ウタハに案内され、工房の奥へと足を進めた私だったが、そこで見たのは一部のパーツが外された状態の、金ぴかのバケモノ。
目に光はともっておらず、完全に停止状態だ。
「流石の技術力ね、未知の物体をここまでキレイに分解できるなんて、設計図も説明書も何もないでしょうに」
「ユウカから話は聞いていたが…良い腕だ」
「まぁね、と言いたいところだが今回の件、私は何もしていないよ。別の案件の締め切りが近くてね」
ミレニアム内での武器製作のほとんどはエンジニア部が担っている。
勿論、市販の火器もあるが…ここで頼んだ方がずっと高性能で独特な物を手に入れる事ができるので依頼が絶えない。
「ウタハ先輩がやってないって事は…もしかして…」
「「そのもしかして(だよ)(です!)」」
「そ、その声は…」
新たな影と共に、声が聞こえてきた。
「エンジニア部所属、一年生…
「同じく一年!
「「二人あわせて」」
「…そんな決め台詞があったのね…」
「いや、無いね…今日が初めて」
「はい!なのでどういった風に登場するかを話し合いました!」
「イヤ、話し合ったならコンビ名まで考えなさいよ…中途半端でモヤッとするわね」
「モヤッと…えと、ごめんねユウカ、胃薬はもってないや」
「このモヤモヤを消せる胃薬がこの世に存在したなら今すぐにでもカートン買いするわ…というか交渉してミレニアムで生産するわよ」
一瞬、そのような薬がキヴォトスに存在するのかと胸が高鳴ったが…悲しいかな、存在しないらしい…あの不愉快な感覚は体の不調ではなく気持ちの問題なのだろう……無理難題かもしれないが、世の中の研究者達よ…頼む、薬学はさっぱりなんだ。
「ところで、そこのまーるい方は、もしかして…」
「あの噂の?」
一年生二人の視線がメタナイトに注がれる。
「ええそうよ、あなた達が今取り掛かってる案件のクライアント…シャーレのメタナイト先生よ」
「おぉ…本当に丸いんだ」
「ヒビキ貴方ね…」
「大丈夫だユウカ、いっそもうこの体型に関しては持ちネタにしようかと思っていた所だ」
果たしてこのネタが笑いにつながるとは思えないが…まぁいくつか考えておこうか…まさかネタ帳を作る動機が生まれるとは思いもしなかったな…これで芸人の気持を理解できるようになるのだろうか?
「ありがとうございました先生~おかげで素晴らしい体験をさせてもらいましたよ!」
「うん、キヴォトスの外の兵器に触れるだけじゃなく、分解する機会がくるとは思ってもいなかった」
「私からも感謝だ、おかげで新たなアイディアが浮かんできたよ、エンジニア部の躍進はまだまだ続く!」
「やる気があるのは良い事だけれどその矛先が間違った方に向かない事を祈るわ…」
「で…分析結果を頼みたいのだが、よいかな?」
「待ってました!」
勢いよく手を挙げるコトリ
「まず、この金ぴかな装甲ですが…最大で400ミリ程、薄いところでも150ミリはありました」
「重戦車レベルの厚さだね、でも流行りの複合装甲って訳じゃないみたい」
ヒビキが付け足す。
複合装甲…と言うのは本でみたな…この銃社会のキヴォトス…生きていくにはそれ相応の知識が必要だ…という事で本屋でそう言った武器の事が載っている本を買い漁っていたのだが…買いすぎてユウカに説教を喰らったのはつい最近の事。
あれ以来なぜか、ユウカに購入制限を付けられた。教師の財布事情をコントロール生徒がこの世に存在するとはな…
話がそれたな…複合装甲…その名の通り、複数の素材からできている装甲だ、ただの鉄の板よりも高い防御力を発揮するらしいが、コストが高いためキヴォトスではメジャーな物ではないらしい。
いってしまうが戦車より人体の方が防御力が高そう…だからだろうか?
「正直言いますと、この装甲だと容易に貫徹できると思うんですよね…複合装甲って訳でも無かったですし…まぁ下手な弾なら全然弾くとは思いますよ!あ、ですが一番おどろいたのが装甲板が一枚で出来てるってことですよ!鋳造した訳でもなさそうですし、溶接跡もない…プレスってのは無理でしょうし…凄い技術です!」
「ふむ…」
メカ…とは言うがやはり魔獣…ヤツのバケモノじみた能力の賜物なのだろうか…鳴き声もまるで生き物…いやそもそもメカが鳴く時点でおかしいのか…?
