怨敵と巫女   作:大紫蝶

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 遅れてしまい大変申し訳ありませんでした!!!

 これにて第3章終了です。ちょっと中途半端になってしまいましたが、無駄に長くなるよりさっさと進めようという判断です。

 最終巻を読んで確信しました。”黒川あかねがポッと出てくる世界なら、四宮颯真も本気を出せる”と!


出産当日

side:吾郎

 

 俺の名前は雨宮吾郎。地元で産科医をしている男だ。

 

 最近、近所で知らない人間や自衛隊が増えた気がするが……知らない方が生きていけるだろう。

 

 ここ最近の出来事として、アイの出産方法を”帝王切開”か”自然分娩”のどちらにするか、今後の仕事の事もあり社長さんと相談した。アイは能天気だったが、女性アイドルとして肌を見せられない体になるのは厳しいのだろう。

 

 後は四宮颯真の『害虫早食い大会』が世界的に話題になった事とカラスの縄張り争いに巻き込まれた事か。身長220cm超えの大男が顔面にゴキブリなんかの一部を付けながら、害虫を無表情で貪り食っているシーンはどんなホラー映画より怖かった……。カラス共も数百羽単位で争っている様も怖かった……患者やスタッフの数名が怪我させられたし。

 

 

 

 そんな退屈しない日々を生きていると、割とすぐにアイの出産予定日を迎えた。

 

 

 

「せんせ、お疲れ様。でも呼んだらすぐ来てよ?」

「おう。家はすぐ近くだしな。まぁ、仮に来れなくても代わりの先生が来てくれるし」

「やだ。センセが良い」

 

 出産予定日だというのにアイの彼氏は一度も姿を見せず、寂しくなった彼女は病室に抱き枕を持ち込んでいた。……いや、特大サイズのぬいぐるみっぽいけど。

 

 アイの事務所の社長はすでに病院に来ていて、アイの傍に居られる様に待機している。仕事の方は部下とスポンサーの会社から人員を割いて貰ったらしい。しばらくゆっくりして居られるとの事で、子供が生まれたら小旅行にでも行く予定とのこと。

 それと、アイの恋人について少しだけ教えてもらった。

 

 詳しい事は秘密らしいが――恋人はそこそこ地位のある人であり、後継者争いでアイと子供が人質にならないようにここに来ていないらしい。病院内には信用できる人員を護衛に付けており、外部からの襲撃に備えているとの事。どうやら獄寺教授達がピリピリしていたのもそれが理由とか。報酬に子供の移植手術に必要な資金などを用意していた、と。

 

 とにかく、出産さえ終わればアイとの繋がりはなくなり、ただのアイドルとファンの関係に戻る。ちょっと裏の面も見えたけど、彼女のカラッとした性格を、むしろ好きになった感すらある。

 

 彼女の幸せを心の底から応援――

 

「あんた、星野アイの担当医?」

 

 ……マズい。

 

「彼女が受信する際は偽名を使っている。病院で見かけたとしても、なんで公表されていない彼女の苗字を知っている?」

 

 誤魔化しは無理だ。アイをピンポイント当てた以上、そして産科医である俺を担当医と思っているなら……話に聞く襲撃犯かもしれない。

 

「関係者? 名前を聞いていいか?」

 

 この場所は街灯が少なく、周辺に人はいない。だが、近くに誰かが潜んでいても分からない環境だ……普通なら。

 

(俺の地元だ。この辺は庭だし、地元民でもなければ病院まで逃げ切る事も出来る)

 

 不審人物の特徴は何か。フードを被った人物。身長的に男だが……背の高い女の可能性もある。ただ、斉藤社長があそこまで警戒している以上、まともな人間じゃないだろうな。訓練を受けている軍人なら勝ち目はないのだが……病院に居るという護衛を頼れば勝てるか? いや、アイの傍まで連れて行くわけにいかない。

 

「ちっ!」

 

 今は逃げるしかない。事情を知っているであろう獄寺教授に連絡して不審者のもとに護衛の人間を連れてきてもらう。病院からここまで来てもらえれば、アイから離れた位置で戦える!

 

「崖を下ればかなりのショートカットになる! 地の利がある以上、ここでなら特殊部隊にだって負けるかよ!!」

 

 自然豊かな環境だからこそ、地元民に勝てる訳ねェ! こっちは物心ついた頃から野山を駆け回ってんだよ!

 

「獄寺教授! 病院近くで不審――」

 

 この時、俺は考えもしなかった。本当に襲撃犯なら丸腰の筈がない事。そして、”一人しかいない”という自分の認識の甘さを。

 

 

 

 タンッ!

 

 

 

 とても軽い音。それが、俺の覚えている最期だった。

 


 

side:????

