遅くなりましたが4章『双子幼少期編』開始です。
双子と星野藍央麗翔
side:星野アクア
『もし、芸能人の子供に生まれていたらと考えた事はある?』
昔、担当していた患者にそう問われた事がある。
『容姿やコネクションを、産まれていた時から持ち合わせていたら』
僕は真面目に考えた事はなかった。
だって、そうだろう?
転生なんて非科学的なもの、起こり得る筈がない。
自分の話とは思わなかったんだから。
俺の名前は雨宮吾郎。宮崎総合病院で産科医をしている男――だった。
色々あったが要約すると――推しのアイドルが妊娠で脳破壊した結果、夜道で銃で武装したストーカーに殺された。あれっ、要約しすぎた?
まぁ、死んだときの記憶が曖昧だし、なんなら推しが妊娠していたと分かった時からぼーっとしてたからな~。死んだと分かった時も「自宅のアダルトグッズが誰にも見つからずにイイ感じに処分されてくれ!」と願ってたくらいだ。
こんな俺なんて死んだら地獄行き確定だと思っていたんだが――
「いいこでちゅね~」
目覚めれば天国に居た!!
よく分からないが推しであるアイドル・星野アイの息子として生まれ変わっていた。ちなみに名前は
俺だってこの状況を受け入れる事が出来ていない。いわゆる生まれ変わりであり、転生なんていうファンタスティックでドラマティックな展開なんて想定外だ。輪廻転生とか、来世とかの概念だと記憶ってなくなるのでは? それとも死んだら皆転生するのか?
これでも医者の端くれ。いずれは仕組みを解明するつもりだ。だが……今はこの赤ちゃんライフを堪能したい……。
「ばぶー……」
推しのアイドルが24時間思いっきり甘やかしてくれるご褒美タイム。疲れた社会人の心に染み渡る……。
「はんぎゃ――っ! はんぎゃ――っ!」
「はぁい。なんでちゅかー?」
……そういえば、この家にはもう一人住人が居る。
俺の名前に比べてダメージの少ない名前をしている。今からでも変えて欲しいくらいだ。それか改名して欲しい。
「んぎゃあああ」
「どうしたのアクア~?」
ほら。既に略されてんだから改名してくれよ。
「そっちはルビーだろ。それでも母親か」
「人の顔と名前覚えるの苦手なんだから仕方ないでしょ。いやでちゅね~日本の男は。母親を幻想視すぎて」
「パスポートも持ってない奴がグローバルな事言うな! 第一海外ロケNG入れてんだろお前!!」
「でも私、才能あるなって人の名前は覚えられるよ
「俺の名前は
この人はアイと一緒に来ていた事務所の社長兼保護者の斉藤壱護。一緒に奥さん? のミヤコさんも一緒だ。……恐らく金か立場で迫ったんだろうな、年の差あるし。
「私にそんな事言っていいの? 告げ口するよ??」
「心の底からごめんなさい」
「よろしい」
どうやら苺プロの頂点はアイだったらしい。
「その辺にしたら? 迷惑かけてるのはお互い様でしょう」
「あっ、お姉ちゃん!」
何か初めての人が入ってきたな。だが、お姉ちゃん? アイは施設出身で一人っ子のはず。何より入ってきた女性はどうみてもハーフの金髪だ。日本人らしく黒髪のアイとは似ても似つかない。
「えっと、早坂奈央さん……ですよね?」
「その通りです斉藤夫人。私の事は奈央とでも呼んでください」
「私の事もミヤコで大丈夫です……」
ミヤコさんが恐縮している。ってことは、この金髪さんはかなり偉い立場という事か?
