東方歌謡録   作:みかみりん

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前回の鰻(おいしい)
・メディスン、それ死亡フラグって言うんや
・やっぱこの金髪魔法使い組強くね・・・?
・メディスン後ろぉぉぉぉ!


霧雨魔理沙

「きゃあっ!?な、何これ離して!」

 

メディスンは後ろから伸びた糸に捕まってしまい、動けなくなっていた。

 

「メディスン!だっ大丈夫!?今行くから!」

びんっ!

「うわっ!?」

 

メディスンに駆け寄ろうとするが、糸に引っかかり転んでしまった。

 

「いったぁ・・・あ、あれ、なんで浮いて・・・!」

 

チルノも糸によって吊り上げられ、動けなくなってしまう。

 

「は、離せ~!」

 

チルノは体をぶんぶんさせるが、糸は千切れない。

 

「うふふ、お揃いね」

「こんなお揃いいらないよー!って、アリス!?さっきまでどこに・・・」

「魔理沙と遊んでる姿がかわいくって、ちょっと観察してたのよ」

「あれを遊んでるって・・・弾幕ごっこではあるけど。ってか離してー!」

「ごめんなさいね。それは無理なの。でも、すぐに楽になるから」

「楽にって・・・え、また死ぬの・・・?」

「・・・多分、人形化ってことだと思う」

「正解よ。やっぱり、あなたは頭が良いわね」

「・・・っ」

 

メディスンは悔しそうな顔をして俯く。

 

(・・・詰んだ。この状態じゃ、まともに動けない。きっと、糸が切れたってまた捕まる・・・そもそも、アリスと魔理沙に、私達が敵うはずなかったんだ・・・)

「・・・そんなの、あたいは嫌だよ!なんで人形にならないといけないの!?」

「え・・・チルノ・・・?」

「あたいはあたいだ!人形じゃない!だから、あたいは人形になんかならない!それに、アリスがそんなこと、望んでるはず無い!」

「いいえ、望んでいるわ。じゃなかったら、こんな事しないでしょ」

「それでも!アリスはそんな事望まない!アリスは人にやられて嫌なことはしないって、散々言ってきたでしょ!じゃあやらないでよ!アリスは人形になりたいの!?」

「それは・・・」

 

アリスが言い淀む。

 

「・・・それに、魔理沙だってそうだよ!このままでいいの!?そのまんまだったら、紅魔館に本を盗りに行くことも、霊夢に会うこともできなくなるんだよ!聞こえてるんでしょ!ねえ!お願いだから・・・答えてよ!」

(まだ・・・諦めてないんだ。でも、呼びかけたって届くはずが・・・)

『別に良いよ。・・・メディスンが、戻ってくれるなら。・・・だって、友達でしょ!』

(・・・そうだ、届いてたんだ。少なくとも、私には。・・・じゃあ、私だって・・・!)

「・・・チルノの言うとおりだよ!あなたは、こんな事で折れる人じゃないでしょ!」

「メディスン・・・!」

「いつもへらへらしてて、諦め悪いのに!こんなところで諦めるの!?このバカ!不真面目!アンポンタン!」

「・・・あらあら、随分と威勢が良いわね。流石にそんなに暴れられると困るわね・・・魔理沙、少し黙らせて」

 

魔理沙は杖を構える。

 

「・・・「私はどんなことをされたって大丈夫だ!何故なら、私が全て解決しちまうからな!」・・・って前言ってくれたよね。なら・・・」

 

「こんなことぐらい・・・すぐに解決してよ、魔理沙っ!!」

 

■■■■

 

「・・・どう?気に入ってもらえた?」

「・・・」

「あら、ちょっと疲れちゃった?飲み物・・・は、ここじゃ出せないわね。ごめんなさい」

「出せたとしてもいらねえよ・・・」

 

真っ暗な空間。魔理沙はその空間から伸びる糸によって固定されていた。

かなり糸が巻き付いており、まともに動かせそうでもない。

 

