

 ジョネスのふざけた怪力を目の当たりにして、呆然とするヒソカを尻目に、間髪入れずマチがバッターボックスに入った。

 

「ピッチャーびびってる!!」

 

「ヒュ〜!! びびってる!!」

 

「この回で降板させてやるよ」

 

 フィンクスとノブナガとジョネスの野次がやかましかったが、ヒソカはそれを気に留めた様子もなく、極限に集中して新たな球を投じる。

 

「ふんぬ!!」

 

 マチがどこかのおっさんに似た掛け声と共にフルスイングした。

 

 一球目は空振り、二球目はバックネットへのファールだった。

 

 振る度に轟音を立てるバットを見て、男性陣はあれで殴られたらやべえなと呑気なことを考えていた。

 

「あんまりタイミング合ってないね♤ かわいいなあ♡」

 

「後で殺すからな?」

 

 ヒソカの煽りにドスの利いた声でマチが答える。

 

 余談だがマチは初対面からヒソカが嫌いである。単純に軽薄な態度が気に食わないのと、別の世界線で何かあったからだろう。

 

「バットを短く持てばええんじゃ。それよりええ尻しとるのう」

 

 キャッチャーのネテロが新たな孫の獲得を狙ってアドバイスをした後、尻を見るエロジジイ8割、筋肉を見る武闘家2割の軽口を叩いた。

 

「お前も殺すからな?」

 

「メンゴ」

 

 ネテロも今嫌われた。当たり前である。

 

 その時、ベンチから大きな声がマチの耳に届いた。

 

「マチ!! 器用なんだからバットを短く持て!! ダウンスイングで当てて行け!!」

 

「ジョネス!! うん、分かった!!」

 

「ワシと同じアドバイスじゃん?」

 

「聞こえない。ジョネスのアドバイスだもん」

 

 ジョネスに対しては素直なマチはバットを短く持つと、ボール球を2球を見送ってから、ここぞとばかりに次の球を狙い打った。

 

 

 

 

 

「さっきのお返しだよ」

 

 

 

 

 二遊間に高速で抜ける明らかにヒット性だった打球は、不慮の事故から復活したショートのイルミの超人的な動きによって捕球され、すぐさま1塁に送球された。

 

「アウト!!」

 

「チッ」

 

 塁審をしているレイザーの念獣が高らかに宣言した。マチは舌打ちして、やる気満々なプレーを見せたイルミを睨み付けているが、結構、自業自得な気がする。

 

 イルミは先程のデッドボールというかキルボールで腫れた頬をさすりながら、珍しく笑顔を見せてナチュラルにマチを煽っていた。

 

「うはあ……、ショートはやっぱり動ける奴に限るなあ……」

 

「……ワタシだてあれくらいできるよ」

 

 ウボォーギンがイルミの華麗なプレイを見て思わずそう溢した。

 

 隣で見ていたジョネス軍の遊撃手であるフェイタンが、対抗意識を燃やして悔しそうに呟いた。

 

 その後続いた7番のシズクは、バット代わりにした掃除機のデメちゃんの吸引を使って、自分に有利な位置にボールを吸い寄せようとしたが、全体をまるごとオーラであるゴムで包んだヒソカのボールを吸い取ることができず、敢えなく三振に終わった。

 

 ジョネスチームに暗い雰囲気が満ちた。

 

 これでツーアウト。下位打線ではやはり無理か。

 

 そう思われたその時だった。

 

 

 

 

 

「ギョ〜!!」

 

 ガオン!!

 

 

 

 

 

 ヒソカがボールを投げた瞬間、ちょっと聞いたことが無い感じの音を立てて、ストライクゾーンが空間ごと削り取られた。

 

 すぐ近くのネテロが生まれて初めて見る現象に瞠目した。

 

(ノブの窓を開く者(スクリーム)と同じか!? いや、これは"存在しない空間"が、確かにここに存在しておるのう)

 

 何とも矛盾したことを考えるネテロの体が、ボールが、ヒソカが、世界全体が、削り取られた空間を穴埋めする為に吸い寄せられた。

 

 8番のデメちゃんマーク2は、キラリと目を輝かせて、意図的に吸い寄せた位置にバットを振り抜いた。

 