「確かに装甲は厚いけど、HEAT*1やHESH弾*2…APFSDS*3みたいに砲弾自体の性能が凄いから砲自体がそこまででも弾薬で何とかなってしまうところだよ」
「でもそんな砲弾を容易にポンポン撃つ事ができる状況なんてあまりないだろうね…市場に出回っている砲弾なんて通常の徹甲弾がほとんどだろうし、そこまで性能が高い弾を個人が…下手すると企業でも手に入れる事は困難だろうから」
「簡単に手に入る有効打はバズーカやパンツァーファウスト…あとPIATかな?でも防護システムとか反応装甲さへつけちゃえばそこまでかも、その三つは弾の速度も遅いしね」
「なるほどな…武器がそろっていれば対処できるが…脅威であるのは違いない…と」
「だね」
「ロブスターだから茹でたら簡単に撃破できるかもね」
「なるほど…でかい鍋を作るのも検討しようかな…調理器具の開発はまだやった事ないが…」
「鉄の塊を茹でてどうするのよ」
「茹でるより凍らせた方が有効かもな」
咄嗟な判断がうまくいこともある…まぁアイツは料理の事しか考えてなかったんだろうが…そう考えると怖いな、あの鉄の塊を本気で食材として見ていたのか?
「おぉ!その手があったか!冷凍銃の開発も視野だな!」
「物体の分子運動を止めるのは難しいですからね…困難な道のりになりそうです!」
どうやらまたまた、彼女たちのやる気に火がついたらしい。
「先生、やってくれましたねこうなるともう聞く耳もちませんよ…はぁ…また調整が必要そうですね…ノアにも手伝ってもらおうかしら…」
「…そんなにか…失礼だがそんなにこの学園は財政で困っているのか?街並みを見るとそのような空気は一切感じんかったが…」
「うま~く隠してるんですよ…そうです先生…今度セミナーの執務室に来てください、ベールの中を見る事ができますよ」
「ふふ…全身全霊で遠慮させてもらう」
「武装も面白かったよ、火炎放射器にバルカン砲…極めつけに光線砲…仕組みはこれから分析するつもり」
「見事にロマンの塊じゃないか…派手な武器に派手な武器!おまけに派手な武器!すばらしいよ…これの設計者とはいい酒が呑めそうだ!まだお酒飲めないけど」
「あなた達が好きそうなモノの盛り合わせね…全部メインディッシュじゃない…」
まぁユウカの言う通りだ、火力に火力を付け足したような武器構成…どれがメインでサブなのかが全く分からない…所謂『トリガーハッピー』…という奴なのだろうか?あの大王が好みそうだ。
まったく…飛び道具は良く分からないな。
数ある武装…の中で特筆すべきなのはあの光線砲だろう。
アレに関してはハルバードの隔壁を溶解させることができる威力だ、あれが人体に命中してしまった時の事は…想像もしたくないな。
「そもそも、歩行兵器って時点で素晴らしいと私は思います…まだ静止状態しか見れてませんが…このぶっとい脚で敵を踏み潰す姿を早く拝みたいですよ!果たして、一歩一歩踏みしめるような動きなのか、それともおもちゃのロボットのようにガシャガシャ小刻みに歩くのか…あぁ…専用BGMが聞こえてきます!」
「専用BGMって…ゲームのボスキャラか何かじゃないんだから…まぁ確かに中ボスぐらいの感じには見えるけども…」
「専用の曲があるって事は…結構優遇されてそうだね…コアなファンが多そうだ」
「脚にスラスターが複数あったから…もしかした見た目に寄らず高機動なのかも」
「スラスターを吹かして、高速移動…攻撃が来たら逆噴射してクイックな回避…いいね痺れるねぇ」
「少しホバーさせたらどうだろう?難しいかな?」
「いや、やって見る価値はあると思います!」
「脚が太くなりそうだけど…まぁ致し方ない犠牲だ…ってやつです!」
「…私を見ながら言うのやめて欲しいわね…ミレニアムタワーの最上階からおもりつけて落とすわよ」
「ははは!久しぶりにお金関係以外のユウカの脅しを聞いたよ」
「…」
いらだちを隠せないユウカ、そんな彼女をなんとかなだめる。
「ここをこうすれば…」
「元のデザインを生かすためにはどうしたらいいかな?」
「新素材開発部に頼んで甲殻類の体に近い装甲を開発してもらいましょうかね?」