 

「それで神様、話とは?」

『あぁ、実は四宮颯真について分かった事がある』 

「ついに悪霊になったってだけでしょ」

 

 ”悪霊(仮)”が”悪霊”になった。そう言われても「はいそうですか」としか言えないよ。

 

『違う。そもそも奴は悪霊になどなっていない』

「はぁ? 神様にもボケってあるんですね」

 

 あれは悪霊以外の何物でもない。顔3つに腕6本、全身に闇を纏って目につく生物を食い荒らしていた化け物が人間な訳ない。

 

『良いか。これは他の神々とも話し合ったのだが……アレは”人間”なのだ』

「いい加減にしろよ神(笑)。あれが人間なら、この世界にいる人間はなんて言うんだよ!」

『……実はな、アレは人間のまま神? 悪霊? に近づいたと思われるというか……』

 

 歯切れの悪い神を名乗るボケ老人によると、四宮颯真の形態変化は悪霊とか関係ないとの事。推測でしかないが『恋人への重すぎる愛情』『ストレス』『一族の狂った因習』などによって一瞬で”進化”したらしい。

 

『何世代にも渡って行い”進化”を一瞬で行ったという事実に恐怖するばかりだ』

「いや、それじゃあ人間の行きつく先が阿修羅のパチモンだと?」

『あくまで可能性だがな。生物の食い散らかしは『進化で腹減ったから食べた』とかだろ』

 

 腹減ったら軍艦沈めるの?? 生態系に影響を及ぼすレベルで食べるの??

 

「それなら闇を纏っていたのは!? あれは進化じゃないでしょ! 悪霊の持つオーラと同等以上でしたよ!?」

『闇に関してはアレの元々持っていた技だ。『自分の負の感情を抽出・具現化・実体化』と使用用途は幅広い。ちなみに、奴は100均の商品か卵から『暗黒物質(ダークマター)』を錬成できる事も出来る。この闇とダークマターを合成する事で人間の記憶などを書き換える”エロ同人アイテムモドキ”を作成できる』

 

 既に理解不能なのだが。

 

『この”エロ同人アイテムモドキ”で大金を得るだけでなく、様々な組織と同盟関係を結んでいる。ついでに利用価値のある邪魔者を洗脳しているぞ』

「もう手遅れじゃないですか。全知全能とか神名乗るなら働けよ」

『焼き鳥にして喰うぞ、クソカラス』

 

 すんません。それだけは止めてください。

 

『とにかくだ。奴がよく分からん進化を遂げたって事が重要だ』

「もう意味分かんないですよ。つーか、元の人間形態に戻ってませんでした?」

『ああ。恋人に嫌われたくないという思いによって、自身の時間を巻き戻していたな』

 

 闇属性・物質錬成・チートアイテム錬成・洗脳・常識改変に加えて時間操作能力か。ラスボスにしても能力欲張り過ぎでしょ。

 

『今は久々に会えた恋人への欲望を解放して、出産直前の妊婦に襲い掛かっているな』

「最低だっ!」

『あっ、ぶん殴られて泣き出した』

「プライドがないのか!」

『綿抜いたぬいぐるみの中に封印されたな』

 

 あれ? これ、もう解決したんじゃね?

 

「これで一件落着。もう超生物に悩まされる心配は――」

『あるに決まっているだろ! むしろ状況は悪化してるわ!!』

「はぁ?」

 

 なんで神様が慌てているんだか。星野アイが四宮颯真をコントロールし、封印できる以上問題ないでしょ。

 

『いいか。例え生きたまま悪霊化しても対抗策はある。神仏クラスの化け物になったとしても、注連縄でも使えば封印くらいできる』

「それで大国主様を封印中でしたっけ? その息子も」

『そうだ。だから、対処するだけなら悪霊化・神仏化した方が楽だった。だが、奴は人間のまま強くなった』

 

 その後も長々と説明していたが、要約するとこうだ。

 

・四宮颯真は生まれ持った才能、神木家・四宮家・龍珠組の教育によって理論上最高のステータスである。

・生まれながらに転生・憑依しているとしか思えない魂であった。

・家族に捨てられた事でオカルト能力覚醒(1回目)。

・世界中のオカルト共と某戦闘民族の様に「オラ、強え奴と戦うとワクワクすっぞ」と十数年間戦って成長。

・星野アイに惚れる→どんな手段を使ってでも手に入れようと覚醒(2回目)。

・四宮家に引き取られる→恋人に会えないストレスで覚醒(3回目)。

・恋人と(通いとは言え)また一緒に暮らせる→あまりの喜びから覚醒(4回目)。

・恋人に神木輝(悪い虫)が近寄った事で恋人を守るために覚醒(5回目)。

・恋人とセ〇クスした喜びと愛情がさらに深まった事で覚醒(6回目)。

 

