怨敵と巫女   作:大紫蝶

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 今回はタイトルの通りです。


秀知院学園崩壊

side:颯真

 

 俺の名前は四宮颯真。胃に穴が開きそうな状況に居る17歳だ。

 

 先日行ったチャリティー企画が無事に……一部のバカ女共を除いて無事に終わった俺にビックニュースが入ってきた。

 

「颯真、赤ちゃんできたよ~」

 

 凄く重大な発表が雑にされた。

 

「待て待て。赤ちゃんが出来た? まだ避妊止めて半年も経ってないぞ!?」

「でも若い2人なら出来てもおかしくないでしょ?」

 

 え、妊活で何年も悩んでいる人とか居るし、子供が出来るのもっと先だと思ってたのに……。

 

「なんか最近調子悪いな~って、思ってたら出来てた。お姉ちゃんに検査薬買って来て貰って、さっき試したら陽性だったよ」

「そういうのは俺に頼めよ。いや、結局奈央さんに買って来て貰ったと思うけど!」

「ならいいじゃん。それに、やっと出来たんだからさ☆」

 

 そうだね。喜ばしい事だね。妊活して子供出来たんだから良い事だねー。

 

「これから病院に行って確認してもらうから。お姉ちゃんが迎えに来るって」

「待って! 未成年のアイドルが妊娠の有無を確かめに産婦人科に行ったら問題だから待って! こっちで手配するから!!」

「大丈夫だって」

「絶対問題が起きる! 問題が起きなくても闇の力が働いて問題が発生するから!」

「颯真、そういう”ちゅーに”? 早く直した方が良いよ?」

 

 マジだよ! 具体的には四宮家の長男とか次男とか! あいつら追い詰められて迷走してんだよ!

 

 とにかく、信用できる病院をピックアップしておかねば。それと斉藤社長にもアイの妊娠について伝えて、スケジュール調整をしてもらわないと。

 


 

「本当に面倒な時に妊娠しやがって……っ!」

 

 本当なら喜ばしい事なのだ。盛大に祝ってどんちゃん騒ぎでもしたいのだが……最悪な状況のせいで喜べん!

 

「四宮君……どうすればよいと思う?」ウルウル

「校長。いい年した大人が高校生に泣きつかないで下さい。そんなチワワ見たいな目をしてもどうしようもないでしょ」

「嫌だ! この年で人生設計が崩れるなんて誰が想像できんだよぉおおお!!」

 

 俺が居るのは秀知院学園高等部生徒会室。そして、俺に泣きついているのは高等部の校長だ。後3年で定年退職、そのまま過去の校長達と同じように天下りする……筈だった男だ。

 

 他にも一心不乱にエビを揉んでいる教育指導の先生、自分の髪をしゃぶり続けている新婚の女教師、全身に油性ペンでお経を書いている国語教師など……国内有数の教師だった廃人達が揃っている。

 

「それじゃあ、まずは状況確認からしよう」

「一家離散」

「新妻物のAV出演」

「南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏」

「いい加減にしろ!! 泣きたいのは俺だって同じなんだよ!!」

 

 この状況を説明するために、この秀知院について説明する必要があるだろう。

 

 

 

 秀知院学園はかつて貴族や士族を教育する機関として創立され、200年の歴史を持つ由緒正しい名門校だ。貴族制が廃止された今もなお、富豪名家に生まれ、将来国を背負うであろう人材が数多く就学している。幼等部から大学までの一貫校のため、生徒の多くは幼馴染である事が多い。いわゆる究極の村社会であり、学生時代の関係が卒業後も続く。

 

 生徒の取り締まりは『生徒模範の手引き』に基づいて行われるが、最近は携帯電話の持ち込みが可能、染髪も許可などルールは緩くなっている。

 

 俺は中等部から入った例外だが、大抵は幼等部・初等部からのエスカレーター組であり、高等部から外部の人間が入って来る。高等部の偏差値は77という国内最難関であり、秀知院卒業というステータスは”東大主席卒業”などより強力だ。なにせ、将来の政治家や大企業の社長、皇族や他国の王族も在籍している学校だ。彼らと友人関係になる=将来の国を牛耳る人間の仲間入りだ。

 

