ルフィと対峙した敵に運とタフネスが足りなかった世界 作:浅学寺のえる
偉大なる航路を突き進む〝死を呼ぶ麦わらの一味〟
彼らの辿った足跡を思い返せば、世間から一味全体が〝死を呼ぶ〟と呼称されるのも仕方のない事だろう。一味と敵対した者、その殆どが既にこの世には居ないのだから──
航路の玄関である〝双子岬〟から最初の島までの道のりは、奇跡的に死者が出ない旅路だった。若干の敵対関係を見せた二人、Mr.9とミス・ウェンズデーも命を落とす事なく船旅へと同行していた。そんな腹に一物を抱えた二人にいざなわれ、一味はウイスキーピークと呼ばれる海賊を歓待する町を訪れる。そして次の朝を迎えるまでに、100人近い死者が出ることとなる。
ウイスキーピーク
この町で暮らす人々は全員〝バロックワークス〟という犯罪集団に所属している。当初は一味を歓待し、油断を突こうとした彼らだったが賞金額の高さと不吉な噂に尻込みし、意見が二つに割れてしまった。結果として半数は逃げ出し、半数は剣士ゾロに斬られる。その後紆余曲折を経て、逃げ出した半数もMr.5とミス・バレンタインという能力者の二人組に始末されてしまった。
元々島にいた人間で生き残ったのは、Mr.9とミス・マンデー。そして、素性を隠しバロックワークスへと潜入していたアラバスタ王女ビビとその護衛イガラムのみ。そのイガラムからの懇願で、一味はビビを祖国へと送り届ける約束を交わす。
そんな矢先、囮をかって出たイガラムを乗せた船が爆発炎上してしまう。怒りと悲しみを堪えるビビへ対しルフィは語る。彼は立派
「Dの名をもつ彼は気になるけれど、接触するにはリスクが高すぎるわ。1億という賞金額は、かつてクロコダイルが掛けられていた額を上回るもの。それに、敵対したものがことごとく死んでいるという不吉な噂……もう少しで〝
美女を乗せた巨大な亀が、メリー号とは違う進路で沖へと消えていった。
リトルガーデン
二つ目の島へ向けた航海中、船上では一同がゾロの身を心配するという奇妙な光景が垣間見られた。それもその筈、前の島では勘違いからルフィとゾロが戦闘するという事態になってしまったのだから。その誤解はすぐに解け戦闘自体も短時間ではあったのだが、ルフィと対峙した敵の末路を知る船員たちは安心など出来なかった。ナミは刀が危険だと取り上げ、ウソップは船室に避難していろと促す。サンジですら良く噛んで食べろと、どこかズレた心配の仕方をしていた。しかしそんな不安に駆られている内に、早くも二つ目の島へと辿り着く。
訪れたのは太古の生物が闊歩する島。そして身の丈20メートルを越える巨人族の二人が、永きにわたり〝決闘〟を繰り広げる島でもある。別行動を取った一味は、それぞれ巨人たちと親交を深める形となる。巨人という生命のスケールからして規格外な彼らが持つ〝思想〟と〝誇り〟に触れ、ルフィとウソップは大いに感銘を受ける。しかし、バロックワークスの奸計により巨人族の誇りを穢されてしまう。一味の活躍により事態は解決したものの、その際ルフィの激しい怒りに触れた二人の敵、Mr.3とMr.5は〝ケスチア〟というダニに刺された事が原因で命を落とす事となる。そしてまた、航海士であるナミもケスチアによって高熱に見舞われる事となるのだった。
「じょ〜ダンじゃなァいわよーう!? 始末しろって指令を受けたのに、もう死んじゃってんじゃないのよう!」
ルフィらが去った数日後、リトルガーデンに部下を引き連れ大柄なオカマがやってきた。彼の名はMr.2ボン・クレー。Mr.3の始末を命令され、遥々アラバスタからやってきたのだ。しかし肝心の標的が死亡していた為、能力者二人の遺体を乗せ彼らはトンボ帰りする事となる。アラバスタの温暖な気候で腐敗しない様、暗所へと安置される遺体。その船倉の扉を一枚挟んだ先には、食糧庫が存在している。料理を担当するボン・クレーの部下が、2つの奇妙な果実を発見するのも時間の問題だろう。
ドラム島
サンジが入手していたアラバスタへの〝
一方、無事に城へと辿りつき回復を果たしたナミは〝ヒトヒトの実〟を食べたトナカイ、トニー・トニー・チョッパーを仲間へと勧誘する。海賊への憧れを持つチョッパーであったが当初は仲間入りを渋っていた。いたのだが……過去の因縁があるワポルが、知らぬ間に死んでいた事をドルトンから知らされ心が揺らぐ。もはや故郷が脅かされる事はなくなり、目の前には熱烈に自分を勧誘してくる海賊たちがいる。その船長から、問答無用で「行こう!!」と誘われてしまえば断る事などできなかった。敵対した相手が不幸な死を遂げるという、自分よりもよほど化け物じみた話を聞かされてしまえばチョッパーの悩みなど簡単に吹き飛んでしまったのだ。
船へと乗り込んだ今、少し冷静になった彼は早まったかもしれないと一人戦慄するのだった。
「どうやらウチのトナカイは大変な奴について行っちまったらしいね……運命力。ヒッヒッヒ、仲間でいる連中にはさぞ有難いだろうね」
チョッパーへ医術を教えこんだ大恩人。Dr.くれはが、息子の先行きを安堵するかのように笑う。その姿を隣で眺めるドルトンは怪訝な表情を浮かべ、くれはへと問う。死を呼ぶという触れ込みに、安心できる要素などないだろうと。
少し間を置いて彼女は語る。医者が出来る事は、病による死の運命から患者を遠ざける事までだと。〝天命〟そのものを変える事は、人間には不可能な領域なのだと。
だが、もしそれすらも変える事が可能な者がいるとすれば──もはやそれは〝神〟と呼ぶに等しい存在なのだろう。