ダミアン君は詰んでいる   作:ちゃっぱ

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はじめ

 

 

 

 

 生まれ変わった先が前世の記憶に新しくまだ完結していないまま死んでしまったスパイファミリーの世界。

 そのダミアン・デズモンドに生まれ変わってしまったと気づいたのはつい最近の事。

 そのせいで俺は焦っている。

 

 何故かって言えばある意味、俺の人生が詰んだ状況だからだ。

 

 俺という存在は多分、兄が駄目だった場合の保険。

 もう一つの替え玉人形(ダミー)だからな。

 まあ、確実に父や兄がそう考えているとは思っていない。これでも俺はまだ小さい子供だし、あり得ないと思う。ただ俺の名前がダミアンで『ダミー』って愛称付けられそうだし、二重の意味でそう思ってしまったから。

 

 家族との関係は希薄。兄とすらほぼ対面で話したことがなく、電話でも緊張してしまうほどの立ち位置。

 つまり俺が邪魔であれば切り捨てることも可能ということ。前世で読んだ漫画にて父が息子に会いに来てくれるシーンがあった。わざわざ時間を割いてまで来てくれた程度には息子を気にかけてくれているのだろう。

 

 でもそれが父を信じられる要因にはなれない。

 なんせその前世の漫画にて父たるドノバン・デズモンドが言った『人と人は結局 永遠に分かり合えん』という言葉を知ってしまったから。

 

 息子であっても他人は他人。

 あの人が何を考えているのか息子の俺には何も理解できない。原作のダミアンが父と良好な関係になりたくて奮闘していたように、ちゃんと仲がいいと信じ切れずに必死に頑張り続けていたように。

 

 まあつまり、今の俺は詰んでいる状況ということ。

 

 ドノバン・デズモンドをどうにかしようとスパイが来ても構わない。あの黄昏が父と接触し、情報を入手して世界平和になるのは俺も歓迎する事態だ。

 

 ただそれによって起きるデズモンド家の悲劇だけは避けたいと思っている。

 デズモンド家がもしも仕事で駄目になって、そのせいで没落したなら。今の俺は何もできない子供だから、きっと大変な思いをするだろう。

 

 世界平和のためになら犠牲になっても構わないとはどこぞの正義の味方が言っていたかもしれないが、俺は自分自身を犠牲にしてまで動くつもりはないのだ。

 

 だから俺は自分の人生が一人でも動けると思える程度、せめて皇帝の学徒(インペリアルスカラー)になってドノバン・デズモンドの息子として評価されるのではなく、ただの『ダミアン・デズモンド』として認められる必要がある。

 没落してもある程度の縁を紡がなくてはならない。援助をしてくれる人。一人でも生きていけるように必死になる必要があった。

 

 だって原作がどうなるのか今の俺にはもうよくわかっていないから。

 黄昏は冷徹ではない。子供の涙を流させないためにと平和を望み、スパイになった心優しい男だ。

 俺の事も、もしかしたら助けてくれるかもしれないが、それでも出来るだけ自分のやれることはやろうと思う。

 

 しかし、唯一の問題点はアーニャ・フォージャ―がいることだろうか。

 彼女は超能力者だ。心を読めるという意味で特殊な力を持っている。

 

 それ以外は勉強や運動などある程度はダメダメだが……彼女の場合は年齢が俺より下の可能性もあるからそこら辺を考えると一般的な幼女の可能性が高い。だからある意味、頑張っているし天才的かもしれない。

 人の汚らしい心を読んでもグレることなく真っ直ぐ生きている彼女の逞しいメンタルは見習うところがあるだろうしな。

 

 まあとにかく、そのアーニャをどうにかして味方に引き込めないかと思ったのだ。

 俺はもう入学が確定した。それを父に伝えてくれるよう兄に頼んで、予習をしてある程度やるべきことは終わらせた。

 普通なら一人で散歩なんぞデズモンド家の次男たる俺がやってはいけない行為だが、今回は仕方ない。俺を教育するあの人に頼み込んで一人で散歩したいと伝えた。

 もしかしたらどこかに護衛がいるかもしれないが、一人は一人。

 

 だからこそ────

 

 

 

 この日をずっと、待っていた。

 

 

 

 

「うちの娘に乱暴しないでください! 殺しますよ!」

 

「ヒィっ!? かぼちゃを片手で!?」

 

「やべえ逃げろ!!」

 

 

 聞こえてきた声に、原作で見た光景だと内心で笑った。

 黄昏たるロイド・フォージャーは傍にいない。彼がいた場合すぐ俺の正体を見ぬき仲良し作戦を実行する可能性があったからちょっとだけ安堵した。

 

 彼女たちはどうやら買い物に出かけていた最中らしい。それもアーニャがイーデン校の制服のまま。そこを狙われて攫われそうになったが母たるヨル・フォージャーに救われたとみていいだろう。

 

 買い物袋に入っていたモノは全て散乱し、使えない状況になっていた。

 それを落胆するよりも先に娘の安否を心配する彼女は立派な母親に見えた。

 

 

「ははすごい。みんなやっつけた!」

 

「アーニャさん、大丈夫ですか? お怪我は?」

 

「だいじょぶ!」

 

 

 にっこり笑ったアーニャと、「よかったぁ~」ととてもほっとした様子のヨル。

 彼女たちに近づいた俺はある意味、黄昏を意識しながら微笑んだ。

 

 

「こんにちは、もしかして今年からイーデン校に通う方ですか?」

 

「だれ?」

 

「はい、そうですけど……あなたは?」

 

「失礼。俺も今年からそのイーデン校に通うんですよ。名前は……ダミーと呼んでほしいです」

 

「ダミーさん。はい、娘ともどもよろしくお願いしますね!」

 

 

 にっこり笑ったヨルとは違いアーニャはじっと俺の事を見つめていた。

 

 

 

 

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