雷陽と黒龍   作:久遠 れもん

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 イナイレVくっそ楽しかったですねぇ。
 朱鞠ほろかちゃんが可愛すぎて白恋Vとのフリーバトル回し続けてるのにまるで来ない。帝国でレアドロ粘ったあとのが良いのだろうか……。

 あっ全然アレオリの二次創作ですよー。


トライアウト

 

 FFI日本代表『イナズマジャパン』選考。

 

 ウォームアップと40分一本の紅白戦という構成によって、“トライアウト”というにはかなり短期な試験となる今回だが、稲森明日人ら全国各地から集まった選手らはかかっているものがかかっているものだけに困惑する間もなく切り替えを余儀なくされた。

 

 

 

 

 FFスタジアム・ロッカールーム──────

 

 

 候補者たちは、各々のユニフォームを鞄から取り出し、選考に望む準備を着々と進めていた。

 

「……此処に来てすぐに『世界行きます!』だもんなぁ。全然実感追いつかないって」

 

 いつの間にか着心地の違和感がなくなった雷門のユニフォームに着替えた稲森は、身体に溜まったものを抜き出す代わりにため息を吐いた。

 

「ははは、確かに。雷門(ボクたち)に監督が散々匂わせてたとはいえ……」

「……まるで今日だと思ってなかった…………」

 

 そうやって口々に同調したのは、

 

 緊張しながらも愛想を欠かさず、白鳥の翼のように跳ねた頭髪を抑えるように黒のキャスケット帽を被った褐色肌の少年・日和正勝と、

 

 トレードマークのツバの青い白キャップを両手で握りしめ、太腿に上半身を乗せるように前屈みの姿勢で感覚を整えている高身長の金髪少年・万作雄一郎

 

 の2人。

 

 現雷門イレブンの中でも、一際神経質でメンタル面に弱さのある2人だが、サッカーに関しては日々の特訓に裏付けられた確かな実力と咄嗟の起点を発揮する器用さで試合の展開を支える雷門ディフェンスの要だった。

 

 そして、2人は不安定な状態を表面に見せるような者たちではない。笑って、精力を絞り出して、距離を取って、空回ってでもどうにか不安を仲間に隠そうとするはずだ。

 

「…………」

 

 

 

「──今、他人の心配すんのはやめとけよ。明日人」

 

 咄嗟に万作の背に置こうとしていた右手を引っ込める。

 

 稲森にぶっきらぼうに助言をする人物。

 声からして心当たりは1人しかなく、稲森は戦友に対して視線を向けた。

 

 立っていたのは、“フィールドの悪魔”・灰崎凌兵

 稲森のひとつ年下の中学一年にしては高い身長に鍛えられた肉体。日和よりも更に濃い褐色肌で、剃られているのか生まれつきなのか両眉がない。こちらを見つめる紅色の虹彩で囲われた黄色の小さな瞳孔は、何処か常人らしからぬ修羅の眼差しだ。

 

 稲森にとってなんら普段と変わらない灰崎の容姿だが、改めて羅列してみると“悪魔”とすら呼ばれる理由も再認識出来る。

 

 だが、稲森が灰崎を恐れるようなことはない。

 

「どっち着るの灰崎」

 

「そこかよ。まだ雷門なんだから雷門着るだろそりゃあ」

 

「ふーん」

 

「……ンだよ。その反応、気持ち悪い」

 

 過去、雷門の前に立ちはだかった巨大な壁だった灰崎だが、FF全国大会の全試合を通じて、稲森たち雷門の一員となって戦い、心の闇を完全に超克した。

 “フィールドの悪魔”という彼の(なまえ)は、呼ばれ始めから全く変わり、1人の“サッカー選手”を指すようになっている。

 

「いや、何でもない。世界でも、よろしく」

 

「……! 随分強がるじゃねえか。せっかくどんな顔してるか見に来たのによ」

 

「ありがと。でも俺も灰崎と同じFWだから……そう考えるとライバルだなってさ」

 

「ライバル同士で馴れ合う気はないってか?」

 

「何もそこまでは言わないけど……。ま、俺がまず全力出せるように、宣言しとく。俺たちが勝つよ」

 

「フン、俺の率いるチームが負けるとでも?」

 

 紅白戦は選手たち26人を2チームに分け、それぞれ『チーム紅』、『チーム白』として行われる。

 稲森は『チーム白』。

 灰崎は『チーム紅』。

 互いに別の陣営で日本代表を目指すことになるため、FF関東地区予選以来のライバル関係が復活したことになるわけだ。

 