それからしばらく話し合っている様だが、俺には気になる事がある。それは父親の事だ。前世の頃から分からず、たかがアイドルに過ぎない星野アイにしてはありえない待遇――それも過剰と言えるほど。彼女が名家の隠し子でもなければ父親がヤバい奴としか考えられない。
そんな人物なのに俺が生まれてから1ヶ月の間、一度も顔を見ていない。なんならアイも話題にすらあげていない。
「そういえば……ソウマさんはどこに?」
「「「……あ」」」
ミヤコさんが話したソウマさんとは誰なのか。他の3人が忘れているようだからどうでもいい人? でも、”この場に居ないとおかしい人物”と考えるとアイの家族だよな??
「たしか出産間近のアイとセ〇クスしようと襲い掛かって、返り討ちに遭ったんでしたね」
「その後大きいぬいぐるみの中に詰めて封印したけど」
「……あのぬいぐるみって、持って帰ったっけ??」
『『『……』』』
どうやらロクでもない人物が父親の様だ。そして、病室にあったぬいぐるみは、清掃の中村さんがゴミ捨て場に運んでいるのを見かけた気がする。
(今世も父親の顔は分からないのか)
今頃焼却場の中で灰になっているだろう父親に冥福を捧げる。俺の横に居るルビーも目を瞑っている。
「まぁ、そのうち帰って来るでしょ」
「だな。鬼の居ぬ間にバカンスでもしよう」
「とりあえず生命保険と遺産整理でもしますか」
「あの、そんな事しててバレたら怒られるんじゃ」
『……(コクコク)』
なんかミヤコさんと四人の背後に現れた大きいぬいぐるみ以外は、ソウマさんとやらを心配していないらしいな。
「ば、ばぶ!」
「どうしたのルビー?」
ルビーも気づいたか。なんか後ろのぬいぐるみが包丁を手に持っている。昔見た『一人かくれんぼ』の人形に似ているなー。
「な、何だコイツ!」
「まさかソウマ!?」
「バカな!! 確実に焼却炉に送る様に手配したのに!!」
社長そこまでやってたのか。その声に反応したぬいぐるみはゆっくりと社長の方を向く。
『おい、斉藤』
「すみません!!!!」
『子供達が居るから許してやろう』
「ありがとうございます!!!!!」
『これからこの子達を神の使いと思って生きる事を許可する』
ヤベェ……父親? が異常者なんだけど。1ヶ月も存在を忘れていたアイも、確実に始末しようとしていた社長よりも狂ってる!
『せっかく驚かせようとスタンバっていたのに』
「えっ、いつから居たの?」
アイの疑問は当然だ。俺とルビーは常に部屋に居たから気づかない筈がない。小さいからソファーの下もよく見ていたから死角なんてなかったはずだ。
『ソファーやベッドの中をくり抜いて、その中に居たぞ。1ヶ月前から』
「怖っ!」
「ストーカースキルを上げないでください」
つまり俺達が寝ていた時も居たのか? アイに抱きしめられて幸せ天国を堪能していた時も?
『そんな事よりタオルと着替えを用意してくれ。1ヶ月も風呂に入っていない状態で子供と会うのは気が引ける』
それなら準備が整ってから出てきてくれ。隣でルビーも頷いてるし。
……あぁ、言い忘れてたがルビーも転生者らしい。重大な事実の気もするが、ぬいぐるみに封印されていた不審者と1ヶ月同棲という事実の方が深刻だし。
「パパでちゅよ~。アクア♡ ルビー♡」
シャワーを浴びてバスローブ姿で現れたのは不審者、もとい今世の父親だった。
「「ガルルルルルルル……!!」」
だが、俺達は、コイツが父親だなんて認めない! アイを孕ませやがったクソ野郎だ!