 秀知院の生徒同士のつながりは最強のコネであり、一般家庭出身の高校生が現役大臣や大企業の社長との人脈を築く事すら珍しくない。あの鬼頭も秀知院の卒業生であり、保証人に銀行の頭取や大手グループ会社の社長の名前を書いて、銀行から10億円の融資を受けていた筈だ。しかも、学校を卒業したその日の内に。

 

 

 

 ここまで言えば分かると思うが、秀知院学園とは現代の貴族社会。ここにいるカースト最下位の生徒ですら、社会的には上流階級の人間だ。あくまで”上流階級内でのカースト争い”でしかない。

 

 そんな社会であるため、絶対に避けたい状況がいくつかある。過去の例だと、学園内で行われた暗殺事件などだ。これらの問題は17年に一度起こると言われ、その年を”厄年”と言われていた。だが、殆どは生徒の妊娠騒動くらいで済む。上流階級の子女が学生妊娠などあってはならないので問題と言えば問題なのだが……”その程度”で済む問題だともいえる。

 

「と、今年も妊娠した生徒が出た訳だ」

「それに関しては特に問題がないし、学園側でも育児環境は整えてある。過去の校長達が完璧に対策しているからな」

 

 俺もある意味妊娠させた生徒だから厄年であると言えるだろう。まぁ、これで済めばよかったんだよな~。

 

「なんで5()0()()()()()()()()()()したんだッ!」

「まさかこの学園でハーレム築いた奴がいるとは……」

「教師まで孕ませたせいで泥沼っスよ……」

「なんで50代のおばさんまで孕ませた……」

 

 『学園ハーレム』って言えば分かるか? 高等部の男子生徒・伊東 誠二(いとう せいじ)が学園中の女子生徒を孕ませやがったのだ。ある意味、超箱入り育ちの環境で外部から入ってきたイケメンと火遊びをしたお嬢様が大量発生。ついでに教師や中等部、初等部の生徒にまで手を出しやがった。

 

「最初に聞いた時は夢でも見てるのかと」

「私は気づかない内に酔っぱらっていると思ってました」

「お前らは現実逃避で酒に逃げただけだろ!」

「それの何がイケないのッ!? あの人は私を裏切ったのよぉおおおおお!!!」

「落ち着いてください! 田中先生!」

「謝って! 新婚で幸せいっぱいの結婚式を終えた数日後に旦那が小学生に手を出して捕まった田中先生に謝って!」

 

 そう。これが状況をさらにややこしくした。

 

 伊東誠二というクズ以外にもヤバイ奴らが大量発生したんだ。小学生や中学生にまで手を出した変態、生徒の使い終わったストローやティッシュを収集する変態、『誰が最初に孕ませられるかゲーム』を行っていた外道共など。当然、理事長である四宮雁庵によって変態や外道共はこの世の地獄を見てから”一族共々行方不明”となった。被害者には多額の慰謝料が支払われたのが唯一の救いだ。 

 

 そして、事の発端である伊東誠二だが……こっちでは別のデスゲームが開催されてたゾ☆

 

 女同士の醜い……殆ど人間版蟲毒みたいなバトルロワイヤルが発生。それぞれの家の人間や金で雇った外部の人間、警察まで使った殺し合いが発生。

 また、伊東誠二に一生の忘れられない思い出(トラウマ)として残るために、彼の目の前で飛び降り、首にナイフを突き刺すなどの自○が大量発生。

 

 彼女達の協力者となった兄弟や友人達も巻き込んだ結果……最終的に、高等部の生徒の内約200名、全体の1/3が学園を去った。俺も争いを止めるために身を挺して生徒や教師を守ったせいで、腹がハチの巣状態になった程だ。その状態でチャリティー番組を指揮してたんだから褒めて欲しい。

 

 まぁ、これで分かっただろ。日本の上流階級の子女が通う現代の貴族学校で発生した200名の退学事件。その他、大量の犯罪者が学園から生まれたという事実。これらの責任を誰が取るのかってのが、現在の問題だ。

 

「それで、校長は辞表書いたのか?」

「書ける訳ないでしょ! そもそも私だけじゃ責任取れませんよ!」

「だが、理事長も辞めて今は早坂さんのお父さんが代理を務めているんですよ。あなたも辞めないと」

 

 まぁ、校長が辞めても殆ど意味ないと思うけど。形式的な責任の取り方としてやらないとな。

 

 他に責任を取りそうな教頭や副校長は刑務所だし、残った教師は10人程度。それ以外は刑務所か、行方不明か、責任取って切腹したからな~。

 

