TS転生傾城妃は諦めた   作:青すぎる空は目が痛い

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14 公式CPに挟まるお悩み相談TS娘─壱

 

 

 

 

 コツ……コツ……

 

 暖かな蠟燭の明かりに頼った薄暗い部屋に二人分の袖が擦れる音と石の並ぶ音が鳴っている。

 魅音(ミオン)は石を置く一手一手に緊張しながらこの十日間を思い出していた。

 

 花を散らしたあの日、全くの想定外だった帝の行動に窮地に立たされた魅音はあらゆる覚悟をしたのだが、想像したような悲劇は起こることがなかった。

 もちろん蔑む視線に聞こえる距離での嫌味など精神を削りに来る可愛らしい嫌がらせは続いているものの、足が付きやすい毒物は殆ど無いといってもいいほどの頻度だった。

 

 噂の改竄が上々の成果を上げた、それは間違いではないのだが驚くべき援護射撃があった。

 なんと魅音が知る限りでは上級妃の懐妊以降、子作りに非積極的だったはずの帝が後宮に通うようになったというのだ。

 

 魅音も噂程度にしか聞いていない。しかし帝の通ったらしい妃が翌日、自信に満ち溢れ勝ち誇ったような表情をわざわざ見せに来たのだから間違いない。

 

 (そういえば一度も阿多(アードゥオ)さまの顔を見れていないなぁ)

 

 別に命を狙うわけでもない女官たちの刺すような視線も、年若い乙女の嫉妬と思ってしまえば年齢を詐称する魅音にとっては可愛いものであるため、北の四阿(あずまや)までの散歩は一日欠かさず継続していた。

 けれども阿多と出会うことは無かった。

 壬氏が交わった茶会の最後、またなと言ってくれたにも拘らずだ。

 

 らしくない阿多の行動に魅音の勘は主上が絡んでいると言っている。ただ他の妃のことを帝に直接聞くわけにもいかないので胸の内で燻っていく一方だ。

 阿多に文を送れればいいのだが、不本意にもひりつく関係性を余儀なくされているためなかなか難しい。一通送ってみたが返事がなかったので阿多の手前で止められたか、あまり思いたくはないけれど阿多に嫌われたか……。

 

 「ふむ」

 

 美髯の持ち主がその自慢の髭を撫でながら漏らした声が波紋を作るように響き、思考の海に沈んでいた魅音は現実に戻される。

 

 いつの間にか魅音の手番が回ってきていた上に、時間を使い過ぎたようだ。

 慌てた魅音は黒を掴むと、よく磨き香油を揉み込まれ、つやつやに煌めく右腕を無作法に晒してしまいながらコトリと打つ。

 時間は使っただけで長考していたわけでもない破れかぶれの一手だったが奇跡的に好手だったらしい。

 主上の表情が少し歪む。

 

 四半刻(30分)を台無しにしかけるという要らぬ綱渡りをして肝の冷えた思いをした魅音は落ち着くために顔を上げるのだが、そうすると当然向かいに座ってうんうんと呻りながら盤面とにらめっこする主上の顔がよく見える。

 

 (なんだかなぁ!)

 

 魅音が対局に集中しきれないのは目の前の主上が原因だった。

 初回が初回だったので好色親父という第一印象を抱いてしまい、それを受け入れるための相当な準備と覚悟をしていたのだが、どうにも主上にその気が無そうなのである。

 

 てっきりお盛んなのだと思い、揺らめく仄かな光源に薔薇の香を焚きこめて淫靡な雰囲気を演出してみたのだが、薄暗い部屋に浮かぶ薄着の女体に見向きもしない。

 別に実家が全くと言っていいほど力のない魅音を抱く抱かないは主上の気分次第ではあるのだが、恥ずかしい気持ちを我慢して男を誘う夜の花に扮して待っていたのに放置されたとなると流石に居た堪れない。穴があれば入ってしまいたいほどである。魅音は早々に厚手の羽織を被り体の線が出ないようにした。

 

 一方主上はというと純粋に碁を楽しんでおられる様に見える。

 他の妃には手を出しているというのに、据え膳となった魅音に邪な視線一つ寄こさないのだから何を考えているのか本当にわからない。

 ただ、その分よく魅音の目を見てくる。心を覗かれている気がして緊張してしまう。

 恥じる気持ちも相まって魅音の情緒は乱降下して忙しかった。

 

 (暗くて気づかなかったけど、顔色が悪い……?)

