ブルアカ小噺   作:Kと名乗る者

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過去作投稿第二弾
アリウスの四人と美味しいものいっぱい食べたい...


寒空とアリウス〜先生と鍋を添えて〜

『少し用がある、今度の日曜そっちに行ってもいいか?』

サッちゃんからそんな連絡があったのが三日前。

久しぶりにサッちゃんに会えるからかヒヨリもミサキもそわそわしながらその日を待っていた。

そして訪れた日曜日、久しぶりの再会を果たした私達は...

 

「ふええ...こんなに美味しい物を食べちゃっていいんでしょうか...でもこれもなくなっちゃうんですよね...虚しいですね...先生おかわりお願いします」

 

「そう言いながら一番食べてるじゃん...」

 

「槌永らしいっちゃ槌永らしいけどな、というか戒野はもっと食べていいんだぞ?錠前も遠慮せずに食えよ」

 

「あ、あぁ...」

 

先生を交えて、鍋を囲んでいた。

 

 

「秤達に何かしたい?」

 

「あぁ、何かアイデアをもらえないだろうか?」

 

とある冬の日のシャーレの執務室、当番の生徒である錠前サオリは先生にそんな質問をしていた。

 

「ようやくまとまったバイト代が入ったんだ、私自身の力で得たこのお金で何かしたいんだ...だが私はプレゼントなんてしたことがないから何を買えばいいか分からない...多くの生徒と関わっている先生なら何か分かるかもしれないと思ってな...」

 

「なるほどねぇ...そういうことなら喜んで協力するさ」

 

「本当か...!ありがとう!」

 

「秤達へのプレゼントか...ずっと廃墟にいるからな、何か生活に使いやすい物とかがいいのかもな。今は冷えるしマフラーとか良さげじゃないか?」

 

「なるほど...」

 

あとは...昔欲しかったものとかでもいいんじゃないか?まぁ、錠前からのプレゼントだったらあいつらはなんだって喜んでくれるだろうさ」

 

「そうならば...嬉しいな...」

 

それにしても昔欲しかったものか...姫は花、ヒヨリは雑誌や雑誌に載っていた服、ミサキは...

そんな風にスクワッドの面々に思いを馳せていると、ふとテレビから流れる映像が目に止まった。

 

『冬の定番!あったか鍋料理特集!!』

 

「鍋料理...」

 

「鍋か...そういや鍋が美味い季節だなぁ...あっ!」

 

多種多様な鍋をふわふわと頭の中に思い描く先生、その瞬間一つの閃きが先生を駆け巡った。

 

「先生?どうかしたのか...?」

 

「錠前、みんなで鍋食うぞ!」

 

「.....は?」

 

サオリが先生の前でこんな素っ頓狂な声をあげたのは後にも先にもこの時だけだった。

 

 

 

「そういうわけで、サオリはお前達にプレゼントを渡して今俺は鍋を作ってるってわけだ」

 

「いや...なんでそうなるの...?」

 

そんなこんなで日曜日の夜。

先生とサオリはスクワッドの三人のいる廃墟を訪れていた。

最初は先生がいることに驚いていたスクワッドの面々だったが、サオリからプレゼントを受け取った瞬間、その顔には喜びが浮かんでいてヒヨリに至っては泣き出しそうになっていた。

それを見て感慨深そうにしている先生が鍋の準備を始めたところでサオリ含めてスクワッド全員の顔に驚きが戻ったのは言うまでもないことだが。

 

「いやほら、みんなで囲むあったかい食べ物って言ったら鍋だろ?それにお前らの食生活とか結構心配なんだからな?」

 

「食生活に関しては先生にだけは言われたくないんだけど」

 

「それで先生、なんのお鍋を作るの?」

 

「姫はなんで受け入れてるの...?」

 

「今回はシンプルに寄せ鍋だな、肉も野菜も魚も全部入りだ」

 

「リーダーからプレゼントを貰えただけでも嬉しいのに...そんな豪華なものを食べられるなんて...」

 

「ヒヨリ、よだれ出てる」

 

「それであんな大荷物だったわけだ...」

 

サオリの目線の先には先生が背負ってきていた大きめのリュックが置いてある。

鍋の準備が始まるや否やそのリュックから鍋に食器にカセットコンロに座る用のシートなどなどまるでマジシャンのシルクハットのように様々な物が飛び出してきた。

それとは別に食材なんかを入れた手提げ袋まで持ってきており、気合が入りまくっているのが分かる。

 

「いやぁ何を持っていこうか考えたらいつの間にかこんな大荷物になっちまってな、まぁ帰りにはコンパクトになってるだろうから構わねぇよ」

 

「にしても先生お鍋作るの慣れてるんだね、すごい手際」

 

「そうだろう?鍋料理にだけは自信あるんだぜ?」そろそろいい感じになってるはずだ...開けるぞ...!」

 

蓋が外れた瞬間にふわりと湯気が広がり、それに続いて出汁の香りが辺りを満たす。

肉、野菜、魚がバランスよく入れられており美しいビジュアルを作り出し食欲をそそる。

具材への火の通りも完璧な見事な鍋が出来上がっていた。

 

「わぁ...!」

 

「美味しそうですぅ...!」

 

「おぉ...!」

 

「...!」

 

「ふっふっふ、我ながらかんぺき〜♪な仕上がりだな、よそうから器持ってきてくれ」

 

そして先生は全員の器に鍋をよそっていく。

それぞれの具材をバランスよく、量も全員同じになるように、なんとも先生らしい。

 

「全員箸も持ったな、それじゃあ...」

 

「「「「「いただきます」」」」」

 

 

 

 

 

「!!美味い...!」

 

「おいひいですぅ...」

 

「うん、すごく美味しくて...あったかい」

 

