怨敵と巫女   作:大紫蝶

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 【推しの子】完結!
 色々言われていますが、原作が完結&スピンオフなしならば、後は二次創作界隈の独壇場です。原作との整合性を考えなくていいので、のびのびと創作活動に打ち込めますね!


 記念ではありませんがNovelAIで主人公のイメージ画像を作成しました。
 
【挿絵表示】

 いつか、自分の小説の挿絵を作れるレベルになりたい。


しょーもない男達

side:雨宮

 

 今日、俺は憧れている先生からの頼みで一人の患者を担当する事になった。

 

「だが、その患者が推しのアイドルなんて……」

 

 正直な話をするなら、”裏切られた”って気持ちがある。

 

「うわっ、マジか。MIU好きだったのに」

 

 おっと。考え事をしていたら待合室の方まで来ちまってたか。しかもアイドルが結婚&妊娠の電撃報告とか。

 

「まて……逆に考えれば、今死ねばアイドルの子供に転生できるのでは?」

「考えがキモすぎる……」

 

 さりなちゃんみたいな考えって、割と一般的なのか。

 

「でもさ……男と子供がいるアイドルを推せるか?」

 


 

 君に好きな男が居ても、俺は君を推し続ける。

 

 でも君が子供を産めば、より高みに羽ばたいていく姿を見る事は出来なくなるんだろう。

 

「ファンの意見ってのは身勝手だな。そう思うだろ、さりなちゃん」

 

 あれからアイの診察を終えた俺は屋上で黄昏(たそがれ)ていた。家に帰っても独りだし、特に用事もない。本当は勉強でもしたいところだが……そんな気分じゃないからな。

 

「もし、彼女の事を週刊誌に話したらどうなる? 憂さ晴らしに――ならないな。引退するアイドルの事なんて話題にすらならない」

「彼女の父親は? 俺の父親みたいに彼女を捨てたのだろうか」

「彼女は施設出身だ。頼れる家族も居ないのに、アイドルを引退するのに、まだ16歳なのに生きて行けるのだろうか」

 

 嫌な事ばかり思い浮かぶ。今まで見てきた『子供なんて出来なければ良かった』という人間じゃないと思う。でも、そんな人間が壊れてしまうケースだって沢山あるんだ。

 

「あっ、センセ」

「星野さん」

 

 なんで件のアイドルがここに来るんだよ。

 

「夜風が体に障りますよ」

「厚着してるからだいじょぶ!」

「それでもですよ」

「心配性だね。さっすがあの人が勧めただけあるよ☆」

「あの人? それって」

「そ、お腹の子達の父親」

 

 父親ね。ロクな奴じゃなさそうだ。

 

「なら、なんでここに来なかった」

「それはね。彼がここに来ると皆が困るんだって。まぁ、彼のお家で騒ぎが起きてるって話もあるけどね」

「まるで金持ちみたいだな。それなら最低限の養育費位請求できそうだ」

「しないよ。いっしょに暮らすから」

 

 いっしょに、か。俺の母親みたいな妄想だ。

 

「先生の事聞いたよ。色々な患者さんのためにカウンセラーみたいな事してるんでしょ? 私の布教活動までして」

「……話して良いのか?」

「いいよ。彼から大体聞いてたし、看護師さんからも教えてもらったからさ」

「看護師って、ここの看護師はロクな奴いないよ」

「そんな事ないよ。センセは『お見舞いに誰も来ない患者さんが寂しくない様に病室に入り浸ってる』とか、『かつて救えなかった女の子との約束を守るために医者を続けている漢だ』とか言ってたよ?」

「っ!」

 

 クソ。いつもいつも人の事をバカにするくせに――本当は、分かっていてくれたのか! これからどんな顔で会えばいいんだよ。

 

「な、なんだ~/// そんな事言っても500万くらいしか出ないからな~///」

「それで最終的に『ロリコンの残念イケメン』だって」

「あのクソ同僚共がッ!!」

「他の患者さんも言ってたし」

「どこまで俺の汚名が広まってんだ!?」

「田沼先生も知ってたから、少なくとも東京までじゃない?」

 

 そんな……尊敬する先生にまで事実無根の誹謗中傷が届いているなんて……。

 

「でもね。私の婚約者からは『あれ程バカ真面目で信頼できる医者も少ない』って言ってたから」

「その人と会わせてくれない? もうその人以外、俺の事を正当に評価してくれる人が居ないよ……」

「『信頼できるけど二度と会いたくない』って言ってたからムリ☆」

 

 この世に神はいないのか!? さりなちゃん辺りが神とかその使いに転生しててくれないかな~。

 

