遊戯王engrave   作:Kと名乗る者

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ヒロイン登場・デュエル回です
シンクロっていいですよね...口上考えるのが楽しいんじゃあ...


水天令嬢

決闘学園...数多くある決闘者育成機関の中で日本最大級にして最高峰のこの場所に、新たに足を踏み入れる者達がいた。

未来の決闘者達の挑戦と成長を期待するように、そして厳しく鍛えようという心情を隠すことなく圧として放つ教師達。

それに屈せず己の夢を叶えんとその地を踏み締める新入生達。

ここで行われるのは決闘学園高等部の入学式。

今日からの三年間の学園生活の始まりとなるその式典はつつがなく進んでいく。

 

(流石は最高峰と呼ばれる学園、式典ひとつをとっても格式の高さが窺えるな。)

 

その中で一際強い存在感を放つ少年ーー天理遊刻も静かに式を見ていた。

周りの視線には気づいているがなんともないと受け流し、これからの学園生活で戦うことになるであろう強者達の気迫を感じていた。

 

(やはりここに来るという選択肢は間違ってはいなかった...ここでの闘いは、必ず俺達を世界に刻むための大きな礎となる...!!)

 

『では最後に、学園長からの挨拶です。学園長、お願いします。』

 

その声に呼ばれ、一つの足音が壇上へと近づいていく。

その足音が、緊張と浮ついた心を沈めさせる。その歩みが、壇上へと視線を惹きつけていく。

空に流れる星を想起させるかのような銀の長髪、透き通るような白い肌、全てを見透かすかのような深みを持つ紅の瞳。

そしてその美貌以上の輝かしい栄光を持つ、決闘世界の全ての人間が知る人物...

 

『あー、あー...よし。みなさん、初めまして。決闘学園の学園長、【逢魔真(おうままこと)】です。』

 

決闘学園学園長にして、世界ランキング一位。

公式戦無敗記録最長保持者にして、最多勝利数記録保持者。

決闘世界最強の決闘者...【逢魔真(おうままこと)】その人である。

 

『若き決闘者の皆さん、ご入学おめでとうございます.....あんまりこういう堅苦しくて長いのは苦手だから、簡潔に言うね。君達が私達の領域に辿り着けるまでに強くなることを期待しているよ。ここを卒業するまでに...潰れたりはしないように。では。』

 

凄まじい重圧を持つ言葉が、確かな期待と共に生徒達の耳朶を打ち肉体の内側に重くのしかかる。

舞台の袖に消える前の一瞬、数名と真の目が合う。

 

「....ッ!?」

 

その瞳の奥底から放たれる”何か”に心臓を握り潰されるかのような感覚を覚える。

 

(これが...世界最強...!いずれ越えねばならない壁!!)

 

(なんて重圧...!これが...全ての決闘者の頂点...!)

 

(やはりそうだ!この場所こそが...俺の渇望を満たせる場所!!ヤツもいずれ...!)

 

(【逢魔】...いずれ彼女とも、戦わないといけない...!)

 

『ありがとうございました。以上をもちまして、入学式を終了させていただきます。続いて特殊プログラムを行います』

 

「特殊プログラム...?」

 

入学式が終わったばかりだというのに何かするというのだろうか?

ざわめく生徒達を鎮めるように、声がマイク越しに響き始める。

 

『今から皆さんには学園がランダムに指定した相手と決闘をしてもらいます。この決闘によってクラス分けや支給されるDP(デュエル・ポイント)が決まりますので、全力を尽くしてください』

 

決闘学園にもクラスの概念はある。

優秀な成績を収めることができれば上のクラスに行く事もできるが、その条件は厳しい。

かと言って最初に上のクラスに行ったとしても、そこで良い成績を出せなければ下のクラスへ落ちてしまう。

しかし、それらを考慮したとしても序盤に上のクラスに行くことへの利点は大きい。

DP(デュエル・ポイント)…購買で食品やカードパックを購入したり、一部施設の使用に必要となる学園独自の電子通貨。

クラスが上であればあるほどこれの支給額が増え、学園生活を送りやすくなる。

それだけでなく、上のクラスであれば常に高いレベルの決闘ができる。

 

