ようこそ幻の6人目がいる教室へ   作:みたらし団子と御紅茶

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皆さんどうも今晩日は。
みたらし団子に御紅茶は合わないと思っているものです。
2話目を投稿してみました。
今回は帝光編に少し出てきた人物が登場します。
他にもよう実キャラとも仲良くなったりと、バスケ編の話が少し進みます。
黒バスとよう実の要素が混在した世界なので、黒バスのお店があったりもします。
バスケ編については黒バス準拠で、よう実編についてはよう実準拠で進めていくので、話のテンポが突然早くなったり、バスケと試験の両立で色々ハードモードになったりもします。
そこを許してくれる方は良ければ読んでみてください。


ようこそ男子バスケットボール部へ

教室を出て、3階の廊下を2人で歩きます。

 

 

「職員室は何階でしたっけ?」

 

 

僕が桃井さんに問掛けると、彼女はすぐに口を開き僕の問に答えます。

 

 

「えっとね、確か1階だったはずだよ。下駄箱から見えるみたいだから、行けば分かると思う。」

 

 

桃井さんは携帯端末の地図アプリを見ずとも、既に職員室の場所を知っているようです。流石、情報収集のプロフェッショナルなだけありますね。

 

 

「あ!」

 

 

1階に着いた時、桃井さんが下駄箱の近くを見て指さしました。彼女が見つめる先には2人の男子生徒がおり、なにやら話しています。彼女の知り合いでしょうか?

 

 

「知り合いですか?桃井さん。」

 

 

「ううん、私が一方的に知っているだけ。髪の長い男子生徒は、西東京市の水上中の小宮叶吾君。ポジションはSF。中学2年生の時にレギュラーに選出された選手だよ。その隣の生徒は、近藤玲音君。彼は墨田区の東中のバスケ部でPFをしていたみたい。中学2年生の全中の予選で帝光と当たったけど、残念ながら虹村先輩と青峰君に翻弄されてベンチに下げられていた人だね。」

 

 

「詳しいですね、桃井さん。」

 

 

「えへへ……バスケの情報収集は得意だからね!」

 

 

桃井さんは少し恥ずかしそうにしながらも、とても誇らしげに微笑んでくれました。彼女のこの笑顔を見るだけで、僕はとても幸せな気持ちになりますね。この笑顔を守る為、いつか帝光中の皆と楽しくバスケをする為、必ず全国制覇をしなければいけません。

 

 

「水上中も東中もバスケの中堅校だけど、東中の練習はスタミナ強化のトレーニングが多いって聞いてるから、近藤君は体力が人より多めかもしれないね。」

 

 

スタミナが多いというのは、立派な長所です。バスケは体力も必要なスポーツですから、長時間走れるというのは大きな強みになります。

 

 

「なるほど。これからバスケ部に入るのであれば、彼はとても強い戦力になるかもしれませんね。」

 

 

「そうだね!……テツ君の役割や特性はミニゲームをしないと分かりにくいと思うから、もしミニゲームするのなら、先に同じチームの人には自分の特性や苦手な事を伝えておいた方が良いかも。」

 

 

確かに桃井さんの言う通りかもしれません。出来ない事は出来ないと、先に言っておいた方がフォローもしやすくなるはずです。流石は桃井さんですね。適切なアドバイスです。

 

 

「それもそうですね。アドバイス、ありがとうございます。」

 

 

それから僕達は職員室に向かい部活動申請を行いました。

 

 

「失礼します。」

 

 

僕と桃井さんが職員室に入ると、入口の近くの席で事務作業をしていた星之宮先生と目が合った。

 

 

「あら、桃井さんじゃない。どうしたの?」

 

 

先生は桃井さんを見て近くにやってきましたが、僕の存在は目に入っていないようです。

 

 

「あの」

 

 

「もしかして、体調が悪くなったとか?それとも、分からない事でもある?」

 

 

「あの」

 

 

なかなか気付いて貰えません。僕の影の薄さに慣れるまで、この状況が続くのだと思うと、少し悲しくなってしまいます。ですが、僕は自動ドアにさえ認知されない時があるので、これも仕方ない事なのでしょう。

 

 

「すみません、先生。私の横に黒子テツヤ君もいます。」

 

 

「え……って、ええ?!黒子君、ごめんね。気づかなかったみたい。え、いつから居たの?」

 

 

「最初から居ました。」

 

 

僕がそう言うと、星之宮先生は少し申し訳なさそうにしながら謝罪をしてきました。

 

 

「ご、ごめんね!影が薄すぎて全然気付かなかったよ!」

 

 

「……いえ、大丈夫です。慣れていますから。それより先生、バスケ部への入部申請をお願いしたいのですが、良いですか?」

 

 

「あら、もう決めたの?……って、2人は帝光中のバスケ部にいたんだもんね。高校でもバスケを続けるわよね。ちょっと待っててね!」

 

 

そう言って星之宮先生は職員室の奥の方に歩いていき、2枚の紙を持って戻ってきました。その紙には『男子バスケ部入部申請書』と書かれており、星之宮先生はその内の1枚を僕に手渡しました。

 

 

「はい、これが入部申請書よ。バスケ部は午後2時から第一体育館で部活動が行われるわ。私から顧問の先生に話を通しておくから、遅れないようにね。その紙は空欄を埋めて、部活の時に顧問の先生に渡して。」

 

 

「分かりました。」

 

 

「ありがとうございます!星之宮先生!」

 

 

僕は受け取った紙に目を通します。そこには氏名やクラス等の個人情報を書く欄があり、その下には顧問の名前とハンコを押すスペースがありました。

 

 

「とりあえず、まだ部活まで3時間半くらいあるし、どこかでお昼を食べない?テツ君。」

 

 

「そうですね。まだ校内も把握出来ていませんし、一度落ち着いてお昼にしましょうか。」

 

