ダミアン君は詰んでいる   作:ちゃっぱ

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あいまい

 

 

 

 

 

「坊っちゃま、最近はお一人で外へ出ることが多くなられましたが────」

 

「俺と同じ学校へ入学する子と友達になったから一緒に勉強してるだけだ。気にするな」

 

「そうですか」

 

「安心しろ。デズモンド家の名に恥じない行いをする」

 

 

 それ以上執事は何もいわず、俺は小さく息を吐いた。

 

 自分の勘違いであってほしい。きっと前世の記憶があるせいだろうな。

 

 ここは妙に息がしにくい。

 自分の行動一つがデズモンド家の名を汚すかもしれない。

 

 おそらく父は俺の行動を把握していることだろう。スパイと接触していることがバレれば死ぬのは俺だ。

 息子だとしても他人なのだから、きっと自分を信じてはくれない。

 

 少し生暖かい執事の目が気になるが、いつものように振る舞うだけだ。

 フォージャー家についても調べられてる可能性が高いが、きちんと一年前に結婚したと隠蔽されてるようだし、大丈夫なはず。

 

 

「いってきます」

 

「はい。行ってらっしゃいませ」

 

 

 

 歩いていくことすら最初は反対されていたが、今はもう慣れたもの。デズモンドの息子として国を歩いていくことも勉強のうちだ。つらつらと言い訳を口にし手にした一時の自由。

 まあ、背後にちゃんとSPがついているし、気にはしてないさ。

 

 フォージャー家での関わり合いについてはまだ検討中である。

 

 

 俺にとってロイド・フォージャーは敵か味方か判断がつきにくい存在。

 

 子供が泣かないような世界にしようという夢は立派である。しかしそれが敵の息子。それも攻略しなければならない対象である場合は────まあ、ある程度の懐柔をすれば少しは隙がうまれてくれるはず。たぶん。おそらく。

 

 

 

 

(こんなこと考えてる時点で敗けだよなぁ)

 

 

 

 

 ぶっちゃけロイド・フォージャーは結構優しいし甘い部分があるからと考えてるのはきっと、原作を知ってるせい。

 彼の甘さが敵に付け込まれて危ない目に遭う可能性もあるが、奴は優秀。自力で何とかしてしまうだろう。

 

 

 問題なのは、デズモンド家のことである。

 

 

 

「でしゅもんど?」

 

「デズモンド、な」

 

「うぃ」

 

 

 今俺たちがいるのは公園。イーデン校に入学することになったため予習とばかりに勉強していたが、嫌気がさしたアーニャが遊びに出ると言ったのだ。

 

 アーニャが攫われる心配をしていたのだろうか。一人で公園へ行くという件についていろいろ問題があったらしいが、何気なく父親に会うのは気が引けるとヨルさんに伝えてロイド・フォージャーがいない時間帯に俺がフォージャー家まで彼女を迎えに行くこと。家で勉強もするし、公園で遊ぶことも伝えた。

 

 アーニャにも頑張ってもらったんだ。

 母たるヨル・フォージャーがついてこなくてもいいということを伝えて、俺と2人っきりで会うと。

 父であるロイドには、公園で遊んでも問題がない『ダミー』と一緒に遊ぶと伝えてくれた。

 

 それも全部何十回とアーニャにやってほしいと説明したおかげ。またヨルさんにきちんと話したおかげか。

 俺も同じくアーニャと2人でいたいといった時に、ちょっと勘違いされた可能性があるけど。

 

 だから玄関先でヨルさんがニコニコと「アーニャさんをよろしくお願いします」と見送ってくれた。

 

 アーニャの頑張りのおかげ。俺も頑張った。

 

 

「アーニャ、えらい?」

 

「ああ、えらいぞ」

 

「ふふん」

 

 

 うん、それで正解だ。まだロイドさんに俺の事を言う必要はないからな。仲良くはするけどそのための準備がいる。俺はまだ死にたくないから。

 

 そう考えていると、アーニャがハッとした顔で俺を見つめてきた。たぶん心の中で『アーニャがいうとこいつがしぬ……?!』とか考えてるに違いない。

 それも読み取ったのかムッとした顔で「アーニャなにもかんがえてないもん」と言ってたけどな。はいはい、可愛い可愛い。

 

 

 イーデン校に行ったら俺の事は『次男』とでも呼べばいい。ダミーとは違うのだとヨルさんやロイドさんに伝えてくれ。頼んだぞ。

 

 

「じなん? ダミーじゃなくて?」

 

「ああ、今の俺はデズモンド家の責任を背負ってないただのダミー。イーデン校で会う俺は……アーニャの事を少し敵視してる次男として演技するつもりだから」

 

「なんで?」

 

「必要だからだよ。なんせ俺は……」

 

 

 この世界、今俺たちが生きている時代は平和とは無縁。血生臭いが、息子であっても裏切りが確定すれば殺される可能性は高い世界ということ。

 何か大きな事件があれば、それが東西どちらかに影響するものであればすぐ戦争へ突入するぐらいの危うさがあるんだ。

 

 黄昏がわざわざ家族を作り遠回しにドノバン・デズモンドの息子へ接触しようとしてくるぐらいには。

 

 ヨルさんの職場でもそうだが、他の場所。

 何処にでもスパイが紛れ込んでいるという噂があっていろんな人が検挙されている。何処にでも危険はあるし、逮捕される可能性はいっぱいあるからな。

 

 

「こわい」

 

「怖くない」

 

 

 震えたアーニャの背中を撫でて、大丈夫だと伝える。

 俺達はまだ子供だ。だからスパイとかそういう容疑にかけられることはない。

 お前は絶対大丈夫だ。なんせあのロイド・フォージャーがいるし、ヨルさんだってお前の事を娘のように大事にしてくれているだろ?

 

 

「……うぃ」

 

「でもな、俺は違うんだ」

 

「ダミーはちがう?」

 

「ああ、俺は……まあいわゆる、切り捨てられる可能性が高いからかな」

 

 

 子供であっても無価値は必要ない。

 イーデン校に入学する学力がなければ俺は多分デズモンド家の息子として扱われていないだろう。

 

 息子として見られているというよりは、デズモンド家の次男という形をとった人間の子供として扱われているだけ。愛情はほんの少しだけあるかもしれないが、最低限でしかない。

 

 フォージャー家が羨ましいよ。

 

 

「ダミーもアーニャといっしょになれ!」

 

「はっ?」

 

「ふぉーじゃーけにくるます!」

 

「あー……ああ。そういうことか?」

 

 

 両手を広げてにこやかに笑ったそいつに唖然とした。頬には先ほどまで食べてたアイスがついている。

 間抜けな姿だというのにアーニャが本気で言っているというのは伝わった。

 

 フォージャー家に入るというのはつまり、必要なら養子縁組も視野に入れるということ。

 ロイドさん達に頼んでフォージャー家の一員になれということ。

 

 

「うぃ!」

 

「お前なぁ……」

 

 

 なんだそれ、プロポーズか?

 

 

「ぷろ?」

 

「いや、なんでもない。とにかくそういうことは他の奴に言うなよ。あと次男としてお前の前に出てきた時もだ。俺の周りにいる奴らはその言動だけで許さない可能性があるからな」

 

「げんど……うぅ?」

 

「ったく、つまりアーニャは俺の心配しなくても良いってことだよ。お前は自分の勉強だけを不安に思ってればいい」

 

 

 俺が心配してるのはそうじゃないからな。

 

 自分の身は最低限守る。とりあえずロイドさんを攻略してどうやって暗躍していくのか決めなきゃな。

 

 

 







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