(要するに...これからの学園生活を左右しかねる決闘、というわけか。面白い)

 

『期限はこれより1時間半。決闘が終わり次第次の相手が表示されます。時間の限り、良い決闘を。それでは.....開始!!』

 

その宣言を皮切りに、ここは文字通りの戦場と化した。

 

「バトルだ!アルグレストZEROで攻撃!天業魔断!!」

 

「うわあああああああっっっ!!!」

 

同級生A

LP0

 

「これで9人目か」

 

「うぅ....チクショウ...!」

 

「マジか...天理のやつ、1ポイントもライフを減らしていない...」

 

「やっぱり...つえぇ...」

 

相手のライフが0となり、決闘の終わりを告げる無機質なブザーが鳴る。

ここまで遊刻はただの一度もダメージを受けずに決闘を終えている。

 

(ただ勝つだけでは高い評価はされんだろう...ライフを保ちながら速攻で倒し、決闘の回数を稼ぐ。これがこの特殊カリキュラムのポイント、だな)

 

既に9人程の相手を倒し、時間的にも次が最後の相手になるだろう...そんな風に考えていた時。

 

「あなたの相手は私よ」

 

後方から声が聞こえ、そちらに振り向くと一人の少女がこちらへと歩いてきていた。

海のような青色の長髪と眼、目を惹き付けるスタイル。

それは決闘盤に表示されている人物の容姿と一致していた。

 

「初めまして、よね。私は【海神波華(わだつみみか)】よ。よろしく」

 

その名を聞いた瞬間、周囲の学生達のざわつきがより一層大きくなる。

海神(わだつみ)】....この決闘世界に名家としてその名を刻むシンクロ使いの一族。

数多くのプロ決闘者を世界に輩出し、世界ランキング上位に必ずその名を連ねる。

この世界の決闘者でその名を知らない者はいないだろう。

 

「まさか、入学して早々にシンクロの名家と戦えるとはな。運が良い」

 

「私もこんなに早くあなたと決闘できるとは思わなかったわ。まぁこんなカリキュラムでなくても、あなたに挑むつもりだったけどね...」

 

「そこまで高く評価されているとはな、光栄だ」

 

「えぇ、あなたの実力を高く見ているし、興味があるのも事実。それに.....あなたの父親について、色々知っている...というのもあるわ」

 

「何...?」

 

突然出てきた父というワードに、ざわりと感情の波が揺らぐのを感じた。

 

「知っている、と言ってもあの事件の真相は知らないわ。けど私は、あなたの知らない彼を知っている。そしてその彼に育てられたあなたと、誰よりも彼の決闘を間近で見ていたあなたと決闘をしたいの」

 

「なるほどな....」

 

「でもそれ以上に、あなたという強い決闘者と闘いたい。そんな本能が、私の中で疼いているの。あなたもそうじゃない?だから、あなたに決闘を挑むわ!天理遊刻!!」

 

射るような眼差しを向け、そう言葉を紡ぐ波華。

本能が疼いている、それはーー

 

「ふっ、そうだな。ならば俺からも言わせてもらおう!海神波華!お前に決闘を申し込む!!」

 

「そうこなくっちゃね!行くわよ!」

 

ここに、二人の決闘者が揃った。

互いに己の決闘盤に魂に等しき存在であるデッキを装填し、盤は決闘モードへと変形する。

ソリッドビジョン・システムが起動、8000のライフが表示されると5枚のカードをデッキから引き抜く。

そして宣言する。闘いの始まりを示す言葉をーー!

