B級少年の物語。
そして始まりの話。
出逢いとは運命であり、必然である。
変わりたいと願えば誰でも変えられる。
僕はいつか言われた質問を思い出す。
『あなたの将来の夢はなんですか?』
僕はその答えを言うことはできない。
僕でさえ自分が何のために生きているのか分からずに過ごしている。
毎日として願っている。
夜空に向かって手を広げて、明日を掴もうともがいている。
特にいつもと変わらない日常は昨日の悩み等忘れるくらい当然として始まり出す。
僕は田んぼの横をすり抜け竹林を横目で眺めつつ登校している。
他にすることもなければ、自然とこうなってしまう。
三月の初めまではこんな通学路を登校していることすら想像できなかった。
結論から言うと僕は高校受験に失敗した。
僕は結城十亜【ゆうきとあ】。
よく女の子みたいな名前と言われるが正真正銘男だからね!
今年から高校一年生で、顔はいいがよく性格が良くないと言われる(自分で言うことではないが他に長所もない)
正直自分が通うはずだった学校の制服を見かける度胸が苦しくなる。
なぜ受験に失敗したのか、今になってまも何一つ分からずにただ毎日を過ごしている。
という所で学校に着いてしまった。
野球部の挨拶が聞こえてきても「今日もやってるなー」と思うだけだ。どこか自分との距離を感じてしまう。
僕には彼らほどに熱くなれるものはない。
その時ふと視界の端に女の子を捉えた。
C組の「神崎【かんざき】」という名前だったかな?
彼女は気が強いらしい。眼鏡をかけているためか第一印象として暗く見えてしまうが、長い黒髪は一本として乱れることなく、あの眼鏡さえなければ結構な美人であろうに。
悔やまれる…
そして話したことがないんだよっ!
その「神崎」さんにB組の校倉穂波【あぜくらほなみ】が話かけるようだ、ちなみになぜ名前が分かるのかと言うと僕もB組だからだ。
校倉穂波の外見を簡単に言うなら茶髪のショートヘアーで元気のいい正統派美少女という所だろうか。この二人が一緒にいるのは珍しい事ではないが少し盗み聞きしてみよう。
犯罪?違うよ、聞こえてくるからしょうがないのさ☆
『ねぇ!「姫」ちゃん今日放課後空いてる?』
「姫」て言うんだ、じゃあ神崎姫【かんざきひめ】て名前だったのね、すいません覚えておきます。
『ごめんね穂波ちゃん、今日はちょっと用事があるの…』
『あっそうなんだ!ならまた今度ね』
『うん、ごめんね』
『ううん、用事なら仕方ないからね』
穂波はそう言うとだけを残してその場を去った。
その時ふと周りの視線が気になり僕は長居しすぎたことに気づいたので教室に行くことにした。
ホームルームはわずか三分程度で終わり僕も特にすることもなかったのでラノベを読むことにした。
前回の続きを探すためにページをめくっていると、横から名前が呼ばれた気がした。
どうやら呼んだのは同じクラスの浅間和斗【あさまかずと】だ。
浅間和斗はこちらも簡単に言うなら容姿はいいが頭の方は…
特徴として女の子が好きな僕の友人(?)だ。
チャラ男ぽいが彼女はいないのが意外だ、何か理由があるのかもしれない。
『十亜さ〜、数学の宿題した?』
『うん、したよ』
『マジで?俺忘れちまったわ(笑)』
正直言うと僕にとってはどうでもいい事情ではあるが、後々面倒だと嫌なので軽いノリで返す
『気をつけろよ(笑)先生に言って明日提出したら?』
『そだね〜、そうする〜』
そう言って和斗は職員室に行った。
僕はすぐにラノベと向き合った
和斗に対しては面倒な時こそ先程の様に「(笑)」で返すのが一番有効である。
そして十数分後一時間目の授業が始まる。
気付けば昼休みである。
そろそろ他の人の自己紹介しないと後々面倒そうだぞ…
僕には理想の中でなりたいものがある。
それは物語の主人公である。
バットエンドが嫌いで、何度も人の死なない選択は無いかと探してしまうのは癖になっている。
ある人はこう言った「人の人生とはその人が死ぬまでの物語である」と。
僕はその言葉が好きだ。
人生は見方によって幸福にも不幸にもなり得る。
楽に生活できることが幸せだと思う人、仕事を生きがいだと感じている人、他人の幸せを自分の幸せだと思える人のように様々だ。
人生が一回きりであることに不満がある人には読書をお勧めしよう。
僕は自分がこの世界で生きている理由を知りたくて生きている。
中二病とか言われるかもね……笑
僕には何かピースが足りていない。
だからまだ心も不完全なのだ。
早く大人になりたいと思いつつまだ子供でいることに甘えている。
と、一人言もその辺にしておこう。
後ろから肩を叩かれたからだ。
叩いた相手は穂波だ。
どうしたのだろう?
