透き通る世界で曇らせを楽しむ予定の転生者です   作:コンソメ

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第9話

トリニティ学園に所属している聖園ミカを一言で表せる言葉がある。それは、力を持った子供だ。

 

聖園ミカは、夢見がちな少女が描くような、絵本の主人公のようなことを語り実行しようとする、文字通り夢見て生きてるような女だ。現実の中でお茶を濁す人間からすれば不愉快な女であり、しかし理想を語り叶えうる力を持つ少女が放つ綺麗事は、何処までも正しく善性でそれは聞かされる側にとっては耳心地が良く、周りに人が集まることだろう。

 

………責任ある立場からすれば間違いだが、人間としては間違いとは言いがたく根底は善性の塊だ。

 

その上で語ろう。シオンはミカをクソガキだと思う。

 

「だーれだ?」

 

誰かの手の平で視界が黒く染められる。同時に聞き覚えのある声色が鼓膜を打つ。

 

「………お転婆お姫様」

 

「アハ☆正解!」

 

シオンが答えるとミカが少し距離を取り、正面に回り込みクスリと蠱惑的に笑う。

 

妙に色っぽい仕草だ。彼女の瑞々しい唇や制服の裾から覗く白くきめ細やかな柔肌、頭を揺らす甘い匂いに理性を殴られるが、平静を装った。

 

「ねーねー!シオンちゃん聞いてくれない?セイアちゃんひどいんだよ!?」

 

猫のようにじゃれつくミカを受け流してやり過ごす。

 

「アリウスとの和解の件?」

 

「そー!ひどくない? 政治的な意味がないから和解する意味はないなんてさ!血も涙もないよ」

 

最近はこの話題が多い。ミカが昔のアリウスに心を痛め、追放されてしまったアリウスと再び交流を持ち、その溝を解消したいと言った衝動を抱いたのが始まりだ。

 

助けられるなら支援したいとか、そういうことを言いたいのだろう。それで、セイアに提案したらしい。

 

セイアには呆れられたようで、それに対してミカは納得していなかった。

 

セイアは非常に現実的、そして、どこまでも正論だ。ティーパーティーの立場から言えばアリウスと和解する必要はないしそこに割くリソースがない。制御できない力を手にして破滅する可能性がある。ミカの「色々あったかもしれないけど今の子達には関係ないから、困っているだけだから助けたい」という考えは、セイアから見れば、意味不明だ。理屈で考えればアリウスを助けるメリットが皆無だ。しかし、ミカに理屈はない。あるのは衝動と白すぎる善性、そしてアクセルのみ。

 

「セイア先輩とミカも間違ってはないけど…まあ何とも言えないところだね。アリウスの憎悪だけじゃなくて、トリニティの偏見をどうにかする必要がある」

 

「えーでもさー」

 

「………」

 

「そういうのいらなくない?利益って言うか……だって元々は、同じトリニティでしょ?直接自治区に行ってさ、「仲良くしよ!」って言ってみようよ!ほら、みんなでお茶会でも開いてさ!」

 

計画性も懸念点すら無視した提案をニコニコと笑顔を振りまきながら、宣うミカを見て少し笑みをこぼした。

 

「………だから実際にアリウスに会いに行ったんだろう?結果は?」

 

「んー、粘り強く頑張ろうと思ったよ☆」

 

「…和解について、ナギサさんは何て?」

 

「ナギちゃんは――――――そうナギちゃんもさ!エデン条約なんて、ふざけたこと言い出しちゃうし、無理に決まってるじゃんね!ゲヘナと仲良くできるわけないのに」

 

急に話が飛んだが、それは気にしない。感情と言葉を繋げている目の前の少女にはあるあるなのだ。

 

「ミカらしい意見だ………そう思うやつは多いだろうね」

 

天真爛漫なミカに対して、シオンはその考えをバカにしなかった。むしろ、ミカ以上にミカの考えを理解していたように思う。肯定することはないが否定することもなく、ミカの考えを丁寧に聞いていくシオンは、彼女にとっても珍しい生徒だった。

