怨敵と巫女   作:大紫蝶

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 すみません。本日試験を受けていたため投稿が遅れました。


双子と二人

side:星野アクア

 

「あくあ~」

「うぅー」

 

 俺の名前は星野アクア。何故か推しの子に転生した男だ。

 

 俺は現在、2人の幼女のおもちゃにされている。

 

「愛ちゃんもかぐやちゃんもアクアを好きになったみたいだねぇ」

「まぁかぐや様からすれば(戸籍上の)甥っ子ですからね。愛も颯真さんで木登りとかしてるし」

 

 俺達はあれから四宮別邸とやらに移動し、幼馴染になる”四宮かぐや””早坂愛”と顔合わせをさせられた。かぐやの方は俺の親戚であり、愛の方は父親を嫌っているとの事で仲良くなれると思っていた。

 予想外だったのは急激に仲良くなった事。そして、

 

「にしてもルビーは女の子だね~。綺麗な宝石とか洋服の方が気になるなんて」

「あまり触らないでくださいね。流石に生後1ヶ月で億単位の賠償金請求とかシャレにならないので」

「……(ビクッ)」

 

 奈央さんの言葉にルビーが固まった。まあ気持ちはわかるよ。美術館とかでしか見た事のないレベルの宝石やドレスなんかが所狭しと飾られていたら気になるよな。アイのこぶし大の宝石なんかゴロゴロ置いてあるし。

 

「出産祝いにどれか要る? どうせ余ってるし」

「いいの? ルビーどれが良い?」

「あぅ!」

 

 あの女躊躇なく選びやがった!!

 

「ああこれね。でも精々2億程度だけど大丈夫?」

 

 十分高価ですが!?

 

「ま、ルビーちゃんが好きならそれが一番ね。後はアクア君の分だけど――男の子って何が良いのかしら?」

「社長。社長が貰ったら欲しいものって何?」

「藪から棒に何だ。まぁ、普通に金とかうまい飯とか」

 

 俺もそれが欲しい。

 

「流石にこの年の子供に上げられませんよね。特にご飯は食べられないでしょうし」

「社長は俗物だね。颯真ならそんな事言わないよ」

「こういう時ってベビー用品とかじゃないんですか?」

 

 ミヤコさんが至極真っ当な事を言ってくれた。そうだよ。おむつとか服が一番喜ばれるだろ。

 

「ベビー用品は颯真さんが自分で会社設立して用意しているので断られますよ。『とにかく質を! 採算度外視で!』と制作し、知り合いの方々に使って貰って改良した究極のベビー用品がありますから」

「段ボールで20箱分送られてるからね。おまけに手編みの服もあったし」

「ミヤコは頭を使って喋れ。あのヤンデレで愛が重すぎる非常識男が恋人との間に出来た子供に市販のベビー用品使う訳ないだろ」

「私が悪いの!?」

 

 ミヤコさんは何も悪くない。悪いのはあのクソ野郎だけだと思う。……後、愛は俺を抱っこして膝に抱えるな。かぐやは抱き着いたまま寝るな。

 

「子は親に似るって言うし、颯真さんを参考にするのはどうだ?」

「おっ、社長にしては良い事言うね」

「一言余計だクソアイドル」

「ですが、あの人の小さい頃って知らないのですが……」

「私が会った時はかなり大きかったし。『アイが一番好き』『アイが一番欲しい』っていってたからなぁ」

 

 砂糖吐きそうなくらいラブラブだな。ってか、2人ってマジで打算なしの恋愛結婚だったのか……。

 

「面倒なので当時を知る人に聞いてみますか。どうせ後で連絡する予定でしたし」

 

 当時を知る人? それって両親とか……でも彼も施設出身だった気が。

 

「今はアクア君とルビーちゃんの顔合わせですからね。アクア君は必要以上に好かれてるみたいですが」

「モテモテだね、アクア☆」

「将来女の子の人生を滅茶苦茶にしそうで怖いわね……」

「死体になっても蹴られそうだな」

 

 失礼な。これでも前世では、品行方正に手足が生えたような男だったんだぞ。そんな悪質ホストみたいなことはしません。

 

「ってかさ。ルビーの方は大丈夫かな? 2人ともルビーを無視している気がするけど」

「というよりアイから離れねえからだろ。なんでコアラみたいに引っ付いてんだよ…‥」

 

 そうなのである。ルビーの奴、ここについてからアイから離れようとしないのである。さっきまで宝石やドレスを見ている時もアイから一切離れようとしない。

 

「ルビーは甘えんぼさんだからね」 

 

 アイを独り占めしたいだけだろ。

 

「パパもルビーみたいによく甘えているもんね~」

 

 ダッ!