 

僕と桃井さんは星之宮先生にお礼を言い職員室を後にしましたが、その際に背後から星之宮先生の声が飛んできました。

 

 

「あ!黒子君!」

 

 

「はい?」

 

 

僕は足を止めて振り返ります。するとそこには星之宮先生がアルコール液の入ったボトルを持って、立っていました。

 

 

「悪いんだけど、これをクラスに置いてきてくれない?ウチのクラスのアルコール液が減っていたから、補充しておいたの。」

 

 

そう言って星之宮先生はアルコール消毒液を僕に手渡しました。

 

 

「ごめんね、今から職員会議なんだ。お願いしても良い?」

 

 

お願いをする前に渡している時点で、僕に拒否権は無いようです。少し呆れながら、僕は先生の頼みを聞く事にしました。

 

 

「……分かりました。」

 

 

「本当にごめんね!お礼にこれあげるわ。ペアチケットだから、2人でランチのコースが食べられるはずよ。良かったら使って。」

 

 

そう言って渡されたのは、ロシア料理のコースのペアチケットでした。これはランチタイム専用で、どうやら無料で食べる事が出来るようです。

 

 

「ありがとうございます。有難く使わせて頂きます。」

 

 

「うんうん、2人でデートでもして楽しんでね。」

 

 

先生がそう言うと、桃井さんは顔を少し赤く染めていました。体調でも悪いのでしょうか。

 

 

「大丈夫ですか?桃井さん。」

 

 

「ふえっ?!う、うん!大丈夫だよ。そ、それより、その……お昼はロシア料理のお店にい、行ってみない?」

 

 

桃井さんは少し慌てた様子で、ロシア料理のお店に誘ってくれました。僕は特に断る理由もなかったので、彼女の言葉に同意し、無料チケットでロシア料理を食べに行く事にしました。

 

 

「分かりました。楽しみですね、ロシア料理。」

 

 

「うん!私コース料理って初めてだから、すっごく楽しみ。ありがとう、テツ君!」

 

 

 

その後、僕と桃井さんは教室にアルコール消毒の入ったボトルを置いてから、一度下駄箱まで戻り靴を履き替えて学校を出ました。そして ショッピングモールの方に向かって歩き、地図アプリを見ながらロシア料理の店に向かいました。

 

 

その途中、目の前から大きな音がしました。

 

 

「わあっ、なんの音?」

 

 

桃井さんがビクリと肩を揺らして、驚きの声を上げます。僕も態度には出ていませんが、突然の事に内心少し驚いています。

 

 

「行ってみましょう。」

 

 

角を曲がって音の正体を確認すると、そこには1人の女性が床に蹲って床に散乱した物を慌てて拾っていました。どうやら、荷物を落としてしまったようです。

 

 

「大丈夫ですか?」

 

 

「大丈夫?私も手伝うよ。」

 

 

「あ、あり、がとうございます。」

 

 

僕と桃井さんは床に散乱している物を広い、女性の持つビニール袋に入れていきます。産卵しているものは、カップラーメンやペットボトルの食料で、容器の破損が無いか少し心配です。全て拾い終えると、女性は頭を下げてお礼を言いました。

 

 

「あ、ありがとうございます。とても助かりました。」

 

 

「ううん、気にしないで。それより何があったの?凄く大きな音が聞こえたんだけど。」

 

 

「大丈夫ですか?」

 

 

僕達が女性に事情を聞こうとすると、女性は話し始めました。

 

 

「実は、さっき自転車に乗っていた男子生徒が角を曲がる前にブレーキをかけなかったからか、私の方にぶつかってきたんです。私は間一髪避けましたが、その時このビニールを離してしまって。地面に中身が散らばってしまったんです。」

 

 

「そうだったんですね。その人は負傷者を出していないとはいえ、そのまま逃げてしまうなんて無責任です。特徴は覚えていませんか?」

 

 

「そうだね!許せないよ。せめて謝るべきだよね。それに怪我をしていたかもしれないのに……」

 

 

桃井さんは少し怒った様子で、女性を心配そうに見つめています。ですが彼女は困ったように微笑みながら首を横に振りました。

 

 

「いえ、大丈夫です。怪我はしていませんから。」

 

 

「うーん、そっか。あ、私1年Bクラスの桃井さつきです。隣は同じクラスで私の彼氏の黒子テツヤ君。」

 

 

「いえ、違います。彼女は僕の大切な友人です。」

 

 

僕がそう訂正すると、桃井さんは頬を膨らませてそっぽを向いてしまいました。しかし、これは事実なので訂正しない訳にはいきません。

 

 

「わ、私は1年Aクラスの山村美紀です。よ、宜しくお願いします。」

 

 

僕達が自己紹介をすると、山村さんも慌てて名乗りました。

 

 

「宜しくね!山村さん。良かったら、美紀ちゃんって呼んでも良いかな?これから仲良くしてくれると嬉しいな。私の事はさつきって呼んでね!」

 

 

「は、はい。私も、さつきちゃんって呼びせて貰いますね。」

 

 

桃井さんは明るくフレンドリーな性格なので、山村さんと直ぐに距離を縮めてしまいます。

 

 

「良かったら連絡先を交換しようよ!ほら、テツ君も!」

 

 

「山村さんさえ良ければ連絡先を交換しても良いですか?これから宜しくお願いします。」

 

 

そう言うと、山村さんは小さくコクリと頷き、携帯端末をポケットから取り出しました。そしてチャットアプリで互いを友達登録し、連絡先を交換します。

 

 

「じゃあ、私はそろそろ寮に戻ります。また一緒にお話が出来たら、う、嬉しいです。」

 

 

「うん!またね、美紀ちゃん!」

 

 

「では、お気を付けて。」

 

 

