最近、可哀そうな人扱いになった奴ですが、本作では無視します。ただ、奴がこの先ただの可哀そうな奴扱いなら、奴の過去をかなり改変する事になります。……まさか、あそこまで可哀そうな奴扱いになるとは予想してなかったので。
side:颯真
俺の名前は四宮颯真。
「で、遺言を聞こうか?」
斉藤壱護の死刑執行をする男だ。
「待って! 本当に知らなかったんです!」
ついでに鏑木勝也も処刑する。
事の始まりはアイが「ドラマとか映画のために演技の勉強もしたいと言った事だった。
アイが14歳になり、B小町は単独武道館ライブを成功。ラジオのレギュラーやらテレビ出演などをしており、この間は四宮グループの1社でCMデビューまでした。地方のライブやイベントもやり尽くした感があり、これ以上は俳優や声優としての仕事をするしかない。
俺に関しては日本で取れる賞は大体取ったし、国際的な賞すらかなり取っている。これ以上活動しようにも年齢的な問題や既に2mになった身長のせいで仕事がない。ってか、まだ15だよ? 男子って高校から身長伸びると聞いてんだけど。これ以上高くなると俳優業が廃業だよ……。
そのせいでアイが「颯真が俳優業辞める前に急がないと、共演できなくなる!」と焦ったんだ。アイは身長伸びないし、今でも50cm差がある。普段の生活もそうだが、性生活中は身長差で苦労するというか……大体アイが浮いてるし。奈央さんに相談しても「あなたの足を切れば丁度いいのでは?」とのこぎり渡されるだけだったし、雲鷹さんは「……夜更かしする、とか?」と頭を抱えるだけだし。
そんな諸事情により、アイの女優デビューのために特訓をすることになった。俺や奈央さんが立候補したら「目立つし彼氏バレしたら不味いから論外」と雲鷹のクソ野郎が却下しやがった。それで苺プロが鏑木Pを頼って、丁度いい劇団で演技の練習をすることになった。ここまではいいが――問題は、その劇団だった。
「何でよりによって、性の乱れ劇団”劇団ララライ”なんかに行くことになったんだよ!!!」
「知らなかったんだ!」
「僕だって知ってたら推薦しなかった! あの姫川愛梨の出身だし、彼女からも推薦されたからさ!」
劇団ララライ。姫川愛梨の出身であり、今でも関わりのある劇団。だが、それ以上に性の乱れがヤバイ。上原清十郎とかいう女狂いもいるし、奴ほどじゃなくても性関係で問題を抱えている奴らが多すぎる。
「昭和の頃は性に奔放なのが当たり前だったかもしれないがな……それを今でも引きずっているララライは酷いんだよ。彼氏バレした方がマシなレベルだ」
「そんなにか?」
「昭和の頃もそこまで酷くなかったと……」
「いや規格外だろ。芸能界なんて髪の毛一本分マシになっただけだからな」
「「……」」
「つーか、なんで若い女タレントに性接待させて仕事貰えるんだよ。俺なんて熊と殴り合い、マンチニールを食べ、業界やスポンサーの弱みを握ることで仕事得ているのに……っ!」
「そっちが異常なだけで……」
「普通はそこまでしないかと……」
「黙れマダオ2号・3号! 貴様らに人権はない!」
やはりこのバカ共は消さなければ。自身の恋人をヤリサーに入れようとしたバカ共は抹殺する!
「その辺にしとけ」
「なんだ、
「凄い悪口言わなかったか?」
「いや何も」
「ま、まぁいいか。それより、劇団ララライは言う程じゃないだろ。どこの組織も問題の1つや2つある訳だし……」
「だからって性問題抱えているとこにアイを入れるのには反対だ!」
「それでもどこかで演技のレッスン受けないとドラマとかに出れないだろうが」
「そんなものスポンサーごり押しで済む話だ。それで足りないなら俺や龍珠組の傘下にいる組織や洗脳している奴が社長やっている会社、弱みを握っている団体もいる」
大体弱み握られた奴らなんてろくな奴らじゃねぇんだ。誘拐された幼女を金払ってレイプする様なクズ共を有効活用するだけ。
「だ・か・ら! そんなことしても根本的な解決にならないだろ? 本人の技量がないと」
「……演者に演技力の無いドラマとか多いじゃん。話題作りのために犠牲になった原作作品がどれだけあることか」
「それでもだ。そもそも契約が終わっている以上、ここで辞めたら信用問題だ」
「それじゃあどうしろって? 中学生に性接待しろと?」
「ヤバそうになったら直ぐに辞める。送り迎えは苺プロじゃなくて早坂か四宮家の使用人にやらせる。これでいいだろ。ララライがダメなら四宮の方で次を探す」
「…………分かった」
奈央さんならアイも安心できるだろうし、他の使用人もある程度は信用できる。少しでも問題があれば辞めさせるし、劇団ララライも潰す。
「という訳だ。何か気に食わない事があれば言えよ、アイ」
「私の意志は!?」
side:アイ
私は星野アイ。いまからヤバイ集団の所に送られる可愛い女の子です……。
「いいですよーだ。私なんてどうでもいいんでしょ……」
「そういじけないの。皆、アイの事を考えているんだから」
そうは言ってもさ。話を聞いてるだけで恐ろしい場所でしょ。
今日からお世話になる劇団ララライは性に乱れた頭のおかしい集団らしい。そこに独りでぶち込まれる可愛い私。……絶対酷い目に遭う。颯真から防犯グッズは持たされたけど、重くて全部は持ち込めないし。
「アイ。今のうちに渡しておくけど、使い方は分かる?」スッ
「こ、これは!」
「拳銃よ。いざとなれば撃ちなさい。狙いはお腹ね」
「ダメだよ! これって犯ざ」
「いいのよ。女を穢して喜ぶような連中は撃った方が社会の為だから」
そういう奈央さんの目は光がなく、闇より黒く染まっていた。
「とりあえず上原とか言うクズには接触しない事。大人の男性にも関わらない方が良いわ。既婚者だからって油断しちゃダメよ」
「じゃあ女の人か年下ならいいの?」
「とりあえずね。年下や同性でも怖くなったり違和感を感じたら逃げていいから。向こうが出して来た飲食物は口にせず、食べるフリか逃げなさい。殺しても
……え? そこまでヤバいところなの?