 

「「決闘!!」」

 

 

 

「「決闘!!」」

 

LP:8000

手札:5枚

先行ー天理遊刻

後攻ー海神波華

 

「俺のターン。モンスターをセット、カードを2枚伏せターンエンドだ。」

 

遊刻

LP:8000

手札:5→3

EXモンスターゾーン:なし

モンスターゾーン:《???》裏側守備表示

魔法・罠ゾーン:伏せカード2枚

 

波華

LP:8000

手札:5

EXモンスターゾーン:なし

モンスターゾーン:なし

魔法・罠ゾーン:なし

 

試験での決闘と同じく、最低限のカードだけを場に出しターンを終える遊刻。

それを油断と見るか盤石と見るか...少なくとも目の前の少女は、それを油断として見ることは出来なかった。

 

「試験と同じように、私の攻撃を耐えて次のターンに巻き返そうってわけね...そう上手くいくかしら!私のターン、ドロー!!」

波華

手札5→6

 

 

この決闘世界において誰もがその名を知る名家の令嬢がデッキからカードを引き抜く。

これからの彼女の一挙手一投足に注目が集まっていた。

 

「私は魔法カード《水天の目覚め》*を発動!デッキからレベル4以下の《水天》モンスターである《水天の騎士》*を手札に加え、そのまま召喚して効果を発動!デッキから《水天の巫女》*を守備表示で特殊召喚!」

 

《水天の騎士》

レベル4 水属性 天使族 ATK1800 

 

《水天の巫女》

レベル3 水属性 天使族 チューナー DEF500

 

勇ましい声と共に現れるのは、青い鎧にその身を包む若い騎士のモンスター。

その剣を天に掲げ、同胞ーー祈りを捧げる巫女装束の少女を呼び出す。

 

「1枚のカードからチューナーと非チューナーを揃える、流石はシンクロの名家といったところか。早速シンクロ召喚か?」

 

「家柄関係なくこれくらいできなきゃシンクロ使いなんて名乗れないわよ。それとお楽しみはまだ先よ。《水天の騎士》に装備魔法カード、《水天の双剣》*を装備。更に速攻魔法《サイクロン》を発動し伏せカードを1枚破壊するわ。さぁ、バトルフェイズよ!」

 

装備魔法で自分モンスターを強化し、更なる魔法で相手の伏せを除去。

お手本のようなプレイングを見せながらも、シンクロ召喚をせずバトルフェイズを宣言する波華。

ここからどのような攻防を繰り広げるのか、周囲の者は釘付けになっていた。

 

「《水天の騎士》でセットモンスターを攻撃!」

 

《水天の騎士》ATK1800 VS セットモンスター DEF?

 

若い騎士が二本になった剣を構えセットモンスターに接近、水流を纏った一閃で斬り伏せ遊刻を守る壁は消えた.....かに思われた。

 

「破壊された《|D/S-欺札のマーレ《ディメンション/サーヴァンス-あざふだのマーレ》》*の効果を発動。デッキからレベル4以下の《D/S》モンスターを特殊召喚する。我が写身をここに、《D/S-ZERO》。その効果でデッキから《D/S-リトラクション》を手札に」

 

《|D/S-欺札のマーレ《ディメンション/サーヴァンス-あざふだのマーレ》》

レベル4 闇属性 魔法使い族 DEF0

 

《D/S-ZERO》

レベル4 闇属性 悪魔族 DEF0 

 

破壊されたかに思われた奇術師がケタケタと笑いながらカードをばら撒く。

そのうちの1枚が遊刻のモンスターゾーンに影となって出現した。

 

「まんまと利用されたってわけね...でもそいつを残すつもりはないわ!戦闘で相手モンスターを破壊した《騎士》は攻撃力が500アップし、《双剣》を装備したモンスターは2回攻撃ができる!《D/S-ZERO》を攻撃!」

《水天の騎士》ATK2300 VS《D/S-ZERO》DEF0

 

「自身の効果で特殊召喚したモンスターが攻撃対象となったことで《欺札のマーレ》を墓地から特殊召喚し、自身に攻撃を誘導する。更に罠カード《D/S-クロス・シールド》*を発動。これで俺の場の《D/S》モンスター全てに1度きりの破壊耐性を与える。」

 

再び騎士が敵を倒さんと剣を振り下ろすが、それを嘲笑うように奇術師が登場。

掲げたカードからエネルギーの盾を作り攻撃を防いでしまった。

 

「流石の防御力ね...でもその程度じゃ私は止められないわ!見せてあげるわ、私のシンクロを!《水天の巫女》の効果発動!バトルフェイズ中にこのカードを素材とした《水天》モンスターのシンクロ召喚を行う!レベル4の《水天の騎士》にレベル3の《水天の巫女》をチューニング!!」

