怨敵と巫女   作:大紫蝶

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双子と四宮家

side:アクア

 

「四宮家に恨みを持った相手どころか、四宮家自体の標的になる&誰も守ってくれないという最悪の状況になる可能性が……」

 

 こんなこと聞かされた俺はどうしたらいいんだ……。

 

「いいか? 現在の四宮家は不安定な状態だ」

 

 それは聞いた事がある。

 

 四宮家はかつて総資産400兆円を超える程の財閥であったが、高度経済成長期に行った”強引な手段”によって2つの派閥に分かれたと。

 

 手段を選ばず、名誉・人命・法律すらも無視し利益のみを追求した過激派。

 

 強引な手段を忌避し、”比較的人道的な手段”を選択した穏健派。

 

 両陣営で大量の死者を出し、資産を溶かした争いは――最終的に四宮雁庵率いる過激派が勝利した。そして、敗北した穏健派は独立、以降『四条』と名乗り四宮家の影響を受けない海外で活動している。……もっとも、あの時代はどこの企業も非人道的な手段を取っていたし、穏健派も同じ。その中で四宮家が一番過激だったというだけなのだが。

 

「この四宮家において最大のタブーは分裂。現・四条家、旧・穏健派の独立騒動によって総資産の半分を失ったからなぁ」

「まさしく”勝者なき争い”でしたからね」

「私も学生でしたけど大変でしたね。田舎の方で町おこし資金を貰えるはずが撤回され、仕事も無くなってましたし」

「事の当事者である四条は海外逃亡。時々国内に居るって感じだ。これでまた分裂騒動が起これば四宮家は滅亡だな……」

 

 そうなったら連鎖的に国内企業は倒産ラッシュだろう。経済大国とも言われる日本でそんなことが起これば何が起きるか……いや、国内だけで収まらないか。

 

「その四宮家だが『俺達は四宮だから何してもいい』『いざとなれば一般人を餌にすれば自分達は大丈夫』と考えてるからなー」

 

 ……随分と楽観的だな。まるでゲームみたいな考えだ。

 

「それでも俺や雁庵さんが活動している事で立て直せる。四宮家のイメージアップ、社会貢献、人道的アピールなどなど」

「やり方が反社と同じなんですが」

「むしろ反社より悪質だと思いますよ」

 

 確かに難しい話だが、あの時代は本当に酷かった。反社に企業が依頼を出して地上げ、債券回収、人身売買や死体処理、これらから守ってもらうために用心棒として雇ったり、と。俺が見聞きしただけでも一発アウトな行為が横行していた。

 

 その筆頭である四宮家だが、四宮家の影響力と善人アピールで立て直すこと自体は可能かもしれない。違法行為をしていない(事になっている)四宮家だし。

 

「それなら問題なくない?」

「ここで問題になるのが長男・次男派閥だ」

 

 雲行きが怪しくなったな。

 

「両陣営とも四宮グループ内で強い影響力を持っている人間が多い。そして、そいつらは昔の感覚のままであり、自分達を神とでも思っている外道共だ」

「?」

「あの、それってどういう?」

「要するに、『俺は10億円分の売り上げ出してるから何やっても良いだろ』って考えで10億円分の会社の金を横領しているバカって事です」

 

 嘘だろ!? そんなのバカどころの話じゃないだろ! ミヤコさんも驚きすぎて固まっているし。

 

「それだけならマシだ。取引先にいちゃもんつけて暴行・レイプ・殺人までやってるんだからな」

「好感度-100スタートの四宮家ですが、颯真さんのおかげで好感度0くらいにまで跳ね上げました。しかし、好き勝手するバカのせいで好感度-50にまで下がりましたからね」

 

 凄いな。好感度を100も上げる親父も凄いが、それを速攻で下げている連中も凄い。自分の腕をムシャムシャ食べるくらい難しい事だ。出来ても片腕なくなるという、一切得がない事だしな!

