オリカは初登場時に*をつけています
あと私はデュエル初心者です、無茶苦茶かもしれないけど楽しんでいただければ幸いです...!
”デュエルモンスターズ”
決闘と呼ばれるこのカードゲームは、今や世界中の全ての人間が熱狂する究極の遊戯。
あらゆる争いは決闘で行われ、あらゆる決定が決闘のもと行われる...そう言っても過言ではないほどに、決闘が世界の中心にある。
この世界では決闘とは史上のエンタメであり、万能の手段。
ここは世界有数の決闘都市『リライト』
今日もまた新たな決闘が人々に、世界に刻み込まれるーー
ドアを開けると心地の良い春の陽気と柔らかな風が新たなる門出を祝福する。
今日から僕の決闘学園での日々が始まるんだ!
『ま、今日は試験だから今日で終わる可能性もあるんだけどね〜』
そんな希望に満ちた考えに水を差すように、少女の声が聞こえた。
「うっ...なんでそんなテンション下がるようなこと言うのさ...」
『事実でしょ、それよりこうやってコントしてる暇ないでしょ』
「そうだ、急いで向かわないと間に合わない!!」
側から見れば独り言を言って急に焦ってるヤバいやつになってるけど、そんなことよりもこのままでは学園の試験に間に合わない。
急いで鍵を閉め全力疾走で走り出すといつもの景色が少し違って見える。
今日から変わろうとしている自分と共に世界も変わっていく、そんな高揚が体に走る。
数十年前、ソリッドビジョン・システムと決闘盤が発明されたその日から、決闘が世界の中心となった。
あらゆる争いは決闘で行われ、あらゆる決定が決闘のもと行われる...そう言っても過言ではないほどに、決闘が世界の中心にある。
進化し続ける決闘システム、無限に生まれ続けるカードと戦術...それらは人の心を魅了し、世界は決闘至上主義へと変化した。
この世界では決闘とは史上のエンタメであり、万能の手段。
故に未来ある決闘者達を育成する機関も無論存在している。
それが...決闘学園。
若き決闘者達が鎬を削る学園で...僕も強い決闘者に...!!
『ーーょっと!前!前見なさいって!!』
「え...うわあっ!」
そんなことを考えながら走っていたら当然前方への注意が疎かになるわけで...案の定誰かとぶつかって尻餅をついてしまった。
「うおっ...と、大丈夫か?」
「あいてて...こちらこそすみません、ちゃんと前を見てなくて...」
ぶつかってしまった人物はすぐに僕を心配して手を差し伸べてくれた。
声と体格からして男の人...だろうか?この季節にしては結構な厚着だなぁ...
フードもしてるから顔もよく見えない...
『だから前見なさいって言ったのに。ほんとおっちょこちょいね』
そんなことを考えているとまた少女の声が聞こえた。今回ばかりは返す言葉もないや...
「...」
「え?何か言いました?」
「いや、独り言だ。それより随分焦ってたけど、どこかに向かってたのか?」
「.....あああああ!!学園の試験!!急がないと間に合わない!!」
急に襲いかかってきた現実と焦りで思考が吹き飛ぶ。
そうだ、急がないと試験に間に合わない!!
「学園...あぁ、決闘学園か。なら再開は早そうだ。」
「え?」
「こっちの話だ。これ以上話している時間もないだろう、早く行くんだ。」
「あっはい!ぶつかってすみませんでした!!」
そう謝罪をして僕はまた走り出した。なんだか不思議な人だったな...