「なぁ、なんでこんなに嫌われるんだ?」
「あなたが不審者だからでは?」
「まだ臭い取れてないからだよ。ちょっと臭うし」
「もう一度入って来る」
そのまま溺死してしまえ。
「なんでバスローブだったの??」
「身長230cmの巨人が着れる服なんて一般人は持ってませんよ。アイさんの服なんて入りませんし」
「前にバスローブプレイで颯真が大量に持って来てたからね~。後は彼シャツ用のシャツが20枚くらい」
「そういえば無駄にコスプレ衣装集めていた時がありましたね……100着くらい」
男のシャツ一枚姿なんて見たくねえよ。つーか、どんだけコスプレ好きなんだよ。
「おかげで演技も得意になったんだよね~。特に洗脳・常識改変・時間停止プレイは大変だったなぁ」
よし。あの男は敵だ。人類のために抹殺しよう。
「イィイイイ……!」
ルビーも賛同している様だ。多額の生命保険掛けて階段から突き落とそう。
「そういえば今後のアクア君とルビーちゃんの事なんですが」
「どうなるでしょうか奈央さん」
うん? 俺達?
「こちらでも話し合った結果、年も近いので早坂家・四宮家・星野家でまとめて見ようとなりました」
「四宮家も!?」
はぁあああ!? 四宮家!?
「正確にはそれぞれの子供である四宮かぐや・早坂愛・星野アクア・星野ルビーの4人を交代でそれぞれの両親が見るという事で」
「四宮雁庵様も見るんですか!?」
「いえ。基本は清水さん・アイ・颯真さん・私の4人ですね」
俺達の面倒を見るって……なんかすごい話をしてないか? ってか、やっぱり俺達の父親って四宮颯真かよ……。
「清水さんと私と颯真さんは四宮別邸に居ますので、星野家と別邸の往復くらいですかね。暇な人間が面倒を見て、最悪の場合は私の両親にも手伝ってもらいます」
「愛ちゃんも来るんだねぇ。アクア達の幼馴染になるのかな」
「財閥幹部の娘と本家の長女が来るのかよ……」
「……何かあったら死ぬのかしら……」
奈央さんの言う事を理解したくないけど、俺達の立場が何となく理解できた。ついでにアイが能天気すぎるという事と、社長達はまともだという事も。
「そこまで気にしなくて良いですよ? どうせ颯真さんが頑張って面倒を見て、彼が仕事の時だけ面倒をみるので」
「えぇ~。私も子育ての勉強したのに~」
「ざけんなっ! 何かあってからじゃ遅いんだぞ!!」
社長に同意だ。”あの四宮家”なんかと関わりたくない。だが、四宮家に生まれてしまった以上、可能な限り関わらないようにして生きていきたい。具体的にはあの父親を生贄に”平穏な人生”を特殊召喚したい。
「ったく。いいかアイ? お前が16歳の二児の母親なんて世の中に知られたらアイドル生命即終了。監督責任で俺の事務所も終わり。全員まとめて地獄行きだ」
「その場合、四宮プロダクションで全員引き取るので安心してください」
「私は颯真のお嫁さんになって専業主婦だね~」
「「……」」
特大の爆弾が機能してねえ……。財閥がバックにいるって心強いなぁ。
「……役所の手続きも、買い物も全部子連れはNGだ」
「その辺はやってもいい様に、颯真さんが準備してますよ」
「颯真が『家族旅行とか行きたいよな!』って、専用の遊園地とか旅館用意してるらしいから大丈夫じゃない?」
「「……」」
俺達の常識が通用しない!? 一切憧れないけど利用価値はあるらしい。あの父親を始末するのはもう少し後でいいかもしれない。
正直、この1ヶ月で分かったが、アイは母親として相当ダメな部類に入る。シングルマザーだったら罰ゲーム並みの人生だ。しかし、父親が強すぎて気にならない程の環境が用意されている。これなら心配せずに過ごせるかもしれない。
「そういえばアイ。頼まれていた手続き終わったわ」
「ホントに!? ありがとうお姉ちゃん!」
手続き? 俺達の改名でも決心してくれたのか?
「アイ、なんかあったか?」
「手続きって、子供達も出生届は出したわよね?」
社長とミヤコさんも困惑している。そうなると個人的な事か?