「ここなら、あなたと2人でいられるわ。それに、お腹も空かない、病気にもならない、死にもしない。最高だと思わない?」

「・・・なあ、お前は、何がしたいんだよ」

「質問には答えてほしかったのだけど・・・まあいいわ。・・・ただ、私は私に従ってるだけよ」

「私は私に従ってる・・・ね。私には、お前も同じ操り人形にしか見えないんだけどな」

「操り人形・・・それも、悪くないわね」

「はぁ・・・?悪いに決まってんだろ。自分の意志で動けなくなるんだぜ?そんな状態で生きてる価値はあるのかね」

「う~ん・・・そもそも、自我ってそんなに必要?」

「必要に決まってるだろ。脳のネジ吹っ飛んだのかお前は」

「そう?まあ、確かに自我は大切よ。・・・でも、自分の方が大切よね」

「・・・?いや、自我が自分だろ。矛盾してるぞ」

「いいえ、矛盾してないのよ。自我って言うのは感情とか理性とか。自分って言うのは目的とか心。私はそう捉えているわ」

「お、おう・・・?」

「そして、私は気づいた。私達は自分を自我で抑えてるってことにね。じゃあ、それを無くせば真の自分になれるんじゃないかしら?ってね」

「えーっと・・・難しいな」

「それは本当だった。実際、私は真の自分になれたの。だから、みんなにも広めてる。そしたら、みんな幸せに暮らせるでしょう?」

「よく分かんねえが・・・私にはそれが幸せになるとは思えねえな。人間っつうのは自我があるからこそ、ここまで発展できた。無かったらそこら辺の獣と同じだろ。それに・・・」

「それに?」

「・・・私には、今のお前が幸せだとは思えねえよ」

「そうかしら?・・・まあ、それはどうでもいいわ。ねえ、これを見て」

 

真っ暗な空間に光が差す。

差した光はやがて何かを映し出した。

 

「この子達が、生まれ変わる瞬間よ」

「チルノ!?メディスン!?」

『は、離せ~!』

 

映し出されたのは、チルノとメディスンが糸によって捕まえられている場面だった。

 

「うふふ、良いわねぇ。この恐怖の表情が無に変わるところ。それを見たいのよ」

「な、なんであいつらにまで!関係ないだろ!」

「さっきも言ったわよね?みんなにも広めてるって。まあまだあなただけなのだけど・・・いずれは、幻想郷中がこうなるわ」

「はぁ・・・!?ふざけんなよ!あいつらはそんなこと、望んじゃいない!」

「大丈夫よ。今は嫌かもしれないけど、その内慣れて、幸せになるわ」

「っ・・・!」

 

魔理沙はとっさに手を動かそうとする。

しかし、糸で固定されてるため、動くわけがない。

 

「くっそ・・・!邪魔くせえんだよこの糸!」

(なんだよ・・・このまま、チルノとメディスンが変わるところを見るしかないのかよ・・・でも、不思議と・・・悪い気は、しない。きっと本心じゃない、けど・・・)

「・・・あなただって、悪い気はしないんでしょう?」

「はっ・・・?な、なんでそれを・・・」

「なんとなくよ。まあ、そうなるのも無理はないわ」

「ど、どういうことだよそれ・・・」

「さっき、自我について話したでしょう?あなたの自我は、すでに消えかかっている」

「はぁ・・・!?」

「・・・さっきも言ったのだけど、私は自我を消して本当の自分になれるようにしている。だからもう、あなたの自我は必要ない。・・・あなたは、望んでいるのよ。このままを」

「そんなわけ・・・!」

「でも、実際ここで私と話せるのは楽しいでしょ?それに、ここなら死なない。そう、ここはあなたにとって最適な環境。そんな環境に、自我は必要ない。それだけよ」

「っ・・・!」

(ああもう・・・わけわかんねぇ。嫌なはずなのに、そんな気はしない。寧ろ、現状を楽しんでいる節もある・・・。でも、アリスの言うとおりなのかもしれない。本当に、悪い気はしないのだから。・・・もう、このまま・・・)

 

『・・・それに、魔理沙だってそうだよ!このままでいいの!?』

「っ!?」

 

チルノが声を上げる。

その声は、はっきりとその空間に響いた。

 

『そのまんまだったら、紅魔館に本を盗りに行くことも、霊夢に会うこともできなくなるんだよ!聞こえてるんでしょ!ねえ!お願いだから・・・答えてよ!』

「チル・・・ノ・・・?」

「・・・そんなの、どうでもいいじゃない。それに、いずれ霊夢だってこうなるんだし」

 

アリスの声は、心なしか焦っているように聞こえた。

 

『・・・チルノの言うとおりだよ!あなたは、こんな事で折れる人じゃないでしょ!』

「メディスン、まで・・・」

(・・・霊夢に会えなくなる、か。・・・ああ、そうだな、チルノ。お前の言うとおりだよ。このまんまじゃ、ミクの迷子を連れ戻すのも、パチュリーの小言を聞かされるのも、霊夢と弾幕ごっこをすることも・・・できなくなるもんな。そんなの、私は・・・)

「・・・私は、そんなつまらない人生は嫌なんだよ!」

ぶちっ!

 

糸が千切れた音がした。

それと同時に、片腕が少し軽くなった。

 

「糸が・・・切れた・・・!」

「なっ・・・!?なんで・・・ありえないわ、こんなこと!」

「ありえない?実際に起こったんだ、ありえない訳ないだろ!」

ぶちっ!