「うわぁ...すごい人だ...」
どうにか時間ギリギリで辿り着いた決闘学園の試験会場にて、僕はあまりの人の多さに驚愕していた。
全国から1000を超える選りすぐりの決闘者が毎年その門を潜ろうとこの試験に挑む、なんてテレビなんかで聞いてはいるし見たこともあったけど正直想像以上だ。
普段は決闘学園での授業やイベントで使われるというこの大決闘場を満たすほどの人がおり、至る所で試験官との決闘が行われている。
「これで決める!モンスターで攻撃!!」
「罠発動、カウンターで終わりです」
「うわああああああっ!!」
「何も出来なかった...チクショウ...!」
「な、なんとか勝てた...でもこれで合格できるはず...!」
「大丈夫...私なら勝てる、合格できる...」
決闘者はそれぞれ勝利を喜んだり、敗北に絶望したり、決闘前に自分を鼓舞したり。
そんな中で最先端のソリッドビジョン・システムによる大迫力の決闘の爆音が響くものだからなかなかにカオスだ。
『うはぁ...物凄いわね...』
「うん...僕も頑張らないと...絶対に勝って、学園に入学するんだ!やってやるぞ...!」
『なーんて意気込んで結果はギリギリの勝利...締まらないにも程があるわよ』
「うるさいなぁ...勝っただけマシだろ...」
試験の決闘が終わり、僕は一人客席で項垂れていた。
朝からずっと気合いを入れていたのにそれが空回ってだいぶギリギリの勝利になってしまった...
彼女の言う通り本当に締まらないなぁ...
思い返すとあの盤面であの手札ならもっといい展開が出来たし、かなり危ないミスをしかけた時もあった。
「あぁ〜...本当に合格できるのかなぁ...」
『いつまでウジウジしてんのよ、最後の決闘が始まるみたいよ』
「最後...?」
そうこうしている内に最後の受験者の決闘が始まろうとしていた。
「もう終わりなのか...ってあの人!」
最後の受験生として現れた人、それは今朝道でぶつかった人だった。
また会えそうって言ってたけど...あの人も受験生だったのか!!
「改めて名乗ろう、【
がっしりとした大柄で強面の教師が愚痴混じりに厚着の彼...遊刻に名乗りを求める。
っていうか今遅刻したって言った?僕にぶつかった時あんなに余裕そうだったのに?
彼もギリギリだったってこと?
「遅刻したことに関しては本当に申し訳ないと思っている。名前に関しては『決闘場で試験官に伝えるまでフルネームは名乗るな、書類とかはアタシがどうにかする』と保護者に言われていてな...まぁ、遅刻した理由はその保護者にもあるんだが...」
「そう...か、何やら苦労しているようだな...」
最後の一文で明らかに疲れた表情をした彼に若干圧を解いてしまう教師。
遠目で見ている僕でも分かるくらいに表情が変わってるしね...フード越しでも分かっちゃう。
そして彼はフードを外し、自分の名前を名乗ったーー
「【
ーー世界に刻まれた、呪われた名前を。
!!!!!!
「【天理】だって...?まさか、あの?」
「あの犯罪者の【天理】、なのか?」
【天理】...そのたった一つのこの名前が、今この場の衝撃の全てを支配していた。
「【天理】だと...!?何故お前が、その名を!奴の、子供は...」
その中でも教師は、額に汗を浮かべ驚愕の表情に染まっていた。
「その様子だと父さんを知っているようだな。やはりアンタが父さんの言っていた学園時代のライバルの一人か...いきなりそんな相手と戦えるとはな...!!」
それとは反対に、遊刻は白い髪が逆立つかのような勢いで闘志を漲らせ、黒と緑のオッドアイをギラつかせている。
「くっ...ふざけるな...認めんぞ!お前のような人間が、学園で...いや、この世界で決闘をすることなど!!ここで完膚なきまでに叩きのめす!!」
「望むところだ!俺の決闘を刻み込め!!」
デッキケースからカードの束を取り出し、決闘盤にセットする。
ガシャガシャという音と共に盤が変形、それに連動して相手の決闘盤を認識、ソリッドビジョン・システムが起動し決闘モードに変化する。
互いにデッキの上から5枚のカードを引き抜き、宣言をする。
信念、プライド、魂...全てを賭けた、闘いの始まりをー!
