Vol:? ルビコンの火種編   作:178

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燃え残ったモノ
学園とチンピラと案内人


“ここがルビコンの…どこ?”

 

先生がやってきたのはルビコン自治区の外周だった。だがそこにあるのは自治区の街並みではなく壁、それも何か乗り物を使わなければ超えることのできない様な高い壁が先生の行手を阻んだ。

電車や車を使って自治区に入るのが普通だが、何故か電車は通っておらず。ルビコンに通ずる道路はバリケードで封鎖されていたのだ。

 

“こういう場合は…もしもし?モモカ?”

 

『ん?何?先生』

 

“ルビコン付近の交通情報を調べてほしいんだけど”

 

『おっけ~、後で ポテ め い 味 あ れ?』

 

“モモカ?”

 

『通 が せ せい ちょ』プツッ

 

“困ったな…”

“どうにかして入り口を探さないと”

 

取り敢えず壁に沿って歩いてみるか、という単純な思考で歩き始める先生。確かに、外周ならば歩けばいつか入り口を見つけられるが、基本的にキヴォトスの学園は広大で、そこに壁の厚さを足せば途方もない距離になる。

だからこそ、これから起こることは先生にとって運がいいのかもしれない。

 

『コード5!外周に不審人物を確認!』

『直ちに確保せよ!』

 

“え!?”

 

周囲から聞こえるサイレンが先生の耳に突き刺さる。戸惑って暫くすると、遠くから大量の足音が聞こえてくる。先生が振り向く、そこにいたのは少し露出度が高いが、護れる場所はしっかり装甲で護っているスーツを着た少女達が、こちらに銃を構えていた。

 

「コード23、対象を確認した」

「コード31、どうする」

 

統率の取れた軍隊。ゲヘナの風紀委員会やトリニティの正義実現委員会の様な荒々しさは無く、冷静に状況を見て判断を仰ぐ。一人一人が無駄のない動きをし、中には他と装備が違う隊長格がいた。

 

「貴様は今、我々PCAに包囲されている。妙な動きをすれば」

 

“かっこいい!”

 

「…は?」

 

“…あ”

 

「…」

「隊長。本部から対象を捕縛せよとのことですが…隊長?」

「ッあ、ああ分かった。各員、対象を捕縛しろ」

「了解」

 

こうして先生は、少し滑稽ではあるが、ルビコン自治区内部へ入ることができた。

 

==========================

「どこに所属している?」

 

“連邦捜査部シャーレの顧問です…”

 

「そんなの聞いたことないぞ、デマカセ言ったんじゃないだろうな?」

 

現在先生は取調室にいた。そこで先生は対面に座っているPCAの生徒から詰問にあっていた。何故きたのか?どうやって来たのか?何故アポ無しで来たのか?三つ目は先生が“そっちに通信が出来ない、その原因の調査に来た”と言っても中々信じてもらえなかった。

 

「はぁ、埒が開かないな」

コンコン

「ん?入っていいぞ」

「失礼します」

 

扉がノックされたかと思うと、また違う生徒が入って来た。その表情は少し焦っている様だった。

 

「要件は?」

「はい。対象の拘束を解除し、自治区内に入れろ。だそうです」

「何?」

「実はですね…ゴニョゴニョ」

「…!?ほ、本当か?」

「はい…」

「…分かった。対象…いや【先生】の拘束を解除する」

 

“え?出れるの?”

 

「はい。その…すみませんでした」

 

どうやら誰かが先生を解放するように働き掛けたらしく、特に何か手続きをするまでも無く、先生は解放された。

 

==========================

 

先生はようやくルビコン自治区内の景色を見ることができた。そこはミレニアムに似た景観。ビルの上には、おそらくルビコン学園の企業のものであろう広告が並び。近場の中華料理店からいい匂いがしてくる。

文化的にも技術的にも発展している平和な街並みに先生は、この学園の裏に本当に悪事を企む存在が居るのだろうか?と思っていると。

 

「てめぇ!待ちやがれ!」

 

“ん?”

 

突如聞こえて来た怒号。そっちに振り返ってみると、生徒同士の喧嘩だろうか、一人の生徒がもう一人の生徒を追いかけていた。キヴォトスでは小さな喧嘩でも銃を撃つというのが日常だが、今回は珍しく追いかけっこに収まっているらしい。

生徒の喧嘩を治めるのも先生の仕事だ。と思い生徒に声をかけようとした先生だが、その生徒がこちらに向かって走ってくるのを確認した。

 

「邪魔だ!」

「あっおい!チッおっさん!逃げろ!」

“おっさん!?”

