キヴォトス某所の裏路地にて私は発信者不明のメールを頼り、この寂れた街へとたどりついたのだ……しかし、この場所にあるのは静けさとその中に紛れる雨音だけである。つんと指す雨の匂いを感じながら待ち人と会う為に、私はただ濡れる……
(誰か来た……)
背後からビチャビチャと湿った足音が聞こえてきた。それが私が会いに来た生徒であるということは考えなくても理解していた。足音が近づいてくるにつれて、そのシルエットも比例するように近づいてくる。やがて、その姿はチカチカと点滅している死にたいの電灯に映された……
"サオリ……"
私を呼びだした張本人はエデン条約にて事件を起こしたアリウススクワッドのリーダー錠前サオリだった。
「…………」
サオリは無言のまま銃を地面に置き、置いた銃の前に移動した後に膝と手を地面につけて頭を下げ帽子が取れてしまう。
"サオリ…何の真似だ?"
今、サオリが取っている体制は土下座以外の何物でもなかった。相手に誠意をみせるために自身の恥を飲んで行う姿勢……はっきりいって見ていたくもなかった、生徒にそんな姿をしてほしくはなかった。
「……先生。アツコが……連れていかれた。他の仲間もアリウスの襲撃に遭って、散り散りに……生死も不明だ。あれから何日も……逃げてきたが…私では彼女を止められなかった……このままではアツコは……姫は、死んでしまう……。明日の朝……夜明けと共に『彼女』に殺されてしまう……私の話など、信じられないだろうが……これだけは真実だ。」
雨と共にサオリは私に状況を語り掛けてくる。不思議と雨が降った理由がわかるような気がした。私が帽子を被るのと同じようなものだからだ。周りにも心にも雨が降りながらも気にしないかのようにその後もサオリは淡々と身の上の話を続ける。
曰く、アツコは元々儀式の「生贄」として育てられた存在であると――
曰く、やめさせたいのであれば「彼女」の命令に従えと言われたと――
曰く、でも叶わなかったと、
「だから、もう頼れるのは先生しか……」
サオリは肩に置かれた感覚で顔を上げる。その感覚は先生の手であった。冷たい雨の中でも仄かな人肌の暖かさを肩に感じる。
"よく今まで耐えてきた、ありがとう私を頼って来てくれて……誰かのために確かな行動してきたを君を疑いなく尊敬しよう"
「先、生……」
後にサオリは語る。その時の先生の瞳には感じたことのない視線と何かに対する怒りの二つの感情がともっていたと、しかしそれと同時に遠い目をしていたようにも感じられたと……