『十亜くん、今いいかな?』
『いいよ、どうしたん?』
『今日放課後クラス委員長の話し合いがあるから…その…日直の仕事代わりにしてくれませんか?』
なぜ敬語なのかと言うと多分他にしてくれそうな相手がいなかったからであろう。
『嫌だ、他当たってくれ』
正直今日は早く帰りたい。
ラノベの新刊の発売日なんだよ…
『そこをなんとかお願いします!あとで何でも言うこと聞くから!』
男として「なんでも」と言われれば断る理由はない。
ラノベ?何のことですか??
『わかったよ、今日は貸しにしとくよ』
『ありがと!んじゃよろしくね』
えっちょそんだけ!?
軽すぎるだろ…
帰りラノベ買って帰るか、普通に閉店時間三時間くらい前に終わるし。
『はぁ〜』とため息をついてると右斜め後ろに座っていた夢咲瑞來【ゆめさきみずき】が心配そう(?)にこちらを見て言った
『大丈夫?私も手伝おうか?』
因みに彼女が【女神】と言われる理由はこれだ。
容姿端麗で性格が気遣い屋さんでなんと言っても優しい。
『大丈夫だよ、気持ちだけもらっとくよ』
『そう?困ったらいつでも言ってね?』
『ああ、分かった』
その言葉を聞くと彼女は机の上の参考書と向き合った。
漢検の2級を受けるらしい。
この学校では2級までしか受けられず、1級は少し遠くに行かないと受けられないらしい。
こんな優しい子に手伝わせるのは少し気が引けるし、何より二人きりはなかなかキツい。
そして気づく、数学の教科書を家に忘れてきていることに。
この学校では忘れ物をした時には職員室に行き、直接先生に言わなくてはいけない。
職員室かぁ〜
職員室に入る時には、挨拶と名札を忘れないように…
『失礼しまーす』
職員室に入し数学の睦月先生を探していると、職員室の端で最近見た顔の生徒が何やら先生に捕まっていた。
神崎さんだ。
今日は用事があるから先に分からない問題を質問している感じだった。
真面目だな。
睦月先生を見つけた。
『失礼します、一年B組の結城十亜です、教科書を忘れました。』
出来るだけ丁寧に、顔は出来るだけ深刻に見えるように振る舞えば基本的に軽く済む。
『じゃあ、今日やる所だけ印刷して授業前に渡そうか?』
『すいません、それでお願いします。』
『分かりました、もう行ってもいいよ』
『はい、失礼しました』
人の扱いなんて簡単だ。
そう思えて仕方ない程思い通りだ。
それが僕には面白くはない。
教室に戻り、自分の席に座るとつい考えてしまう。
神崎さんは何を言われていたのか。
考えても仕方ないが考えてしまう。
いつもの癖だ。
〜〜〜約9時間後〜〜〜
気付けば帰りのホームルームになっていた。
今から日直の代理か、面倒すぎる。
『起立、気をつけ、礼』
『さようなら』
我ながら小学校みたいだなと思ってしまう。
放課後になり、校舎内は静けさに包まれ、グラウンドから聞こえる元気に満ち溢れる声のみが唯一の音と言ってもいい。
日直の仕事は三つある。
一つ目
黒板を綺麗にして、チョークを置くいわゆる溝を拭くこと。
二つ目
黒板下から教卓下までの床を雑巾で拭くこと。
そして三つ目
日誌に今日の全ての授業の感想、ポイント、行ったこと等を書き、今日一日の感想を書くこと。
以上の三つが今日僕がしなくてはいけない仕事である。
正直に言うと掃除は嫌いではない。
基本自分の部屋が片付いてないと気が済まない人である。
まず黒板を黒板消しを二つ使い、縦向きに消し、次に横向きに消す。
これを二回程すれば指で触れても汚れはつかなあ。
溝は雑巾で端から端まで。
その後床は配置されている木の向きに沿って雑巾で拭きあげる。
