怨敵と巫女   作:大紫蝶

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チャリティー企画 アイ

side:アイ

 

 私の名前は星野アイ。アイドルグループ『B小町』のセンターだ。

 

 今は颯真の主導しているチャリティー番組のリポーターとして恐山に来ている。水子供養の大切さを伝えるためとか言ってたけど、そこまで気にしなしくて良いらしい。

 

「正直、皆さんには『水子供養って風習があるんだな~』くらいを知って貰えれば大丈夫ですよ。詳しい事は代表の者がスタジオで解説する予定ですし、若い方に水子供養の風習を知って貰えれば十分ですから」

 

 こんな事を現地の人に言われた。本当は恋人の颯真が行う予定だったんだけど、現場で指示をする颯真がスタジオに居ないのは怖いから代理で来る事になった。よく分からないけど、私の巫女(偽)経験と高名な僧侶・マダオの推薦が決め手らしい。

 

「それにしても、本当に素晴らしい場所ですね」

「そうでしょう。ここにはあの早坂家の方々や四宮颯真など、著名な方がよく来ていたのですよ」

「早坂家というと、四宮グループの?」

「そうです。そこの娘さんが妊娠して、色々不安になって水子供養の事を知ったとか。彼女のために一族総出でお越しになり、知り合いの颯真さんも来ていましたね」

 

 社長が住職の人と”初めて会いました”という体で話をしている。実際は何週間も前から会議してたし、事務所で台本の読み合わせもしたのに。

 

「颯真さんは本当に良い方で。ここで様々な方のお話を聞くと涙を流していましたよ。後日、『亡くなった子供のために、このオモチャを寄付します』とダン箱3つ分のオモチャまで寄付してくれましたし」

 

 嘘だ。だって、事務所で住職さんが愚痴ってたもん。

 

 

 

『悪い人ではないと思いますよ? でも、号泣しすぎて皆さんドン引きですよ』

『い、いや~感受性の高い人というだけ――』

『泣きすぎて子供の霊が乗り移ったかと思いましたからね。見舞金だとか言って、話を聞かせてくれた方に100万円ほど渡そうとしてましたし』

『そ、それは……』

『しかも、大型トラック3台引き連れてオモチャ持って来ましたからね? 絵本やお手玉ならまだ分かりますが、DVDにフィギュア、日曜朝の変身セットとか持って来ましたからね? B小町のグッズもあれでしたが、一番ヤバいのが……”大人のオモチャ”まで持って来やがった事ですよ!!』

 

 

 

 颯真は正座させられて段ボール3つ分を寄付したらしい。貰っても困るけど、貰わないと颯真の持って来ていたジュラルミンケースを押し付けられそうで渋々受け取ったらしい。……まぁ、帰り際に大量の風車と積み石100セットを置いてきたらしいけど。

 

「まぁ、軽く見て回れば終わりですので」

「そうだな。ただ、敬意だけは持ってやるぞ」

『『『は~い』』』

「はいはい」

「……はい」

 

 社長に『敬意を持って』と言われたのに、皆やる気がない様に見える。一人なんて欠伸しながらだし。

 


 

「はい。終了です。お疲れ様でした」

 

 ふぅ~。やった終わった~!

 

 現地リポートなんてやった事ないし、真面目な話だから大変だったよ~。

 

「お疲れ。撤収作業はこっちでやるから、お前らは休んでいいぞ」

『『『は~』』』

「すみません。アイさんは少し話があるので良いでしょうか。社長さんも同席していただきたいのですが」

「あ、分かりました。アイ、行くぞ」

「はーい!」

「……伸ばすな」

 

 休憩に入ろうとしたら住職さんに呼び止められた。何かあったっけ?

 

 

 

「アイさん、斉藤社長。本日はありがとうございました」ペコリ

「「いえいえ、こちらこそ」」ペコリ

 

 住職さんに連れられてきた場所は建物の裏。何か内緒話かな?

 

「実は、少し頼みがありまして」

「頼みですか?」

「はい。颯真さんに『アイさんの1/1スケールフィギュア10セットを引き取りに来てください』と」

「「あのバカがすみません!!」」

 

 何やってんのよ、あのバカ! 人のフィギュアを送りつけて、本人に回収させないでよ!

