怨敵と巫女   作:大紫蝶

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 他の星野アイ生存を呼んでいるうちに、自分でも書きたくなりました。


第1章 怨敵と巫女
邂逅


side:??

 

 それが俺の前に現れたのは小4の時だった。

 俺の1つ下で、事前に職員から聞かされていた内容では「親が出所するまでの一時的な入所」とのこと。

 

「今日からお世話になる星野アイです。よろしくお願いします!」

 

 天使の様な可愛らしい容姿、太陽みたいに輝く笑顔、その口から出た鈴の様な声、そこから紡がれた挨拶は施設中の男を魅了した。いや、男だけではない。同性である女ですら彼女の虜になり、女として無意識で負けを認める者すらいた。

 

 事実、自分の席へと向かう姿に、施設の人間全てが彼女に対して視線を向けている。目は口程に物を言うとはこの事だ。

 

『仲良くなりたい』

『どこから来たんだろう』

『好きな人とかいるのか』

『こいつには勝てない』

『必ず手に入れてやる』

 

 そんな言葉が聞こえてくるようだった。それも仕方ないと思うが、同時にその纏わりつく様な視線を受けて眉一つ動かさない少女は気味が悪い。

 

(話の通りなら、こいつは一年程度でいなくなる。それまでの辛抱か)

「星野さん、施設で何かあったらこの子に聞いてね」

 

 そう言われ俺の肩が叩かれる。

 

「一応、この施設のまとめ役?をさせられている夜見 颯真(やみ そうま)だ。何かあれば言ってくれ。当然、仲良くなった奴が居ればそいつに聞け」

「はい!よろしくお願いしますね、ヨルさん!」

「夜見だ。颯真でもいいし、あだ名でもいい」

「分かりました、ヨルさん!」

「……まぁ、いいか」

 

 正直やりたくない。そもそもまとめ役は年長者がやるべきだろ?なんで俺がやってんだよ。

 紹介が終わると夕飯の時間だ。メニューはご飯・焼き魚・味噌汁・ポテトサラダ・リンゴだ。

 

「…白米」

「星野、どうかしたのか?」

「い、いえ!何でもないです!」

 

 星野の目には恐怖が浮かんでいた。それを見れば白米が嫌いか――トラウマ持ちなんだろう。

 

「おばちゃん、こいつはパンの方が好きらしいからパンに変えてやって」

「えっ、あの…急に何を?」

「あらそうなの?じゃあ、ちょっと待っててね」

 

 そう言っておばちゃんは星野の白米とパンを交換した。

 

「ここは四宮グループが経営している児童養護施設だからな。これくらい普通だし、言えば大体の事は叶うぞ」

 

 そう言って俺はさっさと飯を食べる。この後こいつを案内する必要があるし、いやなことは先に終わらせたい。

 

 

「この施設は四宮グループが経営しているから普通より裕福だ。部屋は基本的に1人に1つ用意され、エアコン・トイレ・冷蔵庫にクローゼット付きの贅沢空間だ。希望によっては色々追加してもらえるぞ」

「本当に施設なの?」

「一応、な。俺の部屋にはキッチンとユニットバスとかあるが、星野は希望ある?あるなら伝えとくが」

「と、特にないです…」

 

 この施設は悪名高い四宮家が善人アピールのために作った場所だからな。人によっては和室に改造した奴もいるし。

 

「風呂は24時間いつでもいいが、清掃中はダメな。エアコンとか自室はいいけど、共有スペースの温度変更は勝手にやるな。職員か俺に言え。小遣いも月に1万円支給されるが無駄使いはするな。バイトとか禁止だから、やるならバレるなよ」

「禁止なら、やっちゃダメなんじゃ」

「バレなきゃ犯罪じゃないんだよ。バレても賄賂を送ればいいんだよ。俺なんてクソ坊主のおかげで月に100万は稼ぐし」

 

 なんか星野が絶句したがどうでもいい。ここでは問題を起こさなければ良く、問題を表に出さなければ大抵の事は許される。

 

「真面目に金が欲しいなら大会で優勝したり、コンクールで金賞取ったりするとボーナスが貰えるぞ。四宮グループの宣伝になるからな」

「なんか嫌だ」

「暇なら勉強するか、テレビ見るか、筋トレでもしてろ。下にトレーニング室や図書館あるから」

 

 そういってそれぞれの部屋を案内する。一通り説明し終えると俺は自室で寝た。

 