 

「まぁ、これに怒った颯真さんは雁庵さんから()()()()()()()()()()()()()()()()()を貰ってます」

 

 あっ、これマズイ。

 

「それってどんな権限なのですか?」

「ハッキリ言えば『四宮グループ幹部・社長のほぼ全てをクビにして颯真さんの好きな人間に変えて良いよ☆』って権限です」

「「「そんなバカな!!」」」

 

 アイもミヤコさんも驚愕の声を上げる。というか俺も声に出しちゃったし。本物の赤ん坊である愛・かぐや、四宮と聞いても「?」という顔をしていたルビー以外は驚くしかないよなぁ……。

 

「こんなの殆ど次期どころか本当の当主扱いですからね。各家の人間達が颯真さんにすり寄り長男・次男を見限った訳ですよ」

 

 そりゃ後継者が決まった訳だからな。負けた奴の部下と思われたら出世に関わるだろうし、泥船から逃げるのは生物の本能だろうよ。

 

「それでも俺の次で長男や次男の子供、もしくは関係者が実権を握る可能性はあった。俺が死ねばそうなるからな」

「でも、颯真さんの子供が生まれてしまった……」

「しかし、正式に結婚していないなら実子じゃないと言い張れるからな。後数カ月以内に子供達を殺せば良いと考えてる奴らは居る」

 

 俺達そんな理由で殺されるの?? 全然後継者になんかなりたくないし、継承権くらいあげるから助けて欲しい。

 

「ま、そんなバカ事を実行する奴はいませんけどね」

「そ、そうだよねー……。子供を殺すなんて――」

「そもそも子供の情報を知っている人間は極少数であり、長男・次男にも知らされていません。知っている奴らはどっかのヤンデレさんが皆殺しにして口封じしましたし、我々早坂家からもO・HA・NA・SHI☆ しましたので」

「「は、はは……」」

 

 ミヤコさんもアイも引きつってんじゃねえか。ってか、サラっと親父が人殺し宣言されてんだけど。何、これが財閥の真実なの?

 

「問題なのは今後知った奴らだよ……。後先考えず襲撃かけて来ると怖いからコレ持っとけ(スッ)」

「わぁー。モデルガンだー」

「こんなに立派なモデルガン初めて見たー」

「いや違うが? あまり人前で見せるなよ(ゴトッ)」

「「……」」

 

 どう考えてもモデルガンの音じゃねえよ。見た事ないのに”本物”って分かる。

 

「一応テーザーガンとかも渡しておくから」

「早坂家からも護衛を出します。それと、颯真さんの知り合い――仁義を大切にしている方々も協力してくれる、と」

 

 ただのヤクザじゃねーか! そっちにも伝手あんのかよ!!

 


 

 それから夕飯という名の恐怖の時間は終わった。俺とミヤコさんは何も喉を通らず、ミヤコさんに至っては銃をお守りの様に握っていた。こんな物渡される理由なんて「お前も命狙われるから自衛しろ」って事だもんな。自衛できるだけマシだと思うが。

 

「そういやアクアへの祝いの品どーすんだ?」

 

 平穏な人生一択です。

 

「面倒なので颯真さんを参考にしようかと」

「俺? 別にいいが……」

「ただ、当時を知る人として雁庵様に聞いてみようかと。どうせ定時連絡の時間ですし」

 

 すっごく軽い調子で裏の支配者と連絡を取るの? 黒魔術書にカエルの生き血を垂らすとかしなくていいの?

 

「あっ、雁庵様? 今日もかぐや様は元気に遊び疲れて寝てますよ。……ええ、顔合わせをしたら親戚だからか仲良くなってましたね。それで相談なのですが、颯真さんの双子に祝いの品を贈ろうとなってですね。……そうですそうです。話を聞きたいので」

 

 奈央さんが裏の支配者との会話と思えない程フランクに話してんだけど!? むしろミヤコさんより敬意がない気がする話し方だし。

 

 って、思ってたら奈央さんが電話をスピーカーにしたようだ。電話口から威厳のある声が聞こえて来る。

 

『それで、颯真の幼少期を話せばいいのか?』

「そうです。それを参考にしたいと思いまして」

『……肉でもやったらどうだ?』

貴方はバカですか?

「まだ生後一ヶ月なんですよ!?」

『その声は颯真の恋人か。確かに常識的に考えればそうなんだが……颯真の子供ならいけるだろ。アイツ、生後6日くらいの時に腹減って()()()()()()貪ってたし』

 

 おっと。どうやら親父は人外の様だ。

 

『それかパソコンでも与えたらどうだ? 颯真なんて勝手にパソコンの説明書読んでよく分からんウイルスとか詐欺やってたし』

 

 それも1歳の頃に、という四宮雁庵の発言に言葉を失う。絶対に冗談だと思うのだが、「それくらい普通じゃね?」という親父の証言があるせいで否定できない。ってか、親父も転生者じゃないの? 違う方が怖いんだけど。

