東方歌謡録   作:みかみりん

76 / 156
前回の・・・何だっけ?(あらすじだよ)
・記憶吹っ飛んでるは草(草生やすな)
・悪い子じゃないんだよ、多分
・最後メンヘラかぁ!?(絶対違う)


君の想い

「・・・え?今、なんて・・・」

「・・・俺を殺すことが、ここから出る唯一の方法だ」

「な、何でそうなるの!?僕が君を・・・え・・・?」

「本当は、こんなことお前に言いたくなかった。・・・隠していてすまない」

「そ、それは別にいいけど・・・。何で君を殺さないといけないの・・・?」

「・・・そうだな。お前、車は分かるな?」

「え、うん。分かるよ」

「普通、車って運転席は一つだよな。その運転席に、お前が乗ったとする。そしたら車はどうなる?」

「動くよね?僕が運転するとおりに」

「そう、それが普通の状態だ。お前の意志で、お前の体が動く。当たり前のことだ」

「まあ、それはそう」

「・・・じゃあ、何らかの理由でその運転席が、誰かに取られたとしよう。その場合、車を動かせるのは誰だ?」

「僕から運転席を取った人・・・になるよね?」

「そうだ。それが今のお前の状態。俺が無理やり運転席を取り、勝手に運転してるんだ」

「なるほど・・・でも、それが君を殺す理由には・・・」

「じゃあ、お前がまた運転席に戻るためにはどうすればいい?」

「うーん・・・。交渉して、席から降りてもらう・・・とか?」

「・・・仮に成功したとしよう。だけど、相手も降りる方法を知らなかったら?」

「え・・・。こっちが無理やり運転する・・・のは危険だし。でも諦めるわけにもなぁ・・・殴って気絶させる?」

「想像以上に脳筋だなお前」

「うーん・・・でも殴るのは嫌だなぁ・・・難しい」

「もっとあるだろ。・・・例えば、殺すとか」

「えっ、そ、そんな・・・。でも、まだ何か方法があるんじゃないの!?例えば・・・二重人格・・・とか?」

「無理だ。俺がお前の人格になる方法なんて知らないし、知ってたとしてもお前に負担がかかりすぎる」

「うう・・・、で、でもまだ何か・・・!」

「・・・俺も、最初はまだ方法があると考えたさ。そして、一つを実行に移した。・・・でも、結局意味がなかった」

「え、何かやってたの?」

パリンッ!

「え、これ何のおt」

グラッ

「うわっ・・・!」

 

ものすごいめまいと同時に、前屈みに倒れ込んだ。

そして、激しい頭痛と吐き気に襲われた。

 

「だ、大丈夫か!?しっかりしろ!」

「うぐっ・・・はぁ、はぁ・・・。何、今の・・・」

「・・・とりあえず無事そうだな。立てるか?」

「うん・・・ありがと。・・・ってあれ!?記憶戻ってる!」

「・・・ってことは、今のは記憶が戻ったことによるショックみたいなものか。そこまでショックが大きいとは・・・、もうちょっと慎重になるべきだった」

「びっくりしたぁ・・・。もしかして、また誰か来ちゃったり・・・?」

「それはない。・・・ほら、さっきと景色が違ってるだろ?」

「え・・・ってほんとだ、バラが消えてる」

「さっき、あのバラはお前をコントロールしているって言っただろ?さっきまで生えていたバラが何をコントロールしていたのか。それは、お前の記憶だったんだ」

「えっと・・・つまり、さっきまで生えてたバラのせいで僕は記憶喪失になっていた・・・ってこと!?」

「まあそうだな」

「な、何でそんなこと・・・」

「・・・この世界には、魔力という物があるらしくてな。そして、俺の今の体の特性上、魔力をすべて使い切ったら消滅出来るんじゃないかと思ったんだ」

「まあ、初めて見たときは明らか生物じゃないなーって思ったからね。あの球体みたいなの」

「・・・そうだな。ただ、それはうまく行かなかった。結局使い切っても消滅する事はできなかった。・・・それどころか、さらに悪化した」

「え?」

「・・・自分の体を見てみろ」

「え、何か変なところが・・・っな、何これ!?」

 

