TS転生傾城妃は諦めた   作:青すぎる空は目が痛い

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 大変お待たせしました。
 お詫びと言ってはなんですが明日と明後日の朝7時に1話ずつ更新します。


21 私の天秤は何に傾く

 

 

 

 

 客人を待たせる応接室に現れた魅音(ミオン)は指を出す形で両手に包帯を巻きつけていた。

 仰々しい見た目だが、赤茶色の染みはさほど目立たず、小さく斑点が残るのみ。

 本人も疲れは見せるが、負傷した手の動きに澱みは無く、長く鋭い梨花(リファ)妃の爪で抉れて痛々しかった傷を感じさせなかった。

 きっと見た目だけだったのだろう。

 

(んなわけもなく)

 

 魅音の手の甲はじくじくとした熱を発している。

 

 流れる血が少なく見えるのは分厚い包帯を巻いたばかりだから。

 痛みを感じていないように見えるのは鋼の意志で忘れようとしているから。

 怪我をしたその時は大したことないように思えたが、それは脳内物質(アドレナリン)が分泌されて麻痺していただけで、落ち着いてくるとジンジンと響くような痛みが思考をかき乱している。

 

 疼痛を逃すように心の中で溜息をつくと応接室の中央の机に目を向ける。

 客人が椅子に座って優雅に茶器を持ち上げている。完璧な所作は体に染みついているのだろう。それを身に着ける大変さを身に染みて理解している途中の魅音はいつも感心してしまう。

 客人が茶を口に運ぶ、指先に至るまで実に雅で美貌も相まって額縁に収めたくなる。

 ここで魅音が来たことに気が付いたようだ、かちゃりと小さな音を立てて茶器を置いた。

 

 客人に先に話させまいと魅音は口を開いた。

 

「お待たせいたしました」 

 

「どうかお気遣いなさらず。茶まで頂いてしまって。

 それよりも御手は大丈夫ですか?」

 

 壬氏(ジンシ)の視線が魅音の手に注がれる。

 相も変わらず天女のような美貌で、後宮の女官たちを誑かしてやまない微笑みを貼り付けているが、僅かに伏せられた疲れたような眼には後悔が浮かんでいた。

 

 魅音は壬氏と向かい合うように席に着くと、机の下で手の甲を小さく(さす)る。

 

(みな)が大げさなのですよ。虫に刺されたようなものです」

 

「そんなはずは」

 

 壬氏は現場を見ている。魅音の凄惨な両手を知っているためその言葉が強がりだと分かっていた。

 さらに言えば、壬氏は応接間に長い時間待たされていたので察していた。

 そして魅音の後ろに控える侍女の渋い顔で確信する。

 しかし、壬氏はそれ以上何も言えない。当の本人(魅音)が大事にしないと言っているのだから。

 

 意思を曲げなさそうな魅音を見て渋々壬氏は言葉を飲み込む。

 

「……では、その時間の事をお話しいただけますか」

 

「えぇ。若汐(ルオシー)

 

「かしこまりました」

 

 魅音の声掛けで事の一部始終を知る若汐が話し始めた。

 

 

* * *

 

 

「こちらの情報と一致しますね」

 

 全てを聞いた壬氏は袖の下で腕を組んで一呼吸置いた。

 事件の当該陣営の証言が鵜呑みにされるはずがない。

 魅音が治療で待たせている間に、壬氏は出来事のあったその時その場に偶々居合わせていた宦官を呼び寄せて話を聞いていたらしい。

 

(どの選択をしたとしても……っぽいなぁ)

 

 魅音も魅音が出る以前の話は今初めて聞いた。

 居留守でやり過ごしたほうが穏便に済んだのではないか、という後悔を燻らせていたが、話を聞く限り梨花妃のご乱心は避けられなかったように思える。

 若汐によるとその目には狂気が宿っており、爆発は避けられなかっただろうということだった。

 また、梨花妃の容態は最初からとても日差しの強い快晴に耐えられるようなものではなく、水晶宮の侍女たちも体を心配してか主を諭そうとしていた。

 