山村さんは僕達に手を振りながら去っていきました。その背中が見えなくなった後、僕と桃井さんは再びロシア料理の店に向かう事にしました。

 

 

「いらっしゃいませ。2名様ですか?」

 

 

「はい、2人です。」

 

 

「かしこまりました。では奥の席へ御案内致します。こちらへどうぞ。」

 

 

店内に入ると、すぐに店員に席へと案内されました。中にはマトリョーシカや美術品後飾られており、まるで王侯貴族にでもなったかのような気分を味わう事が出来ます。

 

 

「凄く素敵なお店だね!テツ君。」

 

 

「そうですね。」

 

 

僕達はすぐにランチコースを頼みました。

それから数分後、サラダ、ボルシチ、ピロシキ、つぼ焼ききのこ、牛ヒレステーキ、ロシアンパン、と言う順に運ばれてきました。サラダはフレッシュでシャキシャキとしていて、ボルシチはとてもクリーミーで味わい深く、ピロシキもつぼ焼ききのこのあたたかくて美味しいです。

 

 

「凄く美味しいね。」

 

 

「そうですね。とても良い経験が出来ました。」

 

 

 

ちらりと見たメニュー表には、ランチコースの値段が書かれていました。僕達ご今頼んだコースは5680ポイントで、価格としては安めなのでしょうが、学生が何度も支払える額ではありません。

 

 

「今度来る時は、ご褒美としてくるのが良さそうですね。また来ましょう、桃井さん。」

 

 

「ま、また?!も、勿論だよ!また来ようね!」

 

 

桃井さんは何故か焦った様子でそう言いました。何かおかしな事を言ったのでしょうか。僕にはよく分かりませんが、彼女が喜んでくれているのなら良かったです。

 

 

その後も僕達はロシア料理に舌鼓を打ちながら食事を進めていきました。

 

 

そしてコースも終盤に差し掛かった時、1人の男性が店内に入ってきました。男性は店員と何かを話した後、真っ直ぐこちらに歩いてきます。その男性の顔に見覚えがあった僕は、彼が誰なのか直ぐに分かりました。

 

 

「新入生が1人でこのランクの店に来るとは驚きだ。」

 

 

その人物は、入学式の在校生代表として壇上に立っていた堀北学生徒会長でした。

 

 

「貴方は、堀北生徒会長ですね?」

 

 

 

そう言った瞬間、堀北会長は驚いた様に僕の方へ向き直った。

 

 

「如何にも。俺はこの学校の生徒会長を務めている、堀北学だ。驚いた、こんなに影が薄い人間がいるとはな。」

 

 

「驚かせてしまってすみません。僕は1年Bクラスの黒子テツヤです。そして彼女は僕の友人の桃井さつきさんです。宜しくお願いします。」

 

 

僕がそう紹介すると、桃井さんは軽く会釈をしましたが、何故か少し不満そうな表情をしています。

 

 

「そうか、覚えておこう。しかし黒子か……面白い苗字をしているな。」

 

 

「よく言われます。」

 

 

堀北会長は僕の隣の席に座り、とある質問を投げ掛けてきました。

 

 

「黒子、桃井。お前達はこの学校に入ったばかりだ。なにか質問があれば答えよう。疑問に思っている事や気になる事は無いか?」

 

 

堀北会長は生徒会長としての責務を全うしている様です。その姿勢には感心させられます。せっかくですから、気になっている事を質問させて貰いましょう。

 

 

「この学校では、クラス間の生徒の質が異なっているように感じます。クラス分けの仕組みについて、ご存知であれば教えて頂けませんか?」

 

 

「ふむ、なるほどな。そこに目を付けたか。クラスの組み分けの仕組みについて、俺達生徒は知らされていない。残念だが、その質問には答えられないんだ。しかし、いずれお前もクラス分けについて考察が出来るようになるだろう。」

 

 

「そうですか。ありがとうございます。」

 

 

どうやら、堀北生徒会長でもその仕組みについては詳しく知らない様です。ですが、いずれ分かるようになるとの事なので気長に待つ事にしましょう。

 

 

「あの、気になっている事があります。」

 

 

少ししてから、桃井さんが堀北会長の目を真っ直ぐ見て話し始めました。

 

 

「この学校の防犯カメラの数が異常です。私の通っていた帝光中も良家の子息子女が多く通う学校だったので、防犯カメラの数はかなり多い方でした。しかし、この学校はその数が異常です。教室には四隅に、廊下には教室の前の廊下の天井に1台ずつと両端に1台ずつ、玄関には各棚の前に1台ずつとワンフロアだけでも30個以上の防犯カメラが設置されています。ここまでする理由が分かりません。」

 

 

確かに、彼女の言う通りこの学校には防犯カメラが沢山設置されています。何故ここまで多くのカメラが設置されているのか気になりますね。

 

 

「防犯カメラか。確かに、この学校には沢山設置されているな。」

 

 

堀北会長は桃井さんの質問に対して特に驚いた様子も見せずに淡々と答えました。まるで、その事について聞かれる事を予測していたようです。

 

 

「この学校の理事長の方針でな。恐らくだが、よく監視しなければいけない理由があるんだろう。この学校は国に運営されている名門校だ。不祥事が起きる前に対処する為に設置されているんだろう。」

 

 

「そうですか。私の考えすぎ、なのかもしれませんね。」

 

 

桃井さんはそう言い納得したようですが、僕はどうも腑に落ちませんでした。堀北会長の言い方では、まるで生徒を監視しているかのようじゃありませんか。

 

 

「お待たせ致しました。食後のロシアンティーでございます。今回、紅茶の中にはストロベリージャムが入っています。どうぞ、お楽しみください。」

 

 

考えを巡らせていると、食後のロシアンティーが到着しました。僕と桃井さんはジャムの入った紅茶を飲むのは初めてなので、どんな味がするのかとワクワクしながらカップに口を付けます。1口飲むと、苺の甘みと優しい紅茶の上品な香りがふわりと広がります。

