今度は推しのVtuberが引退した事で気分が落ち込みました。X(旧Twitter)のトレンドに『引退撤回』が入っており、「よっしゃー!」とこの話を書いていたら別の人で……上げて落とされました。
前々から分かってましたし、卒業ライブも良かったのに……心に穴が開いた感じです。
side:アイ
私の名前は星野アイ。今、勢いに乗っているB小町のアイドルだ。
私の所属するB小町はかなりの勢いがある。
単独武道館ライブ成功から皆に仕事が舞い込んできて、普段は会う事も少ない。会うのはB小町全体として呼ばれている時か、ライブ前の打ち合わせくらい。それ以外、私が他のメンバーと会う事は殆どない。皆忙しいのもあるけど……一番は”信用できない”から。
私は自分がお姫様とか、良い人だとは思ってない。颯真には悪いけど魔女とか悪役の方が似合うと思う。でも、颯真はお姫様扱いしてくれるし、周りからもそういう扱いされる。それが面白くなかったメンバーと対立した事があったの。
それ自体は解決したし、忙しくなって関わらなくなったから問題ない。でも、過去のイジメや攻撃された事がなくなる訳じゃない。自分を特別で選ばれた存在だと思っている子も、年上に遊ばれているだけなのに調子に乗っている子も、裏で違法なクスリを使っている子も信用できない。颯真の様にみっともなくても本心で話してくれる子はいないし、颯真の様に凄い”ナニカ”もない。ただ忙しいから、自分が幸せだからイジメないだけの人を信じられる訳ない。
「どうしたのアイ? そんな暗い顔して」
「なんでもないよ、お姉ちゃん!」
それでもお姉ちゃんは信じられる。お姉ちゃん――早坂奈央さんは颯真のマネージャーであり、私にとっては姉の様な人だ。
颯真に当たりが強かったり、性格が悪いところも多いけど誠実な人だと思う。普通に良い人だし、颯真に甘えているだけで私には優しい。颯真に甘えている事だって、周囲に敵しか居なくて、愛する人との秘密を守るために精神をすり減らしていた反動だって言ってた。
そんなお姉ちゃんも問題が大体解決して、残った問題が子育てのみ! ……私にとって良いイメージがないけど、私を捨てたお母さんを思い出して辛いけど問題ないはず。
「それにしても、颯真に子育て経験があるとは……」
「颯真は施設の赤ちゃんとか、龍珠組の子供の面倒を見てたからね~。本人曰く、『10人までなら同時に面倒を見られる』らしいよ」
「母親としてプライドが傷つくけど学業や仕事、育児を両立できるのはありがたいわ。私が勉強や仕事をしている間、両親や颯真が面倒を見てくれるなんて」
颯真は昔から人が良いというか……人に感謝されるのが好きらしい。男の子特有のヒーロー願望? みたいなのが強くて困ってる人を”手段を問わず”助けていた。その一環で施設の赤ちゃんの面倒をよく見ていたけど……まさかベビーシッターとして雇われるくらい優秀だったとは。
「颯真って昔から器用だったからね。筋トレ中や勉強中、料理中でも子供の面倒見てたし、何人もまとめてお風呂に入れてたくらい慣れてるから」
「ホントに無駄な所でハイスペックね」
「勉強も教科書パラパラ見るだけで終わりだし、料理もレシピあれば何でも作れるし」
「歌・ダンス・演技・バラエティー・猛獣とのバトルなどなど……パラシュートなしでスカイダイビングした時も顔色一つ変えなかったし」
「「まぁ、法律を守る事や常識がないっていう欠点があるけど」」
うん。大好きな彼氏だけど欠点がありすぎる。一応皇族の次に凄い血統持ちで、何でもできるハイスペック、見た目も性格も悪くないけど……。
「交友関係が裏社会の人間ばかり」
「ルックスは2m超えて身長のせいで仕事がなくなり顔と雰囲気が怖い」
「それで業界人やスポンサーの弱みを握って無理矢理取って来て」
「共演した大御所にケンカ売って引退させ、若手の心を丁寧に折る」
何で好きなのか時々分からなくなる事がある程酷い。それでも悪い人じゃ……身内には悪い人じゃないからね。愛が重すぎて心配性でストーキング技術向上に努めているだけで。
「止めましょう。このままだと彼に救われている我々がどーしようもない人間だと思いそうです」
「うん。『颯真は良い人』で終わらせた方が良いね」
あれから何日か経って、お姉ちゃんは無事に赤ちゃんを産んだ。元気な女の子だった。
とってもきゃわ~~~❤❤なんだけど、さらに嬉しいのはその名前。
「この子は愛。『皆から愛されるように』って意味もあるんだけど、アイみたいに愛されて欲しいからね」
もう可愛すぎる! 早坂愛。この子の名前が私由来なんて最高にきゃわ~~~❤❤だよ!