「ギョッ!!」

 

 バットから豪快な音が響いて、打球はレフトのシャルナークの頭を超えるかという所まで派手に飛んで行った。

 

「「「うおおおぉぉぉ!!」」」

 

 テンションが下がっていた味方のベンチから一転して歓声が上がる。

 

 デメちゃんマーク2は、そのままとんでもない身体能力と空間削除による吸い込みを駆使して、超速で塁を回った。

 

 シャルナークが打球を必死で追い掛ける。

 

「これは……ノーバンで処理しなきゃ回られちゃうか!?」

 

 あの半魚人の速さは尋常ではない。ランニングホームランも十分考えられる。

 

 落下地点に入るのが間に合わないことを察したシャルナークが、意を決してその場で大きく跳んだ。

 

 たとえ操作系であろうとも一流の念能力者であれば、垂直跳び20m代は堅い。そこまで跳べないシングルハンターもいるにはいるが……。

 

「捕れるぞシャル!!」

 

「捕れなくても何とかこっちに弾け!!」

 

 三塁のクロロと全力でケアに走る右翼のフランクリンが、それぞれ叫んだ。

 

 そこでまた状況が動き出す。

 

 ベンチのシズクと走る半魚人。2台のデメちゃんがそれぞれボールとシャルナークの服を吸い取り始めた。

 

「うわあっ!?」

 

 空中でバランスを崩したシャルナークがボールの行方を見失う。

 

「邪魔……すんじゃねえ!!」

 

 フランクリンが走りながら、シズクがいるベンチに向けてマシンガンを乱射した。滅茶苦茶である。

 

「おっと危ねえ!!」

 

「邪魔してんのはどっちだよ」

 

 ウボォーギンやジョネスを始めとした盾役がマシンガンの弾を防いだ。シズクによる吸引が継続される。

 

 

 

 

 

【百式観音 伍乃掌】

 

 

 

 

 

 なりふり構わないネテロが神速で相手のベンチを吹き飛ばした。滅茶苦茶である。シズクによる吸引が阻止される。

 

 だが時既に遅し。シャルナークとボールが回転しながら地面に落下した。

 

 デメちゃんマーク2が三塁を回る。

 

 一番刺せる可能性があるフランクリンがボールを拾った。

 

(これは間に合わねえか!?)

 

 いくら肩に自信があるフランクリンでも厳しそうなタイミングだった。

 

 その時、フランクリンの目の前にホームまで一直線に続くオーラの道が現れた。

 

「放出系、強化系能力。"左翼からホームまでの間に野球ボールを加速させる線路を生み出す"」

 

 ジンがフランクリンの脳内に、別の能力でテレパシーを飛ばしながらそう呟いた。

 

「今回は何とか千切られずに残せたよ♢ そろそろ補修完了♡」

 

 ヒソカの右手からボールまでの間にも、限界ギリギリまで伸び切ったゴムが張られていた。

 

 フランクリンがジンとヒソカの意図を察して、全力でボールをホームに向かって投擲する。

 

「バックホーム!!」

 

 ジンの能力とゴムの伸縮により加速されたボールは、ホームベースとマウンドの中間辺りに移動したヒソカの手元に引き寄せられて、そのまま誰を経由することもなく、ネテロに向かって投げ付けられた。

 

 そして、信じられない程の速度と威力を持ったボールを、武闘家の頂点であるネテロの目は確かに捉えていた。

 

 足と手の"凝"のバランスを高速で整えて何とか捕球する。

 

「ぬうっ!! 痛ったいわアホが!!」

 

 ネテロは手の痛みに文句を言いながらも、迫り来る相手を真剣な表情で見据える。

 

 既に目と鼻の先にまで迫って来ていたデメちゃんマーク2と、ホームベースを守るネテロが、そのまま激しく交錯した。

 

 

 

 

 

「アウトー!!」

 

 

 

 

 

 主審のレイザーが握り拳を力強く掲げながら高らかに宣言した。

 

 敵味方関係なく場内に盛大な歓声が上がる。

 

 ベンチに退がったデメちゃんマーク2だけが落ち込んでいたが、主人のシズクに頭を撫でられてすぐに元気を取り戻した。

 