 

 

「お、美味しいです。」

 

 

「うん、すごく美味しい。今度家でも作ってみようかな。」

 

 

桃井さんは嬉しそうに笑い、ロシアンティーを楽しんでいるようです。僕も今度家でロシアンティーを作ってみたいと思いました。

 

 

「では、そろそろ行きましょうか。お先に失礼します、堀北会長。」

 

 

「今日は質問に答えて頂きありがとうございました。」

 

 

僕と桃井さんは堀北会長にお礼を言います。

 

 

「いや、気にするな。俺にとっても有意義な時間となった。もし気が向けば、生徒会に入って欲しい。もし入ってくれるのであれば、何でも1つ願いを聞いてやろう。」

 

 

願いを叶えてくれるという点、生徒会長直々のお誘いという点から少し心が揺れてしまいます。しかし、この学校では部活動との掛け持ちは原則禁止です。つまり、僕と桃井さんは生徒会に入る事は出来ません。

 

 

「残念ですが、僕と桃井さんはバスケ部に入部する予定なので、生徒会に入る事は出来ません。」

 

 

「折角のお誘いですが、お断りさせて頂きます。」

 

 

僕と桃井さんが生徒会に入る事が出来ない事を伝えると、堀北会長は少し残念そうな表情を見せました。

 

 

「そうか、バスケ部か。なるほどな……確かにそれなら仕方がない。また気が向いたらいつでも来てくれ。歓迎しよう。」

 

 

堀北会長に別れを告げ、僕と桃井さんは会計を済ませて店を出ました。

 

 

「テツ君、この後は少しスーパーによって日用品を買っていかない?寮には最低限の家具しか置かれていないみたいだし。」

 

 

「そうですね。そうしましょうか。」

 

 

それから僕達はスーパーに向かいました。中を歩いていると、日曜雑貨からフレッシュな食材まで様々な物が売られていました。

 

 

「ティッシュペーパーやトイレットペーパーはこっちみたいですね。」

 

 

「結構安いね……ってあれ、これって!」

 

 

「どうしたんですか?桃井さん。」

 

 

桃井さんが見つめている方へ視線を向けると、そこには大きく【無料】と書かれた紙が貼られていました。

 

 

「無料商品、のようですね?」

 

 

僕がそう呟くと、桃井さんは嬉しそうに微笑みました。

 

 

「トイレットペーパー、ティッシュペーパー、シャンプーにボディソープ、色々あるみたいだね。」

 

 

「困窮した者の救済措置でしょうか?」

 

 

「そうだと思うよ!結構陳列されている量が減っているみたいだし、私達も無駄遣いしないようにした方が良さそうだね。」

 

 

どうやらこのスーパーは1人につき一月5点までの商品を無料で受け取る事が出来るようです。無料商品のコーナーにはティッシュペーパーやトイレットペーパを始め、洗剤やシャンプーなど日用品が沢山置かれていました。

 

 

僕はその中からティッシュペーパーとトイレットペーパー、シャンプーとボディソープを手に取ります。すると、その隣にいた桃井さんもトイレットペーパーとティッシュペーパーを手に取り、カゴに入れていきます。

それから僕達は食品売り場へ向かい、3日分の食材と3キロのお米を買ってレジへ持っていきました。

 

 

「こちら当店のポイントカードになります。今回のお会計では16ポイントが付与されます。合計、3280ポイントです。こちらに学生証カードをかざしてください。」

 

 

「はい。」

 

 

言われた通りカードをスキャナーにかざすと、一瞬で会計が終わりました。僕の残高は、96720ポイントに減りましたが、まだまだ生活には余裕があります。この学校は、生徒に自己管理を覚えさせる目的で、毎月ポイントを支給してくれているのかもしれません。

 

 

「じゃあ、一度荷物を寮に置いてきましょう。練習は2時からですし1時半に療の前で落ち合いましょうか。」

 

 

「うん、そうだね!」

 

 

僕と桃井さんは寮の自室に戻り、荷物を整理したり休憩を取ったりして過ごしました。僕は部屋の片付けと購入してきた物の整理を行って過ごしました。

 

 

その後、練習着に着替え、スポドリとタオル、着替えを鞄に詰めて寮を出ました。寮を出るとそこには桃井さんと山村さんが話し込んでいました。

 

 

「お待たせしました。山村さん、さっきぶりですね。」

 

 

「あ、こ、こんにちは黒子君。」

 

 

山村さんは少し俯きながらも挨拶を返してくれました。

 

 

「聞いて!テツ君!美紀ちゃんもマネージャーに興味があるみたいなんだ。」

 

 

「あ、さ、さつきちゃん!」

 

 

桃井さんの言葉に山村さんは恥ずかしそうに顔を赤く染めましたが、訂正の言葉は無く真実の様です。

 

 

「それは本当ですか?山村さん。」

 

 

「は、はい。その、理由らしいものがあるわけじゃないんですけど、せっかくお友達になったんだから、仲の良い子と同じ部活に入れたら嬉しいと思って……」

 

 

彼女の声は話す度に小さくなっていきますが、要約すると友達である桃井さんと同じ部活に入りたい、という事らしいです。桃井さんも嬉しそうですし、一度見学をしてみる事を勧めてみましょう。

 

 

「山村さん、マネージャーはとても大変な仕事です。ですから、一度見学してみてはいかがですか?」

 

 

「け、見学ですか?行っても良いのでしょうか?」

 

 

「うん、それが良いよ!美紀ちゃんはとっても優しくて親切だし、マネージャーの仕事に向いていると思うな。」

 

 

自身の無い声で不安そうに聞き返す彼女に桃井さんが優しく諭します。すると、山村さんは少し落ち着きを取り戻し、口元に微かに弧を引いており、嬉しそうな様子です。

 

