ルフィと対峙した敵に運とタフネスが足りなかった世界   作:浅学寺のえる

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死を呼ぶ男

 〜 〝東の海(イースト・ブルー)〟ローグタウン近くの海域 〜

 

 海賊船ゴーイング・メリー号へ、新聞が届けられる。最新の世界情勢が書かれているそれであるが、船員達が注目するのは新聞に挟まれていた手配書。この海賊船の船長であるモンキー・D・ルフィが、ついに賞金首として手配されたのだ。手配書に載せられた顔写真は、麦わら帽子をかぶり満面の笑みを浮かべる17歳の少年。とても海賊には見えない、どこかあどけなさの残る少年であるがその外見とは裏腹に、手配書の下部には物騒な情報が記載されている。

 

 〝死を呼ぶ麦わら〟モンキー・D・ルフィ 1億ベリー

 

 「しししっ! おれ、1億ベリーだってよ!」

 

 「いや額もハンパねーけど、もっと気にするとこがあんだろうが!?」

 

 懸賞額を自慢する船長へ長鼻の狙撃手がツッコミを入れる。死を呼ぶという物騒な異名。これに対し狙撃手は抗議しているものの、本人は全く気にする素振りも見せない。同様に緑髪の剣士、金髪のコック、オレンジ色の髪をした航海士も、異名に関しては納得……というより諦観に似た表情を浮かべている。

 

 「お前ら納得してんのかよ!? ルフィと対峙した敵が、ことごとく死んじまってるのは聞いてたがよォ! 全部、()()じゃねェか!」

 

 狙撃手ウソップが語るように、ルフィが故郷から船出して以降、敵対した者は漏れなく死を迎えている。しかし、ルフィ本人が殺した訳ではない。偶然に偶然が重なった結果、彼ら彼女らは不幸な最期を迎えているのだ。

 

 

 最初の被害者は〝近海の(ヌシ)

 ルフィとは過去の因縁もある海洋生物。船出直後のルフィを襲い、返り討ちにあい海へと沈む。ルフィは知る由もないが、その後気絶した近海の主はフーシャ村へと打ち上げられ村人に美味しくいただかれている。

 

 次の被害者は〝金棒のアルビダ〟

 彼女もまた、ルフィによって一撃の元沈められた。そして、アルビダの元で雑用をさせられていたコビーを連れルフィが去った後に事件は起きる。甲板で気絶していたアルビダは、その巨体故に船体に穴をあけ海へと沈んでしまったのだ。長年彼女を乗せていた船がついに限界を迎えたのだ。数名の船員が救助へと動いたが、あの重量を引き上げる程の怪力の持ち主はいなかったのだ。せめて金棒を握りしめていなければ、海の浮力も手伝って一命を取り止めただろうが……不幸が重なり海の藻屑となってしまった。

 

 次は〝斧手のモーガン〟

 彼は海軍支部の大佐であった。異名の通り、片手が斧の男である。ルフィの最初の仲間、剣士ロロノア・ゾロに斬られ気を失いうつ伏せに倒れ込むモーガン。不運な事に、その際斧が自身の身体へと向いていた。巨体故にそれなりの重量もある彼は、自身の重みで斧が胸へと深く食い込み大量出血の果て絶命してしまった。余談だが、ルフィと別れ海軍へと入隊したコビーは現在もこの海軍支部で雑用をしている。おそらく本部へ迎え入れられる幸運は訪れないだろう。

 

 〝道化のバギー〟およびその一味

 ある町を支配していた海賊、道化のバギー。ルフィによって空高く吹き飛ばされた彼は、不運にも陸地へ墜落することなく海へと沈んでしまった。ルフィ同様に悪魔の実の能力者である彼は、もはや自力では成す術がない。そんな状況を、都合よく誰かが救ってくれる訳もなく哀れ海の藻屑となってしまった。

 それと同時に、彼の身体のパーツから血が吹き出す。バギーの一味は船長の死を確信し、ある島で次期船長を決める醜い争いを行っていた。その結果、戦闘力の高いカバジ、モージ、ライオンのリッチーが疲弊した状態を作り出してしまう。そして、間が悪くクマテ族という野蛮な民族に襲われ船員一同、鍋で煮込まれ美味しくいただかれてしまった。

 

 〝百計のクロ〟

 海賊である過去を捨て、ある資産家の財産を狙っていたクラハドールこと海賊、キャプテン・クロ。ルフィに敗れた彼は、気絶した状態で自身が切り捨てたクロネコ海賊団の面々へと投げ捨てられる。船はそのまま出航したものの、殺されかけた恨みは船員から消えることはない。非情な海賊の世界を物語るかの如く、簀巻きにされたクロは無人島へと置き去りにされる。彼のその後を知る者は誰もいない。

 

 〝首領(ドン)・クリーク〟

 海上レストラン・バラティエを略奪しようとした〝偉大なる航路(グランドライン)〟の敗北者クリーク。ルフィに敗れたのち、彼は百名程の部下と共にすし詰め状態で小舟に乗せられていた。一時は餓死寸前にまで追い込まれた身体。並ならぬ気力で激しい戦闘を行ったものの、摂取した栄養はピラフ一皿のみ。そんな状態で大怪我を負い、さらには人体による圧迫。屈強さが売りの男ではあったが、弱目に祟り目。部下の重みに耐えきれず最後を迎える結果となる。

 

 〝ノコギリのアーロン〟および幹部の三人

 長年に渡り諸島の支配をしていた海賊アーロン。ノコギリ鮫の魚人でもある彼だが、ルフィの怒りを乗せた一撃で居城ごとその野望も崩れ去った。アーロンの身柄は海軍支部へと引き渡され、近く大監獄インペルダウンへと移送される予定であったのだが……不正を働いていたネズミ大佐という男によって幹部共々毒殺されてしまった。海賊との癒着が発覚することを恐れての行動だった。ネズミという男はルフィの手配にも関与している。ルフィの経歴を洗った本部からの報告を受け、アーロンらの死も〝死を呼ぶ麦わら〟による偶然にしてしまおうという魂胆だったのだ。しかし、その目論みは失敗に終わる。生命力に長ける魚人を死へと追いやる術が〝毒〟しか無かったことが原因だ。海軍の科学力は近年になり急速に発展している。あっさりと検死で毒殺だと判明し、犯行に至る場面も〝監視電伝虫〟に捉えられていたのである。ネズミはアーロン一味の残党と共に移送され、海軍本部で軍法会議に掛けられる事となる。

 

 

 「それで? 死を呼ぶなんて言われてるアンタが、海賊王が最期を迎えた町へホントに上陸するの?」

 

 「おう!」

 

 敵対する相手に運が無かった為に、破格の懸賞金を掛けられてしまったモンキー・D・ルフィ。彼がこれから訪れる町で、果たして敵対者は現れるのだろうか───時を同じくして、不運にも3段アイスにはしゃぐ子供とぶつかってしまった海軍本部大佐がいるのだが。様々な偶然が重なった結果、彼の運命もまた大きくうねり始めている。

 

 この町へは、道化のバギーも金棒のアルビダも現れないのだから。

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