「っ!やめて!ここにいて!」

「・・・なあ、なんでそんなに私に固執する?」

「・・・え?」

「だって、お前の目的は『幻想郷中の人を人形化する』ことだろ?別に、私一人いないくらいどうってことないし、もう一回人形化すればいい。一回人形化して解かれたらもうできないってなら話は別だが、最悪殺せばいい話だしな。だから、別に私に固執する必要はないだろ」

「それ、は・・・」

「・・・なるほどな。どうやら、私の推測は正しかったようだ」

「な、なんのことよ。ってか、もう、糸を千切るのはやめて!」

「ごめんな、それはできない。・・・でも、必ず戻ってくるよ」

 

魔理沙が話している間にも糸は千切れていく。

 

「いやだ、やめて、行かないで・・・!お願いだから・・・!」

「・・・大丈夫だ。私は、どこにも行かない。でも・・・今は、行かないといけないんだ。チルノたちのためにも、お前のためにも。だから、少し我慢してくれ」

『・・・「私はどんなことをされたって大丈夫だ!何故なら、私が全て解決しちまうからな!」・・・って前言ってくれたよね。なら・・・こんなことぐらい・・・すぐに解決してよ、魔理沙っ!!』

「ああ・・・そうだな!こんぐらい、すぐに解決してやるよ!」

 

 

 

「スペルカード発動!魔符『スターダストレヴァリエ』!」

 

魔理沙はスペルを放つ。

星形の弾幕はチルノとメディスンの上の方に飛んでいった。

 

「「わっ!?」」

 

弾幕は上にいる人形に当たった。

そして、人形と同時に地面に落ちる。

 

「びっくりしたぁ・・・ってあ!糸が柔らかい!さっきまで固かったのにー!」

「表現合ってる・・・?まあ、魔力込められてたからそうなってたんだろうね。それより・・・」

「・・・2人とも、待たせたな」

「ほんと・・・待ったんだからね、魔理沙」

 

魔理沙の糸は消滅していた。

 

「きっとその糸も引きちぎれるだろ。もう人形も動かないと思うし」

「ま、魔理沙~!よかった、あたい、もう駄目かと思ってたよ~!」

「甘く見てもらっちゃ困るぜ!こんぐらい、朝飯前だ!」

「朝飯前の割には、遅い気もするけどね」

「相変わらずメディスンは毒舌だなー毒だけに」

「あっうん」

「なんだよ、ノリ悪いなー」

「・・・な、なんで糸が切れたの?だって、あなたは・・・」

「あ?そんなん知らねーよ。あれだろ、気合いってやつ」

「・・・そんなわけない。それに、あそこはいい場所だったのに。なぜわざわざ・・・」

「あそこが良いとこ?んなわけないだろ。あんな退屈なとこ、二度とごめんだ」

「・・・っ!でも、あそこにいれば、無限の命が得られたのよ!?あなた達人間にとって、それは重要なことでしょう!?」

「はぁ・・・こっちでならともかく、あんな何もない空間で不死とか拷問だろそれ。・・・それに、私は不死には興味ないんでね」

「なんでよ!あなたは、死ぬのが怖くないの!?」

「・・・怖くない、って言ったら嘘になるな。でもよ、私は人間であることに誇りを持ってる。・・・人間っていうのは、脆くて弱い。でも、だからこそ知恵を絞って、ここまでこれた。私はそんな「人間」ってのが好きなんだ。だから、私は人間のまま魔法を極め、寿命で死ぬ予定だ」

「・・・くだらない。所詮はただの戯れ言。あんな場所を手放すなんて、あなたは何も分かってないのね」

「・・・ああそうだ。これはただの戯れ言だ。でも、私がそんな戯れ言が大好きな人間ってのは知ってるだろ?」

「もういいわ。今度はそんなくだらないこと考えられないくらい、がんじがらめにしてあげる。・・・そこに2人もね」

「ひぇっ・・・これ、次は無いってことだよね・・・?」

「本気を出してきそうだね・・・集中しないと」

「・・・なあ。ずっと気になってたんだが、なんで私達のことを「あなた」って呼ぶんだ?まるで他人みたいだな」

「・・・それが何?別に呼び方なんてどうでも良いでしょ」

「確かにそうだが・・・なんかもやるんだよなー。・・・じゃ、もう一回名乗っとくか。耳の穴かっぽじってよく聞いとけよ」

 

魔理沙はほうきを構え、アリスの目を見る。

 

「私の名前は霧雨魔理沙!至って普通の、人間の魔法使い様だ!」

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