 

 アイの言葉を聞いたルビーは高くジャンプしてまでアイから離れた。まるで猫の様に着地してから高速ハイハイで俺に突撃してくる。

 

「おい、いい加減にしろよ」

「嫌よ。父親(アレ)と同類と見られたくない」

 

 気持ちはよく分かる。ただ、アイ達が呆気にとられた顔をしている。

 

「ありゃりゃ。ルビーもみんなが羨ましくなったのかな??」

「今のは違うと思うぞ……」

「どちらかというと思春期の娘が『パパなんて大っ嫌い!!』という姿が思い浮かびますね」

 

 どうやらミヤコさんは母親として優秀の様だ。観察眼があり得ない程高い。

 


 

 あれから愛・かぐや・ルビーの三人娘のおもちゃにされ続けた。生後1ヶ月の幼児に男女の身体能力差などあるはずもなく、愛とかぐやに組み伏せられた。なんならルビーにすら力比べで負けそうになるくらいには雑魚だった……。

 

 まぁ皆いい子なんだよ? でも子供特有の体温の高さとこの夏間近の気温はバッドコンディションなのだ。具体的には夏に湯たんぽ3つを括り付けられているに等しい。

 

「そうだ。そろそろ夕飯にしましょうか」

 

 そんな俺の元に現れた救世主――奈央さんの言葉は女神の福音だと思った。これでようやく地獄から抜け出せる。

 

「あっ。俺この後仕事の打ち合わせが……」

「それなら斉藤社長はこちらで送迎いたします。車内でサンドイッチなどの軽食でも摘まめるようにしておきますね」

「お願いします。できれば腹持ちのする具材で」

「承知しました」

 

 ここで社長さんはタイムアップ。仕事の打ち合わせと言っているが大丈夫なのだろうか。苺プロのタレントってB小町だけだろ? そのメインのアイがいないなら正直”価値がない”と言われそうなんだが。

 

「それではアイとミヤコさんはこちらへ。後、アイはアクア君とルビーちゃんを連れて行ってね。私はかぐや様と愛を連れて行くから」

「はーい」

「お世話になります……」

 

 ミヤコさんは恐縮しているが、アイはメチャクチャ自然だ。まるで実家の様に我が物顔で歩いている。

 

「本当はそれなりの夕飯でも用意したかったのですが、子供達も居ますしハンバーグの様な簡単な料理にしました。なので緊張しなくて大丈夫ですよ」

 

 ミヤコさんがあからさまにほっとしている。よくよく考えれば巨大財閥に呼ばれて飯を食べるって怖いよな。若いミヤコさんからすれば襲われるんじゃないかと思うだろうし、社長夫人という立場からすれば下手なことは出来ない。……声に出して応援できない自分が歯痒い!

 

 そう思って案内された部屋に入ると招かれざる客が居た。

 

「よく来たな! ささっ。こっちへ」

「居たんですか」

「遅かったね颯真」

「お邪魔してます」

 

 俺達の血縁上の父親・四宮颯真が待っていた。

 

「俺を置いて行ったことは気にしてないぞ。ただ、斉藤には3時間32分後までに遺書を書き上げておく事をおすすめする」

 

 ついでに社長の死刑宣告までして。

 

「冗談はその辺にしてください。子供達の目の前です」

「それなら仕方ない。ところで顔合わせは大丈夫だったか? まるでルビーは2億円相当の宝石を貰った様に喜び、アクアは三人娘のおもちゃにされた後の様に疲れているが」

 

 エスパーかよ。

 

「まぁ仲良さそうで良かった。名夜竹さんには今度紹介するよ。流石に移植手術を何回も受けた後で疲れてるからな」

「あれから大丈夫だったんですか? こちらに情報が降りてこないのですが」

「大丈夫大丈夫。ただ、雁庵さんが過保護で過度な検査してるだけだから」

 

 どうやらかぐやの母親である名夜竹さんという人は体が弱いらしいな。ただ、四宮雁庵のお気に入りって事は逆らわない方が良さそうだ。

 

「ところでだがアイ。そろそろアクアとルビーの名前を教えてくれないか?」

「「「ん??」」」

 

 この男は何を言ってんだ? 名前なら自分で呼んでいるじゃないか。

 

「アクアもルビーも愛称だろ。そろそろ名前を教えて欲しいんだ。期限が過ぎているから俺の考えていた名前じゃないんだろうが、それでも聞いておきたい」

「え? 愛久愛海(あくあまりん)瑠美衣(るびい)だよ?」

「冗談だろ!?」

「ついでアイも藍央麗翔(あいおらいと)に改名してますよ」

「はぁあああ!!?」

 