 

 

「「──お前には負けない……!!」」 

 

 

 

 稲森は、灰崎と互いに確認し合うような強気な視線をぶつけ合う。

 すっかり2人の世界だった。

 

 だが、サッカーは2人ではできないものだ。

 ハッとして周囲を見回すと、ロッカールーム内の視線もまた、彼らライバル同士の煽りあいへと向いている。

 

「いつ俺たちはお前に率いられたんだ?」

 

 昨年FF優勝チームである雷門イレブンの一員にして、現在は“強化委員”として星章学園に所属を変えている鬼道有人は、弟子のように扱っている灰崎の言葉に冗談めかして笑う。

 ゴーグル、赤マント、ドレッドヘア(ブロンド)。知らずに見れば、心配になるレベルの大ボケ思春期学生でしかない独特な外見センスも、彼ほど選手になると最早誰一人違和感を覚えず、親しみやすさとカリスマ性を後押しする要因になっている。(諸説)

 

 すると、鬼道の冗談に続いて、誰よりも早く選考への用意を済ませていたオレンジ色のバンダナの少年が、拳を自身の手のひらに打ち付けた。

 

「良いじゃないか! それだけこの試合に本気になれてるってことだろ?」

 

 雷門サッカー部の発足人にして鬼道たち雷門イレブンを導いた伝説のキャプテンでありながら利根川東泉の“強化委員”・円堂守だった。

 既にグローブまで嵌めるほどに気合いの入りきった円堂は、ニッと大きく笑顔を見せる。

 

「ああ。今までだって本気だった奴らが、ここにいるんだもんな」

 

 緑がかった青髪で片目を隠し、後頭部からポニーテールでまとめている円堂や鬼道と同じ優勝時雷門イレブンの一員である帝国学園“強化委員”・風丸一朗太は、円堂の言葉に頷いた。

 

「野坂さんがいたら、稲森と灰崎(あのふたり)をうまくまとめられたのだろうか……」

 

「以前はともかく今の野坂がいたなら、同じように熱くなっているさ」

 

 訳あってこの場にいられなかった本年度FF準優勝校キャプテンへ思いを馳せるのは、鍛え抜かれ騎士然とした大柄の少年・西蔭政也

 

 そんな西蔭に言い加えたのは、円堂、鬼道たちに続く優勝時雷門イレブンにして、国内屈指の実力を持つ“炎のエースストライカー”・豪炎寺修也だ。

 

「ま、どんだけ熱くなったとしても、結局自分の実力をアピールできるか、だろうがな」

 

「そういう発言は良くないよアツヤ。お前だって勝ちたいって気持ちはあるんだろ?」

 

「……いや、もちろんあるけどよ兄貴。それはそれとして同じチームだろうと枠を争う敵同士だぜ?」

 

 そうやり取りを交わすのは、今年になって台頭した新時代の強豪校・白恋のエースストライカーコンビにして実の兄弟である吹雪兄弟だ。

 

 弟である吹雪アツヤの一言で、部屋の緊張は鋭く戻っていた。

 

 聞いた稲森は、自分の胸に手を当てた。

 

 

「……でも──だからこそ俺は、たとえダメでも納得できちゃうくらいに全力で勝ちを取りに行く試合をしたいって思うよ俺」

 

 

「明日人の言う通りだ。せっかくやるなら、全員本気が一番良いに決まってるもんな。だろ? ふぶき──アツヤ」

 

 円堂の言葉は、まさしく稲森の考えと同じだった。

 せっかく試合をするなら、このドリームマッチができるなら、勝利を目指したい。

 それだけの話だ。

 

「……そう、スかね」

 

 答えたアツヤがそっぽを向く。

 アツヤの兄である吹雪士郎は弟の代わりに謝罪をすると、

 

「みんなで全力で()ろうね」

 

 と、強く意気込んだ。

 

 

 すでに皆、日本代表になるべく意思を固め始めている。

 アフロディこと亜風炉照美は、ひとり彼らのことを眺めていた。

 

「………………」

 

 大胆に伸びた金色のストレートヘアと赤い瞳が、中性的かつ優雅な美しさを演出している彼だったが、曖昧な笑みを浮かべる表情は、何かに突っかかりを覚えていることが明らかだ。

 

「──なにか言いたいなら言えよ」

 