「本当に可愛い。何かあったら私に言ってね☆」
「ママもいるからね~」
「奈央! 無事だったか!?」
「お父さん、お母さんも……大丈夫だよ。愛も無事」
「「おお!!」」
お姉ちゃんの両親も孫の誕生に喜んでいる。まだ何者でもない、生まれて一日も経っていない子が周りを幸せにしている……私と同じ名前の子が。
「いや、無事じゃないから。あんたらのせいでどれだけ大変だった」
可愛くない声が聞こえた。
「なんだ無事じゃないとは」
「うちの孫娘に問題が!?」
「いや、あんたら『孫が生まれた!』とか言って一般道を時速200kmで走りやがっただろうが。しかも信号無視に逆走、病院付近で車乗り捨てしたせいで俺が警察の足止めしてたんだが?」
「「よくやった」」
「……一応四宮家本家の人間なんだがな~」
颯真が遠い眼をしているけど、そんなに大変だったのかな? たしか、お遍路3週目してた筈だけど……本人がお遍路に行ったんだから問題ないよね?
「まあ、無事に生まれて何よりだ。そして、ホントに俺が面倒みるのか?」
「当然だ。このままだと四宮のために可愛い孫娘まで利用されかねない。どこぞの豚のペットにされるくらいなら、現役反社の庇護下に入った方がマシだ」
「俺は反社じゃなくて換金屋だ! それに、龍珠の親父から盃貰ってるから極道とか言ってくれよ……未成年だからって組に入れてないけど……」
「どっちでもいい。関東裏社会で人身売買や人間オークションを取り仕切っている奴は反社確定だ。最近じゃ、東北の方にまで影響力を広げているとか……この外道が」
「違いますー。俺が売ってる人間は生物学上”人間”と言われているだけで、中身は化け物のクズしかいません。そんなクズを減らして社会貢献してるんですー」
「黙れ反社。だったらなんで龍珠組と敵対する暴力団や反社会的組織から機関銃や小銃、ロケットランチャーにVXガス……挙句の果てにサリンまで出ている? さらに、組織の中枢までクスリが蔓延していた理由は? その全ての組織が『俺達は知らない。ハメられた』などと言っていたが?」
「……」
あ、黙った。
「……早坂奈央、早坂愛に関してはこちらで面倒見よう。俺の派閥という事なら他の連中も手が出せないし、龍珠組や傘下組織が守ってくれる筈。最悪、警察が令状片手に乗り込んできても亡命する時間は稼げる」
なんでこんな物騒な話しか出て来ないんだろうか。
「それならいい。こちらも君の”家族”の安全は保障しよう。アイ君、もし気に食わない者が居れば言いなさい。24時間以内に消すから」
……こういう時は美味しいものの事を考えよう。
「にしても、あんたらも人間なんだよな」
「いきなり何ですか」
「失礼にも程があるぞ」
「いや、別に」
今日の夕飯はハンバーグかな?
