side:アイ
「私、颯真くんに告白しようと思う」
「何があった!!」
私が颯真くんの気持ちに気づいてから一か月後、私はマダオの元に訪れていた。
「いい加減、颯真くんがウザい」
「ウザいって…‥」
「颯真くんの気持ちに気づいてから色々感じるようになったんだよ」
最初はなんてことない事だった。私の分のアイスを買ってくれた時に思ったのだ。『あっ、私のこと好きだからアイス買ってくれたんだ』と。今までの何気ない事にも『この人は私が好きだからやってくれてるんだ~』『皆に優しけど、一番優先されてるのは私だからな~』と分かってしまった。颯真くんが好きな女子と話している時も『彼、私のことが好きだからね。ゴメンね♪』と感じてしまう。
「そうなるとね。これ以上他の子に勘違いさせないように付き合うべきだと思うの。早く現実見せてあげないと」
「凄い自信だな。だが、それなら今すぐ告白したらいいじゃないか」
「………それはできない」
「はあ!?」
いやだって、冷静に考えるとおかしいじゃん。ここまで辱められた私から告白するとか……。
「土下座して告白してこないあのバカが悪いでしょ!!」
「まぁ片思い→好きな子に意地悪→性犯罪をした男だからな。いくら自殺防止・医療行為だったとしてもクズだしな」
「そこまでは言ってない!!そこは訂正して!!」
「えーっ…全然慰め方が分からないんだけど」
颯真くんは私を助けようとしていたんだから悪くないでしょ!やり方が馬鹿過ぎただけで!!
「だから!あのバカでも理解できる告白を考えて!」
「いや、普通に告白すれば終わりの話だよな?」
「あのバカは私の告白に気づかなかったの!!」
「そんなバカな!?」
そうだよ、バカなんだよ!
「私が『好き!』っていったのに……っ!」
「いくらあいつでもそんな事…」
「『おっ、アイもこのアイス好きだったか』って言いやがった!!!」
「本当に言ったのか!?」
「ハーゲン〇ッツは美味しかったけど!」
「あの高いアイスか~。そりゃ勘違いするだろ」
「他にもケーキとかパフェとか。颯真くんの手作り料理とかも美味しいから」
「それで『アイはこの料理好きなんだな?覚えちゃったぞ~』となった訳か」
「私、体重増えちゃったし……」シクシク
マダオは成長切って言うけどさ。その割に身長伸びてないと思う。そして全体的に肉付いたし。
「お花とか服とかぬいぐるみとか!可愛いよ?好きだよ?でもさ、それで勘違いするとか」
「こうなったらロマンティックな告白しかないな!」
「ロマンティックな告白?」
「おしゃれなレストランとか、遊園地の観覧車の中とか、二人の思い出の場所とか」
「思い出の場所だと颯真くんの部屋だよ?裸にされたし」
「……他も小学生だと厳しいか。よし、学校だ。放課後の人がいない教室で告白しよう」
「それならいいね!」
私も颯真くんも友達いないし、適当に呼び出せば大丈夫なはず。
「次はセリフだ」
「『颯真くん好き!』じゃダメなの?」
「それで失敗したからな。バカでも勘違いしない究極の告白をしよう」
あのバカでも勘違いしない……なんて素晴らしい言葉だろう。これでこの地獄から解放される。
「『月がきれいですね』って言うんだ。夜見は博識だし、無駄にロマンチストだから流石に分かるはずだ」
「なんでそれが告白になるの?」
「夏目漱石って昔の人が『
「これなら勘違いしないね!?」
「あぁ!腐っても全国模試一位、ロマンチスト、無駄なことに詳しい男が知らないはずがない!」
こんな簡単な言葉があったとは…勉強は大切だね。少し調べれば苦しまなくて良かったなんて。
「それじゃあ明日にでも呼び出して」
「『月がきれいですね』って言えば」
「「明日から恋人だ!!」」
side:颯真
最近、アイが怪しい。
以前から俺が料理作ったり、珍しい商品を買って来ると「美味しい!好き!」と言っていた。ハンバーガーを買って来た時は包み紙の意味を知らずにボロボロこぼしながら食べていた。俺もやったことあるから強く言えなかったが、口がソースまみれの状態で抱き着いてないで欲しい。背中にソース付けた状態で生活していたから皆から爆笑された。アイが楽しそうだったので許したが。
そうしてアイの好きな物を作って食べさせているとアイも健康的に太る…というか正常値になった。体重が増えたとか気にしていたが、それより折れそうな程細いモデル級の体はヤバイ。細さで売っているモデルは健康と寿命を犠牲にしていると知っているが、それを小学生でやるなら殴ってでも止めないと。……まぁ、アイはバカだから目の前に甘い物とか出せば勝手に食べていたが。
そんなアイがおかしくなった。最初はチラチラ俺を見てきたり、体をくねくねしていた。何か良いことでもあったのかと思ったら変なポーズを始めた。ヨガでもしているのかと思ったが、こっちを見ながら目を瞑ってアピールしている。ヨガ教室を勧めたら「バカ!」と罵られた。やはり母親の件で心が壊れたのだろう。
