透き通る世界で曇らせを楽しむ予定の転生者です   作:コンソメ

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一旦、ホシノ曇らせは終わり。次回で舞台がトリニティに戻ります。

感想、評価ありがとうございます。需要はまだまだありそうですね。

次は………トリニティの3人かな。


第7話

ヒフミたちトリニティ総合学園の支援射撃、遅れて到着した便利屋68の援護など様々な支援を受け、先生たちは無事ホシノを救出することに成功した。

 

しかし、当の本人であるアビドスの面々に救い出されたホシノは状況が全く呑み込めずにいた。感動の再会を果たし大人である先生に助けられたこと。カイザーの侵攻をストレイヤーを含む協力者が退けたこと。驚愕は色々通ったが、これには劣る。

 

目の前には頭を下げ協力を仰ぐ仮面の少女達と一枚の手紙が存在している。

 

やあ、ホシノ先輩。これを読んでいるということはアビドスに助けられたてことだね?先輩が正直憎いのは本当なんだけどさ、それでも先輩は義姉さんの後輩なわけで、僕も殺したいわけじゃないんだ。それにあの悲劇を繰り返すなんてありえないから。だからさようなら。

 

呆然とホシノは手紙を何度も読み返す。

 

「何………これ」

 

「………リーダーはホシノさんを守るために身代わりとして黒服に自身を差し出しました」

 

「だから何で!?」

 

「今回の動きは我々の総意でも依頼でもない、独断です。リーダーは個人的にどうしてもあなたを救いたかったのでしょう」

 

仮面の少女たちはカザリを除き今回の動きを知らなかった。ただ、待機命令を守っていただけ。ミライがこの手紙を発見し、中身を検閲後カザリを問い詰めることで全貌を知り、カイザーと戦闘中の先生たちに合流したのだ。

 

着信音がなる。それはホシノの持つ端末からだった。

 

差出人はシオン。ホシノは即座に添付されていた動画をタップした。

 

『ククク………ご機嫌よう、小鳥遊ホシノさん。それと先生。これは録画ですので返答できないことをご容赦ください』

 

そこに映っていたのは、埒外の存在。黒いスーツを着込んでおり、体は影の様に黒く無機質で、右目にあたる箇所には発光部があり、そこから顔全体に亀裂が走っている。

 

更に口と思われる部分も同様にひび割れ銀色の耀が覗き、その形は微笑みにも嘲笑にも見え……不気味さが際立つ存在。

 

領域外の大人である、黒服が映っていた。

 

「黒服………!」

 

先生がいち早く反応する。ホシノはただただ瞠目し、カザリは静かに目を閉じた。

 

『先生、そして小鳥遊ホシノさん。誤解があると厄介ですから、預かったホシノさんの後輩について説明させていただきましょう。彼女は私の元に来て進んで身代わりとなりました。小鳥遊ホシノを見逃す代わりに自分が実験に参加する。そういう契約を結びましたので、これは歴とした取引です。ククク………しかしあなた達は彼女を助けようとするでしょう。私としてもそれは構いません。今の彼女の身体で実験を行うのは本意ではないので………間に合えば、ですが………』

 

そこで動画が途切れた。その小さな身体が小刻みに揺れる。後悔や怒り、恐怖で視界が歪む。寒気によりホシノの瞳孔は開き、顔も青白くなっていた。

 

「………」

 

呆然とするホシノの前に先生が立った。

 

「事情は薄らと把握した。ホシノ………君の友達を助けに行こう!」

 

ホシノは少し冷静さを取り戻し、先生を真っ直ぐ見た。

 

 

 

 

900:イッチです

黒服が契約を湾曲させ、別の実験を行おうとしたので、身を守るために爆弾で脅したら誤起爆しちゃって建物半壊した。

 

901:名無しのパンピー転生者

 

902:名無しのパンピー転生者

馬鹿やろ

 

903:名無しのパンピー転生者

そうはならん

 

904:名無しのパンピー転生者

なっとるやろ

 

905:名無しのパンピー転生者

落ち着け

 

906:イッチです

黒服のやつ、ワイの要望通りの映像を録画したのはいいけど、最後ろくでもないこと言いやがって。

 

907:名無しのパンピー転生者

 

908:名無しのパンピー転生者

 

909:名無しのパンピー転生者

映像?

 

910:イッチです

そ!黒服に僕がホシノを守るために交渉したことと実験のダメージについて。これはホシノのせいですってね!

 

911:名無しのパンピー転生者

その映像をホシノに見せるのか

 

912:イッチです

そう。ホシノの携帯にメールした

 

913:名無しのパンピー転生者

キチク

 

914:名無しのパンピー転生者

 

915:名無しのパンピー転生者

鬼畜

 

916:イッチです

やべー、マジか

 

917:名無しのパンピー転生者

は?

 

918:名無しのパンピー転生者

どうした?

 

919:名無しのパンピー転生者

視界共有して

 

920:名無しのパンピー転生者

あー

 

921:名無しのパンピー転生者

なるほど

 

922:名無しのパンピー転生者

早くね?