 

祈り捧げる少女が儚い光を放ち、3つの輪に変化する。

そしてそこに騎士が飛び込み、2体のモンスターの星が同調する。

これがモンスター同士を同調させ新たなモンスターを生み出す召喚ーーシンクロ召喚だ。

 

「蒼き祈りが剣に宿り、聖流疾る一閃となる!シンクロ召喚!闇を切り裂け、《水天の聖騎士》*!!」

 

光の向こうから現れるのは成長した騎士。

金のラインの入った白と青の鎧に、より輝きを増した剣。

その勇敢な顔つきは彼が数々の戦いを経てきたことを物語っている。

 

《水天の聖騎士》

レベル7 水属性 天使族 シンクロ ATK2700

 

「バトルフェイズ中のシンクロ召喚か、魅せてくれるな」

(EXモンスターゾーンに出してきたか...今後の展開のためにか?)

 

「それだけじゃないわ、シンクロ素材となった《巫女》の効果で《聖騎士》はこのターン1度だけ破壊されない。更に《双剣》は装備モンスターがシンクロ素材となって墓地へ送られることでこのカードが墓地へ送られた場合、自分の場の《水天》シンクロモンスターに装備できるわ!」

 

少女の祈りと剣の加護が騎士に宿りその力を増幅させる。

威風堂々と輝くその姿は『聖騎士』のものであった。

 

「《水天の聖騎士》で《D/S-ZERO》に2回攻撃!更に《聖騎士》が戦闘で相手モンスターを破壊した場合、攻撃力を500アップしながら追加攻撃ができる!そのまま《マーレ》にも攻撃!」

 

《水天の聖騎士》ATK2700VS《D/S-ZERO》DEF0

《水天の聖騎士》ATK2700 VS《D/S-ZERO》DEF0

《水天の聖騎士》ATK3200 VS《D/S-欺札のマーレ》DEF0

 

聖騎士が二本の剣をクロスさせ、その力を集約させる。

臨界に達したそれを勢いよく振り下ろすと斬撃がX字の水流となって遊刻のモンスターたちを飲み込み、破壊した。

 

「《マーレ》を破壊したことで更に攻撃力を500アップ!攻撃力3700となった《聖騎士》でダイレクトアタック!聖流一閃!!」

 

二本の剣を一つに重ねた大剣から放たれる一閃、まさに聖なる竜の如き勢いをもつ斬撃が遊刻のライフを削り取った。

 

「ぐあああっ!!」

 

《水天の聖騎士》ATK3700 VS 遊刻:LP8000

 

遊刻:LP8000→4300

 

「すげぇ!バトルフェイズ中にシンクロ召喚したぜ!」

「しかも装備カードとの組み合わせでモンスターを全滅させましたわ!」

 

「でも...天理のやつもダメージを一回だけに抑えた...」

「どんな防御力してんのよ...」

 

バトルフェイズ中のシンクロ召喚にモンスター効果と装備カードを駆使した波華の連続攻撃。

そこまでの攻撃を喰らってもダメージを1度のダイレクトアタックだけに抑えた遊刻の防御。

見物していた生徒たちのボルテージを上げるには十分すぎる攻防だった。

 

「バトルフェイズ終了時に《聖騎士》の効果を発動するわ。このターン戦闘で破壊したモンスターの数だけデッキからカードをドロー。メインフェイズ2、永続魔法《水神の護符》を発動。カードを2枚伏せてターンエンド」

 

遊刻

LP:8000→4300

手札:3→4

EXモンスターゾーン:なし

モンスターゾーン:なし

魔法・罠ゾーン:なし

 

波華

LP:8000

手札:5→3

EXモンスターゾーン:《水天の聖騎士》攻撃表示

モンスターゾーン:なし

魔法・罠ゾーン:《水天の双剣》(《聖騎士》に装備)

                      《水神の護符》

                      伏せカード2枚

 