 

「分かり、ました。見学をしても良いか聞いてみたいです。」

 

 

「うんうん!じゃあ一緒に体育館へ行こっか。」

 

 

「は、はい!」

 

 

山村さんは人も話すのが苦手そうですが、それでも自分の意志をしっかりと持っている方だと推察出来ます。ですから、今回の事上手くいけば自信も着くかもしれませんし、出来る限りサポートしていきたいですね。

 

 

「じゃあ、そろそろ行きましょうか。山村さん、緊張しなくても大丈夫ですよ。一緒にバスケを楽しみましょう。」

 

 

僕がそう言うと桃井さんもうんうんと頷き、同意を示してくれました。僕達の様子を見た山村さんも僅かではありますが、小さく、とても小さく頷いてくれました。

 

 

「……これからがとても楽しみですね。」

 

 

「テツ君、何か言った?」

 

 

「いえ、何でもありませんよ。」

 

 

僕達は体育館へ向かい歩き始めました。

 

 

山村さんの話では、マネージャー経験は無いそうで、少し不安な様子です。僕はマネージャーの仕事について詳しくはありませんが、桃井さんはマネージャー業に関してはプロなので、彼女の不安を取り除くようにマネージャーの仕事について優しく説明をしています。山村さんも初めほど緊張していないようで、僕達に慣れてくれたみたいで少し嬉しいです。

 

 

それから10分後、僕達は第一体育館に到着しました。体育館の中には上級生と思われる生徒がストレッチや準備運動を行っており、その中に顧問か監督と思われる男性の姿も見られます。

 

 

「あの男性が、ここの部の責任者の方みたいですね。」

 

 

「うん、そうだね!行こっか。美紀ちゃん、リラックスだよ!リラックス!」

 

 

「あ、は、はい。」

 

 

山村さんは顧問と思われる男性に視線を向けながら返事をしました。どうやら緊張している様子です。桃井さんがフォローしていたようですが、それでもまだ少し不安そうです。僕は少しでも彼女の力になりたいと思い声をかけます。

 

 

「山村さん、もし何かあれば僕もサポートしますから安心してください。」

 

 

「あ、ありがとうございます黒子君。」

 

 

彼女は僕の目を見て小さく頷きました。そして僕達は顧問の先生の元へと向かいました。

 

 

「おや、君達は見ない顔だね?新入生かい?マネージャー希望かな?」

 

 

またもや、僕の存在には気付いて貰えていないようです。

 

 

「はい!私は1年Bクラスの桃井さつきです。帝光中で3年間マネージャー業を務めていました。こちらは入部届けになります。」

 

 

「は、初めまして、い、1年Aクラスのや、山村美紀と申します。マネージャーに興味があるのですが、経験が無いので見学をさせて頂きたいと思い、伺わせて頂きました。」

 

 

桃井さんは自信たっぷりに、山村さんは緊張しながらも、自分の言葉でしっかり意志を示しました。彼女は真面目な人ですし、こちらの男性も無下にしたりはしないでしょう。

 

 

そろそろ僕も話に割り込まなくては、本当に気付いて貰えなさそうですね。

 

 

「なるほど、マネージャー希望2人だね。桃井さん、紙を拝見しても「あの」ん?何か言ったかね?」

 

 

「あの!」

 

 

「うおっ?!い、いつからいたんだ?」

 

 

男性は大きな声を上げて驚き、何度も目をパチパチと動かしています。僕は幽霊でもお化けでも無いんですけどね。

 

 

「2人と一緒に来たので、初めからここに居ました。驚かせてしまってすみません。僕は1年Bクラスの黒子テツヤと申します。先程、星之宮先生に部活動の申請書を頂いたので、それを提出させて頂きたく思います。宜しくお願いします。」

 

 

「あ、ああ。そうか、君が黒子君か。星之宮先生から話は聞いているよ。」

 

 

どうやら星之宮先生から僕について聞いていたようですね。

 

 

「俺は勝山順だ。この学校の男子バスケ部の顧問兼監督を務めている。3年Aクラスの担任で、担当科目は国語だが、この学校で教えるメイン科目は古文だな。宜しく頼む。」

 

 

その後、僕と桃井さんの入部届けはすぐに受理され、山村さんの見学についても受け入れて下さいました。

 

 

「全員集合!」

 

 

勝山先生が集合の号令をかけると、部員達はすぐに集まりました。勝山先生は1度全員の顔を確認すると、話を始めます。

 

 

「今日からマネージャーを1名と部員が1人増える。1人はBクラスの桃井さつきさんだ。彼女は帝光中で3年間マネージャーを務めてきた実績がある。そしてもう1人は黒子テツヤ君。彼も帝光中で選手に選ばれていた優秀なプレイヤーらしい。今日から練習に加わって貰う。」

 

 

 

「て、帝光中?!」

 

 

「選手で1年って事は……」

 

 

「キセキの世代?!」

 

 

 

監督が僕と桃井さんの紹介を行うと、帝光中出身という事もあり、部員の多くがはざわつき始めます。しかし、監督がひと睨みするとすぐにあたりは静まり返りました。そして監督は何も無かったかのように、淡々と話を続けます。

 

 

「教育係として、副部長の久保田に面倒を見て貰いたい。マネージャーについてだが、ウチの部にはマネージャーが居ないので、今日のうちにマネージャー業務の内容を纏めたプリントを桃井さんに渡しておこう。それで良いかね?」

 

 

勝山監督が桃井さんに確認すると、彼女はすぐに監督の言葉に頷きました。

 

 

「はい!分かりました。」

 

 

「では、桃井さん、黒子君、挨拶を頼めるかな?」

 

 

「はい。僕は1年Bクラスの黒子テツヤです。出身校は帝光中学です。宜しくお願いします。」

 

