練習、本番共に折れる未来が見えないよこの子...
頑張って折らないと(義務感)
バクシンオーとの契約後真っ先に行ったのはアイシングであった、
ふと思い出してレースの後に足に対して何かケアをしたかと聞いたら
「特に何もしてません!」
との事だったので契約書類は後日でとりあえず足へのケアと簡単なマッサージで明日のトレーニングに支障をきたさないよう最低限の事はこなした。
バクシンオーの足を触って分かったのだが今まで見た事ないほどに頑丈でしっかりした育ち方をしていた、聞いてみたところバクシンオーの母が足の悪かったバクシンオーに愛を込めて毎日ケアをしてくれたおかげで私の完璧な足はあるのですとの事だった。
マッサージはトレーナー研修で習った物と私が戦地で自らに行っていたマッサージをバクシンオーにも教えたので情報収集は欠かせないが取り敢えずは大丈夫だろう。
そして夜、ステイヤーについての追加情報を得るべく資料室へと出向くと桐生院トレーナーと出くわした。
「播磨トレーナーさん!スカウトどうでしたか?」
「サクラバクシンオーを担当に持つことになった、そちらの方はどうなりましたか?」
桐生院トレーナーの顔が綻ぶ、どうやらうまく行ったらしい、
それからはお互いに資料を読みながら情報交換をし、お互いに有意義な時間を過ごせた。
ハッピーミークの得意距離、と言うか脅威の全距離適応を考えるといずれ全距離出るであろうバクシンオーと勝負になる日もそう遠くないだろう。お互いに良きライバルであると固い握手を交わし今日は朝日が登るまで勉強会兼情報交換は続いた。
そして朝、徹夜は久しぶりだったがまだ数日は寝なくても大丈夫だな。
バクシンオーの要望で学校の始まる前から練習をしたいとの申し出があったのでそそくさと必要な器具を準備する。
すると地響きのような足音と段々大きくなる声
「バクシーーーン!!!」
「おはようございます!トレーナー!今日からよろしくお願いします!」
「ああ、よろしく頼む、サクラバクシンオー。早速だが体を解せ、まだまだ朝は寒いからな、怪我だけはしてはならない。」
「分かりました、トレーナー!」
柔軟性一つからもわかることは少なくない、見るにバクシンオーは足の柔軟性はそこまで高くはない、これは柔らかければいいって物じゃなく、そのウマ娘の走り方に必要な柔軟さ、硬さが必要となる。
バクシンオーはトモを見るに素晴らしい筋肉をしているため昨日の走りも踏まえてパワーで走るタイプのウマ娘だ。
個人でここまで体を仕上げるのは中々大変だっただろうと聞くと幼少期から入っていたクラブで言われたことをずっと守ってきたらしい、
なるほど、見た目どうり真面目なのだな。
「トレーナーさん!柔軟終わりました!次は何をすれば良いのでしょう!」
「それじゃ次はこいつを身体に巻き付けろ。」
渡したのはベルト型の錘、ウマ娘専用の特注品で合計で200kgある、台車使っても持ってくるのが大変だった代物だ。
「おおこれは!何だか修行みたいで良いですね!」
「まぁあながち間違ってはいない、今からやって貰うのは空気椅子だ、筋肉には遅筋と速筋が存在し、バクシンオー、お前は今速筋の塊みたいな存在だ、故に筋力トレーニングでは遅筋を徹底的に鍛える、もちろんその速筋を捨てるわけではないのでキツさは倍増だ。出来るな?」
「もちろんですともトレーナーさん!学級委員長ですから!」
そして3分後。
バクシンオーは先ほどの自信満々な姿は見る影もないほどに消耗していた。
「くっ、ぐぬぬぬぬ、バク、シーーーン!」
ストップウォッチが鳴りバクシンオーはその場で崩れ落ちた。
「よくやった、もうベルトは外していいぞ。」
聞いているのかわからないような顔でバクシンオーはベルトを外し、そのまましばらく体力回復に努めているようだった。
やはりと言うべきか、バクシンオーは短期的な筋肉の使用では重賞を取るレベルの物だが、長期的な使用となるとその性能は格段に落ちる。
正直今の3分間も馬鹿げた根性の賜物だろう。
「トレーナーさんっ!....私はまだ!...やれますよぉ!...」
バクシンオーは息も絶え絶え、体はプルプルと崩れ落ちそうなのを堪え2本の足で地を踏み締めていた。
正直俺は途中で力尽きると踏んでいたが、
「そうか、お前の思いはそれほどか。」
何故このスプリンターになるために生まれてきたと言ってもいいほどの才能がここまで長距離にこだわる理由は分からないが決して半端な理由ではないのだろう。
「だがもう30分もしたら始業時間だぞ、早くシャワーを浴びて教室へ向かえ。」
「ちょわ!すっかり忘れていました!」
先ほどの疲労はどこに行ったのか、素早い動きでバクシンオーはシャワールームへと走っていった。
「ありがとうございましたトレーナーさーん!また後ほどー!」
「シャワー中にでもいいから体ほぐしておけよー!」
分かりましたーと帰ってくる頃にはバクシンオーの姿はもう見えなくなっていた。
「しかし、あそこまで容易に限界を越えるか、これも才能だが、危うくもある。」
戦場で長く戦える奴は自分の仕事をしっかりこなす奴だ、以上でも以下でもない。
限界越えて頑張るなんざ神風特攻以外じゃリスクの塊だ。
バクシンオーは良いウマ娘だ、彼女を長く、強く走らせるのは俺の手腕によると言ったところか。
「...弱音は言えんな、昼の準備でもしておくか。」
作者はケンイチに限らずバトルモノのトンデモ修行シーンやとんでも理論が大好きです。