 

「あの頃は『エッチな動画でウイルスを送り付ける』『宝くじで3億円当たりましたので、手数料として20万円振り込んでください』っていう暇つぶしがブームだったな~」

『詐欺で得た金は適当な人間の口座に振り込ませたから冤罪で捕まる人間が量産されたし、最終的には実家の会社の機密情報まで流出させたからな』

「今考えると追い出されたのも納得だ」

『いや、一番は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だろ』

 

 よしっ親父から逃げよう。親父の近くに居る事が一番のリスクだ。

 

「そもそもあれは『跡取りになるために弟を殺せ』ってナイフ渡されたからムカついて斬っただけだし」

『その後目玉を抉り取り、実家を全焼させるのはやりすぎだったと思うぞ……。そうじゃなきゃ、俺が引き取って養子にしたのに』

 

 天下の四宮家当主でも庇いきれないとか、ヤバすぎ……。

 

「そうなるとアクアへのプレゼントは肉かパソコン? 0歳児に?」

『颯真を参考にするならって事だ。普通は消耗品のミルクやおむつ辺りなら貰っても困らないし、適当にオモチャでも与えたらどうだ? ってか、娘の方はやらんのか?』

「ルビーちゃんには2億円程度の宝石をプレゼントしてます」

『イカれてんのか?』

 

 裏の支配者様はどうやらまともな倫理観を持っているらしい。

 

「雁庵様が役に立ちそうにないので適当な肉・パソコン・宝石でも与えます。失礼します」

『おいちょっと待て! それならガキの喜びそうな戦隊ヒーローのおも――』

 

 プツッ。

 

 奈央さんはさっさと電話を切ると、「面倒だし黒毛和牛でいっか」とか言って肉の手配をしていた。……えっ、正気?

 

「それではアクア君へのプレゼントも決まりましたし、これからどうしましょうか」

「アクアへは俺が『アイの限定グッズ(売れ残り)』辺りをオモチャとしてやるよ」

 

 それは欲しい!! 初期の頃のグッズとかもう売ってなかったんだよな。オークションでも高すぎて買えなかったし。というか、売れ残ってんなら再販しろよ!

 

 ぐぅ~。

 

「アクア、おなか空いたの?」

「そう言えばあまり食べてなかったからな」

 

 色々不安だったがアイの限定グッズが貰えると思って安心したせいか、思い出したように腹が減ったな。

 

「おっぱいのむ?」

「こんな事もあろうかと用意しておいたミルクだ」

 

 そうしてアイは胸をさらけ出し、親父がミルクを取り出した。個人的に推しの母乳を中身アラサー男性飲むのは犯罪だと思う。だから親父のミルクを選びたい。……そもそも人前で胸を出すなよ、親父以外に男はいないけど。

 

「やはりアクアは俺の方を選ぶか!」

「ぶー。なんでアクアは私を選んでくれないのかなぁ……」

「そんなの()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だろ♪」

 

 あ? 今、なんつった?

 

「そ、そんな……」

「だってそうだろ? 不味いものを食べないのは生物の本能だもんな~。ほらほらアクア~。美味しいミルクでちゅよ~」

 

 ブチッ。

 

あう!

「ああ! 俺のミルクが!!」

「ばぶばぶばぶ……」

「アクアが! アクアが私のおっぱいを飲んでくれたぁああ!!」

 

 クソ野郎はやはりクソ野郎だった。ムカつぎ過ぎて推しの母乳を吸う羞恥心より、クソ野郎への反抗心が勝った。クソ野郎のミルクをはたき落とし、アイの母乳をこれでもかと飲んでやるッ!

 

「そんなばかな……今までアクアは俺が研究・開発したミルクを美味しそうに飲んでいたのに……」

 

 今後は母乳しか飲まないでやろうか。黒毛和牛もくれるみたいだし、早めの離乳食でも一向に構わん!

 

 

 

 こうして俺とクソ野郎の関係は決定づけられた。クソ野郎から利益吸い出したら捨ててやる。それまでは生かしておいてやる。

 

 後日、四宮について何も知らなかったルビーに懇切丁寧に教え、買ってもらったパソコンで生命保険について調べておいた。

小説の表現はどちらが良いでしょうか。4章では試験的に「〇〇〇(コクコク)」表記を試そうかと思っています。

  • 「〇〇〇」コクコク
  • 「〇〇〇(コクコク)」
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