 

 長考する主上とは目が合うわけがないので、ゆったりと観察していた魅音はそう思った。

 執務で忙しいのだろうか、体を壊しては本末転倒なのだから花園になんか来ずに寝てくれた方が国のためなのだが……。

 

 (いや、もしかして連日の夜の公務が。ふぅん、元気なことで)

 

 ──パチリ

 

 あまりに下品な発想に到達した直後、魅音の手番に移る。

 幾ら集中できないとはいえ飛躍した妄想に反省しながら黒の石を手に取る。

 

 

 

 「まいりました」

 

 「朕の三連勝だな」

 

 魅音の大敗である。

 気合を入れなおした二、三局目よりも、疎かでまぐれが嵌っただけの一局目が一番主上に食いつけていたとは悔しい。

 

 「小娘に手間取っては沽券に関わるからな」

 

 主上とは歴が違う上に指南役がかの棋聖である。一方的な展開になるのはわかりきっていたが、くつくつと喉を鳴らす主上に不満はなさそうだ。

 対局中にも指導的一手があったり、感想戦に時間を使ったりと、ひよこを育て愛でるような遊び方が悪くなかったらしい。

 

 とはいえ勝負事で掌の上に転がされるというのは面白くない。

 

 「いつか必ず唸らせて見せます」

 

 「ほお、言うではないか」

 

 負けん気を出す魅音に主上は余裕綽々な態度で返す。

 この僅かな対戦で主上は存外茶目っ気のあるお方だと理解した。悔しさを顔には出さず、盤面を再現して検討する魅音を見てにやにやと自慢の髯を撫でている。

 

 「さて」

 

 「お帰りになられるのですか?」

 

 烏帽と襟を正して立ち上がる主上。

 その気は無さそうとは思っていたが、まさか本当にしないとは思ってなかった。

 まるで引き留めるような言葉選びになってしまう。

 

 「そうだな、また来る。研鑽に励めよ」

 

 そう言い残して去る主上を見送った魅音は小さく拳を握る。

 

 何とか次を手にいれた。

 魅音が何よりも恐れることは忘れ去られ、日陰で一生を終える事。

 だから賭けに出た。

 直接的な言葉ではないにせよ、一妃が帝にお通りをねだるなど品が無くあまり褒められたことではない。しかし、主上は皇帝としては優しい方である。仮に閨での睦言なら呆れられていたかもしれないが魅音が言った程度の誘いなら見逃してくれるとも思った。

 

 とまぁ建前はこの辺りとして。

 実際のところ魅音は楽しくて仕方が無かったのだ、帝との知的遊戯が。

 

 彼女は男としての意識を持っていた上に完全な男社会で育った。

 常に腹の探り合いと蹴落とし合いで気の休まらない後宮(女社会)と比べれば、胃が痛くなる緊張で済む皇帝の相手は極楽である。

 

 これらは阿多と気が合った理由と同じなのかもしれない。阿多は男女の役割がはっきりとしたこの世界で決して男に劣らない強さを持つのだから。

 

 

 

 主上は大体七日に一度の頻度で魅音のもとに訪れるようになった。

 

 「この策には自信がありましたのに……」

 

 「お前にやった指南書には無い打ち筋だったな。だが朕には届かぬよ」

 

 魅音に贈られた指南書は基礎から記され、非常に上達の役に立った。しかしそれは主上の師が書いたものである為、それで学んだ魅音の打ち方は主上には手に取るようにわかってしまうのである。