 

「それと――『アイの魅力100選!』などアイさん関連のグッズが山の様に送られており……」

「全て回収していきます!」

「あのバカには二度とバカが出来ない様に調教しておきますので!」

「いえ、そこまでは……。ただ、恋人がアイドルだったらもう少し隠した方が良いのではないかと」

 

 ホントにその通りですごめんなさい。

 

「って、知ってたんですか!?」

「流石に5時間もアイさんの魅力語った後に『手ぇ出したら魚のエサにするぞ』と脅されたので。後、彼の生霊が憑いてるし」

 

 何か衝撃的な事を言われた気がする。

 

「生霊!?」

「はい。最後は近くにあったトロフィーで頭殴って逃げましたよ。流石に5時間も聞かされるこっちの身になって欲しいと――」

「いやいや生霊! そっちが重要でしょ!!」

「あ、そっちですか? 別に昔から憑いてたじゃないですか。最初は”生霊に憑かれてる系アイドル”でも狙ってるかと思うくらいハッキリ見えてましたし」

「そ、そんなにハッキリと? 私には見えませんが」

 

 社長が私の方を見るけど、私にも見えないよ。

 

「霊感があれば『なんかに憑かれてんな~』くらいは分かりますよ。安心してください。彼の生霊は守護霊兼ストーカー、貴方を守っている神様と殺し合いをしているだけで無害ですから」

「待って待って。情報量が多い」

「ですから、彼女には神様が加護を授けて、分身体が守ってるじゃないですか。それに対抗して颯真さんも生霊飛ばしているだけですよ、9割方悪霊化してますけど」

 

 もっと訳分からなくなった。

 

「まぁ、普段は法被とペンライト装着しているだけですよ。神様と戦っている時は、顔が3つに増えて阿修羅像みたいな姿に変貌するだけですって」

「……冗談ですよね?」

「本気ですよ。よくテレビや動画でもアイさんの背後で『悪霊化してアイさんを自分のものにしようとする四宮颯真』VS『悪霊から巫女を守ろうとする神7柱』の対決やってるじゃないですか」キョトン

 

 怖い。なんか、自分のそばでとんでもない事が起きてる気が……。

 

「アイ、ちょっと」

 

 悩んでいたら社長が私を連れて、少し離れた所でコソコソ話し始めた。

 

「多分、あまりにイラついてたから脅してるだけだと思う」

「脅す?」

「そうだよ。流石に彼女自慢5時間、一般客に迷惑をかける、大量のオモチャ(大人版含む)の持ち込み、勝手に大量の風車や積み石、彼女の1/1フィギュアの送り付け……止めに、他メンバもふざけてたから怒ったんだよ」

 

 ヤバイ。心当たりしかない。

 

「ここは話を合わせて、颯真をどつき回して、早坂家と四宮グループに告げ口して、龍珠組で再教育してもらおう」

「そうだね。どうせなら『愛ちゃんのオモチャの刑』も追加しようよ」

 

 少しは痛い目に遭えばいいんだ。可愛い彼女にこんな恥ずかしい思いをさせた罰!

 

「あの、もういいですか?」

「はい。上の人間に説教してもらうので」

「はい。颯真は生きたオモチャになるので」

「本当に大丈夫ですか!?」

 


 

「何やってるんですか!?」

 

 住職さんから恥ずかしい話を聞かされた私達を待ってたのは、もっと恥ずかしい……そして、酷い話だった。

 

「どうしたミヤコ」

「そ、それが……この子達が!」

 

 よく見るとメンバーの一人――カノンだっけ? その子の足元に石が散らばっている。後、他の子の足元にも。

 

「積み石に当たっただけですよ~」

「そうですよ。社長達が遅くて暇だったので~」

 

 そう言いながらニヤついている子達には反省が見えない。”悪い事したらごめんなさい”が普通じゃないの!?