そうすると小さな溝にある汚れも取れる。
日誌は適当に。
やっと帰られると思った時には、帰りのホームルームから約47分が経とうとしていた。
教室の施錠をしっかりして、本日二度目の職員室に行き鍵をかえした。
先生が誰もいない事に気づいたが、何かの会議かなと思い職員室を去る。
自転車小屋には一台しか残っていなかった。
僕のだ。
皆帰るの早すぎだろ…
帰り道、駅内にある本屋に向かって自転車を漕ぐ。
まだ夕日は見えるがその内暗くなるだろう。
本屋に着くと目当ての本はすぐ見つかった。
発売日との誤差は約2日というところだろうか。
予想通り今日からの発売であった。
駐輪場に行く途中、誰も通らない様な通路から複数の男と嫌がる女の声が聞こえた。
正直、可愛い子なら死ぬ気で助けるだろう僕は少しだけチラ見した。
C組の神崎だった。
粗方予想はついた。
僕は制服なのですぐに学校がバレてしまうなとまず考えたが、制服だからこそ今の状況にはピッタリかもしれないと言う答えに導きだした。
『す、すいません…』
『なに?聞こえないんだけど。』
『お金…なら…払います…から』
『いやさー、さっき君がぶつかったおかげで財布おとしちゃってさー。お金払えば済むと思ってんの?』
その言葉は三人いる男の内の一人が言ったものだ。
他の二人は次に少女にさせるであろう行動を予測しているかのようにニヤニヤと笑っている。
なんか人気の無くなって面白くもない1発ネタを見せられた気分だ。
なんだこの残念感。
思わずツッコミを入れたくなるのを我慢して、行動にでた
僕は通路に入り
『男三人がかりでなにしてるんですかー?』
『あぁん?』
なんか声汚いな(笑
『なんだ餓鬼かよ、なに?お前こいつ知り合いなん?今ならまだ俺の機嫌もいいし許してやっからさっさと失せろ』
あーなるほど同じ制服だったから勘違いされたのかな。
バカだな。
『ゴミの分際でよくもまぁ俺にそんな口が聞けるな』
少女は僕を凝視する。
今の言葉は僕のだ
スイッチが入ると本性が出てしまう。
『威勢はいいが弱そうだな』
他二人が笑い出す
今ので分かった事はどうやらこいつ一人をやればあと二人はただの雑魚ということだ。
『へぇー、じゃあ教えてくれよあんたの言う強さってやつを』
『ちっ、まぁいい小銭が少し増えるだけだが相手してやるよ。』
僕と奴との距離は約3m少し足を前に出して拳を出してもギリギリ当たらないくらいだ。
それを交流したのか向こうゆっくり歩いてくる。
約1m30cm程まで
近づいた時、向こうから拳が飛んできた。
予測通りだ
僕が考えていた事は人間が喧嘩をする際に相手を自分より下だと認識した場合、利き手から殴ろうとする基本的な行動パターン。
一発目はわざと食らう
ゴキンッ
そんな音が聞こえた気がした。
一発目を受ける理由は二つある
一つは相手の油断を誘うため、二つは自分の怒りを引き出すため。
思考がだんだん冷静になる
そこまで考慮するのに約1秒
殴られる時に顔にギリギリ引きつけ拳に合わせて受け身をとったおかげで負傷はほとんどない。
地面と衝突する手前で両手をとった
立ち上がり、相手と向き合う。
右拳を左手拳の前に構える。
相手の表情を読み取る。
今の感触が気に入ったらしい。
今度は俺が仕掛ける。
まず脇をしめ、左手を腰にためてる状況から右手で殴る。
相手は俺の右手を避けて余裕の表情を見せたがそれは俺の予想通り。
右手を避けたことにより俺から見て左に身体を曲げた相手に向かって俺は左手でアッパーをかます。
ここで補足すると。僕はピアノを10年程していたのでいつ間にか両手が利き手になっていた。
という話だ。本当だよ?