 

それ故にミカは、シオンのことを気に入っていたし、シオンもミカのことを気にかけていた。

 

「ミカ、自分の気持ちを正確に把握することは重要だ。君が何を思ってどう行動したいか、自分でわかっておかないと止まれなくなる」

 

だからこその忠告だったわけだが、少々タイミングが悪かった。

 

その3日後の夜に、百合園セイアの暗殺とシオンの暗殺が実行されたからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シオンは、日付をまたいでから深夜営業を行っている喫茶店に入り浸ることが多く、長い時は3時間ほど滞在する。

 

喫茶店の中は閑散としており、とても静寂な空気が流れていた。故に異物を目立つ。

 

シオンは殺気を覚え、とっさの回避行動をとった。紙一重だった。頭のすぐ後ろで、高速飛翔するなにかが髪を突き抜けていく感覚があった。立ち上がり近くにある中で一番大きかった柱に、シオンはへばりつき、身を守った。 よくやった──と我ながら思った。

 

次の瞬間、今の狙撃が囮だと気づいた。炸裂音と共に、室内に投げ込まれたそれが弾けたからだ。

 

「爆弾とか正気!?」

 

咄嗟に爆風と同時に逃げ出し、窓を割り外に出る。

 

周囲を見渡すとガスマスクの少女20人に囲まれていた。

 

アリウスの生徒の中心から1人の少女が出てくる。錠前サオリである。

 

「………あー、外に出るまでが罠だった感じ?僕のことを調べ尽くしてるわけだ」

 

シオンの生活リズムを正確に把握しているのは、極僅かだがそれでもこの奇襲はシオンの生活と戦闘スタイルを把握していないと成り立たない。

 

弾道や行動を予測し、対処するシオンを閉鎖空間や遮蔽物が多いエリアで相手にすることは至難であり、こうして開けた場所で逃げ場を断ち、複数人で削り倒すのが最適解だ。

 

「君がこの集団のリーダーかな?」

 

「……先ほどティーパティ―のホスト百合園セイアのヘイローを破壊した。後は貴様だけだ。志那月シオン」

 

質問を無視して、会話などする気がないサオリがそう告げると、シオンは僅かに表情を動かしその後自嘲気味な笑みを浮かべる。

 

「………自分の心を理解して指針としてこれを曲げない。理想的な生き方だけど、自分が何をしているかわかってないとステップを踏み間違える」

 

「何を言っている?」

 

シオンの動揺を誘うための情報開示だったが、予想外の反応を返されサオリは眉をひそめた。怪訝そうな顔をしているサオリにシオンは銃口を向けて、口角を上げた。

 

「何で自分が行動しているのか、根本的な始まりはどんな感情だったのか。答えられないなら、僕には勝てないよってこと。端的に言えば、もう少し自分について考えなって忠告さ」

 

サオリがアサルトライフルを構え、静かに呟く。

 

「Vanitas vanitatum et omnia vanitas.理由など関係ない。そんなものがあったところで、虚しいだけだ」

 

サオリが構える銃とシオンが構える銃では、装填できる弾数が異なる。シオンの改造拳銃は、フルオートで放てるがそれでも二挺で18発。サオリの弾幕には対応できない。

 

普通ならば。

 

弾丸同士が衝突する火花が、シオンとサオリの中間で連なった。全ての弾が四方八方に飛び散り、2人の銃口から出た煙が風下後方へ流れていき──

 

「……!」  

 

半分は驚きつつも、サオリが予想通りだと言いたげな顔をした。

 

「弾丸を弾丸で撃ち落とす、まあ一発芸みたいなものだよ」

 

「………評判通りの腕前か。トリニティの魔王」

 

無言で立つシオンは──無傷だ。30発以上あった弾丸を18発で撃ち落としたからだ。やり方は簡単だ。シオンの弾1発が連続して敵の弾2発以上に当たるような射角で撃てばいい。まさに神業。

 

「失礼だな?僕ほどの美少女は存在しないよ?」

 