一番ヤバいのは手紙だ。アイから何度も手紙を貰った。ラブレターかと思ったが、どうやら俺を本格的に恨んでいるらしい。本気で命を狙っている。
『スキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキ』ギッシリ
これを見て本気で好かれていると思う程、俺はバカじゃない。しかも一週間毎日だ。恐らく呪術の類だろう。自殺防止とはいえ色々酷いことをした。だが好きな子からこれをやられたら泣く。丈夫なロープを買ってきたが職員に捨てられた。ついでに刃物も没収された。
アイに嫌われた。それを知った俺はこの世に未練が無くなった。しいて言うなら『人類抹殺計画』を実行に移すことくらいだろうか。……いや、どうせ死ぬなら人類と心中するのもいいな。
「放課後、私の教室に来て」
アイから死刑宣告される事になった。本格的に捨てられるらしい。好きな人のために頑張ってきた。アイがしっかり飯を食べられるように料理も勉強した。孤独にならないようにマダオを紹介して、色んな人と関われるように巫女モドキも手伝った。ファッション誌を買い漁ってサイシンノトレンドとやらも勉強し、女性の化粧や美容について調べた。発達障害の傾向や愛着障害の事だって勉強した。悪質な芸能事務所(反社)が来た時はアイに気づかれないように換金したし、その金で知り合いのヤクザに依頼を出したことだってある。
家族に捨てられ、警察も行政も助けてもらえず、生きていくために犯罪に手を染めたことも一度や二度じゃない。今の戸籍だって汚い金で買ったものだし、金を稼ぐために人間を換金した。一応外道しか対象にしていないが、バレたら首に縄かけられるだろう。……圧力に屈した国が俺を殺そうとしなければ、俺も道を踏み外すことなかったと思うが。
そんな汚い男だからアイに相応しいと思えない。それでも好きな人のために必死に努力してきた。俺に出来る事は全てすると決めた。筋を通すためにどんな汚い手段も使ってきた。所詮汚い手段しかできない最低な男。そんな奴、アイに捨てられても仕方な……仕方ないってことないだろ!!あんまりだ!!
「俺みたいな男は利用するだけ利用して捨てるんだろ!ひどすぎる!!」
やっぱり俺に愛される資格なんてないんだ。今でも夢に見る”家族”の光景。父親は優秀な経営者、母親は巨大財閥の長女、二人に愛される弟……そして欠陥品の俺。父親からは見限られ、母親には腕を折られ首を絞められた。愛されていた弟なら好きな人に愛されるんだろう。好きな人を上手に愛せるのだろう。愛されなかった俺はあの時死ぬべきだった。
「最後のけじめだ。全て終わったら死のう」
「ここか~」
アイの教室に付いた俺だが、扉の前で30分程立ち止まっている。だって、好きな人に振られて拒絶されることが確定してんだぞ?さっきから震えが止まらず、目の焦点が定まらない。トイレで胃の中全部吐き、胃液まで吐いたのに吐き気が止まらない。
――それでも、最期くらい綺麗に終わろう。
「あ、アイ…来た、ぞ」
「遅い!もう夕方だよ!?」
本当にゴメン。ちょっと屋上で飛び降りるか小一時間悩んで、トイレで吐いて、扉の前で立ち止まっていたから。
「それで、どうしたんだ?何かあれば帰ってから聞くが?」
「……なんでだと思う?」
分かっている。完全な拒絶だ。はっきりとした拒絶の為だろ。
分からない。何でここで言う?独りの状態で俺に襲われると考えなかったのか?
怖い……大好きなアイが、今日はとても怖く思える。覚悟を決めたはずなのに、目を合わせることが怖い。
お前は知らないだろ。人生をただ辛い事から耐えるだけだと考えていた俺にとって、アイとの毎日がどれだけ俺の価値観を塗り替えるものだったのか。
そして、アイの優しさに気づけば気づく程、俺は自分が嫌いになる。人を見ればごく当たり前の様に使えるか使えないか、自分にとって価値があるかどうかで人を見ている自分が、どれだけ冷たく心が醜い嫌な奴なのか思い知らされた。
アイの様に誰かを愛したいと思ったことなんてなかった。誰かに愛されたいと思わなくなった。『人を愛したい』『人から愛されたい』と思っているアイの方ができた人間だよ。
「アイの言いたいことは分かっている。もう覚悟は決めた」
「えっ!?そうなの!?」
「お前の行動を見ていれば全て理解できる。その上で来たんだ」
「そ、それなら!これから言う言葉もわかってるんだよね!?」
「当然だ」
二度と関わるなってことだろ。
「それじゃあ言うよ?」
「あぁ、言ってくれ」ハイライトオフ
死刑宣告は早く終わらせてくれ。
こいつはバカか?まだ夕方だぞ?それなのに月って………………まさか告白か!?