「どうでもいいが、どうしたらあんな気持ち悪い奴が生まれるんだよ。さっさと親でも親戚でも引き取りに来いよ」

 

 星野は嘘をついている。ここに来てから常に…いや、驚いていた時は素だと思うが。

 

「あの感じだと虐待児か?その上、親が犯罪者で出所するまでいるとか地獄だろ。ここに居た方がマシな気がするが」

 

 

 星野が施設に来て三ヶ月が過ぎた。星野はボッチになっていた。

 

「星野、少しは皆と協力しような?俺も忙しいから」

 

 こいつが孤立した理由は簡単だ。アイドルより可愛い美少女が距離感バグらせて、最高の笑顔で一緒にいると想像してくれ。男なら惚れるし、女は面白くない。小学生男子特有の好きな子を虐める性質、狙っていた男を盗られたという身勝手な女の嫉妬から孤立したのだ。しかも、他の学年でも似た感じらしい。

 そのせいで学年の違う俺といることが多くなった。

 

「あのな、お前がいると俺の仕事がやりにくいんだよ。大人しく同級生の女とケーキでも食べたり、スイーツ作りして女子会やってろよ。金なら出すから、300円でいいよな?」

「仕事って、ただの詐欺じゃん。人を騙すのはいけないことなのに」

「鏡を見てもう一度言ってみろ。きっと今の人生がマシになるぞ」

「私は嘘ついてない」

「なら虚言癖だ。明日休みだから一緒に来い。稀代の詐欺師で人生を楽しんでいる破戒僧を見せてやる」

「そんな人に会いたくない」

「寝ているお前を拉致して行くからな。朝6時には準備しておけ」

 

 星野がドン引きしているが、どうせ俺がいないとボッチだから来るしかない。トボトボと自室に帰る星野は可愛かった。

―――なるほど、可哀そうは可愛いんだな。

 

 

「こちらが破戒僧ことクソ坊主だ。好きな物は酒、趣味はギャンブルと風俗巡りでNTRや人妻系がお気に入り、特技は信者から金を巻き上げる事、僧侶やってる理由は『戒律を破る背徳感が最高!!』というクズだ」

「事実だがやることはやっているぞ。そもそも、そのクズのおかげで稼いでるだろうが」

「ガキ使って詐欺働いて、その金で愛人作っているカスに言い訳はないだろ」

「愛人なんて(今は)作ってないぞ。作ると認知やら嫉妬やら面倒だからな。精々パパ活と風俗だから」

「『マジで堕落したお坊さん』マダオとでも呼んでやれ」

 

 星野が何か言いたげにしているが、世間的にはこいつの母親の方がヤバい。虐待・窃盗で捕まった前科二犯だ。おそらく売春もやっていただろうから、事実上の前科三犯。その娘の星野も奇異な目で見られるだろう。

 

「このマダオは表向きは聖職者で、多くの人々の悩みを解決している性人だ。特に悪霊退治や呪物の処理では同業からも頼られている。欧米からも海渡ってやって来る人間もいるくらいだ。…だから質悪いんだが」

「この世に救いなんてないんだ……」

「ない。お前の母親よりこいつが良い奴と言われる世の中だしな」

「えっ、なんで…」

「職員から事前に説明されていた。だから事情はある程度知っている。このマダオも知ってるよ」

 

 なんか苛立ってるな。まぁ、人の秘密を言いふらされて黒い感情の1つや2つ出ない方がおかしいか。良い傾向だな。このまま本音が言えるようになると楽に生きていけるだろう。

 

「それじゃあ後よろしく。俺には恵子ちゃんが待っているんだから!」

「どうせ風俗嬢だろ。後、金を置いて行け」

「ちっ、ほら40万だ。さっさと終わらせろよ」

「中抜きエグすぎだろ。取り分5:5にしろよ」

「2:8だが、その代わりに面倒ごとは引き受けているだろ」

「その上で8:2にしろって言ってんだよ」

 

 マダオは文句を言いながら風俗に向かった。やはり奴を取り締まれないのはバグだと思う。

 

「何なのあの人?」

「クズとだけ覚えておけ。おかげで稼げるからいいけど」

「…そういえば仕事って何?幸せのツボでも売るの?」

「お祓いだよ。正確には”呪物の破壊”だが、色々いわく付きの物を壊してるんだよ」

「そんな物壊して良いの?呪われそう」

「呪われた人生の俺にとっては同族だ。素手で殴るか握りつぶせば何故かすぐに壊れるんだよ。その割にハンマーとかじゃ壊れなかったけど」

「私も手伝うよ」

「止めとけ。お前は祠の掃除でもしてろ」

 