「………ヒヨリ」

 

銃声と共にヒヨリの狙撃銃が銃弾を吐き出すが、シオンはノールックでそれを躱した。

 

「アリウスの生徒に囲まれている以上、包囲網から抜け出すのは容易ではない………でもこれで僕を殺せるとでも?」

 

冷気を思わせてくるその声音は、シオンを知るものならば誰もが鳥肌が立つほど冷徹な響きで発せられていた。

 

「さあ!君たち全員を叩き潰して帰るとしようか!」

 

シオンが意気揚々と突撃を行おうとした直後、シオンの周囲が爆発した。轟音と共に爆炎が暴れ回る。

 

「目くらましだね!」

 

周囲に遠隔起動の爆弾を仕掛けていたのだが、威力は控えめ。シオンからすれば目くらましだった。

 

狙撃やグレネードがシオン放たれるが、その全てを躱し撃ち落とし包囲網を潜り抜けんと走り出す。

 

「言ったはずだ。すべては虚しいだけだと」

 

瞬間、視界を潰す光と衝撃が爆音を伴ってシオンを襲った。強烈な一撃を受け、シオンは意識が飛びかけている。

 

「ッ!」

 

真上から降ってきた多弾頭ミサイルへの対処が遅れたのである。シオンの演算はシオンが認識している情報のみを組み込んでいる。認識外の攻撃に対してシオンは対応が遅れるのだ。

 

ゆっくりと近づいてくる敵を見据え、震える足で立ち上がる。

 

「まだ隠れてたのがいたんだね」

 

意識を取り戻し敵を睨むシオンの前には3人の少女が立っていた。サオリ、ミサキ、ヒヨリの三名だった。

 

「ど、どうしましょう。あれを受けてまだ立っているなんて。強いですねぇ、痛くて苦しいはずなのに」

 

「予定通りアレを使えばいいだけだ」

 

取り出されたそれはヘイローを壊す爆弾だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

460:イッチです

………マジで死ぬかと思った。転生特典ありでこれとかあの爆弾無法だろ。ヘイローを壊す爆弾………ワイもほしいな。

 

461:名無しのパンピー転生者

イッチ!

 

462:名無しのパンピー転生者

生きてたか?

 

463:名無しのパンピー転生者

転生特典あって助かったな

 

464:イッチです

アジトに逃げ込んだ。しばらくはばれないと思う。わりとしんどい。体感2日くらい寝込みそう。というかどうしようかな。トリニティに戻るか?

 

465:名無しのパンピー転生者

おー混乱してやがる

 

466:名無しのパンピー転生者

セイアちゃん無事?

 

467:名無しのパンピー転生者

トリニティでは失踪、アリウスでは始末済みの認識か

 

468:名無しのパンピー転生者

よき逃げきりましたね

 

469:名無しのパンピー転生者

イッチ失踪と爆発の繋がりに気づけばいいけど、気づけないと渋いよな。

 

470:名無しのパンピー転生者

 

471:名無しのパンピー転生者

これは戻れるのか

 

472:イッチです

セイアは無事だと思う。逃げる時に回収し損ねたワイの拳銃を見つければ、爆発と失踪は繋がる。正義実現委員会が捜査したらしいから気がつくだろうね。

 

473:名無しのパンピー転生者

トリニティで騒ぎになるよな?

 

474:名無しのパンピー転生者

何で狙われたんや

 

475:名無しのパンピー転生者

ミカのメンタル壊れちゃう

 

476:イッチです

なる………やろな。正義実現委員会が隠せばまあ………。

ハッ!これ部屋に捜索とか入る?ワイの部屋、見られたくないやつ多いんだけど………ワイのエッチな本!

>>474

ワイ、対外的にはティーパーティー候補でセイア先輩と近しいから………派閥動かせなくはないんだよね。それかな。

 

477:名無しのパンピー転生者

 

478:名無しのパンピー転生者

情けは人の為ならず………ジャンルは?

 

479:名無しのパンピー転生者

え駄死!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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