そうか!あの『チラチラ俺を見てきたり、体をくねくね』ってのは俺を意識していたのか!変なポーズもアピールのため、ヤバい手紙は精一杯のラブレター!それなら俺達は両思い!
両思いの男女が一緒に風呂入って、同じ布団で寝ていれば変な事してもおかしくない。俺だってアイと風呂入る時は興奮していることがバレない様に舌噛んだり、アイが寝てから手を出さないように首絞めて寝てるんだ。アイだって意識していても当然だよな!
まったく!アイは恥ずかしがりなんだから!
『月がきれいですね』という告白。この返答はいくつかある。『ずっと前から月は綺麗』『あなたと一緒に見る月だから』『ずっと月を見ていましょう』などだ。だが、一番分かりやすい言葉で伝えるべきだろう。年上としてバシッと決めてやるよ!
「死んでもいいわ」
「ダメだよ!死んじゃダメだって!!」
「えっ?」
そうか。これはあれだ。嘘告白だ。
「アイ、死にたいから帰るわ」ハイライトオフ
side:アイ
「やっぱりバカはバカだよ!」
「まさか『月がきれいですね』でダメだったとは」
「よくわかんないこと言って誤魔化して!」
「…よく分かんない事?」
「そうだよ。『死んでもいいわ』って言って!」
颯真くんはあの後走って逃げやがった。人がドキドキしながら告白したのに!ってか、男なら男らしく告白してこなかった颯真くんが悪いのに!
「……星野、それは……」
「『スキ』っていっぱい書いたライブレターもダメだったし、もう面倒だから殴った方がいいかな?『付き合う』って言うまで殴った方が早いよね?」
「……星野、その必要はない」
そう言ったマダオは顔面蒼白だった。にしても、必要ないって……。
「『月がきれいですね』の返答で『死んでもいいわ』って言うのはな。『私もあなたを愛しています』って意味で、夜見は星野の告白を受け入れたんだよ」
「そうなの!?ってか、なんでそんな面倒な言葉があるの。颯真くんも『月がきれいですね』って言えばいいのに!」
「それより問題がある。あいつ視点だと、星野から告白されて受け入れたのにはぐらかされた訳だ。しかも半年以上片思いしていた相手からの告白」
ってことは……
アイ『颯真くん付き合ってください!』
颯真『はい!よろこんで!』
という流れで……
アイ『ダメだよ!受け入れないでよ!!』
颯真『えっ?』
と、告白してきた相手に振られた??
「夜見の奴、いたずらで告白されたと思って自殺するんじゃ」
「颯真くんゴメン!!!そんな返答があるって知らなかったの!!!!」
「……」
「だからそのロープ捨てて!!」
「……」
「遺書だって捨てたからね!?」
「……」
「何か言ってよ!!!」
急いで帰った私は遺書書いて自殺しようとしていた颯真くんを必死になって止めた。
その後色々あったけど、三日三晩話し合ったことで颯真くんと付き合う事になりました。
――これからは隠し事なんてしないで素直に伝えよう。
流れとしては「アイがアピール→颯真は気にしない→アイが告白→勘違い発生→アイが颯真の返答に気づく→アイが颯真の自殺を止める→色々あった(颯真が一週間引き込もるなど)→愛と颯真が互いの過去についてなど話し合う→颯真が土下座でアイに謝罪→アイと颯真が付き合う」という流れです。
ある意味自信家のアイ(将来のアイドル様)と何でもできるから自信のない颯真(家族や国に人権奪われた過去持ち)の差です。
アイが告白した理由は颯真を他の女子に取られると独りぼっちになるからです。『父親不明、母親に捨てられ、友人なし、でも颯真がいるから!』状態なので、颯真がいなくなると独りぼっちになります。イメージとしては某IFルートの「双子を失ったアイ」状態になります。そのため、他の女子に取られる前に告白しました。
タグで分かると思いますが、颯真の母親は『かぐや様は告らせたい』の四宮家の長女です。財閥同士の争いを収める条件として政略結婚させられました。そのため「母親に愛された弟」というのは思い出補正の入った颯真視点の話です。