 

先生は生徒におっさんと言われたことがショックだったのか、激突寸前の生徒を目の前に反応が遅れてしまった。

 

「どけぇ!」

 

追いかけられている生徒は懐から拳銃を出し、それを先生に突きつけてくる。

今にも引き金を引かれそうになった時、目の前を大きな影が覆った。

 

「仕事増やすんじゃねぇ、殺すぞ」

 

女性にしては低く太いドスの効いた声がした瞬間。それを掻き消すほどの轟音がショットガンから鳴り響き、逃げていた生徒の頭が勢いよく地面に打ち付けられた。

 

「よくやったルタァ!」

「おいアナ!てめぇ何でこんな奴にてこずってんだ!?」

「あ”ぁ”!?こいつ無駄にすばしっこかったんだよ!」

 

“あの…”

 

「「何だ!?」」

 

“ありがとう。おかげで助かったよ”

 

二人の生徒は仲がいいのか悪いのか知らないが、取り敢えずお礼が言いたかった先生は二人に声を掛けたところ息ぴったりの怒号とガンが飛んでくる。それを気にせず先生はお礼を言う。

 

「お、おう。まだいたのかよ」

「お前、此処じゃ見ねえ顔だな」

 

“連邦捜査部シャーレって知ってる?”

“そこの顧問なんだよね”

 

「しゃーれだぁ?聞いたことねえ、ルタは?」

「いいやさっぽりだ。そういうことはイルナの方が詳しいだろ」

 

“やっぱり分からないんだ…”

 

「まあいいか。そんなことよりおっさん、助けてやったんだから言葉だけじゃなくて物もねぇとなぁ?」

「おいアナ。お前まさかたかる気か?」

「良いじゃねえかよ。あたしら今月危ねぇだろ?」

「…まあそれもそうだな」

「決まりだな。つうわけでおっさん、ちょっと金を——」

「ほう、物乞いをする様になったとはな?貴様らはいつからレッドガンから貧乏人になった?」

「「…げぇ!?」」

 

先生から金をせびろうとした瞬間。二人の後ろには腕を組み怒りのオーラを発している生徒がいた。

 

「何で此処にシナが!?」

「何をしとるんだ役立たず共!!貴様らの今週の訓練量は9倍だぁ!!」

「ちっ逃げ」

「フンッ!!」

「「ガァ!?」」

 

シナと呼ばれた生徒は、逃げようとした生徒が走ろうとした直後に素早い拳骨を落とし、二人の生徒を気絶させた。

 

「全く。相変わらずな奴らだ!」

 

“これがルビコンの日常なの…?”

 

「む!?お前は役立たず共に絡まれていた…」

 

“シャーレの顧問だよ”

 

「シャーレというのは知らん」

 

“まぁ、そうだよね…”

 

「そんなことより、先程は役立たず共が失礼した。レッドガン総長として深く謝罪する。この責任はキッチリこいつらに取らせる」

 

“いやいいよ、助けてもらったし”

“そういえば、君の名前は?”

 

「そういえば言ってなかったな!私はルビコン技術研究学園所属の三年。ベイラム・インダストリーのレッドガン部隊総長、獅子座シナだ!」

 

“よろしくね、シナ。その二人は…”

 

「すまないがそれは後だ、もう少しで昼休憩が終わる。上の連中は時間にうるさいからな!」

 

そう言ってシナという生徒は二人を抱えて何処かへ走り去っていった。

 

“…まいったな、これじゃ学園が何処にあるか…”

 

「それでは、私が案内しましょう」

 

“うわぁ!?”

 

「だっ大丈夫ですか?!」

 

突然背後から声がしてそれにびっくりした先生は尻餅をついてしまった。慌てた様子で先生を心配した声の主を、先生は視界に収める。

 

「す、すみません。驚かせるつもりは無かったんです!」

 

“あはは…大丈夫だよ。ところで君は?”

 

そこには少女が立っており、先生は少女に手を引かれ立ち上がると、少女が誰なのかを聞くと。

 

「はっ!申し遅れました!私はルビコン技術研究学園三年。生徒会【ネスト】の生徒会長、宇空ケイトです。よろしくお願いします、先生」

 

“よろしくケイ…あれ?今先生って言った?”

 

「はい、私は先生が連邦生徒会直下の超法的機関の部活、シャーレの顧問であるということも知っています」

 

このドヤ顔のケイトと言う生徒は、先生がシャーレの顧問であること、そして先生がどう言った存在であるかも把握している様だった。

 

“それは何処で知ったの?ルビコンは今情報規制を受けてるって聞いたけど”

 

「ふふふ…それは企業秘密という奴です。あっ因みにこの場にシナを呼んだのも私です」

「それよりもです。先生、ルビコンに行きたいんですよね?それなら、私が学園まで案内してあげます」

 

“本当!?”

 

「えぇ勿論です。なんせ私は生徒会長…つまり!外のお客様を導くのは当然の事ということです!」

 

いかにも何か知っていそうな生徒だが、先生はまずルビコンについて知る必要があると考え、ケイトの提案に乗ることにした。

 

「ここからルビコンへはそう遠くない距離です。わざわざタクシーを使う事もないでしょう、では行きましょう!」

 

意気揚々と歩き出したケイトの後に先生も歩き出した。

このルビコン技術研究学園で何が起きているのか、何がいるのか、何が起こるのか。先生は期待と不安を抱え、ルビコン技術研究学園へ向かった。

 

 

 

 

 

なお、ケイトが学園とは反対方向に歩き始め、結局タクシーを使うことになったのは別の話である。




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