 そう言って指を指す先には5つの祠がある。

 

「よく遠出した時に俺が見つけて管理してもらっている。山奥深くに埋もれてたりしてたから許可取って置いてある。他にも30くらいあったが、地元の人に引き渡したんだよ。それで引き取り先がない奴らがあの祠だ」

「すっごくキレイになってるけど」

「俺が掃除したからな。壊れているとこは修理したし」

 

 へ~と言って星野は掃除を始めた。

 俺も呪物っぽいナニカを破壊する。

 

「刀や藁人形は分かるが、この金の仏像とか売れば高そうなのに」

「それって売れないの?」

「前にくすねて売ったら、買い手が不幸な目に遭って一家離散したから止めた。後日戻ってきたけど」

「…本物?」

「大体は偽物だよ。タイミングが重なったとか、逆に縁起物だったのに手放したから不幸になっているとか。でも、時々ヤバい物はあるらしいけど」

「らしいって、見たことないの?」

「ない。俺はここの呪物の破壊とお祓いのアリバイ作りしかしないから」

「アリバイって、お祓いはするんでしょ?」

「それっぽい事すれば皆納得するし、何ならマダオが風俗行っている時は、俺が代わりにお祓いしてるし」

 

 理由は不明だが、俺が適当に「出てけ!」とか言えば悩みが解決するらしい。俺が凄いというよりも、マダオが洗脳か薬物で信者の判断能力を奪っている説が有力だ。問い詰めたらボーナスで100万くれたし。

 

「……なぁ、星野。こんなことして楽しいか?」

「拉致したの君でしょ!?」

「そうじゃなくて、星野って嘘つきじゃん」

「だから嘘なんて」

「正確には”嘘”か”嘘じゃない”かが分からない。だから相手を騙せる奴だ。でもそれってキツイだろ」

「……」

「沈黙は肯定とみなすぞ。そんなお前が本音を言っているのが俺だ。正確には俺が突拍子もないことをしている時だけ。それが続いたせいでお前は俺に気を使わなくなっている。最初は敬語だったり丁寧語だったのに、今はタメ口だし」

「……」

 

 何も言わなくなった。話せば嘘だとバレるから、それが本音か自分でも分からないからこその沈黙。その態度が本音なのに。

 

「他人と上手くやる方法を考えろ」

「無理だよ、皆と仲良くするなんて」

「仲良くする必要なんてないだろ。『上手くやれ』と言ってるだけだ」

「違うの?」

「全く違うさ。友好でも敵対でもなく”中立””第三者”としてやり過ごす方法を知った方がいい」

「…でも、怒られる。私バカだから、何度やっても怒られたし」

「怒られることは悪い事じゃない。誰かが見ている証だ。ここでは俺が見てるから好きなだけ失敗してろ。後悔するのは俺に1000回怒られてからで十分」

「君はどうやって上手くやってるの?」

「全員の前で逆らう奴らをボコボコにして見せしめにした。それ以来、誰も俺に逆らわなくなったぞ」

「君も出来てないじゃん!」

「友好でも敵対でもなく”畏怖”だから」

 

 ギャーギャー喚いている星野を見ていると少しだけ面白い。

 

「お前の母親が迎えに来るまで後九か月だ。それまでにきっかけでも見つかると良いな」

「…………そうすれば、お母さんと仲良くできるかな?」

「無理だろ、お前バカだし」

 

 こいつの母親は取り返しのつかないラインを超えた。どんなに頑張っても二人がまともな親子になることはない。あるとすれば星野が母親にとって利益――金になる存在になるだけ。風俗か愛人でもやれば金は稼げるだろうが……その先にハッピーエンドは存在しない。その先にあるものは……

 

「闇堕ちするなよ」

「君のせいでなりそうだよ!」

 

―――――――――――――――

 

side:????

 

 怨敵に仲間が増えた。あんな少女を手先にするとは流石外道だ。

 

 しかし、あの少女は使えるな。利用しても心が痛まない程度には悲惨な運命だ。何より、怨敵抹殺に協力したことにすれば少しはマシな人生になるはず。

 

 奴を消した後は奴の一族だ。あの一族が消えればこの国も良くなる。




 このマダオはグラサンをかけていません。人間をかけたグラサンは別に存在します。
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