アリウスの王   作:大嶽丸

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火と灰に染まる日

 

 

 ──何が、起きた? 

 

 自身に圧し掛かっていた瓦礫を押し退け、彼女──“空崎ヒナ”は立ち上がる。

 

 頬を撫でる熱気、立ち昇る砂塵、そこかしこから聴こえてくる悲鳴など呻き声。ほんの一瞬、瞬きの間に地獄と化した周囲を見渡しながら思考を巡らせる。

 

 ダメージは軽微。しかし、他の風紀委員の面々はそうも行かずに殆ど全滅に近い状態だった。恐らくイオリ辺りは無事だとは思うが……。

 

(一体、どこからが罠だった?)

 

 真っ先に疑ったのはもうすぐ和平を結ぶはずだった相手。ティーパーティーか、それともシスターフッドか? いや、もしそうならこれは自爆テロだ。自陣の首脳部が揃った時点で古聖堂諸共爆破してしまうなど、正気の沙汰ではない。

 

 或いは派閥間の調整を失敗し、内部分裂が起きたか。ゲヘナはそれに巻き込まれて──。

 

「違う……ッ!」

 

 巡る思考を止め、吐き捨てた。

 

 今は、そんな事はどうでも良い。現在、一番気にしなければならないのは……。

 

「──先生ッ……!」

 

 惚けていた意識に喝を入れる。この規模の爆発に崩落、それにあの場に居たはずのヘイローを持たぬ彼が巻き込まれたらどうなるかは火を見るより明らかであり、血の気が失せた表情でヒナは捜索しようと駆け出す。

 

 ──が、次の瞬間。背中に衝撃が走った。

 

「ぐっ……!?」

 

「え、えへへ……お久しぶりですねぇ、空崎ヒナさん」

 

 何かが爆発したような()()と共にたたらを踏み、振り向けばそこに居たのは、白い外套を纏ったガスマスクの武装集団、そしてそれを率いる卑屈な笑みを浮かべる少女の姿には見覚えがある。

 

「あなた、は──」

 

「その節はどうも。えっと、まあその……“御礼参り”、しに来ました」

 

 アビドス自治区にて戦った正体不明の生徒二名。あの白フードのUNKNOWNが救助して回収したことから仲間だと目されていた内の一人だった。

 

 その姿を見てヒナは瞠目し、そして次に目に入ったのは彼女の腕章に刻まれた校章──。

 

「……アリウス、分校」

 

「やっぱり知っていましたか。実はトリニティで起きたテロを鎮圧するっていう建前、じゃなくて任務で馳せ参じまして……」

 

 まるで台本を読み上げるようにぼそぼそと少女はそう言い、片腕を上げれば他の少女達が一斉にヒナへと銃口を向ける。

 

「主犯と思われるゲヘナ。その頭目とされるあなたを無力化させていただきます……」

 

 そういうシナリオなのか。彼女達の登場により、ヒナはこの攻撃を行った勢力の確信を得た。

 

 トリニティと確執を持つアリウス分校、そしてその同盟相手となるゲヘナ。銃を向ける理由としては、十分だ。

 

 しかし、今はそんなことを考える余裕も、時間も存在していなかった。

 

「──先生が、危険なの」

 

「そ、それは不運なことで……」

 

 その瞳に確かな苛立ちと敵意を滲ませながら、彼女は一歩を踏み出す。

 

 少女達──アリウスに緊張が走る。対峙しているだけで呼吸が辛くなる、圧倒的なプレッシャーが彼女達を押し潰さんとした。

 

「退いて、今すぐ」

 

「え、えへへへへっ……やっぱり人生ってのは辛くて苦しいですねぇ。あなたも、私も……」

 

 瓦礫が、踏み砕かれる。

 

 ゲヘナ最強。それから明確な怒りと敵意を向けられ、そこらの不良ならば竦み上がって動くことすら儘ならなくなるであろう重圧に呑まれ、しかしアリウス生達は一歩も退くことはない。

 

 彼女達は兵士であり、そして何も勝算が無く、そこに立っている訳ではないのだから。

 

 目指すは、格上狩り(ジャイアントキリング)

 

「退けと言っている──ッ!!」

 

「──“神経断裂弾”、惜しみ無く撃っちゃってください」

 