 しかし嫉妬した掃除機に、「調子乗んな」とドスの利いたテレパシーで釘を刺されて、また落ち込み始めた。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 2回裏、ネテロチームの攻撃。5番のジンが意気揚々と打席に立った。

 

 案の定、【念遊白書(プレイステーション)】によって攻撃用の新たな能力を作製して、この場に臨んでいる。

 

「具現化系、操作系、強化系の複合能力。自動追尾ぶっ飛びバットだ!!」

 

「レイザー!! あれ規則違反だろ!!」

 

「ほぼコルクじゃねえか!!」

 

「「ブーブー!!」」

 

 3塁手のジョネスからの抗議を皮切りに、守備陣からジンに向けて口々にブーイングが投げ掛けられた。

 

 いや、よく見ると味方ベンチからもブーイングされている。

 

 ジンってある意味人気者だね。

 

「ジンさ〜ん、頑張って下さい。ネテロ会長は"ゲッツー"でしたからね。ボテボテのゴロで"ゲッツー"でしたからね」

 

「何で2回言うんじゃ!!」

 

 そんな中でもパリストンは健気にジンを応援していた。しかし実態はネテロをからかって遊びたいだけである。

 

 戦犯ゲッツージジイは長い付き合いなのでその意図を瞬時に見抜くと、苦虫を噛み潰したような顔をしてツッコミを入れた。

 

 やらかしたのは事実なのであまり強くは言えないのが辛い所だ。

 

「シズクは掃除機で打ってたじゃねえか?」

 

「……だな」

 

 ジンから飛び出た正論に対して、裁定に迷っていたレイザーが渋々、具現化されたバットの使用を認めた。

 

「自動追尾ってのはどこまで追いかけられるんだい?」

 

 マチは不敵な笑みを浮かべながらそう呟くと、大きく振りかぶってから最初の球を投げ込んだ。

 

 初球はジンの手前で突然鋭く変化して、ストライクゾーンを大きく外れて行った。

 

「うおぉっ!?」

 

 明らかなボール球に対しても自動追尾が働いてしまい、ジンの体が無理矢理引っ張られる。

 

 ボールは糸による操作によってブーメランのように一回転すると、そのままあり得ない挙動でキャッチャーミットに吸い込まれて行った。

 

 ジンはボールとそれを無理に追尾しようとするバットに引っ張られて一回転してずっこけた。

 

「ストライク!!」

 

「「「ぎゃははははは!!」」」

 

 あまりのマヌケな動きに会場が爆笑に包まれた。味方のネテロとかクロロまで指を差してゲラゲラ笑っている。

 

 ジンは立ち上がって土埃を払うと悔しそうに溢した。

 

「ちくしょう……初球で弱点を見破られちまうとは。このバット、ボール球にも絶対手を出しちまうんだよな」

 

「それで、どうするんだい? 対策しないならまた回してやるよ」

 

 マチは内心で爆笑していたが、それを表には出さず真剣な面持ちで問い掛けた。

 

「追尾を緩くしてオンオフ式にすりゃあいい。今そうした」

 

「……ふざけたおっさんだね……」

 

 マチは凄まじ過ぎるその能力に対して呆れたように言った。大きくワインドアップしながら続ける。

 

「でもそれじゃあ今度は打てないんじゃないかい?」

 

 2球目が投じられた。

 

 

 

 

 

「いや、ちゃんと見えてるぜ?」

 

 

 

 

 

 ジンは素でマチの球筋を見切ると、追尾による僅かなサポートを受けながらボールを豪快にかっ飛ばして、そのまま打球をスタンドに放り込んだ。

 

 これがジン=フリークス。

 

 能力とか関係なく何をやらせても真性の天才である。

 

 味方のベンチからの歓声を受けながら、ジンがゆっくりとベースを回る。

 

 その時、マウンドで呆然とするマチに向けてジョネスが声を掛けた。

 

「マチ、オレと交代だ。その投げ方は結構集中力使うだろ?」

 

「……いや、あたしはまだ……」

 

 マチは悔しかったので降板を渋ったが、ジョネスの顔を見た瞬間、全てを察して、大人しく3塁に向かってジョネスとバトンタッチした。

 