 

923:名無しのパンピー転生者

ホシノと仮面の子を先行させた感じだな

 

924:名無しのパンピー転生者

ホシノの声がない悲鳴最高

 

925:名無しのパンピー転生者

曇り顔最高

 

926:名無しのパンピー転生者

イッチ吐血してる?

 

927:イッチです

瓦礫を一瞬で退かすホシノとカザリ………もう少し曇れよ。準備できてないから衝撃薄いだろ。血まみれで倒れている演出だったのに、吐血しかしてない。やっぱ先生がいると駄目やな。勉強になりました。

 

928:名無しのパンピー転生者

次に生かす気満々ですね。

 

929:名無しのパンピー転生者

生かす気満々で草

 

930:名無しのパンピー転生者

諦めないんかい!

  

 

 

 

崩壊を始めている建物。ホシノとカザリは何の躊躇いもなく飛び込んだ。他のものが追従できない速度と手際の良さで瓦礫を避けていく。

 

「シオンちゃん!」

 

幸い、シオンはすぐに見つかった。周囲には瓦礫や爆発痕がるが、ヘイローがあるのだ。問題なく助かる。ホシノは、すぐに駆け寄ろうとして様子がおかしいことに気づき足を止める。

 

視界の向こうに見える彼女は、うつ伏せのまま伏しており、こちらの声に反応示さない 眠っていると言った表現が一番近いように思えた。さらにもう一歩進むと彼女の身に着けているローブに真っ赤なものが付いているのが見えた。

 

「シオンちゃん?」

 

返答はない。手足が勝手に震え始めた。呼吸の回数が増える。また、またなのか?

 

自分はまた間に合わなかったのか。記憶の中のユメの遺体が自分を見ている気がした。

 

全く同じだ。大人を信じたからユメ先輩を失った。大人を信じたからシオンから恨まれている。間に合わなかったが故に、シオンを追い詰めた。

 

胃酸が込み上げる。冷や汗が体中を包む。隣にいるカザリはシオンの服を漁り、アンプルを2本取り出す。その後、仮面を被せる。

 

「あちゃー、一本減ってるかー。吐血はこれが理由かなー」

 

能天気な声と同時に、先生の声が響いた。

 

「ホシノ!」

 

「ッ!」

 

背中に暖かな大人の手が触れる。そして、先生はシオンの脈を測り呼吸を確認。

 

「息がある!間に合わなかったわけじゃない!」

 

いつの間にか先生がそこには立っている。

 

「大丈夫!私が何とかして見せる!だからホシノの力を貸して!」

 

シオンを背負った先生は曇りなき決意を見せる。先生に握らされたシオンの手から感じる暖かさを噛み締めてホシノは頷いた。

 

 

 

 

「シオンさんの容体は?」

 

あの事件から2日後、ストレイヤーのアジトには二人の少女がいた。一人はソファーに座るミライ。もう一人は、赤い髪に十字のピアスを耳にしている少女。いつものミレニアムの制服ではなく、ジャージを着ている。ストレイヤーが過去に傷を負った少女の集まりだというなら、彼女はその例外。シオンに魅せられて所属する異端者、カザリだ。

 

「んー?いつもの副作用だよー。心配しなくてもー、すぐに起き上がってくるってー」

 

先生と共に建物を脱出したストレイヤー達は、恩は返すと言い残しシオンを回収して消えた。カイザーの問題は解決し、借金を完全に返すことはできなかったものの、事態は少しだけ好転し、先生のおかげで対策委員会の日常を守ることができた。シオンの容体安定の知らせも即座にホシノへは共有していたらしい。

 

「カザリ先輩………あのアンプルを取り上げることはできないのですか?」

 

ミライはカザリへ真剣に問いかける。

 

「無理なのは知ってるでしょ?それにー、あのアンプルの解析をさせてくれないから中身がわからないしー、副作用を軽減する薬を作る以外はできないー」

 

「………カザリ先輩はシオンさんのことが心配ではないのでしょうか」

 

「心配だよー。でも、これがシオンとの約束だからねー。約束は守らないとー」

 

カザリはミレニアムの中でも異端だ。優秀な人間が多い学校だが、その中でもセミナーから入学時点で熱心な勧誘を受けていた。

 

「私たちにさー、できるのはーあれを使わなくてもいい状況にすることだよー。でしょー?」

 

「………失礼します」

 

カザリの言葉を受け、唇を噛んだミライは部屋から出て行った。

 

「………もう出てきてもいいよー?」

 

カザリの言葉と共に、奥の部屋からシオンが姿を現した。顔色は戻っており笑みを浮かべている。

 

「ごめん、損な役回りさせた」

 

「いつものことだねー」

 

カザリと出会ってから6年。シオンは最も付き合いが長い友人と言えば彼女を上げる。

 

「まったくシオンのー自傷行為にも困ったものだよ………まあ、寝れたみたいだからよかったけどー」

 

「おかげさまでね」

 

シオンは睡眠薬を常用しないと寝れなくなることがある。理由は察しがついているが、カザリは口を挟まない。ただ睡眠薬を入手してくるだけ。

 

「約束だよー、私にー最高の物語を見せてよ?退屈が私を殺す前にねー」

 

少女は思う。シオンが描くテクスチャの終わりを。狂気を飼いならすには刺激が不可欠だった。

 

 

 

 

 

 

 

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