「凄まじい攻撃力だな...まさかフィールドを一掃されるとは思わなかった。だが【海神】らしからぬ決闘だ、面白い。あの一族はどちらかというと俺のスタイルの方が近いだろう」

 

遊刻の言う通りだ。

【海神】の決闘は、まさに『大海』と称されるもの。

相手の行動を受け止め、強大なる波が如く攻めで押し流す...つまり最初の一手は『防御』なのだ。

 

「最初から防御に回るのは性に合わなくてね。攻めて攻めて攻め抜く、それが私の決闘よ。そこに家のことは関係ない、私は私を貫くだけよ」

 

「いいな、そうでなくては面白くない!俺のターン、ドロー!」

(俺の場を一掃しただけでなく手札を増やした。更にあの永続魔法がある限りやつの水属性モンスターは効果で破壊されない。このターンでどれだけ準備を整えられるか、だな)

 

遊刻

手札4→5

 

少しの逡巡を経てカードをドロー、そしてすぐさまプレイに移る。

 

「前のターン手札に加えていた《D/S-リトラクション》を発動。墓地または除外ゾーンに存在する《D/S》1体をデッキに戻しカードを1枚ドローする。《マーレ》を戻してドロー。《手札抹殺》を発動。互いに全ての手札を捨て、その枚数分ドローだ。更に墓地へ送られた《代償の宝札》の効果で2枚ドロー」

 

《代償の宝札》

通常魔法(未OCGカード)

 

遊刻

手札5→4→6

 

波華

手札3→3

 

(3枚の魔法カードを駆使し一気に手札を入れ替えた...何を狙っているの...?)

 

「手札の《|D/S-冷魔のクアン《ディメンション/サーヴァンス-れいまのクアン》》の効果。このモンスターは相手の場の魔法・罠1枚を墓地へ送ることで特殊召喚できる。《水神の護符》を墓地へ送り、特殊召喚」

 

《|D/S-冷魔のクアン《ディメンション/サーヴァンス-れいまのクアン》》

レベル4 闇属性 魔法使い族 DEF1000

 

波華のフィールドに浮遊する護符を氷雪が飲み込んだかと思うと、黒と水色のローブを纏った男の魔法使いが現れた。

 

(《水神の護符》がこうもあっさり...攻めてくる!?)

 

「カードを3枚セット、ターンエンドだ。」

 

遊刻

LP:4300

手札:5→2

EXモンスターゾーン:なし

モンスターゾーン:《D/S-冷魔のクアン》守備表示

魔法・罠ゾーン:伏せカード3枚

 

波華

LP:8000

手札:3

EXモンスターゾーン:《水天の聖騎士》攻撃表示

モンスターゾーン:なし

魔法・罠ゾーン:《水天の双剣》(《聖騎士》に装備)

        伏せカード2枚

 

(まだ攻めてこない...けれど、じわじわと追い詰められているような...このままアイツのペースに乗せられる訳には行かない!)

「このターンで決めてやるわ!私のターン!」

 

水流が如き力強いドロー、宣言通りにこのターンで終わらせるという気概が溢れ出ていた。

 

「私は永続罠《流転蘇生(るてんそせい)》*を発動!前のターンにシンクロ素材として墓地へ送られた《水天の巫女》を特殊召喚!更に手札から《水天の乙女》*を召喚!」

 

《水天の乙女》

レベル4 水属性 天使族 ATK1600

 

「レベル4の《水天の乙女》にレベル3の《水天の巫女》をチューニング!蒼き祈りが誇りに宿り、障壁を穿つ聖流となる!!シンクロ召喚!!レベル7、《水天の戦乙女》*!!」

 

《水天の戦乙女》

レベル7 水属性 天使族 シンクロ ATK2500

 

巫女と乙女、二人の少女の星が同調して現れたのはレイピアを携えた戦乙女。

聖騎士と同じく金のラインの入った白と青の鎧を纏い、凛々しくも雄々しい水の翼を翻す。

 

「この瞬間《巫女》の効果を発動!」

 

「また破壊耐性を与えるつもりか、だがそれでは逆転はできない」

 