 ~以降、恋人とセ〇クスする度に覚醒~

 

・子供を作ろうと決意&周囲の説得をするために覚醒(3500回目)。

・子作り&子供が出来た喜びによる覚醒(4000回目)。

・星野アイと会えない事による闇堕ち。

・星野アイに嫌われたくない気持ちによる光堕ち&時間操作能力取得。

 

『このように、アレは頻繁に覚醒している。何なら『恋人と会えた喜び』『恋人とSMプレイをしている』というしょーもない理由で毎秒覚醒している』

「無敵じゃないっスか」

『星野アイしか封印できない以上、アレは”そういうプレイ”だと思い込んで覚醒するだけだからな』

 

 無限に強くなる存在とか怖いんですけど。そんな奴の子供になりたくないんですけど。

 

「全知全能の神様ならどうにかできるでしょ! 神器でも与えればいけますよ」

『バカ野郎ッ!! お前はどこまで物事を理解してないんだ!』

「どういうことです?」

『奴は任意の種族変更だけでなく、”毎秒覚醒””時間操作””チートアイテム作成”まで出来る理外の存在……』

「……つまり?」

『奴を倒す神器とは”指定した存在を制限無しで消滅させる”機能を持つモノになる。これを意味するところは――』

「…………全生物どころか、八百万の神々全てを殺せる最終兵器?」

『その通りだ』

 

 ……ヤベェよ。震えが止まらん……。

 

『しかもそれをアレに命中させる必要もあるし、奪われたら絶体絶命だ……』

「ぜったい後世で争いの種になりますねー」

『その上、奴は”悪霊化”というパワーアップイベントを残している』

 

 もう人間どころか生物ですらないだろ。理不尽なギミックと言われた方がしっくりくる。

 

『しかも奴の”颯真細胞”が全世界のばら撒かれれば、生態系への影響は計り知れん』

「なんであんなの生まれたんですか?」

『神木の異常な伝統と本人の資質だろ。後者が9割だ』

「それじゃあタダの化け物ってだけじゃないですか」

『今できる事は温かく見守る事くらいだ』

 

 もう神でも何でもない。ただの責任から逃げたい中間管理職だろ、コイツ。

 


 

 それから数日後、ついに運命の日が訪れた。

 

『それじゃあお前の魂をアレの子供に移植するぞー』

「待ってください! まだ最適な魂が用意される可能性に掛けましょうよ!」

『もう無理だ。陣痛始まってんだぞ?』

 

 嫌だ。あの種族不明の子供になんてなりたくない。

 

『待て! あれは……』

 

 現実逃避していると、神様が何かを見つけた。

 

「って私の推し! 推しが死んじゃう!!」

 

 推しの雨宮吾郎が誰かに殺されて、死体遺棄されている現場を見つけた。この辺の警察は何してんだ! さっさと犯人捕まえて処刑台に送れ!

 

『……喜べクソカラス。お前の望みは叶ったらしい』

「神様? なんでそんなマフィアボスみたいな笑顔なんです??」

『あの男の魂を”魂の無い子供”に移植する』

 

 とんでもない事言い出したぞ。

 

『あのロリコンは筋金入りだ。”星野アイの子供”かつ”天童子さりなの兄”になれば、奴のロリコンブーストで条件を満たせる!』

 

 推しにロリコンブーストがあるとか聞きたくなかった……。




・四宮颯真:特技は無自覚覚醒、趣味は恋人へのストーカー&変態行為という男。様々なチート能力を無駄に持った上で、それらを恋人への変態行為にばかり使っている残念な男。恋人の出産中、SMプレイに興じながら覚醒していた。

・星野アイ:四宮颯真を討伐・封印できる唯一の女。彼女から告白しなければ、颯真が記憶や常識を書き換えてでも手に入れるつもりだった変態の被害者。出産中は痛みより、「颯真がバカやってないか」とばかり考えていた。

・ロリコン(雨宮吾郎):地元で産科医をしているロリコン。ロリコンなりに男気を見せようとしたが、運命に抗えず死亡。ロリコンブーストを神に買われて転生する。

・神様:威厳の欠片もないダメな中間管理職と化した存在。四宮颯真の非常識さに頭を抱えた結果、温かく見守るという判断を下した。特技は相手の性癖と特殊能力を見抜く事。

・????:色々あって神の愚痴を聞く係になった生贄カラス。四宮颯真の非常識さに絶句していると、推しが死んだという特大ニュースを知らされたオタクカラス。本人(本鳥?)は知らないが、未だに生贄候補のままである。
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