いつの間にか、体の周りに黒いもやがまとわりついていた。

 

「今はまだ少しだけだが、時間がたったら全体を覆うぐらいにはなるだろうな」

「怖っ・・・何でこうなったの・・・」

「恐らく、失った魔力を補うためにお前から吸収してるんだろうな」

「・・・そしたら、いつか僕の魔力も無くなっちゃう・・・よね。そしたらどうなるの?」

「・・・それは俺にも分からない。だが、ろくでもないことになることぐらいは予想できる」

「ろくでもないこと・・・」

「もし吸い取るものが無くなったら、別の物で補うことになるだろう。・・・例えば、生命エネルギーとか。後は、周りにいる奴らから奪い取る・・・とかな」

「っ・・・!ほっといたら、僕だけでなく周りにも・・・」

「そうなる可能性が高い」

「う、嘘・・・」

「・・・お前、記憶戻ったんだよな?それなら、さっきまでよりも断然やりやすいと思うが・・・」

「・・・そんなことないよ。だって、あの時からなんとなく感じてたもん」

「感じた・・・?何をだ?」

「何というか・・・すごい、悲しい感じがしたんだ。顔色とか、そんな感じで」

「いや、あれに顔も何もないだろ」

「それでも、なんか分かるんだよ。・・・あれかな、いろんな歌を歌ってきたから・・・かな?」

「歌・・・?何か関係があるのか?」

「・・・歌ってさ、作った人の想いで出来てる・・・ってどっかで聞いた気がするんだ。いろんな想いにふれてきたから、そういうのを感じやすくなってるのかなって、僕は思ってる」

「・・・そうなのか」

「全然違う可能性もあるけどね。あり得るかなって思っただけだよ」

(・・・歌に対する価値観が全然違う。昔は、そんなお前に苦しめられたよ。・・・でも)

「・・・やっぱり、お前はここで消えるべきじゃないよ。・・・覚悟は出来てるから」

「・・・分かったよ、頑張ってみる」

 

手に力を入れ、氷の刀を作る・・・はずだった。

 

「・・・っ、全然、出来ない・・・」

「深呼吸したら、少しやりやすくなるんじゃないか?」

「う、うん」

(落ち着け・・・しっかりイメージして、なんかこう・・・うまい感じに・・・)

「・・・」

「・・・短いのは出来たな」

「はぁ・・・、なんか集中出来ないなぁ」

「別に短くても刺せるだろ」

「いや・・・ダイレクトに刺す感触が伝わるの・・・嫌だから」

「まあ・・・確かにな」

「でも、これで行くしかないよ。文句言ってる場合じゃないし」

 

そう言いつつも、彼の手はかなり震えていた。

 

(みんなのためにも、この子のためにも、今やらなくちゃいけない。一瞬で終わる、これを、刺すだけで、なのに手が・・・!)

「・・・あっ、ご、ごめんね。ちょっと緊張してるだけ・・・だと思うから」

「・・・そうか」

(もう、これ以上無理をさせたくない。だが、今の俺に何ができる・・・?)

「すぅ・・・、はぁ、はぁ・・・」

「・・・こんなこと言ってすまないな。きっと、お前にはかなりつらいことだったと思う」

「・・・え?」

(・・・最初から、こうすれば良かったんだ)

「でも・・・もういいんだ。全部、俺がやる」

(こいつを悲しませずに、消える方法)

「え、ちょ、ちょっと待って、何で急に近づいて・・・」

(もしかしたら、少し待っていたらこいつは意を決してやってくれたかもしれない)

「やるって何?怖いよ、ちょっと・・・」

(でも、これ以上悲しんでるのは見たくないんだ)

「・・・やっと、終わりにできる」

 

「ずっと苦しませて・・・ごめんな、カイト」

 

グサッ

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。