 ジョネスが満面の笑みを浮かべて興奮していたからだ。

 

 こうなるとジョネスの意思はテコでも動かない。

 

「シズクはウボォーギンと交代だ!! 遊びでも勝った方が楽しいよなあ?」

 

 ジョネスがそう言って笑うと、相手チームに極限の緊張が走った。

 

 戻って来たジンは投手となったジョネスを見て、新たな展開にワクワクしている。

 

 ジョネスはマウンドに立つと6番のフランクリンを見据えて、最近やっと習得した新たな力を行使する。

 

 いや、正しくは新たな"使い方"か。

 

 ジョネスからとんでもない豪球が放たれると思っていたフランクリンは、投じられたスローボールに内心で首を傾げた。

 

(舐めてんのか? これならオレだって余裕で場外だ)

 

 フランクリンが遅過ぎるボールに対してフルスイングする。

 

 

 

 

 

 ボールの余りの"重さ"に負けて、バットが半ばからへし折れた。

 

 

 

 

 

 フランクリンはビリビリと痺れる手を訝しげに見つめてから呟いた。

 

「……ジョネス、あんたまさか【背負い妖(オバリヨン)】を……」

 

「ああ、解釈を広げさせて貰ったぜ」

 

 ジョネスは自分の体重を強化するだけだった"発"を、他の物体に対して行使した。周りの者からは完成されていると思われていた彼もまた成長し続けている。

 

 ゲーム内での試合(ゲーム)は新たな段階に入った。

 

 その後、ジョネスの重い球をまともにヒットにできるのは、ネテロチームではネテロとジンくらいだった。

 

 一方で3回からマウンドに上がったジンが毎回多種多様な"発"を使って投球し、ジョネスチームのバットにはいよいよ掠りもしなくなり、試合は完全に膠着状態に陥った。

 

 

 

 

 

 そんな究極の泥試合が7回に入った所で異変が起きる。

 

 

 

 

 

 幻影旅団とジョネスの携帯が一斉に鳴り出した。

 

 通常の着信音とは違う不協和音だ。

 

「クロロ、携帯鳴ってるぞ?」

 

「……ジンさん、すみません。オプション条項を発動させて頂きます」

 

「ああん? 試合中だってのにゲームから離れんのか」

 

「はい」

 

 ジンの問いにクロロが冷たい声で即答した。真正面からクロロと目を合わせたジンは、その目を見て思わず冷や汗をかく。

 

 こんな"色"を出せる人間が本当にカタギなのか?

 

 いや、正確には現在でもカタギとは言えないが、それにしても自分が今まで捕らえた凶悪犯と比べても段違いの凄みがある。

 

 

 

 

 

(何か道を違えていれば、こいつは……)

 

 

 

 

 

 考え込むジンに相手チームのベンチから一人の男が近付いて来た。

 

「ジン、オプションを頼む。緊急事態だ」

 

「……分かった。行ってこいジョネス」

 

 

 

 

 

 道を違えたらどうなっていたのか。神か、神のような視点の者のみが知る。

 

 

 

 

 

 12月24日 朝

 

 

 

 

 

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 12月24日 朝

 

 7人になった十人囃子のメンバーがクルタ族の里に突入した。

 

 ドルチェは里に向かう道中で、長い顎髭をした例の怪物のような男と遭遇しなかったことに安堵した。

 

「……前回あいつと遭遇したのはこの辺りだったわね。これは上手く行ったかしら……」

 

「ああん? 何か言ったか団長」

 

「何でもないわ」

 

 スネオの問いに短く答えたドルチェに対して、レンザーが心配そうに声を掛けた。

 

「……団長、朝から顔色が悪いわよ? というか最近ずっと。何か問題でもあるの?」

 

「……問題はないはずよ、問題は……。……じゃなきゃ……」

 

 土気色の顔をしたドルチェはブツブツと呟いた。レンザーはそれを訝しげな様子で見つめたが、それ以上は何も言わずに仕事に集中し始めた。

 

 しかし、クルタ族の隠れ里を見下ろす丘に辿り着いた所で、今までに無かった展開が発生する。

 

