アリウスの王   作:大嶽丸

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学名:ミカ・ミカ・ミカ

 

 

 聖園ミカは驚いていた。彼女の想像よりもずっと、アリウス自治区は豊かで繁栄していたのだから。

 

 カタコンベの奥地。堅牢なシェルターに覆われたドームの中は地下にも拘わらず昼間のように光が行き届いており、入口周辺は要塞のようであったが、その先の街並みは古くも伝統を感じさせる建築物が多く、まるで観光名所のような景観の美しさだった。

 

 大通りを歩く生徒達。地上では当たり前のように居る獣人やロボットは姿は見えなかったが、看板を掲げた飲食店らしき建物も散見し、そこはトリニティや他の自治区と然したる違いは無いどころか下手な自治区よりも発展しているとすら思う。

 

「ねぇ、サオリちゃん」

 

「……何だ?」

 

「あっちの建物は何なの? ビニールハウスとかが沢山あるけど」

 

 ふと、疑問に思い、前方で自分を案内する、最初に接触したアリウスの生徒──錠前サオリと名乗った少女(ミカがしつこく名前を聞いたため)へと問いかける。

 

 黒いキャップ帽を被り、顔の半分を覆うマスクを装着し、その顔の防御に対して白いコートの内側は腹部が露出したノースリーブのインナーが特徴的な、スレンダーな彼女のその風貌や雰囲気は、如何にも精強な兵士といった印象であり、それがアリウス自治区へのギャップに拍車を掛けていた。

 

 最初こそ銃を向けられたが、和解したいという思いを伝え、どうにか説得して自分の一存では決められないと彼女達のトップの下へと連れてかれているのが今の状況であった。

 

「……そこには農園がある。主にレタスや小麦、それからトマトなんかを栽培している」

 

「え!? 農業してるの? 地下なのに?」

 

 またもや驚かされる。農業といえば、日光が必要不可欠なイメージがあり、人工的な光を使えば可能とはいえわざわざ地下深くにあるこのアリウス自治区で行っているとは思わなかった。

 

 しかし、考えてみれば当然だ。トリニティはおろか連邦生徒会の手すら及んでいないこの自治区で生きていくには自給自足するしかないのだから。

 

「ああ。我々アリウスは食糧難を打開する為に閣下主導の下、農耕を推進した。その甲斐あって今は自治区の20%近くが農園や水田だ。他にも果樹園もあって特に林檎が美味しい」

 

「食糧難って……そんなに酷かったの?」

 

「……そうだな。皆が餓え、奪い合っていた。今思い返せば、あそこは地獄と言う他無く、そして私達はそれが日常だと疑いもしていなかった」

 

「……ごめんなさい。私達(トリニティ)のせいで」

 

 ミカは俯く。実体験のように語るサオリは自分と同年代のように見える。ならばこの豊かな自治区とは裏腹に、彼女が地獄とまで言った過酷な環境に身を置いていたのはごく最近のことなのだろう。

 

「………………」

 

 その謝罪の言葉に、サオリの眼が一瞬揺らぐ。

 

「……よせ。たとえ原因がお前達トリニティの迫害だとして、お前は当事者ではない。それに、無知なことを選んで貧することになったのは他ならぬ私達であり、単なる自業自得だ」

 

「! サオリちゃん……」

 

「あくまで私の意見だ。お前が言ったように、トリニティの事を恨んでいる者達も中には居る」

 

 当事者ではないからこそ、理不尽さを感じる場合もある。自分達が地下へと籠っている中、ぬくぬくと地上で生活しているトリニティへ怒りや憎悪を抱くのは何ら不思議なことではない。

 

 かつての内乱の発端もまたトリニティへの復讐心や不信感が絡んでいたのだから。今は統一され、環境が改善されたのもあってそういった過激派は大人しくしているが、その憎しみの炎は今も尚燻り続けていた。

 

「うん……でも、少し安心した」

 

「……何?」

 

「そんな人ばかりじゃないってことだよね? サオリちゃんみたいに。だから安心したの☆」

 