 それでは純粋な実力差で敵う訳がないということで、別の指南書を取り寄せて勉強し、主上の虚をつく作戦だったのだがあっけなく受け流されてしまった。

 

 負けに負けを重ねる魅音は隠すことなく歯を噛みしめて悔し気な表情をしながら盤面を戻して振り返る。

 主上はそんな魅音を肴に果実水の入った盃を傾けた。

 

 素人相手に全力を出して、その挙句嗤うなど何事かと思うかもしれないがそれは違う。

 自信満々に息巻いて、真剣勝負を望んだのは魅音の方だからである。

 勝ちの目が見えたことで目を輝かせて頬を紅潮させていた娘が、冷静になれず悪手を打ち、暫くしてそれが致命傷だったことに気づいた瞬間、悟りを開いたかのように何も読み取れない無の微笑みに早変わりするのだから面白くないわけがない。

 

 ひとしきり楽しんだ主上は検討する魅音に交わって助言をしてくださる。

 これが週に一度の一連の流れである。

 

 

 * * *

 

 

 純潔(プラトニック)な、いや責務を放棄しているのだからある意味不健全な逢瀬を重ね、早くも二か月が経った。

 その間にあったことを挙げるとキリがない。

 

 内外共に寵妃という認識になって様々な嫌がらせに遭い、身を守るための必要に迫られて魔窟に住まう女として成長せざるを得なかった。思わず顔が引き攣るような仕打ちも後宮としては常識的な範囲らしいから恐ろしいものである。感染症という概念を知らないからあんなことができるのだろう。

 また、中級妃へと位上げされた。それに伴って棟を与えられ住居が広くなったのはいいのだが、本格的に手が回らなくなり下女を雇うことになった。

 この問題は妙に親身になってくれる壬氏の手も借りて徹底的に素性を洗ってもらい、鼠一匹紛れ込まないように選別したので安心してほしい。本当は(シュー)から追加の侍女を送ってもらいたかったのだけれど、実家から侍女を連れてくるのは原則として入内時のみである。

 悪戯の絶えない魅音の棟を見て、壬氏も前向きに検討してくれたがやはり難しいようで時間がかかるらしい。

 

 これらの詳しい話はまた後日とする。

 なぜなら今現在の魅音の状況を説明せねばならないからだ。

 

 

 

 (大人の頭ってこんなに重かったのか……。だめだ、足が痺れてきた)

 

 部屋を移ったことで一回り大きくなった寝所。

 魅音はこれまた大きくなった寝台の縁に腰掛けていた。そしてその太ももの上にはこの国で最も尊い御方が眠っている。

 紛う方なき膝枕である。

 

 なぜこんなことになっているのか、それは少し時を遡る。

 

 二月(ふたつき)で二桁に届かない程度のお通りを経験し、帝の訪問にも慣れてきた今日の事だった。

 

 (このままだと本当に勝ててしまう)

 

 毎度毎度変わらず魅音と主上は碁に興じるのだが、魅音は一度も勝てたことは無かった。

 間違いなく腕は伸びているものの、碁の理解が進めば進むほどまだまだ大きな差があると分かってしまう。

 そのくらい勝てる見込みは無いにもかかわらず本日の初戦、中盤だというのに負けない理由がないくらい魅音が圧倒してしまっている。

 

 その理由は主上を見れば一目瞭然である。

 

 「本当にお休みになられているのですか?」

 

 「睡眠はとっている」

 

 「お酒に頼ってはおられませんよね」

 

 「……」

 

 沈黙は答えであろう。

 こくりこくりと舟を漕ぎそうになる頭を支えるのも苦労するようで頬杖をついている。濃い化粧の下にはどんな隈が浮かんでいるのやら。

 

 前々から睡眠不足かと疑っていた。けれども皇帝には優秀な医官が付いているはずで魅音なんぞが気にする必要はないと思っていた。

 だが一向に改善されない、それどころかどんどん酷くなっている。

 