「……団長、オレ達を尾行して来てる奴がいる……」

 

 ドルチェは心臓を鷲掴みにされたような気分になった。もしもあの男だったら今回の任務も失敗だ。それは自身の死よりも恐ろしい結末を意味している。

 

「全員で迎え撃つわよ」

 

「えぇー!? 何でそんなに弱腰なの? 半分ずつに分かれたらいいじゃん。さっさと済ませたいからオレは勝手に行くよ」

 

「同感だ」

 

「右に同じ」

 

「……」

 

「……好きにしなさい」

 

 所詮は出会って間もない寄せ集め。メンバーの内3人はドルチェの指示を無視して里の襲撃に向かってしまった。

 

 どうせ尾行して来ているのがあの男だったら、全員で迎え撃っても意味がない。ドルチェは引き止めることを早々に諦めて、残ったメンバーと背後の森の中を警戒した。

 

 

 

 

 

 最初に現れたのは笛を持った小柄な女と、体に無数の穴が空いた男だ。

 

「まさか盗賊がまだ残っていたとはね!! 死んだ3人はおとりかしら!?」

 

「仲間の命さえ捨て駒か!! クズ共が、許さん……!!」

 

 見るからに怒りに燃える二人の後ろから更に二人の人影が現れる。

 

 

 

 

 

「サラサ、すぐに"荷物"を広げて!!」

 

「うん!! 召喚だぜ!!」

 

 

 

 

 

 ドルチェは土気色だった顔が、にわかに穏やかになって独り安心したように呟いた。

 

「……あなた達だったのね……良かった……」

 

 無事で良かった。

 

 その言葉は相手の戦力を指したものでは無かったが、それを知っているのはこの世界では彼女だけである。

 

 森の中から現れたのは知り合いだった。

 

 いや、この世界線だとこっちが一方的に知っているだけか。

 

 

 

 

 

 現れた少女が担いでいた大きなバッグから荷物を取り出すと、瞬時にそれらを地面に投げて並べる。

 

 そこにあったのは5()()()()()()()だった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

離脱(リーブ)!! 使用(オン)!!」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 ゲーム機のそばに突然現れた男を見て、ドルチェは涙を流しながら、自分にだけ聞こえる声で、自分にしか分からないことを呟いた。

 

 

 

 

 

「……ジョネス……あなたが私を裁いてくれるのね……。最高の誕生日プレゼントだわ……」

 

 

 

 

 

 "胡蝶の夢(クロックワークエフェクト)"。

 

 最も欲しかったものを再び手に入れてしまった時、この能力は失われる。

 

 二度と会えないと思っていた最愛の人が目の前に現れた。

 

 

 

 

 

「初めましてだな。テメェが緋の目を狙ってる盗賊か?」

 

 

 

 

 

 狼男が初対面の女に対して、冷たい表情で問い掛ける。

 

 彼に続くように、ゲーム機から次々と新たな人影が現れた。

 

 

 

 

 





ボノさんおつよい、タイマンだとね。
オリ必殺技の元ネタは月光ソナタとデーモンコアくんです。

シルバさんを情報操作でやり過ごしたぜ。勝ったなガハハ!!

やきうはほぼ全打席回ったんで、大幅カットしときます。
シャルとパリ? バットへし折られたよ。
見切り発車で書き始めたんですが、こんなに時間かかるスポーツだったんですね。真面目に全部書いてたら10話くらいかかるやん。

エマージェンシーコールだ!!
これが鳴る時は仲間の危機!!
ミルキ作。

クロロの深層心理は激重で激ヤバ。
何かあった未来では一体どんな男になるんだ……!!

伏線回収ギモヂイイイ!!
里に入る不審者を追うSCP財団。サラサの荷物。12月24日。ドルチェの最も大切なもの。
バレバレか……。

何かを変えたら誰かに皺寄せが行くんだよ。運命とはそういうものだ。

幻影旅団参上!!
パクちゃんだけ地元で書類仕事中である。かわいそう。

グリードアイランド&クルタ族編、そろそろクライマックスですね。
立場によって目まぐるしく変わるメリーバットエンド。
たまんねえな(ゲス顔)。
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