そう喜んでいたのに……原作が……ッ!!!
…………そのせいでちょっと暗い話になりました。
side:颯真
俺の名前は四宮颯真。
「色々あったが、無事にララライから出所できてよかったな」
「全然無事ではなかったけどね!? 結構危なかったからね!?」
恋人が
今回の出所祝いを行っている理由は劇団ララライから逃げ出すことが出来たためだ。
「本当に良かった!」
「今日は人生最高の日だな!!」
ちなみに斉藤社長と鏑木Pも涙を流して喜んでいる。俺が死刑執行宣言を撤回した事で一番喜んでいるな。
「それにしても本当に危なかったよ。あの時入ってきたジャンキーに感謝しないと」
「ジャンキーに感謝するのもおかしいと思うけど」
まぁ、ざっくり説明するとアイが
重要なのは神木に襲われそうになった事、劇団ララライで死者が出たことだ。苺プロとしても「そんな所に大切なタレントを預けられるか! 文句があるのか、ハァン!?」と詰め寄ってアイを逃がしたのだ。推薦した鏑木Pも「こんな所だとは思いもしなかった。二度と関わらないからな!」と縁切りしたらしい。業界内でのイメージ低下を恐れた代表達が苺プロの事務所にやって来た時は塩撒いて追い出したほどだ。連中と関わることは二度とないだろう。
「それにしても、何でジャンキーが入ってこれたんだろ?」
「それは過保護な男の仕業よ、ね?」
「いや知らん。ジャンキーは知らない」
「つまりジャンキー以外は知ってると?」
「詳しく知らん。ララライは乱れていたし、そもそも芸能界は色々乱れている奴らが多いからな」
裏カジノに行けばモデルや女優なんかの一般人には手が出せないレベルの女が出て来る。そういう所に居る女を通して客にクスリを渡す店も多い。「飲む・打つ・買う」が男の道楽の三点セットを言われているが、そこにクスリが加われば客は絶対に抜け出せない。そんな場所に派遣される女や客の男がまともな訳がない。
そこに派遣される女は見返りに大金や仕事が貰えるので頻繁に顔を出す。まともに稽古するより簡単で確実に仕事が手に入るからだ。その内自分でクスリに手を出すか、薬物売買の実行犯として脅されて従順な奴隷になるだけだから、真っ当に努力した奴には勝てないがな。……それでも別口で性の搾取を受ける女は相変わらず多いが。
そんな集団の集まりでジャンキーが居ても気にしないし、自分がジャンキーだと親近感が湧いて見逃すんじゃないか? ターゲットのカミキヒカルは名家の次期当主なんだから命を狙われてもおかしくないし、裏社会の誰かが鉄砲玉代わりに送ったんじゃね? というのが俺の予想だ……それが本当にただのジャンキーならだけど。
「普通に劇団ララライの関係者だったか、元メンバーだったんじゃね? それがジャンキーになってたから普通に通れたんだろ」
「そう言う事にしておきますね」
奈央さんが胡散臭い顔をしているが、本当に知らん。
「そう言えば、颯真は次のドームライブ大丈夫なの?」
「あぁ。東京ドームでの無料ライブは順調だ。チャリティー番組の件も業界の大御所や政治家、政府に各企業と揃った。来年には実行予定だ」
「待って! 東京ドームで無料ライブなんかやったら赤字で破産しちゃうよ!?」
「いや、流石に大丈夫だから。無償のドームライブくらい何でもないから」
「颯真さん止めてください。アイが勘違いして週一ドームライブやろうとか言い出しかねないので」
「言わないよ!」
いや、言うだろうな。
「それにしても思い切ったね」
「鏑木の言う通りだ。東京ドームは四宮傘下の持ち物じゃないだろうに」
「持ち物? それってどういう事?」
「アイ知らねぇのか? 俺達も使うドームやらライブ会場はどっかの企業の持ち物で、その殆どが四宮傘下の企業の物なんだよ」
「ホントに!?」
「東京ドームとかの一部は違うけどな。だから、俺か四宮主催の会場として使うならタダで使えんだよ。今度やるチャリティー企画でも使う予定」
ってか、東京ドームだけ異常に抵抗したから諦めたらしい。青龍主導で買収しに行ったら返り討ちに遭ったとか。
「にしても、四宮主催のチャリティー番組とはね」
「うちにもお声が来たが、本当に良いのか?」
「あんな無償出演で他局にケンカ売る番組に出るとは……酔狂だね~」
「無償じゃねえだろ? いや、例の番組自体は無償だが……その後、バラエティーやドラマ、CMなんかにスポンサー権限で捻じ込む事の確約。ドームライブを行う際の使用料免除。これだけで参加する価値がある!」
斉藤社長の言う通り、例のチャリティー番組の出演料無しには裏がある。オファーを受けてくれた個人や団体には四宮よりちょっとした贈り物があるのだ。