 もし主上に何かあれば国が荒れる。皇弟が控えているので滅ぶことは無いだろうが壬猫過激派の魅音としては何としても避けたい。

 それに魅音とて情が湧く。肌を合わせるだけの関係ならこうはならなかったと思われるが、碁を通してよく言葉を交わしていればその人柄が分かってきて気安くなっていくものだ。

 僭越ながら友のような関係だと思っていた。立場があるので決して本当の友になることは無いと弁えているが体調を心配する気持ちは本物である。

 

 「横になられるだけで違うと思います」

 

 「そんなに酷いか」

 

 声が届いたようで、だるそうに両手をついて立ち上がる。

 

 「お帰りになるのではないのですか?」

 

 お帰りになると思って守衛に声をかけようとした魅音だったが出口と真反対の方向に歩き始める主上に戸惑う。

 

 その先は魅音の寝所だった。

 

 「四半刻ほど借りる」

 

 そう言って寝台の端で横になってしまわれた。

 まさか魅音の寝台を使われるとは思わなかったが長椅子で寝られるよりマシかと己を納得させる。そもそも嘆願を受け入れてくれたことに喜ぶべきだ。

 布団が干したてで助かった、太陽の香りしかしないはずである。

 

 「あの、硬くありませんか?主上がお使いになる寝台よりも劣りますが」

 

 「どうせ寝れぬのだ、何処でも変わらぬよ」

 

 頭が低くて寝心地が悪いのだろう、左腕を枕にしている。

 窮屈そうな主上を見て魅音は枕を探すが生憎自分用の硬く低い枕しかない。

 魅音以外がこの部屋で寝る想定をしていない。無くて当然だった。

 

 (仕方ないな)

 

 「少し頭を上げていただけますでしょうか」

 

 主上の頭に手を添えて補助しつつ、自分の力で持ち上げてもらう。

 できた隙間に魅音は素早く身体を差し込んで寝台に腰掛ける。

 

 「なんだこれは」

 

 枕を添えられると思っていた主上は突然の柔らかな感触と甘い香りに包まれて起き上がろうとする。

 しかし目元に手のひらを押し当てられて上半身が動かない。

 

 「膝枕ですよ、ご存知ありませんでしたか?」

 

 「いや、知っているが……」

 

 「昔よく弟にしていたのですよ。ぐずっていてもこうしてあげればすぐ寝てしまって」

 

 当時を思い出したのかころころと笑う魅音だが、主上は複雑だろう。己の半分も生きていない娘に弟扱いされたようなものである。

 因みに弟に膝枕をしてあげていたのは相当幼い時の話で、成長し肉付きの良くなった今の魅音の太ももはとても魅惑的なのだが本人は気づいていない。自分の枕よりは柔らかいだろうくらいの認識である。

 

 「朕を弟扱いとはな、お前本当に十五か」

 

 「あ……申し訳ありません」

 

 顔が見えないのでわからないが主上は苦笑するように指摘した。

 魅音は失礼をしてしまったと身体を引こうとする。しかし脱力して身を任せてくる主上の頭が重くて動けそうにない。

 

 「そのままでいい、寝れるかもしれん」

 

 「そうですか?そうだ、眠れないときは目元を温めると良いそうですよ」

 

 主上の目元に当てたままの魅音の手のひらが主上と体温を交換し合って温まってくる。

 

 終始なにか言いたげな主上だったがいつの間にか寝息を立てて眠ってしまっていた。

 

 

 (寝させようとした私が言うのもなんだけど、人前でそれは無防備過ぎませんかねぇ)

 

 魅音が刺客という可能性は無いと考えられているのだろう。それでも警戒すべきとは思うのだが……。

 まぁそれほど限界だった、ということなのかもしれない。

 

 (暇すぎる)

 

 漸との思いで寝た主上を起こす訳にもいかないので魅音は身動きが取れない。手の届く範囲に気を紛らわす物がなにもないので、四半刻このままが確定である。

 