「「決闘!!」」
「「決闘!!」」
LP:8000
手札:5枚
先行ー天理遊刻
後攻ー九厳大地
「俺のターン、我が写身をここに。《
《D/S-ZERO》
レベル4 闇属性 悪魔族 ATK0
ターン開始早々に現れたそれは、モンスターと呼ぶにはあまりにも異質な存在だった。
”写身”と呼ばれたそれは、確かに朧げだが遊刻の姿を模しているように見える。
揺らめく人型の影はソリッド・ビジョンとは思えぬほどの存在感を放ち、底知れない不気味さを感じさせていた。
「なんだそれは...?そんなモンスターは知らない...いや、それはモンスターなのか...!?」
大地も突如として現れた謎の存在に困惑を隠しきれないでいる。
「《D/S-ZERO》の効果発動。召喚に成功した時このカード以外の《D/S》カード一枚を手札に加える。《|D/S-OLS《ディメンションサーヴァンス-オーバーライフシールド》》*を手札に。リバースカードを二枚セットしてターンエンド」
遊刻
LP:8000
手札:5→3
場
モンスターゾーン:《D/S-ZERO》攻撃表示
魔法・罠ゾーン:伏せカード2枚
淡々とディスクとカードを操作しフィールドにカードを並べていく。
だがその盤面は攻守0のモンスター1体と伏せカード2枚という先行で構えるにしては余りにも弱々しいものだった。
「なんだその盤面は?まさかその程度で私の攻撃を凌ぐつもりか?」
「そのつもりだ。生憎だが先行でロックを仕掛けられるようなデッキではないのでね、アンタの攻撃、凌いでやるよ」
「そうか...ならば望み通り、跡形もなく叩きのめしてやろう!!私のターン!!私は永続魔法《
フィールド上に至る所で歯車が駆動する要塞が出現したかと思うと、すぐさま破壊され、その残骸が新たに出現した射出機に装填されていく。
「私の場にモンスターがいない時、場の表側のカード一枚を破壊することでデッキの《アンティーク・ギア》を特殊召喚する!《要塞》を破壊し、《
射出機が爆発するかのような勢いで要塞だった弾丸を撃ち放つ。
それは決闘場の天井に届くほどの巨大な人型の兵器へと変貌し、フィールドに着弾した。
《古代の機械巨人》
レベル8 地属性 機械族 ATK3000
「《古代の機械巨人》...あの《青眼》と同じ攻撃力を持ちながら貫通能力も併せ持つ《アンティーク・ギア》のエース...1ターン目から拝めるとはな」
「その余裕、そこの雑魚モンスターと共にすぐに粉砕してやろう。破壊された《古代の機械要塞》の効果を発動!手札の《アンティーク・ギア》を特殊召喚する!現れろ、《
《古代の機械素体》
レベル4 地属性 機械族 ATK1600
「《機械素体》の効果を発動、手札一枚を墓地へ送りデッキから《古代の機械巨人》またはその名が記された魔法・罠一枚を手札に加える。《
射出機から溢れた僅かな残骸が細身の人型へ変化し、それがデッキから一枚のカードを大地の手札へと加えさせる。
それは更なるモンスター召喚への布石だった。
「一瞬で二体のモンスターを展開した...流石学園の先生...」
『しかも今加えたカード、あれは《アンティーク・ギア》専用の融合魔法。《機械巨人》以上の大型モンスターの召喚は確定されたようなものね』
僕と少女は先生の展開を息を呑んで見ていた。
二枚の魔法カードから召喚権を使わずにモンスターを二体場に呼び出し、その内一体は最上級。
それだけでなくテーマ専用の融合魔法まで一気に手札に加えた。
3分にも満たない動きだけで、この人が一流の決闘者であることを痛感させられる。
他の観客も前のターンと打って変わっての動きにざわめいている。
でもそれは先生だけが生み出しているものじゃなくて...
『どう考えてもあの教師が有利...けど、なんなの、あいつの余裕は...』
ここまでの展開を見ても全く動じず、むしろ強敵が現れたことに笑みを浮かべている少年。
凄まじい圧力を正面から受けているはずなのに、一切怖がる様子を見せすらしない。
「なんで、そんなに余裕なんだ...?」
その真意を探ろうとも、横に並び立つ”写身”の持つ闇に阻まれるような気がして...