 こうなると魅音の取った選択は考えうる限り最悪と言えよう。

 たとえ侍女が骨を折られ目を潰されたとて、寵妃の手に痕の残りかねない怪我を負わせた事に比べれば細事である。

 若汐を見捨てて梨花妃が倒れるのを待つことが最善だったのかもしれない。

 

(ま、それの後悔はないけれども。傷一つで女の価値が落ちることは……悲しいかな否定できないけど主上は気にしないだろうし)

 

 侍女を見捨てる選択肢は魅音には初めから無かった。

 しかし、この結果が満足とは言い難く、心残りがあった。

 その心残りとは梨花妃の事である。

 梨花妃の悲痛な叫びを誰よりも近い場所で被った魅音は酷く動揺していた。

 一人の赤子の母親のただならぬ思いが魅音の心に重い重い楔を打ち付けていたのだ。

 

 いつからこんな風に共感するようになったのかは分からない。

 両親の愛情をたっぷりと注がれた前世の()は確かに心優しく育ったが、ここまで梨花妃に同情する性格だっただろうか。

 彼とて心を痛めただろう、しかし今の魅音のように心を乱されて内臓を掻きまわされるような不快感に苛まれたとは思えない。

 

 毎月流れる血と後宮という環境が子どもを強く意識させるのか、それとも女の身体特有の内分泌物質(ホルモン)が自意識を作り変えてしまっているのか。

 己を見失ってしまいそうな不安が魅音を支配していく。

 転生と転性という超常現象を通して、自我とは肉体の隷属に過ぎないのだと一つの真理に到達してしまった魅音は正気度がゴリゴリと削られて精神が疲弊する。

 

(ばかやろう)

 

 頬を両手で叩いて小気味の良い音が鳴り響く。

 

()ぅ……」

 

「魅音さま⁉」

 

 気合を入れ直す時の習慣(ルーティン)だったが、考え事をし過ぎた魅音は手の怪我をすっかり忘れていて激痛に背中を曲げた。

 若汐は魅音に駆け寄り、壬氏は口端を引き攣らせている。

 

(今そんなこと考えてどうするんだ。それよりも梨花妃のことだろ)

 

 体の健康と心の健康は密な関係にある。

 とすると梨花妃の現状はある程度推察できた。

 魅音は頬を仄かに林檎色に染めながら顔を上げて壬氏に向き合った。

 

「今回の件は、私としては無かったことにしたいと思っています」

 

「揉み消す、ということでしょうか。こちらとしては助かりますが」

 

 梨花妃は東宮の母で、今後も後宮で強い存在感を出していくだろう。

 しかし、最近の梨花妃の振る舞いは見逃せるものではなくなってきていた。

 梨花妃の人柄と国母としての素質を見込んで主上に推薦した壬氏は本来の彼女を知る為、此の所の梨花妃らしくない行いに戸惑いながらも、これ以上の悪評は避けたいと考えていた。

 

 だが、被害者側が怒り心頭だとそれは通らない。

 圧力をかけて黙らせたとしても名誉を傷つける方法など幾らでもある。

 それに位に差があるとはいえ寵妃相手というのも旗色が悪くなる原因だった。

 

 壬氏が魅音の提案に胸を撫で下ろしたのはそういう理由だ。

 しかしそれは魅音が壬氏の思考を完全に把握した上で思惑があってのことである。

 

「それは置いておいてですね、一つお尋ねしたいことがあるのですが」

 

「はい、何でもお聞きください」

 

 さすがの壬氏様で、魅音が貸しを作りたがっていることは分かっていたようだ。

 事情聴取とは直接関係は無いと前置きして聞きたいことがあるという魅音を壬氏は快く受け入れた。

 

「私が聞きたいこととは東宮と公主(ひめ)の体調の事です。壬氏さまなら詳細にご存じでしょう?」

 