「……まぁ、お幸せに。アイドル引退するってんなら学校とか行くの? 高卒認定試験受かれば大学に行く事もできるし」

「え? アイドル辞める気ないよ?」キョトン

「でも、それは……」

「私、家族って居ないから、家族に憧れがあったんだぁ。……お腹にいるの双子なんでしょ? 産んだらきっと賑やかで、楽しい家族になるよね!」

「子供は産む……アイドルも続ける。つまり、それは……」

「そ……! ()()()()()

 

 それがきっかけだったのだろう。

 

「アイドルは偶像だよ?」

「嘘という魔法で輝く生き物」

嘘はとびきりの愛なんだよ?

 

 俺の推しは――

 

「嘘に嘘を重ねて。どんなに辛い事があっても、ステージの上で幸せそうに歌う楽しいお仕事!」

 

 俺()の推しは――

 

「母としての幸せと、アイドルとしての幸せ」

 

 俺達が思っていたより、ずっと図太く――

 

「普通は片方だけかもしれないけど」

 

 ずるくて強く――

 

「どっちもほしい。星野アイは欲張りなんだ」

 

 一番星の様に眩しかった。

 

「和解した」

「えっ?」

 

 医者の俺と、ファンとしての俺の意見が一致した。

 

「星野アイ。僕が産ませる。安全に、元気な子供達を」

 


 

side:颯真

 

「は? アイツ、俺のアイに馴れ馴れし過ぎない?」

 

 俺の名前は四宮颯真。そこでロリコンにナンパされているアイの婚約者だ。

 

 さて、何故こんな状況になっているのか。話は数日前、”四宮家崩壊未遂”にまでさかのぼ――

 

「あっ! あの変態ロリコン、目つきが変わった!!」

 

 目の前で人の女に手を出そうとは……その勇気に免じて”即死”で赦してやる。『勇者ここに眠る』と書いたアイスの棒を墓標代わりにしてやるよぉおおお!!

 

 

 

 ――アイに目で『黙ってろ』を制されたので見逃してやった。

 


 

「それで、何で居るの?」

 

 屋上で二人が別れた後、俺は病院の外壁に張り付きながらアイに病室に侵入した。

 

「実は四宮家で問題が発生しまして……諜報部隊の人間が使えなくなったので、この部屋に盗聴器と監視カメラを付けるために昨日から潜んでいました……」

「呆れた……それなら診察の時に一緒に居てくれたらよかったじゃん」

「いや、一応送迎の車には居たぞ? ただ、神木家の保守派と会いたくないから車の底にしがみついてたけど」

 

 辞めて! そんな「あんたバカ?」みたいな目で見ないで!

 

「いや、あんな変な人達と会いたくないのは分かるけどさ」

「違うからな!? あいつらもう思想と信念すらないイカれ集団なの! 関わった時点で人生の汚点になるようなゴミカスなの!」

 

 そもそも神木家は『圧政や愚かな支配者のせいで苦しめられている民を救う!』って大層な信念を掲げていた集団だった。だが、時代が経つにつれて『神木家の存続』を第一に考える腐った集団に変わった。

 

 本来なら『国家の脳』とまで言われた巨大財閥の没落は、単純に経営方針が無くなった事による自滅によるものだ。家の思想がないせいで何をするか分からない恐怖の集団だよ。

 

 そもそも、嫡男至上主義だって『圧政や愚かな支配者のせいで苦しめられている民を救う!』という目標を叶えるための手段でしかなかった。それがいつしか目的と手段が入れ替わって、『圧政や愚かな支配者のせいで苦しめられている民を救う!』という建前で嫡男至上主義をやってるだけだから。

 

 俺はこの神木家の色んな意味で恐ろしい存在である事を丁寧に説明した。

 

「つまり、制御不能&目的なしで本能のままに動いている猛獣って感じ?」

「それそれ! もっと言うなら現役の悪霊だよ。なんか『俺達は神の力を手に入れた!』とか言ってるし、中二病患者の巣窟でもあるぞ」

「神の力?」

「よく知らんが、定期的に国内外の神仏とかを殺して取り込んでいるらしい。まぁ、ジャンキーの妄想だから気にしなくていいから。ただ、それを数千年に渡って信じている集団だから怖いんだよ」

 

 数千年もののジャンキー一族であり、ジャンキーの英才教育を受けてきた連中だ。そこのトップになんて絶っ対になりたくない!

