・記憶吹っ飛んでるは草(草生やすな)
・悪い子じゃないんだよ、多分
・最後メンヘラかぁ!?(絶対違う)
「・・・え?今、なんて・・・」
「・・・俺を殺すことが、ここから出る唯一の方法だ」
「な、何でそうなるの!?僕が君を・・・え・・・?」
「本当は、こんなことお前に言いたくなかった。・・・隠していてすまない」
「そ、それは別にいいけど・・・。何で君を殺さないといけないの・・・?」
「・・・そうだな。お前、車は分かるな?」
「え、うん。分かるよ」
「普通、車って運転席は一つだよな。その運転席に、お前が乗ったとする。そしたら車はどうなる?」
「動くよね?僕が運転するとおりに」
「そう、それが普通の状態だ。お前の意志で、お前の体が動く。当たり前のことだ」
「まあ、それはそう」
「・・・じゃあ、何らかの理由でその運転席が、誰かに取られたとしよう。その場合、車を動かせるのは誰だ?」
「僕から運転席を取った人・・・になるよね?」
「そうだ。それが今のお前の状態。俺が無理やり運転席を取り、勝手に運転してるんだ」
「なるほど・・・でも、それが君を殺す理由には・・・」
「じゃあ、お前がまた運転席に戻るためにはどうすればいい?」
「うーん・・・。交渉して、席から降りてもらう・・・とか?」
「・・・仮に成功したとしよう。だけど、相手も降りる方法を知らなかったら?」
「え・・・。こっちが無理やり運転する・・・のは危険だし。でも諦めるわけにもなぁ・・・殴って気絶させる?」
「想像以上に脳筋だなお前」
「うーん・・・でも殴るのは嫌だなぁ・・・難しい」
「もっとあるだろ。・・・例えば、殺すとか」
「えっ、そ、そんな・・・。でも、まだ何か方法があるんじゃないの!?例えば・・・二重人格・・・とか?」
「無理だ。俺がお前の人格になる方法なんて知らないし、知ってたとしてもお前に負担がかかりすぎる」
「うう・・・、で、でもまだ何か・・・!」
「・・・俺も、最初はまだ方法があると考えたさ。そして、一つを実行に移した。・・・でも、結局意味がなかった」
「え、何かやってたの?」
パリンッ!
「え、これ何のおt」
グラッ
「うわっ・・・!」
ものすごいめまいと同時に、前屈みに倒れ込んだ。
そして、激しい頭痛と吐き気に襲われた。
「だ、大丈夫か!?しっかりしろ!」
「うぐっ・・・はぁ、はぁ・・・。何、今の・・・」
「・・・とりあえず無事そうだな。立てるか?」
「うん・・・ありがと。・・・ってあれ!?記憶戻ってる!」
「・・・ってことは、今のは記憶が戻ったことによるショックみたいなものか。そこまでショックが大きいとは・・・、もうちょっと慎重になるべきだった」
「びっくりしたぁ・・・。もしかして、また誰か来ちゃったり・・・?」
「それはない。・・・ほら、さっきと景色が違ってるだろ?」
「え・・・ってほんとだ、バラが消えてる」
「さっき、あのバラはお前をコントロールしているって言っただろ?さっきまで生えていたバラが何をコントロールしていたのか。それは、お前の記憶だったんだ」
「えっと・・・つまり、さっきまで生えてたバラのせいで僕は記憶喪失になっていた・・・ってこと!?」
「まあそうだな」
「な、何でそんなこと・・・」
「・・・この世界には、魔力という物があるらしくてな。そして、俺の今の体の特性上、魔力をすべて使い切ったら消滅出来るんじゃないかと思ったんだ」
「まあ、初めて見たときは明らか生物じゃないなーって思ったからね。あの球体みたいなの」
「・・・そうだな。ただ、それはうまく行かなかった。結局使い切っても消滅する事はできなかった。・・・それどころか、さらに悪化した」