「それは魅音妃と言えど、いや妃だからこそお話することは難しいですよ」

 

 後宮の管理者である壬氏は殆ど全てのことを知っている。

 しかし、上級妃の宮の中という繊細(デリケート)な情報が漏らされるわけがない。

 特に魅音は玉葉(ギョクヨウ)妃と梨花妃の派閥のどちらにも所属しておらず、表向きには競争相手なのである。話してもらえる理由などどこにもなかった。

 ついでに言うと魅音は孤高の一匹狼(ぼっち)又は阿多(アードゥオ)妃派閥と見られることが多い。

 

「まぁまぁ、最後まで聞いてくださいな。鈴麗(リンリー)公主は快方に向かっているのではないのですか? それに引き換え東宮は悪化の一途を辿っているとか」

 

 そこまで言うと壬氏は机に肘をついて大きくため息を吐いた。

 

「言葉を慎んでいただきたいものです。関与を疑われてしまいますよ」

 

 壬氏は頭を痛そうにそう言う。

 この態度では魅音の言うことが正解だと言っているようなものだ。

 ただそれは魅音の確信めいた言い方に諦めたからだろう。同時に魅音を疑っていないことが分かる。

 

「どうしてそれを?」

 

「女の噂話を軽く見てはいけませんよ」

 

 うふふふ、と柔らかに笑う魅音に周りの人間はなんとも言えない表情をする、頬の薄い紅葉のせいで間抜けに見えるのだ。

 

 噂というが、それを根拠に話しているわけではない。

 先ほどの梨花妃の常軌を逸した状態から想像したものだ。

 あれほど追い詰められた様子で東宮が持ち直してきているなんて考えられない。今にも儚く散ってしまいそうと考える方が自然である。

 

太医(せんせい)は見当もつかず手の施しようが無いのでしょう? 外廷医局の医官に診てもらうことは出来ないのでしょうか」

 

 言い争う梨花妃と玉葉妃の間でまごまごとしていたやぶの事だ。

 これと言って有効な手を打てていないのだろう。

 

「あ、太医(せんせい)を追放すべきと言っているわけではありませんよ。人の身体は複雑怪奇でたった一つの人生で網羅できるものではありませんので様々な意見が必要だと思ったのですが……」

 

 にこにこと返答を待つが中々返事が返ってこない。

 やぶ医者に対する不信を言葉にしたのがまずかったのだろうか。

 魅音としても人となりは良い彼の首が飛んで欲しいわけではないので援護(フォロー)をするが、黙する壬氏はそのことを考えているわけではないのか沈黙を解かない。

 その異様な雰囲気に高揚していた気持ちが冷えてきて言葉が尻すぼみしてしまった。

 

(驚いた)

 

 普段、その美貌をひけらかして余裕を糊で固めたような微笑みを貼り付ける壬氏が唇をかみしめていた。

 付き人(高順)が居ないからというのもあるのだろうが、ここまで己をさらけ出す壬氏を見るのは阿多が揶揄っている時位だ。

 

「医官と言えど男性を後宮に入れることは出来ません」

 

「それはわかっています。ですので一時的にでも東宮をここから出すことは出来ないのですか?」

 

「後宮ほど安全な場所はありませんので」

 

「このままではそんなことも言っていられなくなるのに?」

 

「魅音妃は宮廷をご存じではないでしょう」

 

 実感の籠った暗くて重い声だ。

 魅音は言葉に詰まってしまった。

 言われた通り魅音は宮廷の闇を知らない。後宮と比べようもないのかもしれない。

 

「それに慣例……決まりというものがあります」

 

 男児は七つになるころまで後宮で育てられる。

 それは安全な場所で育むため、赤子から母親を取り上げないためなのだろうが、それ以外にも理由がある。

 その男児が皇帝となった時に一族への肩入れを強めるためだ。

 