誰もがこの決闘の行く末を見放せずにいた。
「《アンティーク・ギア》専用の融合魔法か、《機械巨人》以上で俺を潰しに来るとは。光栄なことだな」
「まだそんな減らず口が叩けるか、どうやら二度と決闘ができない程に潰さないといけないらしい...」
最上級モンスターに専用融合、それに加えまだ手札は5枚ある。
だというのに遊刻はその額に汗を浮かばせる事すらせず、その余裕を保ち続けている。
そんな姿に大地の怒りには轟々と燃える炎に突き刺すような零度が混ざっていた。
そして1枚のカードを手札から抜き取り、魔法・罠ゾーンのスロットに差し込んだ。
「行くぞ、《古代の機械融合》を発動!!」
フィールドに一枚のカードがソリッド・ビジョンとして出現したと思えば、そこから緑と黄色の渦が発生し辺りから歯車が飲み込まれていく。
「このカードは手札・フィールドのモンスターを素材に《アンティーク・ギア》モンスターの融合を行うカード!更にフィールドの《機械巨人》を素材とする場合、私のデッキのモンスターをも融合素材にすることが出来る!これによりフィールドの《機械巨人》とデッキに眠る《機械巨人》、《アルティメット・パウンド》の三体で融合!!」
大地の叫びに呼応するかのように渦はより激しく大きくなり、フィールドとデッキから三体の《機械巨人》をバラバラにして飲み込んでしまった。
「古より語り継がれし不朽の巨人よ、今次元の渦にて一つとなりて我が敵の全てを粉砕せよ!!融合召喚!!現れ出でよ《
轟音と共に渦より顕現するのは、機械仕掛けの四つ足の巨人。
六本の剛腕とその巨躯を唸らせ、小さき敵対者を睥睨する。
《古代の機械超巨人》
レベル9 地属性 機械属 ATK3300
「《機械巨人》の三体融合...!こんなモンスターがいるとはな...!」
目の前に聳え立つ合体巨人に怯えることはなく、よりその闘志を燃え上がらせる遊刻。
その姿は最早怖いもの知らずなどでは片付けられない、異常としか言えないものだった。
「ぐっ...だがこのモンスターが出たことで、私の勝利は確定した!!《超巨人》は《機械巨人》と《アルティメット・パウンド》の中から二体以上を素材としていた場合、その数だけ攻撃回数を増やす!そして《アンティーク・ギア》が攻撃する時、貴様は魔法・罠カードを発動できない!!更に装備魔法《
《古代の機械超巨人》ATK3300+(9×300)=3300+1800=5100
1枚のカードから《超巨人》に新たな機関が組み込まれ、大きく唸りを上げて激しいスパークが迸る。
その姿は正に暴走寸前、今にもこの場の全てを破壊するために動き出しそうだ。
「バトルフェイズだ!!その矮小な影ごと貴様を粉砕してくれる!」
「バトルフェイズ開始時、手札の《D/S-揺火のマルア》*の効果を発動。《ZERO》を手札に戻しこのカードを特殊召喚する」
フィールドに佇む影がより儚く揺らめいたかと思うと、火に呑まれそこに女のモンスターが入れ替わるように現れた。
《D/S-揺火のマルア》
レベル4 闇属性 炎族 DEF1800
「影を逃したか...だがその程度のステータスでは《超巨人》の前では蝋燭の残り火にもーー」
「更に《ZERO》の効果を発動。自分のカードの効果によって場を離れたので手札から特殊召喚し、効果で《
揺らめく火の影から再び闇の写身が同胞と共に出現、更に黒と紅の壁が遊刻と巨人の前に生成される。
この一瞬でモンスターと手札を増やし、確実に1ターンを凌げる防壁を出現させる。
余りにも冷静かつ強かなプレイングに観客は理解するのに少しばかりの時間を要した。
「減らせるライフの数値に直接制限をかけるカードだと...!?《超巨人》を強化しても動揺しなかったのはこれがあったからか...!」