「え?」
「・・・自分の体を見てみろ」
「え、何か変なところが・・・っな、何これ!?」
いつの間にか、体の周りに黒いもやがまとわりついていた。
「今はまだ少しだけだが、時間がたったら全体を覆うぐらいにはなるだろうな」
「怖っ・・・何でこうなったの・・・」
「恐らく、失った魔力を補うためにお前から吸収してるんだろうな」
「・・・そしたら、いつか僕の魔力も無くなっちゃう・・・よね。そしたらどうなるの?」
「・・・それは俺にも分からない。だが、ろくでもないことになることぐらいは予想できる」
「ろくでもないこと・・・」
「もし吸い取るものが無くなったら、別の物で補うことになるだろう。・・・例えば、生命エネルギーとか。後は、周りにいる奴らから奪い取る・・・とかな」
「っ・・・!ほっといたら、僕だけでなく周りにも・・・」
「そうなる可能性が高い」
「う、嘘・・・」
「・・・お前、記憶戻ったんだよな?それなら、さっきまでよりも断然やりやすいと思うが・・・」
「・・・そんなことないよ。だって、あの時からなんとなく感じてたもん」
「感じた・・・?何をだ?」
「何というか・・・すごい、悲しい感じがしたんだ。顔色とか、そんな感じで」
「いや、あれに顔も何もないだろ」
「それでも、なんか分かるんだよ。・・・あれかな、いろんな歌を歌ってきたから・・・かな?」
「歌・・・?何か関係があるのか?」
「・・・歌ってさ、作った人の想いで出来てる・・・ってどっかで聞いた気がするんだ。いろんな想いにふれてきたから、そういうのを感じやすくなってるのかなって、僕は思ってる」
「・・・そうなのか」
「全然違う可能性もあるけどね。あり得るかなって思っただけだよ」
(・・・歌に対する価値観が全然違う。昔は、そんなお前に苦しめられたよ。・・・でも)
「・・・やっぱり、お前はここで消えるべきじゃないよ。・・・覚悟は出来てるから」
「・・・分かったよ、頑張ってみる」
手に力を入れ、氷の刀を作る・・・はずだった。
「・・・っ、全然、出来ない・・・」
「深呼吸したら、少しやりやすくなるんじゃないか?」
「う、うん」
(落ち着け・・・しっかりイメージして、なんかこう・・・うまい感じに・・・)
「・・・」
「・・・短いのは出来たな」
「はぁ・・・、なんか集中出来ないなぁ」
「別に短くても刺せるだろ」
「いや・・・ダイレクトに刺す感触が伝わるの・・・嫌だから」
「まあ・・・確かにな」
「でも、これで行くしかないよ。文句言ってる場合じゃないし」
そう言いつつも、彼の手はかなり震えていた。
(みんなのためにも、この子のためにも、今やらなくちゃいけない。一瞬で終わる、これを、刺すだけで、なのに手が・・・!)
「・・・あっ、ご、ごめんね。ちょっと緊張してるだけ・・・だと思うから」
「・・・そうか」
(もう、これ以上無理をさせたくない。だが、今の俺に何ができる・・・?)
「すぅ・・・、はぁ、はぁ・・・」
「・・・こんなこと言ってすまないな。きっと、お前にはかなりつらいことだったと思う」
「・・・え?」
(・・・最初から、こうすれば良かったんだ)
「でも・・・もういいんだ。全部、俺がやる」
(こいつを悲しませずに、消える方法)
「え、ちょ、ちょっと待って、何で急に近づいて・・・」
(もしかしたら、少し待っていたらこいつは意を決してやってくれたかもしれない)
「やるって何?怖いよ、ちょっと・・・」
(でも、これ以上悲しんでるのは見たくないんだ)
「・・・やっと、終わりにできる」
「ずっと苦しませて・・・ごめんな、カイト」
グサッ