 「阿多……」

 

 「え?」

 

 手持ち無沙汰に呆けていたら阿多の名を呼ぶ男の声が聞こえた。

 この部屋に男は一人しか居ない、魅音は主上を確認するが眠ったままである。寝言だった。

 主上の寝顔を覗き込むことにした、もしかしてと思ったのだが案の定眉間に皺が寄っている。

 

 「不眠の原因は心労(ストレス)かねぇ、阿多さま一体何をしたんですか」

 

 精神的な疲れなら症状が長引くのもわかる。

 ははぁんと魅音は納得した。

 

 

 

 「主上主上、お目覚めください。そろそろ足が限界なのです」

 

 魅音は泣き言を言いながら主上の肩を揺する。

 

 「まさか、寝ていたのか?」

 

 「はい、一刻(2時間)ほど」

 

 目覚めた主上が身体を起こす。

 

 「折角お眠りになられたのに私の都合で起こしてしまい申し訳ありません」

 

 長時間圧迫されてしびれていた足に血が巡りだす、魅音はやわやわと痛みを取るように揉んだ。右足の感覚が鈍い、暫く立て無さそうだ。

 

 主上の顔色を見ると随分とよくなっていた。深い眠りに落ちていたようで、たった一刻でも見違える。

 これほど効果覿面なら、もう少し痛みを我慢して太ももを貸していてもよかったかもしれない。

 

 まさか熟睡するとは主上も思っていなかったらしく、苦い顔でこめかみを押しながら首と肩を回している。

 

 気まずい空気が流れている。そんな中、魅音は意を決して切り込んだ。

 

 「何やら悩みがあられる様子。根本的に睡眠不足を解消するにはそれを晴らすしか方法は無いと思います」

 

 一呼吸おいて続きを言い切る。

 

 「私も部外者ではないのではありませんか?どうかお聞かせください、阿多さまと何があったのか」

 

 断定するように阿多の名を出す。主上に尋ねるならこの機会(タイミング)しかないと思った。

 主上の目が見開いてこちらを凝視する。魅音も負けじと見つめた。

 

 「いつからだ」

 

 「違和感は初夜からありました。確信を得たのは先ほど主上が零した阿多さまの名を呼ぶ寝言です」

 

 「鎌を掛けているのではないだろうな」

 

 「少なくとも私の前では分かりやすかったですよ」

 

 閨で他の女の名を、それも関係を聞いてくるなんてあり得ないだろう。それもあんな眼差しで。

 嫋やかに笑う魅音に気圧されて主上はぼりぼりと頭を掻いた。  

 主上の懐を探るような行為で不愉快だろうに咎めない。

 

 美髯を撫でながら考える仕草をしていた主上が口を開く。

 

 「商家に生まれ、女だてらに男顔負けの知識をつけ商人として生きてきたらしいな」

 

 「その通りですが」

 

 徐の養女となる前の話は阿多以外に話した覚えがない。わざわざ調べたのだろうか、故郷まで遠いのに。

 なぜ今魅音の経歴を確認するのか、それはすぐに分かった。

 

 「商人というのなら口は堅いか?」

 

 真剣そのものの声色だ、少なくとも後宮の妃に対する言い方ではない。

 魅音の雰囲気ががらりと変わった。

 女の匂いがする寝室だというのに紙と墨が香る執務室に居ると錯覚する。

 

 「契約があれば。私の矜持に懸けて誓いましょう」

 

 商人の父の娘であるという誇りと努力を重ねて得た矜持(プライド)は魅音の根幹を構成する重要な部品(パーツ)だ。

 魅音はそれ引き合いに出すほど本気である。

 

 二人とも佇まいを正す。

 

 「徐魅音、そなたに頼みたいことがある。報酬は弾もう」

 

 厳かに、ゆっくりと主上が話した。

 対する魅音は拱手と共に恭しく頭を下げる。

 

 「帝の御心のままに」

 

 

 

 

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