俺の左拳は相手のこめかみに当たった。
続いて左拳で殴る
相手は驚いたのか右に避けたが俺の右拳で一発。
冷静さが欠けている今なら単純な行動をとってしまう傾向を利用する。
いわゆるいきなりジャンケンをすると挑まれた相手がグーを出すことが多いというのが分かりやすいかもしれない。
少しよろけた所を相手の頭の後ろに両手を回し、頭を俺の足に引きつけて、膝蹴りを食らわせた。
鼻血を出していたが骨折はしていないと思う。
相手は地面でもがいていたが俺も苛立っていたので頭を踏みつけ
『そうそう、ゴミにはこれがお似合いだな。』
『謝罪の言葉とかないんですかー?』
『すまんか…た、許して…さい』
『はぁ?聞こえないんだけど』
相手の顔を地面に擦り付ける。
『まぁいい、俺も機嫌がいいから許してやるよ』
『だけど、次女の子に手を出してたらまた同じ目に遭わせてやるから覚えとけよ』
そういって僕は唖然としている少女の腕を掴みその場を去った。
彼女に対して僕が怪しい人ではないという証明はこの制服だ。
な?この状況にピッタリだったろ?
『こんな所で何してたの神崎さん?』
『今日は…その…お母さんの誕生日だったから…プレゼントを選んでて…そしたら外暗くなってて、電車の時間に間に合わないかもとか思ってその…急いでたら』
『さっきの人にぶつかったんだね』
『そういう事なら仕方ないね、電車まだ間に合うかな?』
『今何時くらいか分かりますか?』
『今は7時16分だよ』
『じゃあ、確か22分の電車かあったと思います』
『そうなん、じゃあ電車乗るまで見送るね、さっきの後じゃ不安やろ?』
『その!…その先程は助けていただきありがとうございました、今度お礼させてください!』
『ああ、いいよ礼なんかただの自己満足だから』
もろ下心丸出しである。
『いえ、いつかちゃんとお礼させていただきます』
『お名前を聞いてもよろしいですか?』
『僕はC組の結城十亜だよ』
『女の子みたいな名前ですね』
そう言うと彼女は笑った。
大分安心したのだろう。
『よく言われる』
僕も笑い返した。
電車の時間になった
『じゃあ、また明日学校で』
『はい!明日会いに行きますね!』
彼女が手を振っていた。
僕は少し恥ずかしかったが振り返した。
帰る頃、外は真っ暗になっていた。
帰り際、少し心配になったことがある。
さっきの喧嘩だ。
やり過ぎた。
彼女は怖がらなかっただろうか?