 

「す、すぐに積み直さないと!」

「そ、そうだよな。お前達も、心を込めて戻すぞ!」

「え~、そんな必要ないでしょ」

「もう時間ですし、早くしないと他の人に迷惑掛かるじゃないですかー」

「「は?」」

 

 い、今、なんて言った? 必要ない?

 

「しゃ、社長。ちょっとこっちに……」

 

 そう言ってミナミさん? が社長を連れて離れた所で内緒話をしていると、私の後ろに居た住職さんが怖い顔をしていた。

 

「す、すみません! うちのメンバーが――」

「いいですよ。後はこっちで直します」

「そう言ってるし、早く帰ろ~」

「明日にはライブもあるしね」

 

 そんな事を言ってみんな帰っちゃった……嘘だよね? これって、ドッキリだよね?

 

「う、嘘だろ……あいつら……」

「しゃ、社長! 皆が!」

「あ、あいつら――」

「わざと積み石を蹴とばしたんでしょ?」

「し、知ってたのですか!?」

「はい。積み石は『親より先に亡くなった子供が天国に行ける手助け』という意味があります。それを崩したという事は……」

 

 そう言って住職さんが黙ってしまったけど、そんな事どうでもいい。

 

 お姉ちゃんが赤ちゃんを産むために、すっごく勉強して、苦労している事を知ってる。でも、そんな苦労も赤ちゃんの笑顔で幸せそうにしているのを見れば……子供をどれだけ大切に思っているのか分かる。

 

 私も、颯真との赤ちゃんが欲しいと思って、避妊を辞めて、子育ての勉強をしたから分かる。そんな子供が、自分より先に亡くなったのなら――正気じゃいられない。いられる筈がない。

 

「私、全部積み直します。同じグループとして責任がありますから」

「俺も監督責任があるから残る。ミヤコはあいつらを連れて帰れ。反省してない奴が積み直しても迷惑だ」

「わ、分かりました」

「ただ、メンバー全員連れて来い。最後に謝罪だけさせる」

 


 

 他のメンバーが形だけの……ホッントに形だけの謝罪をしてから、私は社長と住職さんと一緒に石を積んでいた。

 

 他の子達からは「偽善者」「いい子ちゃん」って言われたけど、気にしない。親として先輩の人達と亡くなった子供のためなんだから。

 

「貴方は良い親になれますよ」

「えっ」

 

 住職さんが石を積みながらそんな事を言ってきた。

 

「貴方、石一つ積むのに時間掛けているでしょ? 普通なら適当に高く積んで終わりにしますよ」

「そんなのダメ! だって、これは子供のために親が積んだモノでしょ。それを顔も名前も知らない私が積んでるんだから」

「そういう所ですよ」

「そうだな。”メンバーの責任を取る”じゃなくて、”親と子供のため”と即答できるなら大丈夫だろ」

 

 社長まで変なこと言ってる。

 

「……貴方には分からないでしょうね。そんな純粋に行動できる人はそうそういません」

「お前の母親みたいに実の子を捨てる親も居る。そんな中で、見ず知らずの子供と親のために積み石を積み直せる奴は少ないんだよ」

「そうですよ。颯真さんなんて積み木みたいにさっさと積んでましたからね、1mくらいのヤツを」

 

 ある意味、そっちの方が凄いのでは?

 

「ま、その調子で真っ直ぐ生きてればちゃんとした親になれるだろ」

「私もそう願いますよ。子供のためになく親を、これ以上見たくないので」

 

 よく分からないけど、褒められているってこと?

 

 そんな話をしながら私達は積み石を積み直した。結構時間かかっちゃったけど、仕方がないよね。

 

「今日は申し訳ありませんでした!」

「いえいえ、お気になさらず。()()()()()()()()()()()()()

 

 帰る時にもう一度謝罪したけど、住職さんは気にしてない様子だった。

 

「本当に胃が痛いわ」

「私もお腹が変な感じするよぉ~」

「……お前は食べ過ぎか、便秘じゃね?」

「そんな事ないもん! これでも責任感じてるの!」

 

 ……やっぱり、お弁当3個はダメだったかな? 最近、妙にお腹がすくんだよね~。

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