side:颯真
俺が早坂愛を、その周囲の人間を見た最初の感想は”普通”だった。
決して特別な訳でもなく、本当に普通の赤ちゃん。それが周囲を笑顔にさせ、早坂家の人間もこの子を大切にしている。
――俺を殺そうとした連中が。
いや、それは当然かもしれない。自分の孫と他人の子なら扱いは違うに決まってる。そう理解はするが、納得がいかない。
アイも何故だか放心状態だし、自身と同じ名前で皆に愛されている早坂愛に思うところがあるのだろう。――まぁ、だからといって何の罪もない子供を嫌う理由にはならないがな。
「確認だが、基本的に奈央さんが育てる。だが、奈央さんが仕事や大学で面倒を見られない時は早坂家か俺が面倒を見る。理由として外部から人を雇うにも早坂家が恨みを買っていたり、四宮家に対する交渉カードとして狙われる可能性があるから……で、良いか?」
「その通りだ。
「……まぁ、アイや”家族”の安全に比べれば安いものだ。子供の面倒は慣れてるから安心しろ」
「そうか。では、頼む」
四宮家を筆頭に裏社会では、俺の対場を知らない奴はいない。下手に俺やその傘下に手出しすれば生活できないのだ。
「しかし、本当に良かったのか? 君ならもっと稼げる仕事もあるだろう?」
「……金には困ってないんでね。それに、俺に拒否権はないしな」
「ふむ……まぁいい。君の”家族”の安全は保障しよう」
「当然だ」
……家族、か。実の両親に捨てられ、100人以上の弟妹の死を知らなかった俺が「家族を守ってくれ」とは滑稽だな。
それでも、アイやアイと作っていくであろう家族の保険のためにやるしかない。俺に配られたカードは想像以上に酷いのだから。
「ってか、高校に子供連れて行く事なんて可能なのか?」
「秀知院学園の理事長は四宮雁庵だ。それに、17年に一度のペースで在学中に妊娠・出産している生徒が出るからな。……そういえば、そろそろ厄年か」
「そんな嫌な情報を聞かせないでくれ。在学中に妊娠とか学生婚騒動が起きたら何をすればいいんだ?」
「笑えば良いと思うよ」
冗談じゃない。なんで天下の秀知院学園で妊娠騒動に巻き込まれないとならんのだ。
「……そういえば、最近太った女の先輩が何人か居たような……」
「やめろ」
「なんか、売店でレモンとかが品切れになるくらい売れてるとか」
「マジで止めろ」
「それに、立ち眩みや吐き気を催している事も……」
「孫娘の生まれた日に最悪の情報を寄こすな!!」
……そう言えば、雁庵さんがどっかの女に入れ込んでいるとか聞くし、ストレス溜まってんだな。これ以上は止めよう。
「そういえば、正人さんは?」
「奴なら『あの早坂家の娘を周囲に隠れて孕ませた上、颯真を利用して堂々と結婚の挨拶に行くとは……それだけの度胸がある奴は過去見た事が無い。俺の小間使いとして使ってやる』と言われて、バイト中だ」
「国内最大、世界屈指の巨大財閥当主の下でバイトか……。世界一やりたくないバイトだな」
「ちなみに報酬は奴の”命”だ」
おそらく、早坂家から命を守って貰う条件でバイトしてんだろうな。ミスれば大義名分を得た早坂家に始末されるが、上手く行けば早坂家も認めざるを得ない。家族3人で過ごすには最良の判断だろうな~。
「ほらアイ。いい加減戻ってこい」
早坂さん家の事に首を突っ込むのはやめだ。どうせ家族になるんなら、義両親くらい納得させないと。
俺はバカじゃないから順序立てて、18歳で結婚、互いに生活が安定した20代半ばで子供かな? 男女どっちでもいいけど、兄弟仲良く、元気に育ってくれればそれで――
「ねぇ、颯真」
「やっと戻ってきたか。奈央さんも出産した後で疲れてるだろうし、今後の話もある。俺らはさっさと帰って――」
「……赤ちゃん、欲しいな」
これで第2章は終了です。
次章から原作突入編、またの名を『颯真の胃消失編』となります。
その前にここまでの設定を投稿する予定です。また、間に合えば番外編が先に投稿できるかもしれません。なお、番外編は前書きに書いた事情により暗い話になります。
・早坂愛:『かぐや様は告らせたい』の登場キャラクター。この世界線では颯真の部下になる事が確定。名前の由来は”星野アイ”。