 咆哮にも似た叫びと共に、銃声が鳴り響く。

 

 それに呼応するかのように、他の場所からも銃声と爆発音が次々と響き渡ってくる。

 

 そこは既に、懐かしき戦場であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 上空に浮かぶ飛行船。

 

 燃え盛る古聖堂、そしてその下で巻き起こる争乱を見下ろしながら、羽沼マコトは歓喜していた。

 

「キキキッ! やった、やったぞ!」

 

「……マコト先輩、一体何を?」

 

 彼女の背後にはもふもふした赤髪を腰まで伸ばした小柄な少女……万魔殿の戦車長、“棗イロハ”が普段より強張った面持ちで困惑しながら佇んでいた。

 

 目下には燃え盛る古聖堂、それから混乱し逃げ惑う生徒達の姿。それらを眺める自らの上司に戸惑いの色は無く、それどころか無邪気にはしゃいでいるのだから当然だろう。

 

「これで邪魔者は全て消える、ティーパーティーも、あの目障りだったヒナも。連中ではなくこの私を選ぶのは当然の理であるが、それでも感謝しよう。我が片割れよ」

 

「まさか、先輩」

 

「キキッ……ああ、そのまさかだよ」

 

 ここまで話を聞けば馬鹿でも分かる。戦慄と共に漏れ出た彼女の声にマコトは満面の笑みを浮かべ、得意気に頷いてみせた。

 

「これは私と、そして盟友たるアリウスと共に画策したこと。トリニティを消し、キヴォトスを征服する、大いなる計画の為の第一歩さ」

 

「……アリウス。あのアリウスと、ですか?」

 

 その名に聞き覚えはある。確か、かつてトリニティ統合に反対し、迫害された末に追放された学園。現存しているかも怪しかったそれにマコトが接触し、それだけに飽き足らず手を組んだと。

 

「いつの間に……つまり先輩は、最初からエデン条約を結ぶ気が無かったと?」

 

「当然だろう。そんな張りぼての条約に、これっぽっちも興味など無いとも」

 

 イロハの問いに、マコトははっきりと言い切る。

 

「私の関心はずっと、邪魔者共を片付けることだけにあった。いつまで経っても姿を現さないティーパーティーの連中を誘き出す為に、あくまで条約へ同意するフリをしていただけだ」

 

 トリニティの性質は、保守派である。

 

 ゲヘナが革新、或いは自由を校風とするのならば、トリニティは規律と戒律を重視する学園。外部への露出は少なく、仮にあったとしてもそれは綺麗に形を整えられた一側面でしかない。それはティーパーティーも同様であり、彼女達が外部に顔を出す事は滅多になかった。

 

 しかし、エデン条約という大きな舞台であれば別だ。故に、彼女はこのような大掛かりで、格式張った条約を結ぶことに賛同してみせた。そこに目の上のたん瘤である風紀委員会も組み込み、一網打尽を狙ったのだ。

 

「アリウスがトリニティを恨んでいなかったのは想定外だったが……クーデターが失敗したことにより方針転換したようだ。聖園ミカも実に憐れなものだ、流石に同情する」

 

「クーデター……? 聖園ミカ……?」

 

「ああ、元々アリウスはトリニティと融和するつもりだったが、上手く行かなかった。ならばと親アリウスの聖園ミカをリーダーにする為にクーデターを起こしたが……どうやらそれも失敗したようだ」

 

 初耳の情報にイロハは驚く。トリニティで何やら騒ぎがあったのは何となく察していたが、まさかクーデターとは。

 

 それに、アリウスがトリニティを恨んでいない、というのも衝撃的である。てっきり復讐の為にマコトが利用されているかと思ったが、こうなるとイロハの予想の大部分が外れているような気がしてきた。

 

「ということで、我々(ゲヘナ)にお鉢が回ってきた訳だ。前々から練っていた襲撃計画が頓挫すること無く実行出来て何よりだよ」

 

「……トリニティは恨んでいなくても、ゲヘナは違う。そういった線は無いのですか?」

 

「ん? ああ、心配することはないさ。“アリウスの王”はそんなくだらぬ感情には縛られん。我々と組んだのは単なる利害の一致と、キキッ……そうさな、親愛、或いは“友情”、というヤツかな?」

 

「はぁ……?」

 