「誰が《巫女》の効果がそれだけと言ったかしら?この効果は二つの効果から一つを選んで発動するもの。耐性付与かトークンの特殊召喚かをね!《戦乙女》の攻撃力と守備力を700下げてレベル3の《水天トークン》を特殊召喚!」

 

《水天の戦乙女》

ATK2500→1800 DEF2000→1300

 

《水天トークン》

レベル3 水属性 天使族 ATK0

 

「まだ終わらないわよ!《乙女》が《水天》モンスターのシンクロ素材として墓地へ送られた場合、《乙女》以外のシンクロ素材となったモンスターを墓地から特殊召喚する!蘇りなさい、《水天の巫女》!」

 

戦乙女から淡い光が漏れ出し、それが小さな天使へと変化する。

更に墓地を示す魔法陣から水流と共に巫女装束の少女が帰還、新たなシンクロ召喚の準備が整っていった。

 

「レベル3のトークンにレベル3の《巫女》をチューニング!蒼き祈りよ、穢れを祓う響きとなれ!シンクロ召喚、《水天の歌姫》*!」

 

《水天の歌姫》

レベル6 水属性 天使族 シンクロ ATK2100

 

再び現れた光の輪より降り立ったのは、美麗なる歌声を響かせる天使。

その旋律は清らかな流れとなり、波華のシンクロモンスター達を包み込んだ。

 

「このモンスターのシンクロ召喚に成功した時、私の場のモンスター全ての攻守の数値を元に戻す。更に《歌姫》がいる限り私の《水天》シンクロモンスター全ては効果で破壊されなくなるわ!」

 

《水天の戦乙女》

ATK1800→2500 DEF1300→2000

 

「すごい...あっという間にシンクロモンスターが3体に...!」

 

「耐性付与かトークン生成かを選べるチューナー、展開力に長けた下級モンスター...更に戦闘特化とそれを守るシンクロ、これほどのシンクロ使いが学園にいるとはな」

 

「試験用デッキとはいえ、学園の教師相手にワンショットを決めたあなたもなかなかだけどね。けど勝利は譲らないわ!魔法カード《水天の螺旋流》*を発動!あなたの場の魔法・罠カードを私の場の《水天》シンクロの数に+1した枚数破壊する!私の場の《水天》シンクロは3体、よってあなたの場の伏せカードを全て破壊する!」

(彼の戦術は伏せカードなどで相手の攻撃を凌ぎ盤面を整えるカウンター戦術!ならまずはその要である伏せカードを消し去る!!)

 

3体のシンクロモンスターのエネルギーが1枚のカードに注ぎ込まれていく。

やがてそれは4つの螺旋状の水流となり遊刻の場に伏せられたカードを攻撃、爆発と水飛沫が巻き起こった。

 

「これであなたの防御は崩した!このバトルでーーっ!?」

 

勝利を確信した。3体のシンクロモンスターを呼び出し、相手の戦術の要を崩し。

けどそれさえもーー

 

「確かに、俺の戦術の要には伏せカードを使用した防御やカウンターがある。故に攻撃前にそれを狙うのは正解だ」

 

彼の思惑通りだった。

 

「しかし、俺がそれを警戒していないわけがない!リバースカード、ダブルオープン!《境界違エ(キョウカイタガエ)》*!!そして《ナイトメア・デーモンズ》!!」

 

2枚のカードが勢い良く翻り、その効力を発揮する。

 

「《境界違エ(キョウカイタガエ)》の効果で互いの墓地から魔法・罠を1枚選んで除外し、それと同じ種類のカードをデッキから発動可能かつ破壊されない状態でセットする。最もエンドフェイズに俺の場の魔法罠は全て除外されるがな。これでお前の墓地から《サイクロン》を除外し、俺のデッキから同じく速攻魔法である《D/S-resonance》をセットする。そして《ナイトメア・デーモンズ》の効果で《クアン》をリリースしお前のフィールドに3体の《ナイトメア・デモン・トークン》を特殊召喚!」

 

波華の墓地から1枚のカードが境界の裂け目に消え、別のカードが遊刻の場に伏せられる。

更に3体のシンクロモンスターを取り囲むように3体の悪魔が踊りながら出現した。

 

(しまった...もしもに備えて素材を展開するためにメインモンスターゾーンを開けていたのが裏目に出た...!それにあの融合魔法まで...ここは攻めるべきなの...!?)