 

「私も黒子君と同じ1年Bクラスの桃井さつきです。出身校は帝光中学で、1年の時から男子バスケ部のマネージャーとして活動してきました。宜しくお願いします。」

 

 

僕と桃井さんが挨拶を終えると、部員達は拍手をして迎えてくれました。山村さんも拍手はしていませんが、小さくお辞儀をしています。

 

 

「よし!マネージャーと部員が増えたのは心強い事だ。黒子君、桃井さん、分からないことがあれば、俺や上級生に何でも聞いてくれ。」

 

 

「はい!」

 

 

それから桃井さんと見学の山村さんは勝山監督に呼ばれ、監督の作業室に向かっていきました。僕は副部長の久保田先輩の元へ向かい、部活についての説明を受けるよう指示があったので、それに従い彼の元へ向かいました。

 

 

「久しぶりだな、黒子。」

 

 

久保田先輩の元へ向かい、顔を合わせると強い既視感を覚えました。何故か、彼に対して強い懐かしさを感じたのです。そして数秒後、その正体の答えが頭の中に浮かび上がりました。

 

 

「え……もしかして、元帝光中副部長の久保田先輩ですか?」

 

 

「ああ。前髪を切ったから、もしかしたら分からないんじゃないかと思ったが、覚えて貰えていて良かった。」

 

 

久保田正也先輩は、元帝光中の副部長です。虹村先輩の同期で、一時期赤司君と一緒に副部長を勤めていた時期もある、とても優秀な先輩です。雰囲気は少し暗いですが、一軍に入ったばかりの僕にもとても親切にして下さいました。

 

 

「まさか、こんなところで先輩にお会い出来るとは思ってもいませんでした。」

 

 

「俺もだよ。最後の全中の話は噂程度に聞いていたが、怪我をして決勝には出られなかったそうだな。残念だったな。黒子の特性については、俺の方から監督に説明しておくから、安心しろ。今年は、全国に行くぞ。」

 

 

「はい。そのつもりです。」

 

 

僕がそう言うと、久保田先輩は嬉しそうに笑いました。そして僕の頭を優しく撫でながら言いました。

 

 

「そうか!それは楽しみだな!」

 

 

それから僕は久保田先輩から部活の概要やスケジュール、練習メニューなどについて説明を受けました。その後、準備運動を行って外周を行う事になりました。

 

 

「よし!じゃあ今から外周を始める。黒子はスタミナは少ないし、慣れるまで大変かもしれないが、外周は校舎の周りを五周走らなければならない。」

 

 

「五、五周ですか。」

 

 

「距離は10キロだが、途中砂利道や階段もあるので想像よりキツイだろう。まあ、遅くても完遂する事に意味がある。コースを覚えて貰う必要があるから、一周目はペースを黒子に合わせるぞ。」

 

 

「わ、分かりました。」

 

 

久保田先輩は僕のペースに合わせて外周を始めました。僕は中学時代も部活で走り込みをしていましたが、スタミナには自信がありません。そして、帝光中では練習の質と量に圧倒されて途中でバテてしまう事が多かったです。外周は、中学の時の部活で走った距離よりも多く感じました。しかし、途中で久保田先輩がペースを落としてくれたおかげで何とか走りきることが出来ました。

 

 

その後、久保田先輩は二周目に入るとペースを上げて走り去って行ってしまいました。僕も走り切る事を目標に、教えて貰ったコースを走り続けます。途中何人かの部員に抜かれ、声を掛けられる事もありましたが、僕は励ましの声を貰ってなんとか走り切る事が出来ました。

 

 

「はあ、疲れた。」

 

 

僕は体育館に到着すると、柔軟を始めます。その後、飲み物を取りに向かいました。

 

 

「すみません、スポドリを貰えますか?」

 

 

「あ、テツ君!はいどうぞ!」

 

 

「ありがとうございます、桃井さん。」

 

 

桃井さんからスポドリを受け取り、僕はそれを飲み干します。

 

 

「この後はシュート練習を行うみたいだよ。」

 

 

「分かりました。僕はシュートの成功率が平均よりも低いので、少しでも成功率を上げられるように頑張ります。」

 

 

「うん、頑張ってね!テツ君!」

 

 

体育館には、既にシュート練習を始めている部員の姿がありました。今日参加している部員の数は30人くらいで、ここの部活は帝光よりも人数が少ない様です。

 

 

僕も急いでボールを籠から取り出し、シュート練習に加わります。何度もゴールにボールを投げますが、なかなかゴールに入りません。

 

 

「黒子君、シュートの成功率はどのくらいなんだ?」

 

 

勝山監督が僕の隣に立ち、尋ねてきました。僕はボールを持ちながら少し考えて答えます。

 

 

「……そうですね0%くらいでしょうか。」

 

 

「なるほどな。久保田に話は聞いていたが、本当にパス特化の選手なんだね。」

 

 

「はい。」

 

 

久保田先輩は僕の特性について、勝山監督に説明してくれていた様です。そして勝山監督は僕にアドバイスをくれました。

 

 

「パス特化だからといって、基礎のシュートやドライブを疎かにして良い理由にはならない。もしかしたら、君なりの新たな技を身につけられるかもしれない。その事を念頭に置いて頑張りなさい。」

 

 

「はい。頑張ります。」

 

 

その後、僕はシュート練習を続けましたが、やはり成功率は上がりませんでした。

 

 

「よし!今からスリーメンを行う。学年順に並びなさい。」

 

 

 

スリーメン、ファイブメン、3対3と練習を行っていき、部活開始から2時間半が経過した頃、休憩の時間になりました。そしてその時、突然体育館の扉が勢いよく開けられ、見覚えのある赤髪の男子生徒が体育館の中へやってきました。

 

 

「すみません、バスケ部に入部したいんすけど。」

 