明日謝っておこう。
そして何よりあいつら多分仕返しに来るだろう。
多分…
家に着く頃には8時くらいになっていた。
母さんはどうやら心配していたらしいので、今日ったことを全て話したら驚いてはいたものの理解はしてくれたようだ。
夕食を食べた、考え事をしていて味は覚えていない。
寝るためにベットに横になった僕は今日一日を振り返ってみる。
明日が楽しみである。
そして意識することなく眠りに落ちる。
そこはただの黒い世界。
僕以外に何もない。
ただ、何かしなくてはいけない気がする。
ふと自分を見つめ直す。
僕には今までの生活が退屈であった。
今日の出来事のせいでやっと変わりつつある僕の日常。
だから彼女を助けたのかもしれない。
自分の能力を最大限発揮する場が欲しいと何度願ったか。
そして不快なアラームに目覚める。
いつもと違うのは頭がスッキリし過ぎてる事だろうか。
いつもより早起きをした僕に親は驚いていたが、気にすることもなく僕はテーブルの上のカップを取り中のコーヒーを飲む。
味の違いは微かにしかわからない。
朝ご飯を待っている間に今日の行動を確認する。
今日は神崎と会うことと穂波に昨日の礼を言わせて何をしてもらうか決めなくてはいけない。
朝ご飯は一人は三人で食べた。
母と姉と僕だ。
姉の紹介はまた今度にしよう。
7時、登校する時間だ。
自転車を裏から出し、玄関の前に止めておく。
カバンの中身を確認して自転車を漕ぎ出す。
昨日と同じ景色だ。
朝は霧が少しあるが太陽はハッキリ見えている。
とても綺麗だ。
そして到着。
自転車を止める。
校舎に入るのもいつも通り。
いつもと違うのは教室の入り口に穂波が待っていたことだ。
『あっ今日はやいんだね』
珍しく早起きしてしまったからだ。
『穂波も早いな。おはよう』
『うん、おはよう』
なぜここにいるんだ、誰かに用でもあるのか。
『どうした、誰か待ってるのか?』
『ううん、十亜くん待ちだったー』
そう言うことか。
『なんか用?というか席に着きたいんだが』
正直邪魔である。
『ん?あっごめんごめん』
そう言うと道を開けてくれた。
席に着くと穂波が目の前でこちらを見つめていた。
居心地わる!
『そろそろ本題に入ってくれませんか穂波さん?』
『あっそうだったね』
『聞いたよ?昨日姫ちゃん助けたんだって?十亜はそういうのしない人かと思ってたー』
普通に言いやがったなこの野郎。
念のため一つ質問をする
『誰から聞いた?』
『姫ちゃん本人だよー』
そうかあいつ友人にはだいたいの事話すヤツか。
『そうか、ならいいよ。で用はそれだけか?』
『うん、でも姫ちゃん助けてくれてありがとね。案外やるじゃん』
つい笑ってしまう
『可愛い子ほっとけないやろ?』
7割五分本当の事だ。
『じゃああたしみたいな子は助けてくれないの?』
『気が向いたら助けるかも(笑』
『場合によって助けない』
『ひどっ!いいもん!悠君が君に助けてもらうから!』
悠君とは豊前悠がフルネームであり穂波の彼氏だ。
『そうかいよかったね。じゃあ読書するけん』
そう言うと穂波は頬を膨らませて『ふんっ十亜くんほんと意地悪』
そう言い残すと他の女子の所へ行った。
読書はいい。
他人の人生を何度も体験することができる。
そして教訓を学ぶのだ悩みにぶつかった時に間違わないように。
ここで言い忘れたことがある。
穂波は僕の幼馴染だ。
これだけは言っておこう。
昼休み和斗と一緒に昼飯を食べた。
和斗は別に悪い奴ではないし嫌いでもない、どちらかと言えば好きかもしれない。友達として。
昼飯を食べた後は屋上へ行く。
これがまたいい。
屋上はとても静かだ。
横になり目を閉じる。
浮遊感もどこか心地よく感じる。
日光に当たらない日陰がベストだ。
何も考えない。
それが一番楽で落ち着く。
だから雨の日以外はここに来る。
他に来る人もいないのだから。
だけど今日は違った。
屋上への入り口のドアが開いたのだ。
神崎姫だ。
たぶん穂波が言ったのだろう。
そして少し探して日陰にいる僕を見つけると安心したようにこちらに来る。
『十亜くんそこにいたんだね、穂波ちゃんに屋上にいること教えてもらったんだ』
やっぱりか。
『で?なんでわざわざここに来たん?』
少し僕は不機嫌かもしれない。
静かな時間を奪われたからだ。
『お弁当食べた?よかったらこれ昨日のお礼にお弁当』
なん…だと
まさか手料理なのかな
『まさか手料理?』
『そうだよ〜、あれもしかして…ご飯食べた?』
一応この人学年美少女ランキング一位だぞ!
