ついにハーメルン上陸なKと名乗る者です
これ保存してたドキュメント見返したんですけど今と見比べると読みにくくて仕方なかったです()
少しは成長できてるんだなぁと感じつつも修正しました
お楽しみいただければ幸いです
「おはよう先生、時間ぴったりだね」
「おはよう白石、俺から頼んでた事だから遅刻するわけにもいかないさ」
ここは学園都市キヴォトスにおいてトップクラスの技術力を有する学園、ミレニアムサイエンススクール。
先生はそんなミレニアムの中でも指折りの技術者が集まる『エンジニア部』の部長である『白石ウタハ』の元へと訪れていた。
日々の業務で使っていたパソコンが壊れてしまったため新調しようとしていたところでふとエンジニア部のことを思い出し、ウタハに依頼していたのだ。
「それで、頼んでた物はどうなった?」
「もちろん完璧に仕上げてあるよ、こっちへ来てくれ」
そういって先生を部室の奥の工房へと連れて行くウタハ。
ちょうど作業終わりであっただろうその体や顔には作業中についたであろう油汚れや煤があり、自分の依頼以外にも作業をしていたのが分かった。
人によっては汚れに対して嫌悪感を抱いてしまうものかもしれないが『マイスター』の称号を持ち、誰よりも情熱を持って発明に勤しむ彼女を知る先生にとっては、それが何よりも美しい勲章のように思える。
一度彼女の作業を手伝った際にはそれを気にしているようだったが...
「さぁ着いたよ先生、って聞いているのかい?」
そんな声によって思考の世界から現実へと戻される、考えている内に工房に到着していたようだ。
「えっ...あぁ悪い、ちょっとぼーっとしてた」
「その様子では最近休めていないんじゃないかい?またユウカに怒られてしまうよ」
「はは...そいつは勘弁だな」
「へくちっ!」
「それで、こいつが新しいパソコンか...」
「他でもない先生の依頼だったからね、私の持っている技術を総動員して仕上げたよ」
「そいつはありがたい、報酬は弾ませてもらうよ」
「それは何より、早速だが機能の説明をしようか。まずはパソコンとしての基本の機能だが...」
そうしてウタハはパソコンの機能を説明する。
(やっぱり白石は発明に関わることをしている時が一番輝いているな...)
『少女を美しくするのは、化粧ではなく情熱さ』
いつか言っていた言葉の通り、発明に向き合う彼女の情熱はとても眩しく美しい。
それが彼女自身を彩っている。
(やっぱり俺は...そんな彼女の姿に自分でも驚くほどに惹かれているんだ)
「と...仕事以外にも使える機能を搭載しているよ。もちろん普段の仕事の機能を邪魔せず、むしろそれにも役立つようになっているよ」
「流石ミレニアム一のマイスター、想像以上だ。ありがとな、白石」
「...!」
そう言って彼女の頭を撫でる。
彼女の情熱に感謝するように、彼女の情熱を労うように、優しく。
「ありがとう、先生...」
恥ずかしそうに頬をほんのり朱に染めてはにかむウタハ。
マイスターの見せるその姿に心の底から愛らしさが込み上げる。
「あの...先生、そろそろ...」
「あ...すまない、やりすぎた」
つい見惚れていたら思わず撫ですぎてしまったようだ。
お互いに恥ずかしさから目を逸らしてしまう。
「なぁ白石、よかったら俺の頭を撫でてくれないか?」
「!?」
その気まずさに耐えきれなくなって口を開くがその内容にウタハは驚愕する、もちろんそれは先生自身もだ。
(いや...何言ってんだ俺!?とりあえず何か言わないと!)
「あぁいや、その、俺だけ撫でるっていうのもアレだし...白石の綺麗な手で撫でてもらえたら元気になるし...」
焦りに突き動かされるように言葉が出るが、それが余計に焦りを生む。
もはや俺にはこの場面における正解の言葉は出せなかった。
「先生」
ウタハの声が響く。迷いと喜びの混じった声が。
それが焦りを飛ばし、意識を目の前の彼女に戻す。
「その...前にこの手の汚れは私にとって勲章のような物だと言った、この割れた爪が、油汚れが、私がマイスターとして積み上げてきたことの軌跡であり証明であるから...あの時のネイルもまたしてもらっている、ネイルショップの店員とも触れられている」
次々と、心からの言葉が紡がれていく。
「でも、先生にだけは...素手で触れるのを躊躇ってしまう。先生ならこの手を受け入れてくれる、そう分かっていても踏み出せない...触れていいと言ってくれているのに...」
「白石」
「!」
今度は俺の声が響く。どこまでも真っ直ぐ、心に直接語りかけるような声が。
「前にその手の話をした時、俺は白石のことを凄いと思った。自分のやってきたことにどこまでも真っ直ぐ誇りを持つ、それは簡単なことじゃない。俺にとってこの手に触れられることはとても嬉しくて誇らしい、マイスターの情熱の全てが刻まれた、世界で一番美しい手に触れられるんだから」
自分でも、かなり小っ恥ずかしいことを言っているのはわかっている。
それでも、本心を話してくれた彼女に応えるには、自分も本心を話さないといけないと思ったから。
「いきなり撫でろ...なんて言ったのは悪かった、それでも俺はこの手に触れたい、撫でてもらいたい。生徒にこんなことを頼むような先生だが...それでも、いいか?」
あぁ...そうだ、何を躊躇っていたんだ。先生はこういう人じゃないか。
どこまでも私達に向き合い、どこまでもまっすぐな言葉をくれる。
こんなにも眩しい人に触れられるのは...私も...
「分かったよ、先生」
そっと頭の上に何かが乗る感覚、優しい温もりと柔らかな感触。
どこかぎこちなくたどたどしい手つきが不思議な安心感を与えてくれる。
(とても...心地良い...危ない...あまりの心地よさに意識を手放しそうだ...というか、なんか、長くないか?)
「白石?そろそろ...」
「私をあれだけ撫でたんだ、そろそろやめてくれ、なんて言うつもりじゃないだろうね?」
「...!恥ずかしいから...ほどほどに...」
「先生がそれを言うのかい?私だって、結構恥ずかしいんだよ」
そう言って悪戯っぽく笑うウタハは、今までで一番眩しく見えた。
爪が割れて、油汚れがあって、積み重ねた物全てを覚えている自慢の手。
一番大切な人が、世界一美しいと言ってくれたこの手は私にとってかけがえのない宝物。
マイスターの手は穢れなく、今日もまた新たな思い出が刻まれていくのだった。