「すごい...美味しい...」

 

一口食べた瞬間、四人の顔がぱあっと明るくなる。

噛めば噛むほどに具材と出汁の味が溢れ最高のハーモニーが重なる。

出汁は野菜の甘味に肉や魚の旨味が溶け込んでおり格段にグレードアップしている。

これまでに食べたもので一番美味いと確信できる、想像以上の味だ。

 

「そいつはよかった、まだまだあるからいっぱい食えよ」

 

そう言って先生も笑顔で野菜を頬張る。

それを見たスクワッドの面々もどんどん箸が進んでいく。

最初は少し遠慮がちだったサオリとミサキだったが先生の押しに負け途中からはたくさん食べていた。

 

「この肉団子、すごいふわふわ...」

 

「白菜は噛めば噛むほど甘味が溢れてくる...!」

 

「大根もすごい味が染みてる...」

 

「お魚もふっくらしてますぅ...」

 

「鍋に入ってるネギってのはどうしてこうも美味いのか...最高だ...」

 

少女とはいえ食べ盛りな四人と成人男性一人が夢中で食べ進めていくスピードは想像に難くない。

多めに持ってきていた鍋の具材はあっという間になくなってしまっていた。

 

「具材...なくなっちゃいましたね...虚しいですね...」

 

「でも、結構食べたよ」

 

「うん、こんなにお腹いっぱい食べたの初めてかも」

 

「そうだな...先生、とても美味かった...」

 

「おいおい、なーに終わりみたいになってんだ?鍋は”ここからが本番”だろ?」

 

そう言って先生は鍋の蓋を再び開ける。その中には”出汁だけが入っている”はずだった。

 

「それ...は...!?」

 

「先生、まさか...!?」

 

「そう...鍋といえば...〆の卵雑炊だよなぁ!!!」

 

鍋の中には金色の卵に包まれた雑炊が出来上がっていた。

ふわふわとろとろの卵と出汁で包まれた白米...その味を想像するだけでスクワッドに空腹が蘇る。

 

「さぁ...最後まで美味しくいただこうじゃないか」

 

先生から差し出されるどんな宝石よりも芸術的で眩い黄金の一品。

ついさっきまで満腹だったにも関わらずするすると入り込んでくる雑炊に抗う術はない。

 

「出汁と卵に包まれながらも確かな白米の存在感...こんな美味い雑炊は初めてだ...!」

 

他の三人も同様に生き返ったかのように雑炊をかきこむ。

まばらに残った白菜やネギが食感や味に緩急を与えるのも嬉しい要素だ。

 

(こんなに喜んでくれるとはな...思いつきでやってみたがこんな好評なら他の奴らともやってみるか?それに...四人のこんな幸せそうな顔が見れるなんてな)

 

あまりの美味しさに蕩けたような四人の顔を見て先生は心から安堵した。

 

 

 

 

「先生、今日は本当にありがとう」

 

雑炊も食べ終えすっかり夜も深くなり眠気が襲い始める頃、帰ろうとしていた先生にサオリが声をかけた。

他の三人は一足先に眠ってしまったようだ。

 

「いいってことよ、お前らの幸せそうな顔を見ながら飯が食えただけで満足さ。錠前の蕩けた顔、可愛かったぜ」

 

「なっ...!私はどんな顔を...!」

 

唐突な先生のからかいに動揺し顔を真っ赤にするサオリ、だがすぐにその顔に陰が差す。

 

「それにしても...また先生から施しを受けてしまったな、まだ何も返せていないのに...なぁ先生、私にできることならなんでもするから何か返させてくれ、今日私が姫達にプレゼントを渡せたように」

 

サオリの顔には強い決意と小さな子供のような不安が見える。

自分達は何も出来ていないと思い、罪悪感を募らせているのだろうか。

 

(ここまで言ってくれてんのに『俺がやりたくてやってるから気にすんな』っての

は...違うよな)

「なぁ、本当になんでしてくれるんだよな?」

 

「あぁ、私達にできることならば」

 

「なら...次のサオリの当番の日、四人で揃ってシャーレに遊びに来てくれないか?」

 

「えっ...?」

 

「最近コユキ...ミレニアムのやつから色々面白いボードゲームをいくつか教えてもらってな、だから一緒に遊んでくれ、菓子もジュースもたくさんあるしな」

 

サオリ「遊んでくれって...本当にそんなのでいいのか?」

 

「やっぱり一人だとどうも盛り上がりに欠けるしな...諸々の事は気にすんな、どうとでもなるするさ」

 

「だが...」

 

「これは”先生が当番の生徒に与えるお仕事”だ。それをしてくれるってことは先生はとても助かるってわけだ。本当に全部返すのはお前らが大人になってから、自分を見つけて人生を切り開いた後だ。その時はそこにたどり着くまでに何があったのか、これからどうしていくのかを聞かせてくれ。生徒がどんな道を歩み成長してきたのか、それで得たものを見せてもらえるのが...先生としての何よりの報酬だからな」

 

「先生...分かった、今度の当番の日四人で遊びに行こう。そして...いつになるか分からないが、必ず大人になって会いに行こう」

 

「あぁ、約束だ」

 

本当にいつになるか分からない。5年...10年...もっとかかるかもしれない。

けどいつか必ず、四人で大人になって先生に私達のできる最高の恩返しをしよう。

そこにたどり着くまでにどれだけの事が変わってもこの心と記憶の温もりだけは変わらないでほしい。

虚しいだけの世界を照らしてくれた、先生がくれた温もりだけは...

そう願うサオリなのであった。




思ったより修正・加筆が大変()
過去の自分よ、未来のお前が苦しんでいるぞ...
他のシリーズは修正とかないから大丈夫...うん...
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