弁当なんてもらったと知れたら野獣どもに殺されかねない‼︎
いやしかし、こんなチャンスないぞ!
中学の頃も休んだ日に限って美少女の料理を食べ損ねてきた今なら言える!
食べないと一生後悔する‼︎
『え?ああ俺の弁当友達が食べちゃってさ丁度腹減ってて…もらってもいいの?』
危ねー冷静に振舞わないと…
久しぶりの動揺。
『うん!はい!美味しくなかったらごめんね?』
やばい涙が…
『弁当箱は洗って返すから!ありがと』
『いいですよ!私家で洗いますから!』
『いいって明日返すから!』
『そ、そうですか?ならお願いしようかな…』
『分かった、わざわざありがとね』
『じゃ、じゃあ私はこの辺で』
そう言い残して彼女は教室に戻った。
一言言いたい、あれ?神崎て俺にだけ優しくね?
思わずニヤけてしまう。
幸せだ。
気が強いとか迷信じゃね?
どこの恋愛シミュレーションゲームですか?
モテ期来たのかな…ドヤッ
今僕はこの学校の神崎ファンを敵にまわしながら人生初の女の子の手作り弁当を食べている。
もはや勝ち組(笑)
中身は簡単なものであった。
弁当は二段あり一段目はおかず、二段目はご飯が入っていた。
おかずは、卵焼き、海老フライ、アスパラのベーコン巻き、トマト。
ちなみに僕は野菜にはうるさい。
肉より野菜派の人間である。
トマトを食べた。
まずポイントとして酸味と甘みのバランスが分かればだいたい分かる。
うむ甘さ8割、酸味2割と言ったところだろうか。
いい具合に熟している。
うまい。
と今更気付いたが弁当の二段目のご飯が…
あれ?ハートとかあるんだけど…
何これフラグ??
気にしないようにして完食した。
紺色の布で巻いてそのまま教室へ持ち帰った。
和斗は、あれ?さっき食べたよね?と言ってきたのでとりあえず、あぁ洗いに行って来たと言った。
これしか理由が見つからなかったからだ。
そして穂波は穂波でニヤニヤしている。
そういえば…
『穂波さ昨日俺が日直したから言うこと1つ聞けよー』
『いいよ、何して欲しいの?あ…身体とかダメだからね?』
バカかコイツ、一回殴りてー
『お前の身体なんぞいらんわ、そうだな神崎のメアド教えて欲しい。』
『ん〜、向こうに聞いてOKしたらいいよ〜』
よし。
『なら、あとで』
『はいよ。』
〜〜〜約三時間後〜〜〜
『はいではこれで帰りのホームルームを終了します。』
『起立、気を付け、礼。』
『『ありがとうございました』』
そして皆それぞれ部活に行く。
僕は家に帰る。
帰り道、昨日とは違う夕焼けだ。
オレンジ、いや黄色に近いかもしれない。
周りの雲を巻き込んだ太陽の輝きは一つの世界を表しているようで、何にも例えることはできない。
もし僕がとても絵が上手かったとしても、あの世界を表現するのは不可能なのだから。
そんなポエムみたいな事を考えながら、気づいたら家にいる。
時間が経つのは本当に早い。
死ぬまでに生きてきた証を残せるだろうか、心配である。
メールが届く、穂波からだ。
内容は昼休み話した通り、神崎姫のメアドだ。
まずはお弁当のお礼から。
そして取るに絶えない話をした。
それでも本当に楽しい時間だと感じた。
気が強いという噂は穂波が神崎の男性が苦手という秘密を隠すためであったみたいだ。
なるほど納得できた。
こんなやり取りでも停滞する昨日から一歩前に踏み出した今日だから出来たのだろう。
今日もまた一歩踏み出す。
そして少年の停滞していた生活は少しずつ変化していく。
エピソードⅠ
B級少年とC組の姫 END
次回は出来るだけ早く投稿したいと思います。
二作品交互に投稿します。
もしよかったらもう一人の少年の話を読んでもらえると嬉しいです。
初投稿で誤字、脱字あるかもしれません。
コメント等で教えてもらえるありがたいです