「それじゃあ切腹だな」

「死にたくない!!」

「いや、田中先生を筆頭に廃人になった先生ばかりだし、もう無理でしょ。ここは腹の一つや二つ切らないと」

「私はまだやり残した事が山の様にあるんだぁ~!」

 

 もう諦めたらいいのに。野球で例えたら、9回裏ツーアウトランナーなし、その上100対0で負けてる状態だぞ。

 

「それじゃあ、残った教師を率いて学園の再興を目指すしかないんじゃないか? 教師の数が足りないけど」

「いや! 生徒が1/3減ったんだから、教師も1/3で良いんだ! 他の教科担当の先生は金で殴ればいくらでも集まる筈!」

「いくら積まれても生徒の1/3が退学した学校に来たくないでしょ」

「ぐはっ!」

 

 あっ、校長が崩れ落ちた。

 

「なんでよ! 私を一生愛してくれるって誓ってくれたのにィ!!!」

 

 スゲェ。先週まで新婚で浮かれていた女が、今では般若とか鬼女の類になってる。

 


 

 あの後、マジでダメになった大人達(マダオーズ)を昔アイが作成してから滅ぼす事が出来なかった最終兵器――キューバリファカチンモの力でちょっとだけ俺の言う事を聞いてもらう事で解決した。今では元気に……どっかの部族の様に飛び跳ねながら教師としての職務を全うしている。

 

「……あれっ、これがあれば大丈夫なんじゃね?」

 

 俺の手にあるキューバリファカチンモというのは『謎の塊につぶらな目が一つ、ムキムキの人間の生足が生え、意味深な言葉が書かれた4つの旗をぶっ挿している奇想天外な存在』であり、クトゥルフ的な魂の宿ったチョコだ。

 もう一度言う、魂の宿ったチョコだ。

 

 3年前にアイがバレンタインデーにくれたが、未だに破壊出来ていない物体だ。ゴミに出しても、海外の活火山の中に捨ててきた時も、コンクリ詰めにして海中に埋めても冷蔵庫に帰ってきた物体だ。たまに目が合うから怖いんだが、アイの作った物だから無下にできないオカルトグッズ。

 

 だが、見方を変えるとどうだろう? アイという現世に降臨した女神の創造物と考えれば――事実上の神器だ。女神様から『これで気に入らない奴を洗脳しなさい』と与えられた物だったのだろう。今こそ、この神器で世界を正す時!

 

「とりあえず教師陣の洗脳は済んだから、次は生徒だ。VIPの奴らを洗脳して生徒会長となれば融通が利く。後は反対勢力を神器で掌握すれば……っ!」

 

 上手く行けばうるさい世論も黙らせられるのでは!? アイと子供と堂々と一緒に暮らしても問題なくなるのでは!?

 

 こんな素晴らしい神器を与えてくれた女神様(アイ)には感謝を伝えなければ。……とりあえず生贄として、外道共を100匹捧げるか。




・星野アイ:ついに子供を妊娠した。この先、数多の苦難が襲い掛かって来る事を知らない。

・四宮颯真:色々な意味で胃が痛い主人公。神器・キューバリファカチンモで自身に逆らう者を洗脳するようになる。なお、彼がキューバリファカチンモを学校に持って来ていた理由は本人も知らない。

・校長:秀知院学園高等部校長。3年で定年退職、天下りが確定していたのに、学園始まって以来の騒動が発生して廃人化した。キューバリファカチンモによって教師生活を続ける事となる。

・田中先生:秀知院学園高等部女教師。結婚式を挙げた1週間後に夫が小学生に手を出して逮捕された。般若や鬼女の類に変化しそうであったが、キューバリファカチンモによって人間に戻っている。

・伊東誠二:元ネタは『School Days』の伊藤誠。秀知院を崩壊させた元凶であり、四宮家によりこの世の地獄を味合わせた後、颯真によって神への生贄にされた。



・キューバリファカチンモ:星野アイが3年前のバレンタインデーで颯真に渡した『魂を宿したチョコ』。製造方法、正体、能力などが全て不明。颯真曰く「女神の作った神器」であり、使用者は他者を洗脳できる。なお、颯真がキューバリファカチンモの使用方法を知っていた事、そもそも学校に持ち込んでいた理由や方法は彼自身も知らない。
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