「そのデッキ含め、アンタの使うデッキは超重量級の機械族モンスターで正面から相手を粉砕するもの。だからこそこういう搦手には弱い。まぁ《アンティーク・ギア》はそれを封じる手段もあるが、攻撃される前に使ってしまえば問題はない」
「ぐうっ...だが攻撃自体は止まらん!!《超巨人》よ、奴の影を蹴散らせ!!」
「俺は手札の《D/S-魔盾のガイア》の効果を発動。《D/S》が戦闘破壊される時、代わりにこのカード墓地へ送る」
「だがダメージは通る!!そして残りの攻撃でどちらのモンスターも粉砕できる!!喰らうがいい、アルティメット・メガトン・パウンド三連撃!!」
主人の命を受け機械仕掛けの超巨人がその剛腕を振るい、全てを粉砕する。
幻影より出現した盾使いさえも塵にするその一撃は、凄まじい衝撃となり防壁さえも超え遊刻の命を削り取る。
「ぐっ、ぬおおおおおおおっ!!!」
《古代の機械超巨人》ATK5100 VS《D/S-ZERO》DEF0
《古代の機械超巨人》ATK5100 VS《D/S-ZERO》DEF0
《古代の機械超巨人》ATK5100 VS《D/S-揺火のマルア》DEF1800
遊刻LP8000→2900→500→500
決闘場に爆音と遊刻の叫びが響き、砂煙と衝撃波が舞い上がる。
砂煙が晴れたフィールドには合体巨人のみが残っていた。
「仕留め損なったか...だがライフは風前の灯、モンスターもゼロ。お前に勝ち目はない。さっさとサレンダーをしろ」
誰の目から見ても圧倒的な盤面とライフの差。
大地はサレンダーを迫る、だが...
「サレンダー...?ハッ、まだ俺のライフは尽きていない。それにこれほどの強敵に背を向けるなど、そんなくだらんマネをする訳が無い...!」
その瞳の炎が消えることはなく、その闘志が揺らぐことはなく。
まだそこに立ち続ける一人の決闘者がいた。
「何故だ...何故そうまでして闘う!何が目的だ!お前の父を、お前自身を苦しめた世界への復讐か!?」
「復讐、か...考えたことがないわけじゃない。だがそれがどこまでも無意味ということは理解している。俺が闘う理由は、俺という存在の証明だ。俺を、俺達を否定した世界に!俺という存在を...俺の決闘を刻み込む!その道の途中に立ち塞がるものがあるのなら、その全てを捻じ伏せる!!」
叫ぶ。決して揺らぐことのない意志を。一点の曇りのない己を。
目の前に立つ者の問いかけに対し、今自分と全力を尽くして闘う者への感謝と礼儀を込めて。
これより存在証明を果たす、自分を...自分達を見捨てた世界の全てに。刻み込むように。
『俺が決闘をする理由?そんなの、楽しいから!ってのが一番だけどな。でもそれ以上に、俺は決闘でこの世界に俺という存在を刻み込みたい。俺が生きていたっていう確かな証拠を残したいんだ』
脳裏に走るのは、過去の記憶。
かけがえのない友との、何気ないながらも忘れることのない日常の記憶。
彼が語った言葉と、目の前で闘う者が語る言葉。全く同じものを決闘に望む者の慟哭を受けてーー
「そうか...ならば、この私に刻んでみせろ!貴様の決闘を...貴様の勝利で!!私もそれを全力で捻じ伏せよう!カードを2枚セットし、エンドフェイズに《暴走機貫》の効果を発動!このカードを破壊し、墓地の《機械巨人》を除外することで、デッキから《リミッター解除》を場にセットする!!これでターンエンドだ!!」
遊刻
LP:8000→500
手札:3→2
場
モンスターゾーン:なし
魔法・罠ゾーン:伏せカード1枚
大地
LP:8000
手札:5→3
場
モンスターゾーン:《古代の機械超巨人》攻撃表示
:《古代の機械素体》攻撃表示
魔法・罠ゾーン:伏せカード3枚(《リミッター解除》+2枚)
立ちはだかるのは圧倒的なパワーを誇る合体巨人。
更にはその攻撃力を倍加させる機械族必殺のカードに加え2枚の伏せカード。
このターンで倒すことができなければ、敗北は必至だろう...