 ミカは笑う。トリニティとアリウスの和解。それは互いの憎悪と不信感が強く、幾つもの誤解が積み重なっていて難しい案件なのは理解していた。

 

 だからこそ、サオリのような人間がアリウスに存在するという事実によって希望が見えてくる。

 

「……そうか」

 

 サオリの頭の中には未だに疑念が残っているが、それでも今までの語らいの限りでは、この聖園ミカというトリニティの生徒は善性であると言う他無い。

 

 頻繁に外出しているヒヨリとは違い、サオリはあまり地上に出たことはなかった。単純に自治区の中だけで満足しているし、最近“スクワッド”という少数精鋭の特殊部隊の隊長を任され、その立場に相応しくあらんとする為にうつつを抜かす訳には行かないと思っているからだ。

 

 ──地上には悪意が蔓延っている。

 

 誰かから聞いた話。それはベアトリーチェという外からやって来た“大人”が証明しており、現生徒会長が居なければアリウスは為す術無く搾取されていたことだろう。

 

 けれど、この自治区のように悪意だけではないこともまた教えられた。少なくともサオリは自身の後ろで笑う彼女がそうであってほしいと思った。

 

「~♪」

 

 その時である。

 

(……うん?)

 

 どこからともなく、歌が聴こえた。

 

 複数人による合唱。視線を向ければそこは聖堂のような建物。もしかしてミサでも行われているのだろうか。

 

(今の歌は──)

 

「さて、着いたぞ。ここがアリウス分校だ」

 

 が、サオリのその言葉によって意識が移り、ミカは前方へと視線を向ける。

 

「わぁ、立派な建物だね」

 

 足を止めた先に聳え立つ建造物。それは歴史的な大聖堂を思わせるような景観をしており、トリニティの校舎によく似ている印象をミカは受けた。

 

「錠前殿。その方が例の?」

 

「ああ。閣下の下へ連れて行く」

 

「ふむ……了解しました。くれぐれもご用心を」

 

「分かっている」

 

 ガチャリ、と自動で門が開き、出迎えたのは2mはありそうな鉄製の棒を持った長身の女性一人。彼女はサオリと少し会話し、ミカへ観察するような視線を送りつつ、二人を中へと通す。

 

「ねぇ、サオリちゃん。あの子は門番なの?」

 

「む? ああ、それがどうかしたか?」

 

「見たところ一人しか居ないようだけど……」

 

「そうだな。門衛は通常三人体勢だが、あの人は強いから単独で門衛を担うことを認められている。何でも本人の要望らしいが、詳しいことは知らない」

 

「ふうん……そうなんだ」

 

 他の生徒とはどこか違う雰囲気を感じたので尋ねれば、そんな返答が返ってくる。学校の門衛を任される兵士ということはそれなりの実力者。つまりあの少女はその三人分を優に越える強さを有しているということだろうか。

 

 そんなことを考えながらミカは校舎の中へと入っていく。

 

「あの女が例のトリニティか」 「あれ? 襲撃してきたんじゃ?」 「サッちゃんが捕まえたの?」 「ほう……かなり強いな、あいつ」 「………………」 「……何でサオリ姉さんが案内してるの?」 「えへへ……トリニティに見つかってしまうなんてやっぱり人生辛いですね……」 「悲しいなぁ」 「何が目的なのやら……」

 

 廊下を歩いているとヒソヒソと行き交う生徒達が話しているのが聴こえてくる。当たり前であるが、かなり注目を集めているようだ。

 

 そんな奇異や好奇、警戒と様々な感情で満ちた視線がズキズキと突き刺さる。これにミカは居心地の悪さを感じつつも、校舎の内装を見回す。

 

(中はトリニティってよりもミレニアムに近い感じかな。外側はそのままに改装したみたい)

 

 建物の外観と比べて室内はミカの見たことのない複雑な機械や装置が至る所にあり、近未来的なイメージを抱かせる。

 