「そう、奴はこのマコト様を()()()()()()。未だに“答え”を出せぬ私を……ならばいつか“答え”を識るまでは、お前の覇道に殉じてやるとしようではないか」

 

 訝しむイロハ。気にも留めず、まるで酔いしれるようにマコトは言葉を続ける。

 

「イロハよ。アリウスの、我が片割れの“力”は凄まじいぞ? しかも今回の襲撃で“更なる力”を獲るらしい。キキッ、キヒャヒャヒャ……! 空崎ヒナも、トリニティも、連邦生徒会だって脅威にならない! 我らゲヘナこそが最強の学園となるのだ!」

 

 マコトは嬉しかった。ただ、ひたすらに嬉しかった。

 

 忌々しきトリニティなどではなく、自分を選んでくれたことに。それが至極当然の理であり、決して揺るがぬものであると理解しながらも、不安が微塵も無かったと言えば嘘になり、己が抱くこの思いは、相手もまた同じであったという事実に心が踊って仕方が無い。

 

 もうすぐ目障りだった空崎ヒナは消える。他ならぬ(マコト)(ニト)により。

 

「我らこそが真なる三位一体(トリニティ)! ここに邪悪の樹を打ち立て、楽園を征服せん!」

 

「……三位一体なら、もう一人必要なのでは?」

 

「む? 確かにそうだな……“力”さえあれば別に構わんのだが、“知恵”も兼ね備えれば最強を越えて無敵だ! となれば、トリニティを制圧した後に探すとしよう。恐らくミレニアム辺りに居そうだが──」

 

「知恵、ですか……マコト先輩には一番必要なものですし、是非とも見つけませんとね」

 

「……それは、どういう意味で──」

 

 流石に怒るぞ、とマコトがどこか呆れた様子のイロハに口にしようとしたその時、衝撃と共に飛行船の中が揺れる。

 

「む、どうした?」

 

「こ、攻撃を受けています! トリニティの対空砲と思われ──」

 

「何? チッ……しぶとい連中だ。よし、この飛行船の武装で返り討ちにしてしまえ」

 

 どうやらまだ対空武装が残っていたようだ。残存戦力が飛行船という目立つ標的へと攻撃を開始した。

 

 とはいえ時間の問題だろう。地上ではアリウスが動いているし、この飛行船は特殊合金の装甲に覆われ、生半可な攻撃では落とされない。

 

 故に、マコトは些事として片付け──。

 

 ドゴォン!! 

 

「ッ、今度は何だっ!?」

 

「べ、別方向から攻撃。これは……傭兵です。恐らく警護に雇った“Empty sky”の……なんだこいつっ!? 馬鹿デカい大砲みたいなの担いでるぞっ!?」

 

「エンプティの傭兵、だと……? それはこちらが雇った傭兵のはずだが──」

 

 ブラック・マーケットを本拠地に著しく業績を伸ばしている傭兵支援会社。アリウスから()()()()()こともあり、表向きは警護要員としてマコトが強権を駆使して動員した人員であったが、何らかの手違いがあったのだろうか。

 

 しかし、そうなると状況はまずい。この飛行船ほど狙いやすい的は存在しないのだから。

 

「報告! 装甲の一部に穴が空きました! 見た目通りとんでもない武装のようで──うわぁっ!?」

 

「あっちにも謎の狙撃手が……あいつは、便利屋68の陸八魔アルっ!? まさかこのタイミングで我々に復讐を──!?」

 

「口座を凍結したのは風紀委員だろ!」

 

「損傷率20%! このまま攻撃を受け続ければまずいです!」

 

「…………何ィッ!?」

 

「ハァ……何となく、そんな予感はしました」

 

 先程までの余裕は何処へやら。目に見えて動揺するマコトを尻目に、イロハは溜め息を吐く。この先輩が調子に乗っている時は、大抵はろくなことにならないと経験則から理解していたが故に。

 

「ねぇねぇ、何の騒ぎなのー?」

 

「うーん……なんかよく分かりませんが、ここが墜落しそうな雰囲気してますね」

 

 一方、がやがやと騒ぎ始めるマコト達と遠目から眺めながら、高校生どころか中学生にも見えぬ金髪の幼子と一人の万魔殿の構成員が会話していた。

 

「えー? それって危なくないの?」

 

