雷陽と黒龍   作:久遠 れもん

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 あけましておめでとうございます。
 今年も何卒よろしくお願い致します。
 
 新年早々予約投稿をミスしてこの回フライングしました。スミマセン


イナズマジャパン

 

 選考試合を終えて、1時間。

 FFスタジアムは、強豪のサッカークラブやサッカー部、報道関係者たちを客席に招いて、今か今かとイナズマジャパンの発表を待っていた。

 

「おー、結構良いとこ陣取れたんじゃないか!? やるなぁ、俺!」

 

 黒縁の眼鏡、つば付きの鳥打帽、顎に僅かに生やした髭、知的な外見に沿わず黒く焼けた肌──スポーツ雑誌の記者である紀村陽介もまた、チームの発足を待つ者の1人だった。

 

『思えば、昨年! 雷門イレブンがスペインの強豪“バルセロナ・オーブ”とのエキシビションマッチに大敗を喫した夜から始まったのでしょう! 彼ら選手は、夢を叶える為! まだ見ぬ好敵手と出会う為! 世界の頂点を勝ち取る為! 今夜を迎えたのだろうと思います! そして今夜遂に────』

 

 紀村が置いた三脚に取り付けられた携帯端末は、つい数分前に配信が始まったイナズマジャパン発表の生放送に乗った実況席の熱狂が聞こえている。

 

「ノってんなぁ……」

 

 流石に周囲の関係者への迷惑なほどの音声なので、紀村は額に皺を寄せながら携帯端末ごと音量を下げて行く。

 

「さてさて、気を取り直して……どうなるかなぁ“イナズマジャパン”……!」

 

 紀村はカメラの位置をスタジアム中心のステージに向ける。

 と、その時。

 

「──“イナズマジャパン”。彼らは果たして、あの星々に届く矢となれるのかしら」

 

 隣の幼女が何か言っている。

 彼女の友達……らしき人物はどこにも見当たらないが、まさか自分に話しかけているとは思わず、その物知りな幼女の言葉を咀嚼しながら、紀村はカメラの調整を続けた。

 

(何処から迷い込んだ……?)

 

 現状に理解が追いつき、思い至る。

 

(これはもしや、自分が迷子少女を何処か連れて行かなければならないヤツか……?)

 

 周囲の空気を探るように、ゆっくりと視線を再び少女に向ける。

 

「貴方はどう思う?」

 

 ──明確に話しかけられた。

 

 視線が合うと同時に口を開き、現在進行形で目が合っている。

 

「どう、と言うと……?」

 

 少女は立ち上がり、紀村が両手支えながら膝上に置いていたカメラを手のひらで一度だけ撫でた。

 

 紀村は訳がわからず、カメラから少女へと顔を上げる。

 

「ねえ、撮って」

 

 少女は右目に両手の親指人差し指で長方形の窓を作ってニコリと笑う。

 

 やはり訳がわからないまま、紀村は反対する理由もないのでカメラを覗いた。

 

「ほら早く」

 

 急かされた紀村はため息をついて、仕方なく電源を入れた。

 だが、起動したカメラの画面に映った少女は、ふい、とレンズの視野からいなくなる。

 

「……?」

 

 カメラがスタジアムの反対側に座る豆粒のような人の群れを画面に見せる。

 

「“帝国”……“白恋”……“雷門”……」

 

 古くから続く伝統の学校も、突如台頭した新星の学校も、日本代表に候補としてすら名の挙がらなかった者たち、そして恐らく実力を伴っていながら落選した者たち。

 

 倫理がまるでなっちゃいないが、ズームして彼らに近づいて行く。

 

「………………」

 

「何か見えた?」

 

「……中学生で、あんな表情が出来るんだな」

 

 紀村が呟くと、少女は何処か得意そうに鼻を鳴らす。

 彼女の様子は視界にないが、自信あふれる様は充分伝わってきた。

 

「そうね。彼らにとって、世界は憧れの舞台。それはきっと今から現れる選手たちも痛いほどわかっているわ。そういう人を選ぶと言っていたもの。……これは革命なの、憧念が集まる──太陽を取り返すために、空に雷霆の矢を放つ。そんな、天変地異のような超次元──」

 

 少女が一息置いたのがわかる。

 

「──娯楽で終わらせるのは勿体無いでしょう?」

 

「……はぁ、なるほどね。親が熱心なファンなのかな? そうやって、俺みたいな記者(ミーハー)を言いくるめてる訳だ」

 

「さあ? ……でも、貴方はおもしろそうだから、また会いに来るわ」

 

 少女は客席の階段を歩いて上がって行く。

 

 紀村は彼女の後ろ姿を見届け、再びカメラをコートの中心へと戻した。

 

「……なら、見せてもらおうか。俺たちの“イナズマジャパン”が、世界に何を起こすのか」

 

『──さあ! まずはイナズマジャパンの監督・趙金雲が入場します!!』

 

 

 

 ◇

 

 

 

『皆さん、本日はお集まりいただきありがとうございます……なんて、挨拶は必要ないですかねぇ』

 

 前置きを始めたかと思うと、前置きが終わる。

 

『では、FFI日本代表“イナズマジャパン”──入場してください?』

 

 あまりにも淡々と進められる会は、遂に……とも言い難いほどの早さで発表の時を迎える。

 趙金雲の隣に立つ久遠道也がマイクを持った。

 

 選手たちには先に説明がされたが、彼はコーチとして代表合宿に参加をするらしい。

 

 と、イナズマジャパンの入場が始まった。

 

 

『“キャプテン”──円堂守

 

 

『“副キャプテン”──鬼道有人

 

 

『同じく“副キャプテン”──稲森明日人

 

 

『──風丸一郎太

 

 

『──岩戸高志

 

 

『──吹雪士郎

 

 

『──坂野上昇

 

 

『──岩垣登郎

 

 

『──亜風炉照美

 

 

『──吉良ヒロト

 

 

『──豪炎寺修也

 

 

『──灰崎凌兵

 

 

『──真都路珠香

 

 

『──一星充

 

 

『──氷浦貴利名

 

 

『──佐久間次郎

 

 

『──万作雄一郎

 

 

『──基山タツヤ

 

 

『──西蔭政也

 

 

『──以上、19人を日本代表とし、“イナズマジャパン”は世界へ挑戦します』

 

 






 次回『合宿が始まるらしいですよ』
 投稿予定・1月前半

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