 他の建物もそうなのかは分からないが、やはりアリウスの文明や技術力はトリニティ、延いてはキヴォトスと然して変わらないのだろう。

 

「……この先に、閣下が居られる」

 

 そして、漸く目的地に辿り着いた。

 

 生徒会長室と書かれたプレートがでかでかと掲げられている大扉。そこにサオリ達から閣下などと呼ばれているこのアリウス分校のトップが居る。

 

 一体どんな人物なのだろうか。サオリのように話が分かる人物だと良いなと内心ミカは祈りながら開かれた扉の奥へと進む。

 

(あの子が……)

 

 生徒会長室へと足を踏み入れ、すぐにミカはその人物を視界に捉え、対面する。

 

 真っ先に目を引いたのは妖しげに輝いている真っ赤な瞳。その次に艶のある黒髪とそれとは対照的な透き通った白い肌……ミカから見ても端正な顔立ちをしており、陶器の人形のような幻想的な雰囲気を醸し出している少女が椅子に座って待ち構えていた。

 

 傍らに立つ眼鏡を掛けた白髪の女性は秘書、或いは付き人だろうか。心なしかこちらを見る眼が鋭いように感じた。

 

「あなたがアリウスのトップ?」

 

 その問い掛けに少女はすぐには答えず、僅かに開いた瞳孔でこちらを見据える。品定めでもしているのか、黙りこくったその姿はまるで本当に人形ではないかと錯覚してしまいそうだった。

 

 程無くして、少女は口を開く。

 

「──ああ。“失楽ニト”。このアリウス分校の生徒会長であり、自治区の長を務める者だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

「──私は、あなた達アリウスと和解したい」

 

 互いの自己紹介を終え、改めてミカは己がアリウス自治区へと足を踏み入れた目的を告げる。

 

「ふむ……それは、ティーパーティーの総意と見て良いのかね?」

 

「ううん。これは私の独断。セイアちゃん……今のホストには反対されてる」

 

「……やはりか」

 

「でも必ず説得してみせるから。その為にも、アリウスの合意が欲しいの」

 

「……まずは具体案を聞こう。現状では楽観的と言わざるを得ない」

 

 単身で乗り込んできた時点で薄々察してはいた。とはいえ仮にも最大級の分派の一つを束ねる者。単なる考え無しではないと思いたい。

 

 故に、ニトは問う。数百年続く決裂を、どうやって修復するつもりなのかを。

 

「アリウスの生徒をトリニティに転校させる……なんてのはどうかな?」

 

「……ほう?」

 

「もちろん内緒で。私が後見人になれば何とかなる。それで定期的に連絡を取って、そしたらトリニティがどんな所なのか、ここからでも知れるでしょ? それで、アリウスの子が何の問題もなく、私達の学園で仲良く過ごしながら幸せになれるということを証明するの」

 

 謂わば、“和解の象徴”にするということ。

 

 その提案はあまりにも荒唐無稽だと、その場で話を聞いていたサオリと副会長は思った。

 

「あ、でもそれはアリウスに余裕が無いと思って考えた案で、見たところ大丈夫そうだし、もっと大っぴらに交流しても──」

 

「──悪くないな」

 

「え?」

 

 ミカもまたその雰囲気を察したのか慌てて副案を述べようとすれば、意外にもニトは好意的な反応を示す。

 

 つまりは既成事実を作るということ。前例さえ作ってしまえば頭ごなしに反対することは出来ない。一枚岩ではないトリニティであるからこそ、アリウスとの和解に賛同する声も出てくるだろう。

 

 楽観的と言われてしまえばそれまでだが、長期的なプランとしては充分に可能性があるとニトは判断した。

 

「ほ、ほんと……? じゃあ──」

 

「だが、上手く行くとも限らない。かつて、融和を拒んだアリウスとそれを排斥したトリニティ……数百年続く遺恨だ。オレと君は既に過去だと水に流せるとしても、当然そうでない者も必ず存在する。互いが納得行く結果をもたらすのは、困難な道のりだろう」

 

