「はぁ…まさか結局タクシーを使うことになるなんて…浮かれていました」
“次からは気をつけようね”
場所はルビコン技術研究学園前、つまり校門である。
まだ校門であるにも関わらず、その校舎の規模はキヴォトス三大校と遜色なく、校庭からは大人数が運動している様な声がここまで聞こえてくる。
「私が校内まで案内したいのは山々なのですが…これから予定が入っていまして、校内まで案内ができません」
“そうなの?”
「ですがご安心ください!既に代わりの案内役をやってくれる人を呼んでいます!」
“(安心かぁ…)”
「何ですかその目は!道に迷ったのはその…だ、誰にだって得意不得意ありますから!」
「そんなことより!案内役の人がそろそろ来るはずです…」
「あの!ケイト生徒会長ですよね?」
何処からか聞こえた少女の声、その声の主は赤と黄色のカラーの銃を下げて先生達の下へ走って来た。
「来ましたね!紹介します先生。今回先生の案内役をする我がルビコン技術研究学園のn」
「一年のサグノです。よろしくお願いしますね!」
「…ふ、ふふ、実は彼女、このルビコンでアリーn」
「私ルビコンのアリーナにランクインするほどの実力がありますから、案内中もご安心してください!」
「…!」プルプル
“あはは…よろしくね、サグノ”
先生は少しこのケイトという少女が不憫に思えてきたが、取り敢えずサグノと言うこの生徒が案内してくれるらしいので挨拶をした。
「…まぁいいでしょう。先生、何か分からないことがありましたら彼女に聞いてください。この学園は広くて大変だと思いますが、頑張ってくださいね」
「では、私はこれで失礼します」
そう言ってケイトは校舎の中へ戻っていった。
「それでは先生!我らがルビコンを案内してあげましょう」
「ミッション開始です!」
サグノに手を引かれ、先生はルビコン学園の校舎の中へと導かれる。先生はサグノに対して(少し距離感が近い子だな)とか悠長なことを考えていたが、ここはルビコン技術研究学園。豊かな街並みとちょっとポンコツな生徒会長そしてサグノ、これらを見て先生は油断したのだ。
先程遭遇したアナとルタの件、これだけの治安なら何とかなると思ってしまったのだ。
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ルビコン学園の校舎に入った先生はサグノの後ろを付いていきながら説明を受けていた。
「まず先生、この学園についてのどごまでご存知ですか?」
“うーん…ごめん、全く知らないんだ”
「そうなんですね!任せてくださいこのサグノ、先生の知らないことは何でもお教えしましょう。そしたら私の報酬が…グへへ」
“(意外と現金な娘なのかも)”
「…はっ!おっほん!気を取り直して、このルビコン内では主に三つの企業が中心に存在します。所謂ルビコン三大企業ってやつです」
“主にってことは、他にもあるんだね?”
「はい!ですが結構多いのでその他は割愛します」
「ルビコンの三大企業、それぞれ名を【ベイラム•インダストリー】【アーキバス•コーポレーション】そして【B.A.W.S】と言います」
“ベイラムってシナがいる所か”
「ひっ…せ、先生。もしかして獅子座シナと会ったんですか?」
“うん”
「よく生きてましたね!?」
“そこまで驚く事なの!?”
「だって獅子座シナってあのレッドガンの総長、ましてやベイラムの【歩く地獄】ですよ?あぁ思い出しただけで武者震いが…」
この学園において獅子座シナがどの程度かはよく分からない先生であったが、彼女の怯えた様子を見て、シナがこの学園の上位に位置する存在であると理解した。
“何をしたらそんな怒られたの?”
「悪いことはしてませんよ…ベイラムからお金を借りたぐらいで…」
“うーん、ちゃんと返した?”
「え?何で返す必要があるんですか?」
“え?”
借りたお金は返す、その大変さを過去に行った学園で知った先生は驚愕した。返す返さない以前に、なぜ返すのかとこれまでの人生で聞くことのなかった返答に、先生は一瞬思考を停止しかけたのだ。
そんな先生を放って、サグノは続ける。
「だって、他人から貰ったお金はそれはもう自分のお金と同じじゃないですか、なら何故わざわざ自分のお金を他人に返さなくてはならないのですか?」
「あるお金は使ってこそです。何故これを理解しない人が多いのか…」
「でも私に融資してくれた人のおかげで私は様々な所から信用を得ているのです!見てくださいこのグレネードランチャー!ベイラムの最新兵器なのですが、実はシナにボコボコにされた後、この兵器の買取契約を約束にある程度のことは許してくれたんですよ!やなりあるお金は使ってこそ!こうして私の信用は拡大していくのです!」
年頃の女の子から考えもしない様なクズ発言が湯水の様に目の前から湧き出てくる現状にただ困惑するしかない先生は、この生徒の金銭感覚が独特すぎることしか理解出来ず、ただ呆然と立ち尽くしていた。
「そうだ!先生も私に投資してみませんか?」
“え”
「投資とは信用の繋がりの証、つまり先生が私に投資すれば私の信用はさらに拡大するということです!さあ!どうですか?」
とうとう借金の相手の矛先が先生へと剥き出した。いつもならすぐに説教を始めるところだが、彼女の圧に押されたじたじになっていた。
どうしたものかと考えていると、先生から見て前方から蒼髪の生徒が歩いて来た、一か八かとアイコンタクトで助けを求めると、その生徒はこちらの様子を察したのか、少し早歩きをして近付いてきた。
「さあ!さあ!今すぐ投資を!信頼の関係を!」
「すまない、少しいいかな?」
「もう誰ですか?今いいとこで…」
サグノは話の邪魔をされて不機嫌なのかイラついた様子で後ろを振り返り文句を言おうとするが、声を掛けてきた生徒を見て黙ってしまった。
「こ、こここれはこれはヴェスパー第四隊長殿。今日もお日柄も良く」
「君は確か…稔サグノだね?アリーナランクにランクインしたのは最近だと聞いているよ」
「は、はい…そっそれで今日はどの様な御用件であられまして…?」
「そうだね…丁度今そこの彼に用事ができたところだ」
「え、彼って先生のこと」
「では少し借りて行くよ」
蒼髪の生徒がそう言うと、先生をすぐさまお姫様抱っこで持ち上げ、大人一人を持ち上げていると思えないほどのスピードで爽快に走り去って行く。
「ああ!待って!私の報酬が!私の信用がああ!?」
「悪いが、私は、私を捕まえられる人間を一人も知らない」
膝をついて泣き叫ぶサグノを後目に先生は一人の問題児である生徒を、生徒に抱えられながら思い出したのであった。