 

赤髪の青年は今日の朝、桃井さんに名前を教えてもらった千葉の葵西中出身の須藤健君です。監督は作業室にいる為、マネージャーの桃井さんが慌てた様子で対応を始めます。

 

 

「千葉の葵西中出身の須藤健君だよね?」

 

 

「おう。」

 

 

「勝山監督は作業室に居るから案内するね。着いてきて。」

 

 

「ああ、ありがとな。」

 

 

桃井さんは須藤君を連れて作業室に向かい、数分で戻って来ました。そして彼は監督に入部届けを渡し、そのまま練習に参加する事になりました。その後、須藤君は準備運動、外周を行い、簡単な基礎練を終えました。

 

 

「よし!じゃあこれからミニゲームを行う!」

 

 

須藤君が一通りトレーニング終えると、勝山監督は部員達にそう告げました。ミニゲームとは2チームに分かれて試合を行う事です。

 

 

「須藤と黒子には早速で悪いが、1試合目に参加してもらう。須藤と黒子、久保田、東野、中川、日立、刈谷……」

 

 

ミニゲームの対戦メンバーが発表され、僕のチームには久保田先輩が入っています。僕の特性や役割を理解しているのは現状久保田先輩のみです。だから監督が配慮して下さったのかもしれません。そしてこのミニゲームで、僕の価値を示さなくてはいけません。

 

 

ちなみに、日立先輩はこの部の部長で、ポジションはPGだそうですが、高二に上がるまではSFだったらしく、シュートもドライブのかなりのレベルだと久保田先輩が話していました。

 

 

「宜しくな、1年生。」

 

 

「宜しくね。」

 

 

「宜しく。」

 

 

久保田先輩と東野先輩が僕と須藤君を見てそう言うと、中川先輩も素っ気ない態度で短い挨拶を述べました。

 

 

「こちらこそ、宜しくお願いします。」

 

 

「うおっ?!いつからいたんだ?影薄っ!……って、挨拶してなかった!すんません!宜しくお願いします!」

 

 

僕が挨拶をすると、須藤君は驚いたように僕を見て後退ります。しかし、彼もすぐに先輩方へ挨拶を返します

 

 

「わりい、驚いちまって。黒子も1年なんだって?宜しくな!俺は須藤健だ。」

 

 

「宜しくお願いします、須藤君。皆さんに先に言っておきますが、僕はシュートが打てないので、フォローはお願いします。その代わり、パスは任せて下さい。ただ観察に試合の前半は使わせて欲しいので、その間は皆さんに任せます。」

 

 

須藤君と中川先輩は僕の話をそのまま受け入れてくれました。その後、久保田先輩の提案で簡単なポジションを決める事になりました。

 

 

「須藤、中学の時のポジションはどこだったんだ?」

 

 

「PFっす。」

 

 

 

「分かった。なら、1番は中川、2番は俺、3番は黒子、4番は須藤、5番は東野で行こう。積極的に得点を狙って行け。」

 

 

「はい!」

 

 

久保田先輩の言葉に須藤君は大きな声で返事をし、闘志を燃やしています。彼の表情が、中学時代のバスケをまだ楽しんでいた青峰君と重なり、胸がチクリと痛みます。

 

 

「頑張ろうぜ!黒子!」

 

 

「はい!頑張りましょう!」

 

 

それからすぐ、ミニゲームの1試合目が始まりました。ジャンプボールは日立先輩が制し、彼からボールを受け取った久刈谷先輩はゴール近くにいる島田先輩にパスを回し、先制点を決めます。

 

 

「ナイス!島田!」

 

 

「おう!」

 

 

先制点を決めた島田先輩は、日立先輩にハイタッチをしました。その後すぐに須藤君はボールを貰い、速攻を仕掛けます。

 

 

「行かせねえよ!」

 

 

刈谷先輩は素早く反応し、須藤君の前に立ち塞がりましたが、彼はスピードを緩めずドライブを仕掛けました。そしてミドルエリアまで侵入すると、ジャンプしてシュートを放ちました。ボールはバックボードにあたり、リングに吸い込まれていきます。

 

 

「っしゃあ!決めてやったぜ!」

 

 

「ナイス!須藤!」

 

 

2点目を決めた須藤君に、東野先輩が駆け寄り、頭を撫でます。

 

 

 

「よし!行くぞ!」

 

 

久保田先輩の掛け声と共に僕達はコートに駆け出しました。僕は先輩達の動きを観察しながら、癖や得意なプレイを把握していきます。そして試合も残り3分となった頃、久保田先輩が僕に耳打ちをしてきました。

 

 

「黒子、そろそろ癖は把握出来たか?」

 

 

「はい、バッチリです。ボール、どんどん回してください。」

 

 

「よし!ならパスを回すぞ。」

 

 

しかし、反撃開始という時に須藤君にダブルチームが着きました。ここまで僕達のチームの要となって得点を稼いできたのは須藤君です。彼へのマークが厳しくなり、彼にパスを回す事は出来ません。

 

 

現在マークが付いていないのは東野先輩です。ゴール下はフリーなので、ここにパスを回したいですが、彼の斜め前には刈谷先輩が控えており、パスを出すのは危険です。刈谷先輩は動きが速いプレイヤーなので、簡単にパスコースを塞がれてしまうでしょう。

 

 

「刈谷の位置が絶妙ですね。指示を出したのは日立先輩ですか?」

 

 

「ああ。アイツならパスコースに割り込むくらい造作も無いだろう。」

 

 

「久保田!」

 

 

数秒後、中川先輩がマークを振り切ってパスを貰おうと動きます。しかし、中川先輩の間に日立先輩が割り込みパスは出せません。

 

 

「違うよ。」

 

 

久保田先輩はそう言い、誰もいない空間にパスを回しました。

 

 