 ぱぁ、とミカは顔を輝かせる。これに対してニトは首を縦に振ることはせず、淡々と言い放つ。

 

 厳しい指摘にミカは一転して表情を曇らせる。

 

「うん……そうだよね。積み重なった誤解も相当だろうし、簡単じゃないってのは分かってるよ。でもさ……仲良くするって、そんなに難しいのかな?」

 

「……何?」

 

「お互いに少しずつ歩み寄れば、いつかは叶うものじゃない? 私はそう思うの……だから、少しずつ努力しようと思って、ここに来たの」

 

 ニトは僅かに顔をしかめる。それはどこまでも夢想的で平和ボケした意見。友情と政治はまた別であり、様々な思惑が渦巻いているということは、少なくともティーパーティーという自治区を統治する立場の一員である以上、理解しているはずだ。

 

 或いはアリウスはあくまでも同じトリニティという括りで認識しており、外交というつもりがないのかもしれない。いずれにせよ、あのトリニティで最大級の派閥を束ねる者にしては、些か思慮深さに欠ける。

 

 けれど、それでも彼女が本気だということは理解する。一切の打算も、政治的な利益も無く、純粋に自分達と和解したいのだと。

 

(めっちゃ良い奴じゃん)

 

 率直にそう思った。あのトリニティだから内心どのような事を企んでいるのかとかなり警戒していたというのに。

 

 調査した限りでは、トリニティ総合学園は粗暴で自由気ままな問題児が多いゲヘナと比べて、一見すると優雅かつ温和なお嬢様学校といった印象を受けるが、その実態は陰謀策謀が渦巻いており、イジメは勿論のこと派閥の内外を問わず互いの足を掬い合うような騙し合いが横行していると非常に陰湿でドロドロとした人間関係が形成されている。

 

 無論、そういった事とは無縁な生徒が大多数ではあるが、ミカはそんなトリニティの派閥のトップとは思えない程に謀には向いてないように思えた。

 

 しかし、少なくとも家柄やカリスマ、或いは()()といった、蹴落とし合いが日常のトリニティで現在までその地位に君臨出来るだけの要素を持ち合わせているはず。それともこちらに見せているのはあくまで一面に過ぎないのか。

 

 いずれにせよ、ニトはこのトリニティのお嬢様に対して利用価値を見出した。ミカには悪いが、アリウスとしては政治としてトリニティと向き合うつもりだった。

 

「……良いだろう。君の意志は、充分に伝わった」

 

 故に、ニトは決断する。

 

「!? そ、それってつまり……!」

 

「ああ。その案を呑む。我らアリウスはトリニティとの和解について前向きに検討しよう」

 

「やった! ありがとうニトちゃん!」

 

 思わず飛び上がりそうになるくらい歓喜するミカ。その姿をニトは微笑ましげに見据える。

 

 ──やはり()()()()

 

「恐れながら閣下、それは……」

 

 すると副会長が眉をひそめ、意見しようとする。その言葉をニトは手を差し出して遮った。

 

「分かっている。まだ検討の段階であるし、たとえこの案が上手く行ってもすぐに和解ということにはならないだろう」

 

「え?」

 

「少々込み入った事情があってな。糠喜びさせてしまって申し訳無いが、我らの存在が連邦生徒会や他の学校に知られる訳には行かないのだ」

 

「そ、それは……何で?」

 

 ミカは困惑の表情を浮かべる。先程と言っていることが全く違うではないかと。

 

「──我らアリウスを狙っている者が居る」

 

「!!」

 

 そして、その返答にミカは驚愕した。

 

「ベアトリーチェと名乗った、かつてこのアリウスで繰り広げられていた内戦の際に我らに取り入り利用……否、道具として搾取しようとした異形の女。何とか撃退したが、そいつは今もこのアリウスを支配せんと機を窺っている」

 

 だからこそ、アリウスはその存在を明るみにせず、頑なに闇に隠れ続けている。

 