 右目に眼帯をかけた橙色の瞳で、佐久間次郎は横目でぶっきらぼうに言った。

 長く伸ばした緑に近い銀髪は、アフロディと逆に何処か野生味のある端麗さだ。

 

「佐久間君……。ううん、違うんだ」

 

「……? なんだよ」

 

「この場に、僕がいてもいいのかな……って」

 

「…………。お前も代表候補として呼ばれているんだろ? なら良いに決まってる」

 

「……! ……そうだね。わかってた気でいたけど、キミに改めて言われると僕も受け入れてしまうな」

 

「まあ、代表になれるかは別の話だがな」

 

「もちろん。ありがとう、佐久間君」

 

「……許す気はないし、俺個人は認めてもないからな」

 

「なら、今の僕を見てもらえるよう全力を尽くすよ」

 

「フン……」

 

 佐久間は脛あてを手にし立ち上がると、その場を離れ鬼道の近くへと向かっていった。

 帝国と世宇子、因縁が深い2校もまた、日本代表というひとつの目標地点を定めたことでわだかまりを一時的に放棄する。

 

 

「よし!! 行くぞみんな!」

「「「おう!!」」」

 

 やがてそれぞれの選手が、それぞれの想いを持ちながら、ロッカールームを後にしていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 FFスタジアム・競技エリア──────

 

 

 入口から入場していくと、先ほどとは一転して盛大な拍手がスタジアム中を包み込んだ。

 

「うぇッッ!?」

 

 稲森の口から何とも言い難い声が漏れる。

 

 喝采は、観客席から聞こえている。

 

 だが、もちろんただの一般市民の入場が許可されたというわけではない。

 報道陣の入場時刻もまだ先だ。

 

 

「──めんどくせェことしやがって」

 

 

 観客席を囲う者たちに気が付いた灰崎は、吐き捨てるように呟いた。

 

 雷門、帝国、星章、白恋、世宇子、千羽山…………etc。

 いるのは、候補選手たちのチームメイトや国内でも有数の少年サッカー強豪校の選手たち。

 

 全員、日本代表の結成と知って、ここへ来たのだろう。

 緊張感を趙金雲も煽ってきていた。

 

 

 

 

 

 

「……さ、皆サン集まったようですので、それでは代表を決めるトライアウト、始めましょうか♪」

 

 選手が集まり切ったことを確認した趙金雲監督は、しれっと選考の開始を宣言した。

 

 すると、競技エリアの入り口から、大人たちとそれより少し軽やかな3つの足音がコンクリートの地面が叩かれる音と重なって聞こえてきた。

 

 

「おや、ちょうどいい到着ですね~。お2人のご案内ご苦労様です、つくしさん」

 

「いえいえ、むしろ手伝えて光栄です」

 

 

 趙金雲の視線が、選手一同の頭上を通り越していき、稲森らは追って後方へと振り返った。

 

 

「あれは……!?」

 

「久遠──!?」

 

 星章の3人のうち水神矢と灰崎が、暗い薄紫色の髪ともみあげから顎にわたる髭の似合う黒いハット帽を被った男──久遠道也が現れたことに目を丸くした。

 

「──あれは、確か雷門の……」

「利根川の……」

 

 

「「「──響木監督……!」」」

 

 

 アフロディと万作に答えるように、驚く風丸の声と、喜ぶ円堂、利根川東泉中所属の短く逆立った赤髪と日に焼けた肌といったザ・運動部スタイルな少年・坂野上昇の声が重なった。

 

 久遠の隣に立つ男は、円堂たちの呼ぶ通り響木正剛という。

 後頭部で小さく結んだ髪の毛や口周りから顎にかけて長く伸びた髭は、ことごとくが白髪であり、紫色のバンダナを被り、黒いサングラスを目元重ねている。

 

 久遠と響木、そして彼らを連れて来たという雷門中3年にして現雷門のマネージャーである大谷つくしは、趙金雲の元へと歩いていく。

 

 そして久遠と響木を送り切ると、大谷は選手一同のすぐ隣に移動した。

 

「大谷も久しぶりだな」

 

「久しぶり豪炎寺くん。…………あれ、私たちってしゃべったことありましたっけ……?」

 

 敬語を点けるのか外すのか定まり切らない大谷は、首を傾け考えるそぶりを見せるが、少しして

 

「面識はあるからいっか!」

 

 と、はつらつとした表情で笑った。

 

 