だがしかし、だからこそーー
(この状況を返すために必要な最後の一手...引き当てる!!)
「俺のターン...ドローーッ!!」
これが、勝負を決める運命の一枚。
己の魂にも等しき存在であるデッキが導き出した”答え”はーー
「フッ.....この決闘、俺の勝ちだ!魔法カード《死者蘇生》を発動!!墓地より《D/S-ZERO》を特殊召喚!!」
《死者蘇生》...数多くの決闘にて、劣勢を優勢に、敗北を勝利へと変えてきた古来より存在する最強のカードの一枚。
墓地に眠る魂を敵味方問わず蘇らせる輝きが、今再び黒き影を戦場に呼び覚まし、更なる力をその手にもたらさんとする。
「《ZERO》の特殊召喚成功時の効果!《D/S》カードを手札に加える!」
「通さん!カウンター罠《
「ーーカウンター罠《異次元消失》*!フィールドに《D/S》モンスターが存在する状態で相手が効果を発動した時、それを無効にし除外する!このカードは自分ターン中のみ、墓地の《D/S》モンスター2体を除外することで手札から発動できる!《マルア》と《ガイア》を除外だ!」
黒い影に対して、警告音と共にレッドランプを光らせた機械の軍隊が迫るが、手札という異次元から飛び出してきた闇に飲まれ消滅していく。
刹那の攻防を制したその手には、勝負を決めるための力が宿る。
「《ZERO》の効果で《D/S-魔剣のアルグ》*を手札に!更に《ZERO》をリリースし、手札から《アルグ》を特殊召喚!その効果で相手の場の魔法・罠1枚を破壊する!手札から伏せた方のカードだ!」
「ならば対象となった《
魔剣士が伏せカードを斬り伏せようとするが、その刃が到達する寸前に素体を巻き込んで大爆発を起こす。
魔剣士は間一髪のところで爆発を避け主の元に戻るが、煙から機械仕掛けの巨人が鈍い唸りと共に立ちはだかる。
「最高だよ...ここまで俺とやりあえるヤツと戦えて...!!だが既にッ!この拮抗を破る1枚が俺の手にはある!」
「....っ!」
正に一進一退、しかし分厚い壁。
攻めても攻めきれず、それ以上の反撃で相手を叩き潰す...そんな相手との決闘が、この場にいる者達に、自分自身に刻まれている。
それに全霊の感謝を示すように...そして、この闘いを終わらせるべく、その1枚を手札から抜き取る。
「これが、この決闘に終止符を打つ異次元の力。彷徨える魂よ、今我が写身と共鳴せよ!!《
天へと掲げられた1枚が、漆黒に輝く。
それが開くは異次元への扉、それが起こすのは異次元との共鳴。
その鍵となる零の名を冠する存在が、深淵より蘇る。
「その効果により、手札・墓地・除外ゾーンのいずれかから《D/S-ZERO》を特殊召喚!その後《D/S-ZERO》とフィールドまたは墓地のモンスターを素材に、EXデッキの《D/S》一体を特殊召喚する!!俺はフィールドの《ZERO》と《魔剣のアルグ》の二体を融合する!!」
「なっ...融合召喚だと!?」
フィールドに出現したその渦は、世界が知る融合召喚の渦とは異なるモノ。
幾重にもモンスターを混ぜ合わせる力ではなく、零の名を冠する影に異なる存在を共鳴させ、重ね合わせ、まだ見ぬ存在を常世に現出させるモノ。
「我が身に刻まれし苦痛よ、異次元の力と共鳴し...古き業を断ち切る刃となれ!!融合召喚!!」
その詠唱が導くのは破断の刃。
眼前に聳える壁を、行手を阻む業を断ち切る叛逆の力。
我が身に受けし傷さえも糧に、その剣は輝く。
「現れろ!レベル8《NEO-D/S アルグレストZERO》!!」
『フウッ...ハッ!!』
その身に刻まれし幾多もの傷は、想像も出来ないほどの戦いと苦痛を経てきたことを示し。
その手に携えし大剣を闇よりも深い漆黒に煌めかせ、己を使役する主と同じ黒と緑の眼で相手を見据え...ここに現出する。
《NEO-D/S アルグレストZERO》
レベル8 闇属性 戦士族 融合 ATK2800
「これが...貴様のエースモンスターか...!」
二体の機械巨人の前に立つ小さな剣士。だがそれが放つ威圧感は普通の戦士のそれを超えていて...