 

「そもそも金も技術も人脈もあるんだから、神木家の配下はそれぞれグループ会社でも作ればいんだよ。それなら手を貸しても良いんだが……まだ”目的のない国家転覆”を夢見てるからな」

「もう潰しちゃえば?」

「そのために四宮家が動いてんの。でも”四条家の独立”や”四宮家次男が神木家の操り人形状態”とかいう致命傷2回受けてるから動けないの」

 

 今は俺が居るから神木家内の派閥が2つに分かれて足の引っ張り合いをしてるから脅威じゃないだけ。

 

「思想とか理念がないからホントに怖いんだよ」

「じゃあ、颯真は継ぐ気ないんだ?」

「一応後継者は神木輝だし、あいつには実子の息子がいるんだ。ほっといてもゴタゴタで勝手に自滅するよ」

「ふーん」

「どうせお腹の子を後継に! とか言われてんだろうが無視しろ、無視」

「……なら無視するけど」

 

 納得してない様子だが、俺や雁庵さんも理解不能な連中だから無視で良いんだよ。

 

「颯真はどれくらいここに居るの? 半年くらい?

「無理だから。ってか、二度と来れないから」

「嘘でしょ!? 出産に立ち会わない父親とかサイテーじゃん!!」

「芸能関係の仕事・神木家関係・四宮家崩壊の危機・秀知院学園の立て直し……これ以外に龍珠組や人間換金所、同盟組織との打ち合わせとかやる事があるんだ。せめて前4つの半分を片付けないと休みすらないんだからな?」

「ちぇ。それじゃあ、出産してからは一緒に暮らしてよ」

「……努力はするけどさ~」

 

 力なく答える俺を呆れながら見守るアイ。なんか、既に”まるでダメ夫”と”それを支える妻”みたいになってない? まだ結婚すらしてないのに……。

 

 

 

「そう言えば、どうやって帰るつもりなの?」

「ん? それなら日中に用意しておいた医療用の感染症廃棄物ボックスに入って出る予定だ」

「なにそれ??」

「感染症廃棄物用の容器は一度封をすると、例え警察でも開ける事は出来ない。新品のボックスを芸能界で覚えた”汚し”の技術で他のボックスと見分けがつかない様にしてある。病院から直送すれば安心安全に”見られたくないもの”を運べるって訳だ」

「悪い事考えるね~」

「昔から面倒な人間や人間だった物、拳銃、薬物を運ぶのに使ってたんだよ。だから慣れてる。この病院だって似た様な事を何度かしてたらしいから失敗はないよ」

「そうやって逃げ出すと。なら、私も使った方が良いかな?」

「それをしないために神木家と手を組んだんだ。一時的だとしてもな」

 

 この方法、生きてる人間を運べても”すぐに処理する事”前提だからな。ボックスも大きくないし、移動には不向きだ。

 

 だから神木家に情報封鎖をするように言ってある。仮にマスコミが近寄っただけで、行方不明になる事が確定している。これは外部に助けを求めたり、逃げ出そうとするスタッフも同じだ。

 

「とりあえずボックスに入って来るから。ちゃんと電話はするし、子供が生まれてからは一緒に暮らすから」

 


side:???

 

 はぁ~。やっと居なくなったよ。

 

 あの化け物がここに滞在した期間は短い。

 

 しかし、何度も神仏を殺し、その力を取り込んで来た一族の最高傑作が居たら神様だって疲れるよ。

 

「しかも、ここで子供を出産する~? 魂の無い子供を出産しても意味ないでしょうが!」

 

 いや、怒り狂った彼が国内外の神仏を滅ぼしにかかるかもしれない。最終的に神側が勝っても、7割近い神は消滅するだろう。それだけ阻止しないといけないけど……子供作るの早すぎるんだよ! もっと時間掛けて作れよ!

 

「はぁ。どっかで魂のバーゲンセールやってないかな~」




・四宮颯真:ここ最近の『side:???』の正体。恋人に近づく男を見てメチャクチャ嫉妬していた。四宮本家で問題が発生したため、己のストーカー技術を存分に披露していた。雨宮吾郎への好感度は80→-100。

・星野アイ:何故か16歳で計画的な妊活、無事妊娠したアイドル。原作同様アイドルを続けるつもりだが、原作と違い『雨宮吾郎がドルオタ』である事を知っている。また、病院の人間から雨宮吾郎がロリコンの残念イケメンである事を教えてもらった。雨宮吾郎への好感度75。

・雨宮吾郎:自身の悪名が東京の尊敬する先生や推しのアイドルにまで広まっていた男。アイの言葉とその彼氏(颯真)の事から子供を無事に産ませると決意した。颯真への好感度120。アイへの好感度5億。
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