四宮家が作ったドットTV!を始め、四宮がスポンサーとなっている番組などに出演者を使ってくれるよう話すだけだ。それで使ってくれなかったらそれまで……あくまで”善意”からの推薦であり、使うか否かは番組の都合だからだ。
他にもドーム使用料などの免除だが、無償で協力してくれた方々への”善意”であり、それ以外の思惑などない。
「無理だから。四宮の推薦断る=スポンサー降板でしょ。その責任取らされる人間は絶対に使うし、降板しなくても四宮にケンカ売る馬鹿はいないよ」
「ドームの使用料免除も1回だけとは言え、1000万~2000万の使用料免除となれば喜んでやるだろ。事実上、たった1回の仕事で1000万以上のギャラだし」
「その噂を聞きつけて大手事務所などからも出演するらしいぞ? まぁ、一度話を断った奴らに”善意”はないが」
「その”善意”の内容を知らない連中は可哀想に。名目上はギャラなしだから文句言えず、他局のパクリである以上、今後向こうで呼ばれる事もない。文句を言えば四宮を敵に回して全メディアから叩かれ、世間からも叩かれる」
「『ボランティアに参加したいです!』って自分から言ったのに、『俺に利益がないじゃないか!』と騒ぐ奴なんて国内……だけじゃなく、国外でも使ってもらえないだろ」
海外ではチャリティー番組なんてギャラなしが当たり前。そこに自分から参加し、納得の上で契約を結んだ後に文句を言っても罵倒されるだけだ。日本国内で活動できないからと海外に行っても無視されるタレントや事務所の未来は……明るい未来ではないな。
ちなみに、最初から協力してくれるを言った方々には四宮の”善意”によって素晴らしい未来が約束されている。例えば、今回話を断ったり、ギャラの要求、その他賄賂や性接待を仕掛けてきた奴らとは関係を切ることにした。そこで、その代わりの人間を探す事になり……人に裏切られて悲しい状態の四宮は『無償でチャリティーに参加する様な優しい人間』を積極的に使うつもりだ。
「文句が言えない状況で、タダで大手事務所を使い潰す気か」
「やっぱり四宮は怖いよ。僕は颯真くんの部下でよかった……」
「まぁ、ここにいる颯真は信じられない程のスペックですが、『部下の女子大生が婚約すら前に妊娠しても見捨てない』という器の大きさもありますから」
「二度とやるなよ。あれから大変だったんだから」
「そのおかげで事実上、早坂家はあなたの配下になり使える駒も増えたのでは?」
「その上でやるなって言ってんだよ」
あの後どれだけ大変だったか。
雲鷹さんがNTRだかBSSで脳が破壊されて、俺の雑な嘘を信じ込んで長男派閥に抗争を仕掛け、いきなりの奇襲で対応できず手打ちになるまでに相当な被害が出た。最終的に「俺はただ壊すだけだ……この腐った世界を」とか言い出したからな。部屋中に奈央さんの隠し撮り貼り付けて、奈央さんの写真付き抱き枕を抱いて寝ていたところを見た雁庵さんが精神科に連れて行ったレベルだからな?
マネージャ兼副社長が産休育休で不在、社長がNTRによる精神崩壊で入院、残ったのがタレントの高校生だけとかいう地獄だからな。社長代理で雁庵さんが、マネージャーに早坂家とかいう異常事態が発生しているからな? 次は問答無用で追い出す。
「まぁ、基本的に俺や雁庵さんが主導でイベントを進めるが、鏑木にも現場で指示を出して貰う」
「えっ僕も?」
「流石に俺らだけじゃ手が足りないからな。48時間も俺らだけで指示出しできないから。金と人員は集めるし、足りないものがあれば言ってくれればいくらでも用意する。そもそも、つまらん各団体の説明が主だから、言う程やる事ないけどな」
「結局、チャリティー番組っていうか……つまらなくて生々しい解説動画の垂れ流しみたいだしな」
「各省庁からも出演するし、お堅い組織の上もガチで来るからな。冗談抜きで面白みのない番組だよ」
「でもスポンサーが強すぎだよね。各省庁からも大臣クラスが出演し、政策や制度について説明するんだよ? 警察が警戒している芸能人相手に本気で詐欺とかの犯罪を仕掛けるんでしょ? こんな事、普通じゃ絶対出来ないよ」
まあ、警察が全面協力で犯罪を仕掛けたり、ドラマ撮影までやるからな。犯罪の指南書みたいで普通なら放送できないが、警察も国も注意喚起という建前で許可だしたし。
「たしか五反田監督? が撮影したドラマも問題になったがな。マトリが麻薬のブローカー役をやり、マル暴が暴力団役を務めるせいで本物の犯罪映像にしか見えなかった」
「それでも犯罪の抑止をするためやってるから……