 幼いころの記憶というのは人格形成に大きな影響を与える。

 母親に懐いた子が皇帝となったなら。そして程よく暗愚であったなら。野望を抱く者なら誰でも考える事だ。

 

 しかし魅音が言うように東宮を外廷の医官に見せた場合、現帝の身内……皇太后の一族が囲ってしまって梨花妃の一族は指一本触れることが叶わなくなるだろう。

 もしかしたらそのまま皇太后派に育てられてしまうかもしれない。

 それは千載一遇の機会を逃すかもしれないということだ。梨花妃の実家が納得するわけがない。

 東宮が呪われているという話がどこまで伝えられているかわからないが、死んでしまったら元も子もないだろうに。東宮の状態を軽く見ているのは野望に目が眩んでいるからか。

 

「重々承知しております。しかし梨花妃は主上の遠縁なのでしょう? 他の家よりは反発は少ないのではないのですか」

 

 そう、梨花妃は主上の遠縁という高貴な生まれだ。主上と血が近く、血が濃くなりすぎることを懸念されて四夫人で最も位の低い賢妃の座についているが後宮で最も尊い生まれの人物は誰かと聞かれたら梨花妃だろう。

 魅音は特別(まつりごと)に明るいわけではないが、東宮が後宮を出ることの難しさは理解していたし、それでも梨花妃の血を継ぐ東宮なら可能性があると思っていた。

 

「そう簡単な話ではありません」

 

「後宮の最高権力者は壬氏さまではないのですか?」

 

「後宮の最高権力者に過ぎないからですよ」

 

 魅音が思う以上に権力というものは、政治とは面倒くさいらしい。

 

(私が接触できる壬氏さま以上の権力者……)

 

 もう一人しか思いつかなかった。最後の手段として可能な限りとりたくない手であったが背に腹は代えられない。

 どう誤魔化して話そうかと考えている時だった。

 

「もし主上に話そうと考えておられるのでしたらおやめください」

 

「え?」

 

 心の内を見破られて思わず固まってしまった。

 魅音が調子を取り戻す前に畳みかけられる。

 

「全ては私たちが至らないがためと前置きして言わせていただきます」

 

 壬氏は佇まいを正すと、最大限の非を認めたうえでゆっくりと丁寧に言葉を紡いだ。

 

「水晶宮にそこまで心を砕くべきではありませんし、ましてや主上に頼るなどあってはなりません。貴女の仕事は主上の御子を産むこと。ただそれだけです」

 

 もっともだと思った。

 魅音は唯人に過ぎず、主上は天上人である。その線引きを誤ってはいけない。

 けれども受け入れられずに、脳内の歯車に棒が差し込まれたような感覚がして考えが纏まらなかった。

 

「貴女が他の妃とは違う特異な関係性を主上と築いていることは知っています。だからこそ私は貴女に居なくなってほしくない。どうかご自分のことだけを考えてください」

 

 言い切った壬氏は湯呑を掴んで一飲みにする。

 魅音の反応を待っていたようだったが、一向に動きそうにない。

 

「……私はこの辺りで失礼します。今日は色々ありましたからお疲れでしょう。どうかご自愛ください」

 

 目を見開いて小さく震える魅音を見て壬氏は魅音の棟から立ち去る。

 

 周りが一切見えなくなっていた魅音は、血管が浮かぶほど固く握りしめられた壬氏の拳に気づかなかった。

 

 

* * *

 

 

 後日、東宮が後宮を出たという話が広まった。

 最新の呪いの可能性があるとかで後宮ではできない祈祷が行われるらしい。

 壬氏は不可能だと言っていたがどうしてだろうか。

 壬氏が主上に取り計らったのか、それとも皇弟が動いたのか。魅音には知る由もないことである。

 

 それからいくつかの時が流れて東宮が後宮に帰ってきた、いや還ってこれなかった。

 後宮の者らは一様に黒い帯を身に着けている。

 梨花妃の絶望の表情が容易に想像できて気の沈む日々だ。

 