「は?そんなところ、誰もいないはずじゃっ?!」

 

 

日立先輩がそう言った瞬間、ボールの軌道が曲がり、ゴール下の東野先輩の元へパスが回りました。

 

 

「ボ、ボールが、曲がった?!」

 

 

「なんだ?!今のは!」

 

 

「ど、どうなっているんだ?」

 

 

試合を観戦している部員達は驚きの声を上げ、コート内の選手達も少なからず動揺しているようです。

 

 

「は?え?」

 

 

「打て!東野!」

 

 

「え?お、おう!」

 

 

突然ボールが曲がってやってきた事に東野先輩は動揺していますが、久保田先輩の声で我を思い出し、すぐさま切りかえてダンクシュートを決めます。2点が加点され、得点版には28対27という数字が示されています。

 

 

「な、なんだったんだ?今の。」

 

 

中川先輩、須藤君も今の状況に疑問を持っているようですが、集中力は途切れておらず、冷静に行動していきます。

 

 

「黒子!次もパスを回して行くぞ!」

 

 

「はい。」

 

 

そして、僕達はその後も点を重ね、最終的に38対30というスコアで勝利しました。試合終了後、部員達は興奮しながら久保田先輩と僕の周りに集まって来ました。

 

 

「凄かったぜ!今のパス回し!曲がったパスって、黒子がやってたんだろう?」

 

 

須藤君が興奮した様子で話しかけてきました。他の部員達も興味津々といった様子です。そんな中で中川先輩は僕に歩み寄ってきました。

 

 

「黒子は帝光中出身だって言ってたけど、もしかして帝光中の噂にある、幻の6人目(シックスマン)ってお前の事なのか??」

 

 

「は「そうなんですよ!テツ君は帝光中キセキの世代、幻の6人目(シックスマン)なんです!」」

 

 

僕が「はい」と言いかけた時、桃井さんが僕の発言に割って入り、話します。

 

 

「キ、キセキの世代?!黒子、お前すげぇな!俺、キセキの世代にずっと憧れてたんだ!」

 

 

須藤君は僕が帝光中出身だと知ると、目をキラキラと輝かせて僕に詰め寄りました。

 

 

「ちなみに、私も帝光中で一軍マネージャーを務めてました。」

 

 

「マジかよ!桃井もすげぇんだな!俺、この学校に来て良かったぜ!絶対にキセキの世代を倒して、全国制覇しようぜ!黒子!桃井!」

 

 

「うん!」

 

 

桃井さんは元気よく返事をしましたが、僕は少し複雑な気持ちでした。彼を見ていると、かつての青峰君を思い出してしまって、胸が痛みます。彼はバスケに夢中になっていた青峰君とよく似ています。どんな強敵にも、真っ直ぐ立ち向かう彼と重なって見えてしまうんです。

 

 

その後、僕達は体育館の後片付けを行いました。そして全ての後片付けを終え、更衣室で着替えていると、久保田先輩が話しかけてきました。

 

 

「黒子!今日はありがとうな。」

 

 

「いえ、こちらこそありがとうございました。」

 

 

「連絡先、交換しないか?部のグループにも招待するよ。」

 

 

「はい、是非お願いします。」

 

 

僕と久保田先輩はお互いの連絡先を交換し、バスケ部のグループチャットにも招待して貰いました。久保田先輩は後で桃井さんや須藤君も招待しておくように言い、更衣室を出て行きました。。そしてその後、僕は桃井さんと須藤君、山村さんと一緒に学校を出ました。

 

 

「へぇ、山村はマネージャーをするか迷ってんだな。」

 

 

「は、はい。部活自体した事が無かったので、少し不安なんです。」

 

 

帰り道、須藤君は見学をしていた山村さんと初めて挨拶を交わしました。ストレートな物言いの須藤君と人と関わる事が苦手な山村さん。相性が少し心配でしたが、それは杞憂に終わりました。須藤君の素直さ、山村さんの真面目さ故か、2人の会話はスムーズに進み、仲も悪くなさそうです。

 

 

「人生はなんでも経験してなんぼだろ。挑戦してダメなら、別の事をすれば良いだろ。山村は真面目だし、マネージャーの仕事とか向いてるんじゃねぇか?」

 

 

須藤君は山村さんの背中を押すように、言葉を掛けます。そしてそれに桃井さんも同意し、話し始めます。

 

 

「私もそう思うよ。それに、美紀ちゃんみたいな子がマネージャーをしてくれら私も助かるかな。」

 

 

「山村さんの気持ちに従ってあげてください。ただ、僕の本音を言えば一緒にバスケが出来たらとても楽しいと思っています。」

 

 

「さつきちゃん、須藤君、黒子君、ありがとうございます。もう少し考えてみます。」

 

 

僕達の言葉を聞いて、山村さんは少し弾んだ声で、嬉しそうにお礼を言いました。その後、僕達はバスケについての話をしながら近くのマジバに向かい、親睦会を行う事にしました。




氏名     桃井さつき

所属     1年Bクラス

誕生日    5月4日

【学力】   B-
【知力】   C+
【判断能力】 B
【身体能力】 C
【協調性】  B


【面接官からのコメント】

筆記試験、面接試験共にそれなりの高成績を残している優秀な生徒。
情報収集や分析が得意で、その特技を用いて帝光中の男子バスケ部の全中三連覇に大きく貢献している。
家庭科の調理実習の実技試験の成績が著しく低い事を考慮し、上記の結果を踏まえてBクラス配属とする。


【担任からのコメント】

明るく真面目で誠実な生徒です。
中学時代はマネージャーとして部の勝利に貢献しており、とても献身的な性格の様です。
今後の学校生活で、クラスメイトのフォローを行い、特別試験の勝利に貢献していって欲しいです。

※黒子テツヤと同じ中学、同じ部活出身
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