ヒートアップするエンジニア部の面々。
その光景を眺めつつ、横に立つユウカに問う。
「これは平常運転か?」
「まぁこれに近い状況は何度も見ましたが…ここまで盛り上がってるのは久しぶりですよ…」
「久しぶり?」
「確か、宇宙戦艦用のレールガンを実用化レベルまで持っていけた…と言っていた時だったはずです」
「宇宙戦艦…か」
「一体何と戦うつもりだったのか…」
「キヴォトスの征服とかだろうか?流石にベタすぎるか」
「なんだか別の惑星に…何かを取りに行く…?とかふわっとした事だけ聞きましたね」
宇宙戦艦…
友と夕日と…お約束。
「それにネーミングセンスもいい!ヘビーロブスター!実にしっくりくる!」
「全然見た目にロブスター感は無いのにロブスターと言われるとそう見えてくるのが!」
「改造する時はもう少しロブスター要素が欲しいね…」
「尻尾をつけてそこから、攻撃を…」
「その…へびー?ロブスターでしたってけ?…もともと先生の世界の物と聞いていましたが…一体どんな所なんですか?下手すりゃキヴォトスより危険な気がしますよ?」
ユウカの言葉を受け、プププランド…ポップスター…あの銀河の事を思い浮かべる。
ピンクの悪魔…自称大王…玉乗り道化師…虚言の魔術師…銀河最強の戦士…ダークなマターに鏡の世界の充血目玉…銀河に名だたるカンパニー…そして破神…まずいなあげるとキリがない…そもそも一体だれなんだ、プププランドを『呆れ返るほど平和な国』と呼称したヤツは。
そもそもとしてあのナイトメアが存在している時点で平和ではないな…
まずいな、私の感覚は麻痺していたのだろうか?
「………そんな事はない…飛んでいる鳥が寝落ちしてしまうほど平和な場所だ」
「その間はダメな間なんですよ」
「飛んでいる鳥が寝るほどってそれはそれで怖いね」
再び、例のバカでかい扉の前に戻ってきた私は、エンジニア部に別れを告げた。
さようなら…ではなく、また会おうだ。こっちの方が何だか良い。
「今日は良い時間を過ごせた、ありがとう」
「いやいや、先生…感謝したいのはこっちだよ」
「仕事はちゃんと最後までやります!また後日、情報をまとめて書類をシャーレにお送りしますね!」
「あのロブスターくんもしっかり組みなおして送るから、まってて」
「いや、送ってもらうのは書類だけでいい、あれは君たちにまかせよう」
正直、この世界であれを私が活用する方法が見当たらない…艦の防衛ならまだしも、シャーレの警備にヘビーロブスターを…と言うのは無理な話だし過剰だ…壁を削りながら進んでいく光景が見える見える。
彼女らに預けていた方が一番良いだろう。決して厄介ごとを押し付けたかった訳ではないぞ。
メタナイトの一言にどっと盛り上がるエンジンア達。
「せ、先生!それは本当か?ありがたい!あれでやりたい事が沢山あるんだ!コトリ!すぐにCADの用意だ!ヒビキはスケッチブックとえんぴつセット!」
「了解です部長!」
「うん、わかった」
ウタハの声で一年生の二人はそそくさと駆けて行った。
早速、作業に取り掛かるつもりだろうか?
「ふふふ、期待していてくれ先生!」
「フッ…楽しみにしているぞ」
「あぁ!先生、それともう一つ…何かあったらまた頼ってくれると嬉しい…これは私のモモトークだ」
ピコン♩
「よし、確かに受け取ったぞ」
私は再び、彼女と握手を交わし、エンジニア部の元を去った。
「……」
(あのヤバイ兵器がエンジニア部の手に…先生ったらぁ…)
ユウカの頭痛の原因が増えに増えた一日だった。
次回はまたアビドスのお話です。
なんかよく分からないですけど、ヴァルキューレイベのメカワニちゃんとヘビーロブスターって雰囲気似てますよね()
カービィシリーズのプレイ経験は?
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あるポヨ
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無いZOY
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ガチ勢なのサ