 魅音は長椅子で脱力しながら右手を天井にかざして甲を見る。

 瘡蓋(かさぶた)が取れて白い跡が残っている。

 それを見ているとチクリと胸が痛む。小さくため息を吐いた魅音は机の上に置かれた絹で出来た白い手袋を手に付けた。

 

「命に貴賎はあるのかないのか……」

 

 消え入るような独り言を零した。

 魅音は旅をする中で様々な命との別れを見てきた。

 殆どが貧しいが故、卑しいが故の死で抗うことすら許されなかった。

 東宮ともなればあらゆる手を使って死を退けようとするものだと思っていたが、どうも皆受け入れてしまう。そこに一種の平等を感じて気持ち悪かった。

 

「何か仰いましたか?」

 

 主が放つ重苦しい空気で重い部屋で、苦しそうに金魚鉢に餌をやっていた小依(シャオイー)が魅音の微かな声を拾って聞き返した。

 

「いいえ、何でもないわ」

 

 しとしとと降る雨がここ何日か続く。

 外に出る気も起らず腐るように横になった。

 

 

* * *

 

  

「吾子の様子はどうだ」

 

 小さな窓もない部屋に上級官僚の装いをした中年の男性が入ってきた。

 だが衣一つでその覇気(オーラ)を隠しきれているかというと怪しい。変装のためにこだわりのある髭をそるわけにもいかないので覆面で顔を隠しているのも奇妙な見た目に加担している。

 

「今は安定しておられますよ」

 

 拱手をして頭を下げる白衣を着た、それなりに歳を召した男が返答した。

 主上の目の先には泣き声一つ上げないおくるみに包まれた顔色の悪い男児が居た。

 この部屋には成人男性二人と赤子が一人だけである。

 

「寝ているのか。しかし顔色が悪いな」

 

 白衣を着る医官曰く、起きている間は苦しいのか泣き叫び、疲れて寝るということを繰り返しているらしい。

 

(リュウ)、吾子は助かるか」

 

 劉と呼ばれた医官は少し考えるそぶりを見せてから言う。

 

「気を付けねばならないことは山ほどありますが、峠は越えたかと」

 

「そうか、では吾子は皇帝になれるか」

 

 主上の力強い眼が医官を貫く。

 しかし、医者としての矜持(プライド)の鎧があるからか医官は動じない。

 けれども言葉選びに困るようで中々答えられずにいた。

 

「よい、正直に答えよ」

 

 言葉に困る。それはそういうことなのだろうが、主上は医官に赦しを与えて話すよう計らう。

 

「東宮殿下は恐らく腎が弱っておいでです。腎が弱った人間は長生きが出来ない、これは我々医者として共通の認識です。もちろん程度はありますが東宮殿下の場合はわかりません。なんせ赤子は情報(データ)が少ないので」

 

「それで、吾子は皇族としての使命は果たせるか? お前の見立てで構わん、答えよ」

 

 主上は医者としての言葉で東宮という天上人の行く末を左右させる、といっている。

 その重圧(プレッシャー)は計り知れない。

 最近感じるようになった関節の痛みが強くなる中、深く頭を下げて医官は言う。

 

「難しいかと。成人できれば奇跡です。公務などご法度と考えます」

 

 小さな仄暗い部屋に沈黙が訪れる。

 その中心は覆面の下の髯を擦りながら考える主上だ。

 

 主上は赤子が眠る籠に近づくと健康な赤子と比べると足りない丸い頬に手を添えた。

 そして手を離すと決断をしたようで重々しくその口を開く。

 

「吾子は今この時、この場、で死んだ。劉、これは他言無用だ。話せば一族郎党皆殺しと思え」

 

「御意」

 

 部屋を出ようとする主上は荒っぽく髪を掻いた。

 まるで自分らしくないという風に。





 後宮の外で東宮を死なせて梨花妃の生家から文句が出にくくかったのは主上が直接動いたからとかなんとか。


 東宮に関する展開について活動報告にて補足しています。
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