「……大谷さん、なんかキャラ変わったか?」

 

 風丸がこそりと稲森に問う。

 

「……? 会った時からこのくらいでしたよ?」

 

「へー、意外だ……」

 

 風丸は思春期少女の変化に対してさほど興味もなさそうに頷いた。

 

 

 趙金雲が再びマイクを手に取った。

 

「えー、こちらが、皆さんご存知の通り、前雷門中監督の響木サンと星章学園の凄腕監督として名高い久遠サンです。今回はワタシ含めた3人で選考を進めていきますのでよろしくお願いします♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ウォームアップという名目の選考過程を経て、残るは紅白戦を残すのみとなった。

 

 

【代表選考チーム白】監督:響木

西蔭

風丸 倉掛 日和 真都路

岩垣 亜風炉 一星

稲森 吉良 基山 佐久間 吹雪士

 

【代表選考チーム紅】監督:久遠

円堂

岩戸 奥野 坂野上 万作

鬼道 氷浦 財前 服部

豪炎寺 小僧丸 灰崎 吹雪ア

 

 

 選手たちはそれぞれのベンチに着いて、紅白戦直前になって監督役となった響木と久遠に概要を聞かされる。

 

 前提となるルールとしてはこうだ。

・40分一本。

・交代制限ナシ。それぞれ監督のタイミングによって、交代が決められる。

・連携必殺技及びオーバーライドの禁止。

・必殺タクティクスは、やれるものならやってみろ。といっていたが、即席チームで出来るはずがない。

 

 つまるところ、選手間の対応力や個人能力を測るための試合だ。

 自らにできることを尽くし、それぞれのチームで活かすことが大事になる。

 

 

 ◇

 

 

 -代表選考チーム白-

 

 スタートポジションの発表を受けた稲森たちは、ベンチで軽くストレッチをしながら周囲の選手と試合前のコミュニケーションをとっていた。

 

「冷静になって見てみれば、いったいどういうバランスのチーム分けなんだこれは……」

 

「確かに。円堂さん、鬼道さん、豪炎寺さん、主役級の人たちがことごとく紅チームにいるんだな……」

 

 大柄マッチョにツーブロックの紫髪を後頭へと流した益荒男らしい外見をした稲森にとって印象深い初勝利の相手“美濃道三中”主将・岩垣登郎

 その隣の涼やかな青髪にクールな切れ長の目、いるだけで夏夜の外気が柔らかくなるような美男子は、稲森もよく知る親友である幼馴染チームメイト・氷浦貴利名

 

 おそらく緊張故に、2人とも各々外見からは想像しえないような弱音を溢れ落としていた。

 

 2人の隣では、日和が「ははは……」と、同じく緊張を隠せず苦笑いを浮かべている。

 

「うーん……」

 

 稲森は言葉を探して視線を彷徨わせている。

 

 ──自分に、仲間のメンタルを保たせてやれるほどの器量はない。

 FF決勝戦──現雷門主将の不在時、キャプテンマークを右腕に巻いた経験故に理解した自分の未熟さを再認識する。

 

 先ほど灰崎が間接的に咎めた通り、稲森明日人に人をまとめ上げる力はない。

 そういった役は、他に適任がいる。

 

「──バランス、という面においては五分なんじゃないでしょうか?」

 

 例えば、後方から歩み寄ってくる彼のように。

 

「誰だ……?」

 

 氷浦が自らの記憶を探るように眉をひそめる。

 

 中心に吸い込まれるような紺色の瞳と夜空を写したような紺色の髪、薄白い肌をした稲森より僅かに低い背丈。光にあたってなお暗く、夜闇の下であるにも関わらず明るい──眼前の少年は、そんな矛盾めいた存在感を纏っていた。

 

 やはり、声も姿も思い当たるところはない。

 

 だが、彼も此処にいるということは、イナズマジャパンの候補として招集を受けたのだろうか。

 

「円堂さんを始めとした3人以外の選手はこの一年で台頭したチームの選手がほとんど。一方で、こちらは一年内の台頭したチームのキャプテンたちが多い。個人単位では現状、途方もない経験の差がありますが、チーム白は司令塔たちがどのように試合を組み立てるかというのがおそらく…………」

 

 矢継ぎ早に説明をしている途中で、青い少年は頬を染めたと思うと、すぐに「すみませんっ」と頭を下げた。

 呆気に取られていた氷浦が焦りながら顔を上げさせる。

 