「我らの存在が表沙汰になれば多少なりとも混乱が生じる。そうなればあの売女は嬉々としてその隙を突き、この地を蹂躙せんとするに違いない。故に、万全を期するか、奴を排除するまでは慎重に慎重を重ねて動くのがこちらの方針だ」

 

「……そんなに脅威なの?」

 

「ああ。奴は外から来た“大人”であり、未知なる神秘や技術を扱う。ヘイローを破壊する手段を有し、一歩間違えればアリウス分校は奴に支配され、オレは勿論多くの生徒が殺されていた」

 

 断言するニト。想像するだけでゾッとし、反吐が出る。あの女は自らに歯向かう者や気に食わない者を排除することに何の躊躇も無く、むしろ見せしめとして嬉々として粛清し、恐怖によってアリウスを支配したことだろう。

 

 一方、ミカは内戦をしていたということ自体が衝撃的だというのに、そのような恐ろしい存在がキヴォトスに潜んでいる事実に戦慄する他無かった。

 

「その……ベアトリーチェ、だっけ? どんな奴なの? ティーパーティーとして、知っておきたい」

 

 故に、尋ねる。本当にそんな恐ろしい存在がこのキヴォトスに潜んでいるのなら、トリニティにとっても脅威になるのは明らかなのだから。

 

「そうだな、髪は黒、血のように赤い肌、そして顔の上半分を覆い尽くすように無数の眼がある。それから背中が大きく開いた白いドレスを着ている」

 

「え……それ人間? バケモノじゃん」

 

「まったくだ。天国の案内人の名を名乗りながら、その風貌は地獄の悪魔。加えて、性格はそれ以上に醜悪極まりない」

 

 ニトが述べた特徴にミカは耳を疑う。異形の女とは言っていたが、聞く限りではあまりにも人間離れし過ぎている。

 

 それとも、キヴォトスの外ではそのような容姿は差程珍しくないのだろうか。流石にそうとは思いたくないが……。

 

「まあ、以上の理由から今すぐに大々的に和解するということはなるべく避けたい。そういう意味では、君の提案した方法は長期的なプランになるだろうし、こちらとしても都合が良いという訳だ」

 

 それに、仮に失敗したとしてもアリウスにダメージは少ない。和解の象徴として送り込まれた生徒がトリニティに馴染めなければそれまでということ。トリニティ側が受け入れなかった場合でも同じであり、アリウスの存在が知られるにしてもトリニティ内だけに留められる。

 

 最悪トリニティと事を構えることになったとしても、その間にいくらでも()()()は可能であり、その気になれば血を流すことなく実権を握ることも不可能ではないだろう。

 

「そっか……残念だけど、地道にやってくしかないね」

 

 話を聞き、ミカは納得する。

 

「期待に添えなくてすまないな」

 

「ううん。そんな事情があるなら仕方無いし、和解に合意してくれただけでも嬉しいよ」

 

 すぐにでも和解したいという思いはある。ミカは現在三年生……少なくとも卒業までには和解を成し遂げたかったのだが。

 

「正式な決定はまた後日にする。何せ数百年叶わなかったトリニティとの和解だ。少なからず反対派も出るだろうし、相違が無いよう擦り合わせる」

 

「あー、それもそっか」

 

 独裁者であるが故に、最終的な決定権は全てニトにあるとはいえ今回の案件は独断で押し通すべきではないと判断した。

 

 トリニティを恨む者は多く、そうでない者の中にもこのタイミングでの和解には疑問を呈する者が出てくるかもしれない。そうした者達に如何にメリットを提示し、納得させる必要があった。

 

「分かった、お願いねニトちゃん☆」

 

「ああ。これからよろしく頼む。聖園ミカ」

 

 そうして、二人は握手する。

 

 長年の遺恨を飛び越え、アリウスとトリニティが手を結んだ瞬間だった。





アリウスとトリニティに関してはニトちゃん的にはぶっちゃけどっちもどっちという認識。自分達の立場が危ういにも拘わらず統合に断固として反対したアリウスはアホだし、地下に追いやるまで迫害するトリニティもやべーなって感じ
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