この勝負に決着をつけるであろう渾身の切り札の登場に、この場にいる全ての決闘者は固唾を飲んでいた。
「《D/S-resonance》で特殊召喚されたモンスターは各ターン2回まで破壊されない...これで全ての準備は整った!バトルフェイズ!《アルグレストZERO》で《超巨人》に攻撃!!」
《NEO-D/S アルグレストZERO》ATK2800 VS《古代の機械超巨人》ATK3300
「えっ!?」
『何考えてんのよアイツ!?』
異次元の魔剣士が合体巨人へ刃を振わんと肉薄する。
だがしかし、攻撃力では合体巨人の方が僅かに上回っている上に伏せカードがわかっている今、多数の人間の目にはそれはただの蛮行に見えた。
(この攻撃力差での攻撃...考えられる戦術は二つ。一つ、攻撃力を増減させることによる純粋な戦闘での突破。二つ、速攻魔法や罠、モンスター効果などの搦手による除去。奴の手札はまだ残っている、そして融合モンスターの効果はわかっていない...どちらの可能性もあり得るが果たして奴がこの状況で搦手による決着を望むか...?否!奴が望んでいるのは真正面からの決着!己の決闘を貫き通した果てのもの!!)
「ならば、最大の一撃で沈めるのみ!《リミッター解除》を発動!私の場の機械族全ての攻撃力を倍化させる!!さらに墓地の《壊抗重撃》を除外!この戦闘で与えるダメージは2倍になる!!」
《古代の機械超巨人》
ATK3300→3300×2=6600
《NEO-D/S アルグレストZERO》ATK2800 VS《古代の機械超巨人》ATK6600
制限解除。ターン終了時に破壊される代わりに出力制限がなくなり、その巨躯に眠る全てのエネルギーが解き放たれる。
前のターンとは異なる、己の全てを投げ打つ完全なる暴走状態。
「構わん!行け、《アルグレストZERO》!!」
(やはり突っ込んでくるか!さぁ、どんな手で突破してくる!?)
巨人の剛腕と魔剣士の刃が衝突し、凄まじい衝撃波が発生する。
二体のモンスターは最初は拮抗しているように見えたが....
リミッターの外れた巨人の力は凄まじく、残った腕を振るい”魔剣士を殴り飛ばした”。
「.....」
「なっ...なぜ、何もしない!?」
そう、”魔剣士を殴り飛ばした”のだ。
一切の抵抗もなく、圧倒的な力の前に、ただ打ちのめされてしまったのだ。
その攻撃力の差3600、更にそれが倍になり、凄まじい衝撃と共に遊刻の命を粉砕せんと迫り来る。
その刹那ーー
『ウオオオオオオオッッッ!!!!』
戦士の咆哮が、その痛みを喰らい尽くした。
「この瞬間《アルグレストZERO》の効果発動、1ターンに1度俺がダメージを受ける時、それを0にしその数値を自身の攻撃力に加算する!!