「大丈夫ですよ。脱出用のポッドやらパラシュートやらが完備されてますんで。イブキ様」

 

「ふうん……そうなんだ。でもちょっと怖いな」

 

 イブキ様、と呼ばれたその幼子は不安そうな表情を浮かべる。対して構成員の女は安心させるように微笑みを返した。

 

「なら、先に装備しておきます? マコト様らは頑丈ですけどイブキ様に何かあったらと考えると恐ろしいですからね……」

 

 そう言いながら幼子の手を引く。

 

「それに、脱出の際はスカイダイビングみたいで楽しいかもしれませんよ。近くには湖もありますから、もしものことがあっても死にはしないと思います」

 

「ほんと? なら、ちょっとワクワクしてきたかも。その時は“キョムちゃん”も一緒に行こうねー」

 

「ええ……勿論。お望みであれば」

 

 それから数刻後。対空砲と傭兵らによる袋叩きを前に、飛行船は奮闘も虚しく墜落するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

「……悪いな、マコト」

 

 猛攻撃を受ける飛行船を瓦礫の山の上から見上げながら、ニトはそう笑いかけた。

 

「トリニティに消えてもらっては困るのでな。此度は君の“夢”は達成出来ないが……まあなんだ、決して悪いようにはならないとも」

 

 マコトがエデン条約に賛同したフリをしたように、ニトもまた彼女の計画に乗ったフリをした。

 

 騙した形になるので申し訳無くは思う。しかし、どうせ今回の件は“有耶無耶”になるのだ。であれば、ゲヘナ側もトリニティ側も被害は出来る限り最小限に留めた方が望ましい。

 

「……さて、随分と()()()()光景だ」

 

 灰塵が舞い、漂う硝煙の匂いが鼻につく。瓦礫の山と燃え盛る炎に包まれた世界は正しく煉獄のようであり、それは七年前まで散々見てきたものだった。

 

 かつての内紛の再現、懐かしく心揺さぶる戦場の匂い。ニトにとっては見るに堪えぬものであると同時に、その身に燻り続ける闘争本能を刺激させるエッセンスでもあり、つくづく己が内にある相反する(さが)に嘆息する。

 

「百合園セイア。これがお前が視た光景かね?」

 

 夢の中で、あの少女は言った。

 

 エデン条約の調印式にて、ベアトリーチェの策略により会場である古聖堂は破壊され、火の海に包まれると。

 

 それは変えるべき未来だ。けれども運命に抗えば所謂()()()とやらが働き、本来の道筋へと戻らんとし、更にはこの部分を変えたとして最終的な結末には影響しないのだから徒労に等しい。

 

「観測した未来を変えるのは至難の業とお前は言った。そこで思い付いた、ならば“実行犯”を変えてしまえば良いのではないかと……この()()()()を再現して」

 

 調印式が破壊され、古聖堂が燃える。その結果は変わらず、実行したのがベアトリーチェの用意した巡航ミサイルではなく、アリウスによる内部工作と爆破に変わったに過ぎない。

 

 もたらされた結果こそ似たようなものであるが、多少は被害はマシになったであろう。本当に巡航ミサイルなんてものが撃ち込まれていたのであれば、キヴォトスの生徒でも重傷は免れなかったに違いないのだから──。

 

「さて、どうする? ベアトリーチェ。もう一度ミサイルでも撃ってみるか? 既に貴様の()()()()()()()。ここでの目的を達成した後、直々に始末してやるとしよう」

 

 先刻の巡航ミサイルの発射。遠隔に行われたそれであるが、僅かに漏れ出た気配と悪意を、ニトは見逃さない。こうしている間も追跡を続けており、如何なる領域に逃げ隠れしようとも捕らえる所存だった。

 

 少なくともここでベアトリーチェとの長きに渡る因縁に終止符を打つのは確定事項。それは百合園セイアが語った未来の内容から予め知っていたことであり、だからこそ、ニトは彼女の“共犯者”となって此処に立つ。

 

「……おお。どうやら秤とマエストロは成功したようだ」

 

 地下から、膨大な“力”の奔流を感じる。

 

 カタコンベにて発見した“太古の教義”、及び“ヒエロニムス”と酷似したもの。この場に居る多くの生徒達の“神秘”に呼応し、活性化した残滓が渦巻く。その有り様は古き守護者達(ユスティナ)の復活を意味している。