 

「更に今破壊された《狂闘狂想曲》*の効果。相手モンスター1体を対象に、このターン攻撃を強要させる。《聖騎士》、お前だ」

 

「なんですって!?」

 

「さぁ、ショウタイムだ!バトルフェイズに《D/S-resonance》を発動!再び戦場へ舞い戻れ、我が写身よ!」

 

漆黒の輝きが放たれ、異次元への扉が開く。

この場にいる全員の記憶に刻み込まれたその力が、今ここに顕現する。

 

「《D/S-ZERO》を特殊召喚!そして《ZERO》を含めたフィールド・墓地のモンスターを素材にEXデッキから《D/S》を召喚する!素材にするのは《D/S-ZERO》と《D/S-冷魔のクアン》!」

 

「そのカードを止める手段はない...けど出てきたモンスターを封じることはできる!私のフィールドにシンクロモンスターが3体以上存在していることで罠カード《シンクロ・パニッシュ》*を発動!このターン、あなたはシンクロモンスター以外のEXデッキから特殊召喚したモンスターの効果を発動できない!融合しようとしても無駄よ!」

 

1枚のカードが翻ると共に、3体のシンクロモンスターから白い光が放たれる。

その光は色を奪い、白の力を持たないモンスターの力を封じ、遊刻さえも色が失われた...かに思われた。

 

「誰が融合召喚をすると言った?」

 

「えっ...?」

 

白の世界に、亀裂が走る。黒い力が漏れ出していく。

その黒が遊刻の色彩を取り戻していく。

 

「俺は『EXデッキから《D/S》を召喚する』とは言ったが『融合召喚をする』とは言っていない。俺が行うのは.....シンクロだ!!レベル4の《D/S-冷魔のクアン》に、レベル4のチューナーモンスターである《D/S-ZERO》をチューニング!!」

 

「嘘...これって...」

 

その手を天に掲げ、シンクロ召喚を宣言する。

それに呼応するように写身が黒い光の輪に変化し、その中に冷気を操る魔法使いが飛び込んでいく。

二つの星が同調し、二つの存在が共鳴していく。

影の写身が新たな存在、生命となってこの世界に顕現する。

 

「我が身に刻まれし冷血よ、異次元の力と共鳴し、闇さえも消し去る魔導を呼び覚ませ!!シンクロ召喚!!」

 

その詠唱が導くのは、凍えを操る魔導士。

その身に流れる冷血を魔法と変え、敵対する全てを凍てつかせる。

 

「現れろ、レベル8!深淵の凍結《NEO-D/S クアンターレZERO》*!!」

 

『.....』

 

黒い光の輪が魔法陣となり、そこから一つの影が飛び出す。

人、竜、悪魔、天使...その冷たき双眸で捉えた全てを凍てつかせ、葬り去る。

摩天の杖を振るいし魔導師が顕現した。

 

《NEO-D/S クアンターレZERO》

レベル8 闇属性 魔法使い族 シンクロ ATK2700

 

「私と同じ...バトルフェイズ中のシンクロ...!」

 

「目には目を、シンクロにはシンクロをだ。《クアンターレZERO》の効果発動!第一魔法”双無の吹雪(ツインレイ・ブリザード)”」

 

魔導師が杖を突き出すと魔導陣が現れ、紫と青の吹雪が放たれる。

その吹雪は敵対する騎士と乙女を呑み込んでいく。

 

「なんなの...っ!この...吹雪は...!」

 

「《クアンターレZERO》がシンクロ召喚に成功した時、相手のモンスター2体を選ぶ。そしてターン終了時までその内の1体の攻撃力の0に、もう1体の効果を無効にする。《聖騎士》の攻撃力を0に、《歌姫》の効果を無効にする」

 

「そんな...!」

 

吹雪に呑まれた騎士と乙女は力を失い、膝をつく。

聖騎士の覇気は凍りつき、加護を与える歌声はもう響かなくなっていた。

 