 信じられないといった表情だが、事実である。

 

 それからクソ野郎による尋問が始まった。そこで聞かされる名前や改名、自身の性癖やアイとのプレイがバレている事を知って表情が抜けていく。……最後の方は抜け殻の様になっていた。

 

「そ、そんなバカな……。こんなひどい名前にするくらいなら……俺の名前をゴリ押したのに……」

「そういえば颯真ってどんな名前を考えていたの?」

「……アイから『双子星にちなんだ名前にしたい』『アクアマリンとか宝石に関係する名前にしたい』って聞いてたから、それにちなんだ名前を考えてた」

「宝石はともかく”双子星”って――」

「昔社長に教えてもらったんだよ、双子星について。その時に『()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()』って思ったの」

「それで双子で揃って輝く星にちなんだ名前、と」

 

 ……やべぇ。俺達の名前ってただのキラキラネームじゃなかったんだ。

 

「双子って昔から憧れだったんだよね。私には親も、兄弟もいなかったから……双子ちゃんとか家族に居たら、賑やかで可愛いかなって」

 

 改名希望していた俺が恥ずかしい! ルビーも涙ぐんでいるし。

 

「それでね。双子を妊娠したって聞いた時に運命だと思ったの」

「それで考えていたんだが……」

「颯真さんのネーミングセンスって気になりますね」

「私も気になります」

「私も私も!」

 

 俺が罪悪感に苛まれている間にクソ野郎の考えていた名前について話が進んでいた。だが、アイの考えた最高の名前に勝てる訳ないと思うがな!!

 

「男なら海翔(かいと)碧斗(あおと)。女なら美紅(みく)華蓮(かれん)

 

 やっぱり親父の名前の方が好きだな。しかも由来を聞けば余計に好きになる。

 

 

 

 海翔は『母なる海の様に他人を包み込む優しさと、夢に向かって高く翔けるを目指した人になってほしい』という意味が。

 

 碧斗は『碧の持つ優美さと、斗の持つ力強さを調和させ、内面と外見のバランスが取れた人間性を願う』という意味が。

 

 美紅は『外見の美しさだけでなく、心や生き方が情熱的で魅力的な人になる』という意味が。

 

 華蓮は蓮が泥の中からでも咲く花という特性から、『困難な状況でも自分らしさを失わず、強く輝ける人』という意味が。

 

 

 

 どれも素晴らしい名前だ。少なくとも愛久愛海よりは。

 

「双子の性別が分からないから男女・男男・女女でもいいように2パターンずつ考えていたのに……」

「可愛くないからヤダ」

 

 親父の想いはアイによって一刀両断された。

 

「子供が将来名前で辛い思いをするだろう。その時、子供達が改名したいって言ったらアイを無視してでも改名するからな」

「えぇー」

「お前も親から貰った名前を改名してんだからいいだろ」

 

 よしっ。これで名前の件はどうにかなる。親父が改名に理解があるし、母親も改名した事あるならそこまで問題ないだろ。名前もキラキラネームだし。

 

「まぁ、性癖とかの件は良いよ。俺も他人の性癖とか、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()をした事あるからな」

「最低だ」

「最低ですね」

「可哀そう」

 

 親父は悪魔の生まれ変わりじゃないだろうか。

 

「この際名前はどうでもいい。それより重要な事がある」

「どうでもいいはないでしょ」

「いや、子供にとって重要な事がある」

 

 はて? マジで気づか……いや、そうか。四宮颯真の子供という事は財閥のお家騒動に巻き込まれるという事か! それに四宮家に恨みを持つ人間から襲撃されるリスクも――

 

「婚姻届けをまだ出してない事だ」

 

 クソどうでもいい。

 

「そもそも颯真が18歳にならないと出せないでしょ」

「16歳二児の母で既婚者のアイドルとか事務所がファンに潰されるんですが」

「バカ野郎! このままだと大変な事になるんだぞ!?」

 

 アイとミヤコさんは「ん??」と分からない様子。俺も分からないしルビーも分かってない。愛とかぐやは飯に夢中だ。唯一、奈央さんだけが遠い目をしている。

 

「いいか? この国の法律上、アクアとルビーは非嫡出子なんだ。こうなると法律上、子供達を俺が守りづらくなる」

「つまり?」

「四宮家に恨みを持った相手どころか、四宮家自体の標的になる&誰も守ってくれないという最悪の状況になる可能性が……」

 

 ――俺の想像を超える最悪の事態だった。

小説の表現はどちらが良いでしょうか。4章では試験的に「〇〇〇(コクコク)」表記を試そうかと思っています。

  • 「〇〇〇」コクコク
  • 「〇〇〇(コクコク)」
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