ブルブル震えていると車が止まり、例の劇団に着いてしまった。
「それじゃあ行ってらっしゃい。近くのカフェで待ってるから安心して」
side:颯真
ここが例の劇団か。
俺が居るのは劇団ララライの本拠地。愛する恋人をヤリサーの魔の手から守るために潜入中だ。
「こちら颯真。状況を報告してくれ」
『辞めないか? いくら何でもやり過ぎだぞ』
「こっちは恋人の尊厳がかかってんだ。既に出入口は龍珠組から借金免除を条件に武装した組員で固めた。内部には俺が直接乗り込んだ」
『どうやって入り込んだんだよ。有名人であり、身長2m、全身から堅気じゃないオーラ出しているお前じゃすぐに見つかるだろ』
今日のために下調べは完全に終えている。緊急時に備えて建物には不審物(中身はようかん)を設置しており、バレる心配はゼロだ。
それでも通話先の雲鷹さんが恐れている理由は俺の容姿だろう。この日本では目立つ容姿、かつ有名人だからな。それでも絶対にバレない自信がある。
「今の俺は光学迷彩スーツを着た上で、天井に張り付いているからバレないさ!」
『全部おかしいだろ!? 光学迷彩スーツ!? 天井に張り付く!?』
「声が大きい。バレたらどうするんだ」
『それより気にする点があるだろ!?』
『光学迷彩スーツはアイをすと……守るために開発した早坂家お墨付き。天井に張り付く技術は早坂家に習ったすと……護衛術の基礎だ」
『ストーカーか? ストーカー技術を早坂家から仕入れたのか!?』
うるさい男だ。せめて愛の追跡者とでも言わないか。
「む? 雲鷹さんと話していたらワークショップが終わったじゃないか!」
『その間、お前が暴走しなかっただけ儲けものだな』
酷い言い草……や、奴は!?
「不味いぞ! 上原清十郎がアイに接触した!」
『ナニ!? 下半身男がか! 何を話しているか分かるか!?』
「待ってろ。早坂家直伝の読唇術で!」
『今日、初めての子だよね? どうだった、ワークショップ』
『難しくて全然分かりませんでした!』
『そっかそっか。どの辺が難しかったとかある?』
『えと……』
『ちょっと清十郎。妻子の前でナンパなんて肝が据わってるのね』
「奴は妻子の前でアイをナンパしている!」
『クソ野郎じゃねえか!!』
『久しぶりね、アイちゃん。元気だった?』
『あっ、姫川さん!』
『知り合いか?』
『えぇ。私が注目されるようになったきっかけの番組でね。今日は颯真君は一緒じゃないの?』
『あれから別々の人に引き取られたので……あっちは忙しいから会う機会もなくて……』
「アイが俺に寂しいと言っている! ここから飛び降りるべきか!?」
『落ち着け!』
『えっと君は中学3年か。だったら……この子はお前が教えてやれ』
『ぼ……僕がですか?』
『年も近いし丁度いいだろ。あぁ、こいつはカミキヒカル。君の1つ下だよ』
『えっと、よろしくね?』
「……奴が他の男を紹介したぞ。これはケジメ案件だろ」
『落ち着け。仕留めるなら独りになってからだ』
side:アイ
「お疲れ様。大丈夫だった?」
「うん。天井に颯真が張り付いていた時は絶句したけど」
「……本当に来てたのね」
最初のワークショップが終わったけど、ふたを開けてみればなんてことない。颯真が過保護でストーカーだという事以上の衝撃はなかった。
「慎重すぎて困ることはないわ。それで、変な人とか居た?」
「うーん。姫川さんと久しぶりに会って、『颯真と一緒じゃないのか』とか聞かれたくらい?」
「まだ狙っているのかしらね」
「狙ってる?」
「知らなかったの? 四宮颯真は芸能界でハニートラップというか、性接待やら既成事実を作ろうとする女性に狙われているの。流石に男子トイレにまで来た時は驚いて便器に沈めたらしいけど」
「……その1人が姫川さん?」
「颯真はバカだけど、その実力は本物。彼がプロデュースしたタレントは例外なく売れている。姫川愛梨もその内の1人ね。颯真の売り方はキレイだし、女を売らせる真似は絶対にしない。それに恩義を感じている人は多いわ」
「それって普通じゃないの? 女を売らせるって……」
「珍しくないからね、若い女に枕営業させる事務所は。四宮プロや苺プロだとしないけど」
そんなのおかしくない?