 

 先の攻撃により有耶無耶になった状態かつ末裔の血、ロイヤル・ブラッドの契りを以てして、“戒律”はかつての第一回公会議の再現──エデン条約機構にてトリニティに代わり調印した主が、アリウス分校だと無事判定してくれたようだ。

 

「では、オレの方も始めるとしよう」

 

 その場でニトは空間をなぞるように手を翳し、静かに目を閉じる。すると程無くして、この場を覆い尽くさんとする荘厳なる“力”のうねりに対して彼女の“神秘”が介入し、混ざり合う。

 

 ──複製(ミメシス)

 

 ゲマトリアの秘儀。マエストロのやり方とは差異があるが、原理は同じ。ただ自らに適したように少々アレンジを加えた。

 

 そうして、かつて人々に畏れられ、恐れられた“戒律”の守護者。ユスティナ聖徒会──その“威厳”が形を成し、体を成してここに具現化する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

「あれは──?」

 

 唐突に、何の予兆も無く。

 

 ──古聖堂の爆発、それに伴い混乱し、争い、或いは逃げ惑う者達の前へと、“ソレ”は出現した。

 

「ッ……そんな、まさかあの姿は……!?」

 

 炎が照らし、その姿を映し出す。

 

 シスターフッド・若葉ヒナタはその特徴的な風貌を目の当たりにして息を呑んだ。

 

 脳裏に過るのは古書の内容、いつか拝読したシスターフッドの歴史。

 

 古典とすら呼べる、遥か昔の出来事だった。

 

「シスターヒナタ?」

 

「あの装い、本で見た事があります……!」

 

 黒に統一された、特殊礼装。修道服だったりレオタードのような衣装だったりと大まかな服装には個人ごとに差異はあるものの、ゆらゆらと靡く引き裂かれた長いウィンプルと、顔を覆うガスマスクは共通していた。

 

 そして、ひび割れ、点滅するヘイロー。それに加えて青白く光る肉体が彼女達がただの人間ではないことを明白にしていて、冷たく無機質にこちらを見据えている。

 

 宛ら亡霊の如く。

 

 そう、正しく彼女達はヒナタ達からしてみれば亡霊のような、そうとしか思えぬ存在だった。

 

 かつて、“戒律”を破る者に懲罰を、その目的でのみ組織された戦闘集団。暴力を躊躇わず、“戒律”とその守護を絶対とした者達。

 

 シスターフッドの前身。今は失われたトリニティの暗部であり──。

 

「“ユスティナ聖徒会”……! 数百年前に消えた戒律の守護者……それが、どうしてここにっ!?」

 

 その問いに、答える者は無し。

 

 過去の亡霊は、何も思うことも感じることも無く、ただ眼前に蔓延る“敵”へと銃口を向けた。

 

 続々と影のように顕れていく。その数は数十、数百にも達し、尋常ではない数の聖徒達が、古聖堂跡を埋め尽くさんとしている。

 

 ──その目的はただ一つ。

 

 遥か時を越えて、此度はかつて追放したアリウスと、不倶戴天の敵であったはずのゲヘナも交えて再び結ばれた“第一回公会議(ETO)”。それを阻む者、それが敵と見なした者、即ち“戒律”を破らんと、穢さんとする者を排除し……否。

 

 彼女達は“威厳”が具現化したものであり、また“複製”された模造品に過ぎず、故にそこに意思は無く、感情は無く、空っぽの人形に等しい。

 

──アリウスの為に

 

 ならば在り方を歪められ、()()()()()()のは、必然であった。

 

 さあ、いざ往かん。




知恵
 三位一体を補うもの。本当に知恵かどうかは不明だが、ニトがトリニティ(アリウス)に居たのだから残りは多分ミレニアムとかその辺に居るのだろうとマコトは何となくそう思った。
 そもそも三位一体ってのもその場のノリで言った戯言じゃ(ry

キョムちゃん
 一般万魔殿の構成員。モブに紛れている。
 たとえ全てが虚しくとも丹花イブキは虚しくないと信じて可愛がっている。

百合園セイアとの共犯
 実は最初の夢の中での邂逅で結構ネタバレされてた。その後に色々と確認して予知がほぼ的中していると確信したからこそ、ニトは彼女の計画に乗った。
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