「《クアンターレZERO》第二魔法。相手のモンスターの攻撃力が0、もしくは効果が無効になった場合、相手の場の魔法・罠1枚を破壊し800のダメージを与える。《双剣》を破壊し800のダメージだ」

 

魔導陣から放たれる吹雪が氷柱へと変わり、騎士の持つ剣と波華に降り注ぐ。

騎士はかろうじて二本の剣で対抗するが一本を砕かれ、いくつかの氷柱が波華の身を削りダメージを与えた。

 

波華:LP8000→7200

 

「《狂闘狂想曲》の効果だ。《聖騎士》よ、《クアンターレZERO》に攻撃しろ」

 

《NEO-D/S クアンターレZERO》ATK2700 VS《水天の聖騎士》ATK0

 

「待って、《聖騎士》!今のあなたじゃ!」

 

「もうこの戦闘は止められない!やれ、《クアンターレZERO》!第三魔法”暗黒の氷躙(アイシクル・ダークネス)”!!」

 

黒を纏ったブリザードが聖騎士を凍てつかせ、それを闇の魔力が破壊する。

砕け散った聖騎士のかけらが降り注ぎ、その主の命を削り取った。

 

「くあああああっっ!!」

 

波華:LP7200→4500

 

「くっ...まだよ...まだ、私のライフは...!」

 

「いや、このターンで終わりだ。《クアンターレZERO》の最後の効果。このモンスターが自分のカード効果によって攻撃力が0になった、または効果が無効になったモンスターを破壊した時、そのモンスターの元々の攻撃力分相手モンスター全ての攻撃力をダウンさせる。そしてこの効果で攻撃力が0になったモンスターを全て破壊し、破壊したモンスター1体につき800のダメージを与える」

 

聖騎士を消し去った吹雪が勢いを増し、波華のフィールド全体を包み込む。

凍つき、消え去るモンスターの悲鳴とその魂が魔導師の生み出す陣へと吸い込まれ、禍々しく冷たい闇のエネルギーへと変わっていきーー

 

「《聖騎士》の攻撃力は2700…私の場のモンスター全てが破壊される...!」

 

『更に《ナイトメア・デモン・トークン》が破壊された時、プレイヤーは800のダメージを受ける...!』

 

「《クアンターレZERO》の効果で3200、《ナイトメア・デモン・トークン》の効果で2400。合計ダメージは...5600…!」

 

「これで終わりだ。最終魔法”滅びの氷災(ヘル・フィンブル)”!!」

 

ーー魔導陣より、溢れんばかりの氷災が炸裂した。

 

「うぅっ...ああああああああああ!!!」

 

波華:LP4500→0(−900)

 

聞き慣れた無機質なブザーが響く。

ソリッドビジョンが消え、元の景色へと戻っていく。

 

(私のシンクロモンスターと戦術の特徴を見抜き、それを封じた上で私と同じバトルフェイズ中のシンクロ召喚で倒す...)

「悔しいけど...完敗ね...」

 

拳を握り締め、悔しさを噛み締める。

この敗北と悔しさは、必ず次の糧になる。

そう直感したからだ。

 

「いい決闘だった、ありがとう」

 

「こちらこそ、自分の未熟さを知れるいい決闘だったわ。また闘ってちょうだい、負けっぱなしじゃいられないもの」

 

「あぁ、いつでも受けて立とう」

 

差し出された手を握り返し、再戦を誓い合う。

それぞれの思惑はあれど決闘が終われば礼儀を尽くす、それだけだ。

 

「そうだ、もし時間があればなんだが....」

 

「ん?」

 

「その...お前の知っている父さんのことについて、聞かせてもらえないか?」

 

「あぁ、いいわよ。元よりそのつもりだったしね。私も、あなたから彼の話を聞いてみたいわ」

 

「そうか、感謝する」

 

そう礼を言う彼は少し微笑んでいた。

 

(へぇ...そういう顔もできるのね...親子そっくり)

 

これからの学園生活は退屈はしなさそうだ、二人してそう思うのであった。

 




まだ謎のキャラが多いので頑張って続き書かねば...!!
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