「うん。私の改名手続きだよ!」
『『『はぁああ!?』』』
ちょっと待て! アイが改名!?
「私って、人生の節目で名前を変えてるんだよね」
「巫女の時は”星野アイ”、アイドルの時に”アイ”だったよな?」
「そう。本当は結婚すれば”四宮アイ”になると思ってたんだけど、先に母親になったでしょ? だから下の名前を変えようかなって」
い、意味が分からん。
「そんな手続き無理だろ。未成年だし、改名可能な理由に当てはま「裁判所は四宮家に逆らえないので」デスヨネー……」
無駄に有能だな四宮家!
「まあ芸名はアイのままだし、ほとんど変わってないですから」
「近くに愛ちゃんがいて区別しづらいって問題もあったからね」
その愛ちゃんって人が原因なのか? 俺達と同じくらいの年らしいが。
「そんな訳で私の新しい名前は”星野
「ふざけんなよ! なんで改名後の名前が改名したくなるくらいイカれてんだよ!!」
「愛ちゃんと被らないように”藍”。お姉ちゃんから一文字貰って”央”。私の美しさから”麗”。マダオに考えて貰って”翔”」
「由来なんてどーでもいいわ!!」
ってか、マダオって誰だ? 俺としては自分より酷い名前が近くにいると安心できるんだが。
「話が脱線したけどアクア君とルビーちゃんは母親3人父親1人態勢で面倒を見る事になると思います。ミヤコさんにも協力してもらうかもしれませんが、そこまで気にしないでください」
「は、はぁ」
「だからアクア君。うちの愛とも仲良くしてね? あの子君の父親の事は嫌ってるけど、普段はいい子だから」
「ルビーは好かれると思うよ。私には懐いてくれるし」
アイが好きであのクソ野郎を嫌っている。まるで姉弟の様に気が合うな。
「それじゃあ顔合わせに来ましょうか」
「やったー!」
「いや、さすがに俺達は「来てくれると出資と仕事の件で融通できますが」行きます! ミヤコも行くぞ!」
「はい!」
気づけばよく分からん奴らとの顔合わせをさせられる事に。相手が四宮関連とはいえ赤ちゃんなら大丈夫だろ。多分。
アイ、改め星野藍央麗翔が「お寿司♪ お寿司♪」とルンルン気分で俺とルビーを抱えて部屋を出る。……いや、大丈夫なの? マスコミとかに撮られないの??
『しっかり洗ってきたぞ! 全身フローラルな香りが……って、アイ? みんなぁあああ!?』
あっ。クソ野郎忘れてた。
颯真は何も知りません。アクアとルビーも本名出なく愛称だと思ってますし、アイの改名も知りません。ついでに子供から嫌われている事も知りません。性癖がバレているとも思っていません。
・四宮颯真:ぬいぐるみに封印されてから星野家で1か月間ひとりかくれんぼをしていた不審者。知り合いと子供の前で性癖がバラされた残念な人。二児の父(子供達からは認められていない)。
・星野藍央麗翔:母親として気合を入れるために改名した星野アイ。普段は”アイ”名義で活動するから問題ないと言っている。二児の母(戸籍上はシングルマザー)。
・星野愛久愛海:星野アイと四宮颯真の子供(兄)。転生者。父親が16歳の母親を妊娠させ、様々なコスプレセッ〇クス、出産間近でもセ〇クスしようとした事を知って「クソ野郎抹殺計画」を立てている。
・星野瑠美衣:星野アイと四宮颯真の子供(妹)。転生者。父親が16歳の母親を妊娠させ、様々なコスプレセッ〇クス、出産間近でもセ〇クスしようとした事を知って「クソ野郎抹殺計画」を立てている。
小説の表現はどちらが良いでしょうか。4章では試験的に「〇〇〇(コクコク)」表記を試そうかと思っています。
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「〇〇〇」コクコク
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「〇〇〇(コクコク)」