 稲森は、中学生離れした堅い礼儀にむず痒くなりながらも、彼のことが気になっていた。

 

「俺、稲森明日人。こっちは同じチームの氷浦と日和。それと……」

 

「……美濃道三中キャプテン、岩垣だ」

 

「──君は?」

 

 青い少年は、稲森の自己紹介に応えるように右手を差し出した。

 

「初めまして、一星充です。つい昨日にロシアから」

 

 一星の付け加えた一言で、ようやく腑に落ちた。

 

 イナズマジャパンは、国内の少年サッカードリームチームなどではない。

 日本が世界に挑むために結成される代表選手たちであり、それは日本人であれば海外で活躍する選手でも適用される。むしろ、世界の舞台を知る経験の分、招集をする方が戦力は増すだろう。

 

 この試合において、一星が同じチームになれたのは幸運で、

 この試合において、一星が同じチームになってしまったのは不運といえた。

 

 自分にとって、未知のサッカーをする存在が此処にいる。

 

「これから……、よろしくな!」

 

 “これから”。

 

 試合中、という意味か。それとも、それを踏み越えた“先”のことか。

 稲森自身もどちらと断言はできないが、棘の道をも進む覚悟がある。

 

 稲森が力強く言い切ると、聞いた一星は目を丸くしていた。

 

「──」

 

 ふと稲森の視線と一星の視線が交わる。

 

 すると、スタジアムの照明で影を作っていた一星の表情が途端に晴れた。

 

「うん……! よろしく、明日人くん!」

 

 一星は雰囲気を一変させ、明るい表情で笑っていた。

 

 

 

 

 ──ピッ!!

 

 ひとつ、ホイッスルが鳴った。

 試合開始が近いらしい。

 

(どんなポジションだろうと、俺のできることを……)

 

 稲森は小さく息を漏らすと、ヨシ、とつぶやいて試合に向かって歩を進め始めた。

 

【チーム白・フォーメーション】

『F-ベーシック』

[FW]基山 吉良

[MF]岩垣 亜風炉 一星 稲森

[DF]風丸 日和 吹雪士 真都路

[GK]西蔭

 

 ◇

 

 -代表選考チーム紅-

 

『──交代に関する制限がないということは、生半可なプレイをした場合、すぐにベンチとの交代となる。たとえキーパーの円堂であっても、即刻だ』

 

 コートの最前に立つ小僧丸サスケは、つい数分前の久遠道也の言葉を思い出していた。

 

 他より小柄で、肉体も太り気味。甘え続けてきた肉体はそう簡単に変わってはくれない。

 豪炎寺修也という憧憬に出会い、勢いのままにDFからFWへの転身。

 技術を磨き上げ、雷門の新たなストライカーとしてFF優勝への貢献を果たした小僧丸だが、その内情は未だ慢心のひとつもない。

 

 ただ、この場に立って、同じチーム、この状況、意識しないでいられるはずはなかった。

 

 

「豪炎寺さんがベンチスタート……」

 

 対陣から稲森の独り言が耳に届く。

 

 豪炎寺修也と小僧丸サスケ。

 小僧丸が追ってきた存在は豪炎寺。つまり、2人のプレイスタイルは似たものがある。

 

 そんな中で監督陣は「小僧丸を先に見る」と言っているわけだ。

 

 緊張しないはずがなかった。

 

【チーム紅・フォーメーション】

『F-ベーシック』

[FW]灰崎 小僧丸

[MF]氷浦 吹雪ア 鬼道 服部

[DF]坂野上 奥野 岩戸 万作

[GK]円堂

 

 

 ◇

 

 

 ピ──────ッ

 

 試合開始のホイッスル。

 

 覚悟と準備のできた選手であっても、そうでない選手であっても、代表選考は佳境へ突入していく。

 稲森明日人はどちらなのか、後戻りのできない40分が始まった。

 

 





 次回『オーバーロード』
 予定投稿日・明日

 白恋Vの設定文が刺さりすぎて、毎回「なにーーいっ!」してる。
 なので今後しばらくの後書きは色々書きたくなる癖を抑える意味も込めて彼らを一人一人語ることにします。

・寒河江→ほろかチャンからキックオフ貰ってるところを俺に見せつけてくる火FW。白恋V戦は千乃会長をFWにしてトップ下ソジ星村で固めることもあり基本コイツを止められないからイラッとしていたが……魂の形がクマ殺しすぎるだろ。
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