「色々大変なんだね~」
アイがのんきそうに言っているが、冗談じゃ済まないんだよ。メディアに無視され、無能扱いされている組織が信頼回復のため徹夜で働くくらいなら良いが、警察上層部が犯罪計画を考えるという異常事態まで発生している。もうチャリティー番組の体をなしているのか微妙なレベルだし。
「私達はライブするだけだから楽ちんだね~」
「いや、B小町は恐山にレポーターとして行くからな」
「何で!?」
「水子供養について取材するからな。恐山の風車を持って帰ったり、積み石を蹴とばすバカ防止のために行くんだよ」
「そんな人いるんだね~」
「クソだがな。特に、奈央みたいに身近に妊娠した奴が居ると余計に」
「水子供養はお腹の中で亡くなってしまった赤ちゃんや、早くに亡くなった子供達のために行う儀式なんだよ。寺や神社で祈りを捧げ供養することで、その子供達が安らかに成仏できるように願う。亡くなった子供達に対する最後の思いやりってか、命を大切にする文化だ」
「積み石も同じだ。いくつかの意味があるが、石を積むことで子供達のために祈りを捧げ、『亡くなった子供達の魂が少しでも安らかになりますように』って願いが込められているんだ」
「たしか、石を積む行為自体が一つ一つの命を尊重する儀式でもあるんだよ。そして、その積まれた石が風や雨で崩れたりすると、また新たに積み直す事で命が連綿と続いていくように、供養を続ける意味もあるんだ。そうやって一つ一つの石に込められた思いが、無限の連なりを作っていくんだよね」
「詳しいな」
「僕にも子供が居るから……ちょっとね」
そう言う鏑木だが……子供が無事に生まれてくるか心配だったんだろうな。よくマダオの元にも子供が無事に生まれてくるように祈っている奴が来たり、先祖の墓に涙を流しながら「あの子を守ってくれ!」と懇願している奴らがいる。……それで無事に生まれてくる訳じゃないかもしれないが、藁にも縋る気持ちなんだろうな。
「それを崩すクソ共が少しでもいなくなる様にって、水子供養をしてる奴らから依頼が来たんだ」
「まぁ、水子供養について知って欲しいというのもありますけどね」
そう言って腹を撫でる奈央さんだが、彼女は妊娠が分かってから恐山に安産祈願に行っている。正人さんも、奈央さんの両親も行ってるから……それだけ心配なんだろう。たとえ、恐山に安産祈願の効果がなくても、
俺は自分の後に製造された弟妹の供養を兼ねてたまに行く。顔もしらないし、10年以上存在すら知らなかったが、兄として供養してやりたかった。マダオに墓を用意してもらい、水子供養もしたが……髪の毛1本もない墓で、顔も名前も知らない奴らへの供養で効果があるか分からんからな。
「ちなみに、そこの颯真が最初に恐山で安産祈願して有名な安産のお守りをいくつもくれたんですよ」
『『『へぇ~』』』ニヤニヤ
「バラすな! 俺だって知り合いの安産祈願くらいするわ!」
流石に死んだ弟妹が100人以上いたと知ったら本気で安産祈願するわ! 水子供養に来ていた人の話を聞いたら余計に怖くなって、全国回ろうかと思ったくらいだよ。時々、夢で奈央さんが死産する姿を見てビビってるくらいだし……大丈夫だよね? 今度正人さんや早坂家一行とお遍路にも行くし、良い病院も用意したし……。
「ま、普通に行くだけだ。緊張する必要ないから安心しろ」
「それならいいけどさ」
「アイくんからすれば、アイドルとしては初のテレビだからね。気合い入れなよ?」
side:???
良い人だね。
10年以上存在も知らなかった、名前すら貰えなかった弟妹のために自身が用意できる最高の墓を作り、供養までする。そのおかげで彼らは成仏できた。人扱いされず、ただ捨てられただけの彼らのために名前まで考え、涙を流して供養した君は良い兄だよ。
――彼の開眼した目は『愛の眼』。星野アイを愛した事で手に入れたくだらない眼。『人として大事なモノを犠牲に愛情深くなる』なんていう意味のない力。
でも、そんなくだらない力でも、喜んでいる存在も大勢いるんだよ?
そんな
・”元”名もなき弟妹:10年以上彷徨い続けた神木家の実験の犠牲者。唯一の成功例であり、実兄の颯真から名前を貰い、供養された事で成仏できた。可能な限りの恩返しをしてくれる……が、やり方が兄に似ている。
・愛の眼:代償が大きい割に無能な能力。目に♡のハイライトが現れる。なお、颯真は愛情深くなった事と引き換えに『羞恥心』『自制心』等を失った。
颯真の開眼した眼ですが、どっちの名前がいいと思いますか? 短いですが、期限は1週間のアンケートです。
-
ハートの瞳
-
愛の眼