「受けるダメージを攻撃力に変換するだと!?私のカードにカウンターをしなかったのは、この効果を最大限に活かすためか!?」
《NEO-D/S アルグレストZERO》
ATK2800→2800+7600=10400
主と己に襲い来る痛みを飲み込み、漆黒の剣はよりその煌めきを強くし、己の身の丈以上の大剣へと変化した。
「攻撃力10400!?」
『めちゃくちゃな効果ね!?』
観客席のどよめきを他所に、遊刻は更なる効果の宣言を行う。
「更に相手モンスター1体を選択し、そのモンスターと戦闘を行う!再び《超巨人》へ攻撃!!」
《NEO-D/S アルグレストZERO》ATK10400 VS《古代の機械超巨人》ATK6600
(攻撃力の大幅アップと連続攻撃...まさに異次元級の攻撃特化モンスター...!だがこれだけでは、私のライフは削りきれん!何を残している...!!)
剣士の大剣と巨人の剛腕が再びぶつかり合う。
さっきまでとは比べ物にならない切れ味となった刃が、ついに腕を一本切り落とす。
だがそれだけではトドメを刺すことはできない。
巨人が再び複数の腕で奇襲を仕掛けたその瞬間。
「
その叫びが響いた瞬間。迸る鮮血が、刻まれし痛みが。
紅蓮の刃となり、襲い来る剛腕を斬り伏せた。
「なっ...何が起こった...!?」
「《アルグレストZERO》の更なる効果。前のターンに自分が受けた最も大きいダメージの数値分、ターン終了時まで攻撃力をアップする」
「前のターンに受けた最も大きいダメージ...ということは!!」
「《ZERO》と《超巨人》の戦闘で発生した5100のダメージが加算される。よって《アルグレストZERO》の攻撃力はーー!」
《NEO-D/S アルグレストZERO》
ATK10400→10400+5100=15500
「15500だと!?」
「これで終わりだ!《アルグレストZERO》の攻撃!!!!」
天高く跳躍する双剣の戦士。
これが我らの闘いだと、我らはここに生きていると。
長き闘いの始まりを世界に刻み込むように、その剣で眼前の巨人を両断した。
「ぐっ...ぬあああああああっっっっ!!!!」
大地LP8000→0(ー900)
両断された巨人が爆散し、その衝撃と爆風が大地のライフを消し飛ばす。
それを鎮めるかのように決闘の終わりを告げる無機質な機械音が響く。
膝をつく者と、立ち続けている者。勝者と敗者がここに決定した。
「....私の策を読み切り、強大な力に正面から打ち勝つ。見事な決闘だった」
「...ありがとうございます。俺も、父さんが常々話していたライバルと闘えてよかった。また一つ、俺の決闘を刻み込むことができたしな」
「あいつが話していた...か...」
そう言って大地は、目を閉じ何かを考え始める。
しばらくの間の沈黙を経て、再び遊刻を見据え言葉を紡ぎ出す。
「これで試験は終わりだ。結果は後日連絡するが...ここまでの決闘をしたやつを落とすようなマネはしないだろう...だが、学園に来てからが、お前にとって本当の闘いになるだろう。」
「覚悟はしている。たとえどんな相手が来ようと、俺は俺の決闘をするだけだ」
「フッ...やはり親子、ということか...お前がこの学園でどのような道を進むのか、教師として...一人の決闘者として見届けさせてもらおう」
「あぁ、そのつもりだ。それでは失礼する」
そう言って遊刻は試験会場を後にする。
その背を見てようやく皆我に返り、【天理】が学園の教師に勝てるわけがないと、それに同調する者も現れ始める。
その中で...
「【天理】の子供...あの人について知るためにも、決闘者として先に行くためにも...あいつとは何度も闘うことになりそうね...」
その名との間にある因縁、その先にあるものに想いを寄せる者...
「見つけたぞ...ヤツこそが、俺達の渇望を満たすのに相応しい決闘者...!!」
満たされぬ渇望と抑えきれない闘志を燃えたぎらせる者...
『あいつ...とんでもない決闘者だったわね...』
「うん...それに...」
(これが反応してるってことは...彼が母さんの言っていた...?)
それぞれがそれぞれの思惑を浮かべながら、試験は終了を迎える。
これが決闘学園に、世界に刻まれる新たな決闘の物語の序章となることを、誰もが知らないままに...