「おかしいけど慣習だからね。颯真はその辺の弱みを大量に握っているけど、そこまで強いスキャンダルじゃないし」
「いや、ふつーに大事じゃないの? 条例違反になるとか」
「そんなことを規制していたら一般企業でも禁止になるから。そうなると社会への影響が大きすぎて誰も得しないと思っているんでしょ、上にいる男連中は。颯真も弱みとしているのは『未成年淫行』『妊娠・堕胎』くらいだし」
いや酷いよ、芸能界。颯真が居なかったら、今頃悪い大人に食べられてたんじゃ……。
「そんなことより他には?」
「そんな事で済ませて良いの? まぁ、いいけど。後は――」
――綺麗な子
――幼くて、美しくて、可愛い
――まるで宝石みたいな
――誰もが手にしたくなる
――ルッキズムの源
「カミキヒカル?」
その言葉を聞いた奈央さんが突如急ブレーキが掛かって前のめりになった。
「ど、どうしたの?」
「か、カミキヒカル? 神木の人間が居たの!?」
「えっと、たしかそう言ってたけど。神木?」
「そう。その様子だと、颯真から詳しい話を聞いていないのね……」
えっ、なんで颯真が出てくるの?
「いや、颯真の事で私が知らない事は殆どないよ?」
「それは本当に隠したい事以外を話して、知られたくない事は話していないって事でしょ」
「そうなの!?」
「これは不味いわね。颯真が知っていたら劇団ララライにアイを入れる筈がない。ダンプでも突っ込ませて潰すに決まってる。なら知らなかった? アイさんに依存している颯真が? あそこまで劇団ララライの内部情報を握っていた奴が知らないはず……」
なんか奈央さんが自分の世界に入っちゃった。
カミキヒカル。私が見た中で一番綺麗な人だった。同じグループのメンバーや奈央さんだって綺麗な容姿をしていると思うけど、それ以上だった。
颯真が人を斬るために磨かれた刀の様な輝きとするなら、カミキヒカルは人を魅了するために磨かれた宝石。
颯真の魅力とは全く違うのに、その容姿だけは少し似ていると思った。
――だからこそ、私の中で初めての感情だった。
お母さんに捨てられた時も、仲の良かった友達に捨てられた時も、周りの全てが敵に見えていた時でも感じなかった憎悪。
颯真と似ているところがある。だからこそ気持ち悪かった。
颯真はウミガメの出産シーンを見ると本気で感動して涙を流すような変人だ。でも、
颯真は他人を気にせず我が道を行く人間なのに、
颯真は人間らしい弱点だらけのバカなのに、
颯真だって一般的に見れば悪人。マダオもそうだし、奈央さんや雲鷹さん、子供を使ってお金儲けをしている社長だって悪人だと思う。それでも、あの人達には自分の信念や自分なりの善悪を持っている。――それが
きっと
そんな奴が颯真と少しでも似ていることが気に食わない。颯真を穢された様でムカつくし、存在していることが許せない。
「あれ、さっさと消えてくんないかな~」
・四宮颯真:高校1年。四宮プロ所属。賞を取りまくった結果、次の目標が定まっていない男。最近の悩みは身長(2m)が伸びすぎている事。
・星野アイ:中学3年。苺プロ所属。武道館ライブを終え、女優の仕事のために劇団ララライで特訓する。最近の悩みは身長(150cm)が伸びない事。
・四宮雲鷹:大学2年。四宮プロ社長。颯真を酷使した結果、取れる賞を大体取ったため、次の目標が定まっていない。最近の悩みは片思い中の奈央にどうやって告白するか。
・早坂奈央:大学2年。四宮プロ副社長。颯真を酷使した結果、取れる賞を大体取ったため、次の目標が定まっていない。最近の悩みは彼氏との結婚を親に認めさせること。
・斉藤壱護:苺プロ社長。アイを劇団ララライに送り込んだ戦犯。颯真から『マダオ2号』と呼ばれ、死刑執行保留中。最近の悩みは死刑執行をどうやったら回避できるか。
・鏑木勝也:プロデューサー。アイを劇団ララライに推薦した戦犯。颯真から『マダオ3号』と呼ばれ、死刑執行保留中。最近の悩みは死刑執行をどうやったら回避できるか。
・姫川愛梨:劇団ララライ出身。既婚者。恩のある星野アイが劇団ララライに来ると聞いて顔を出した女。最近の悩みは颯真に会えない事。
・カミキヒカル:劇団ララライ所属。中学2年。アイから『人を魅了するために磨かれた宝石』と称されるルッキズムの源。最近の悩みは×××××××××。