四葉真夜と七草弘一の子供(非公式)ってハード過ぎない⁉︎ 作:例示
下旬とはいえ三月で海水浴できるのは南国の特権
三月末。
皆が南国に行く中、私は研究所のコントロールルームでミッションの推移を監視していた。
「中継衛星三号、L4へ到達しました。L2との通信を確立中」
「スラスターのバッテリーと推進剤を再成します」
最初のロケットは無事にマーカーを月の裏側にばら撒いたけど、それだけでは使えない。
月の裏側にある重力が釣り合うポイント、ラグランジュ点にマーカー射出後のロケットを中継衛星として残して、そことの交信に追加で二つ衛星を打ち上げた。
今日はその最後のロケットで、これでL4・L5を経由してL2と安定して交信できるようになった。
「マーカーの分布を表示します」
マーカーは薄いシリコンゴムボールにちょっとだけ水素を入れたもので、月の大気で膨らむように設計されている。
月の裏側の峡谷近くに飛ばしたから、上手くいけば弾んで転がりながら底まで落ちるはずだけど…
「マーカーの分布からすると……ここは良さそうですね。狭くて深いので見つかりにくそうです」
「スキャナールームの滅菌は完了しています。周辺区画の減圧はあと1分」
「電力と機器の稼働をもう一度確認してください。アンテナケーブルの長さも地形に合わせて再度確認を」
「かしこまりました」
指示を出した後、マーカーを頼りに私は月の峡谷壁面に意識を集中する。
『精霊の眼』で情報を取得。
スキャナールームの転送予定空間を指定。押しのけた分の岩石は峡谷へ廃棄。
研究員のOKを確認して、空間転移を発動する。
一瞬で、研究所の一区画が空っぽになり、代わりに月で小規模な岩石の噴出が確認された。
すぐにバッテリーからの電力でアンテナが伸長し、衛星との通信が確立する。
心配していた圧壊もなさそうで一安心。
「スキャナーが稼働を開始しました。予想終了時間は一ヶ月です」
「当直員は稼働状況を監視、それ以外は通常業務に戻ってください。お疲れ様でした」
パチパチと拍手が鳴る中で、ふう…とひと息吐いてヘッドセットを外す。
さすがにこの距離の魔法発動は疲れる。
どうしてもこの距離だと通信遅延とかがあるし、天文学的距離にワームホールを作ると色々問題があるからね。
まだ月なら1光秒ぐらいだからいいけど、下手するとタイムマシンになっちゃうし。
この辺の問題は今術式を調整してるところなんだよね。
転移時に距離に比例した時間がかかるようにするとか、色々考えてはいるけど…
「お嬢様、太平洋上から地球近傍小惑星へ魔法が発動されました」
「発動位置は?」
「モニターに表示します」
その位置の情報を『精霊の眼』で取得する。
……あー、これ起きるんだ…
『隕石爆弾』、実質的に私達が今やってることに近いんだけど、私の個人プレーに近いこちらに比べて、マーカー無しに超長距離を照準して大質量を動かすのはさすが軍の研究と言わざるを得ない。
日常的にはほとんど必要ないとはいえ、超長距離照準は課題の一つだね…
「軌道予測から、L5が重力の影響を受ける可能性があります」
「引き続き監視を続けてください。もし影響があるようなら、緊急軌道変更を許可します」
まあ達也が破壊するから大丈夫なんだけどね!
というわけで、あとは研究員に任せて私は遅れて雫の別荘へ。
自家用機で向かうから多少時間はかかるけど、仕方ないよね。
研究所のセスナで向かうと、途中で軍用機とすれ違った。
アレが達也かな?
「真昼!」
「深雪、みんなも今出かけるところでしたか?」
飛行場に着陸すると、深雪たちが出迎えてくれた。
たぶん達也が出発したから、南盾島に行くところだったのかな?
それなら直接行ったほうがよかったかも…
「真昼はお仕事は大丈夫なの?」
「さっき終わったところです。かなり神経を使ったので、リフレッシュしたいですね」
「ならよかった。これからショッピングに行くところだから、一緒に行こう?」
「もちろんです」
ありがたく乗せてもらって、南盾島へ。
今回の護衛は菜摘ちゃん。
みんなにお披露目するのは初めてなので、道中で紹介を終えてショッピングに付き合ってもらう。
「お嬢様! これ! これ着てみてください!」
「わかったから落ち着いて? それから自分の分も買いなさい」
『私はそっちの方がいいと思うわ』
うん、これ私が付き合わされてるな⁉︎
深夜様もちゃっかり色々と指示してくるし、着替えるたびに菜摘ちゃんが色んな角度から写真を撮ったり、髪やアクセサリーを整えたりしている。
着せ替え人形だこれ…
「またすごいのが来たわね…」
「お嬢様は色々な服が似合いますから! エリカさんはどう思いますか⁉︎」
「え、そうね……これとか?」
「なるほど! スポーティなのもアリですね!」
おかしいな。四葉本家から来た時はお淑やかないい娘だったのに…
やっぱり研究所は教育に悪いのかもしれない。
というか私が甘やかしすぎた?
でも今のところ、菜摘ちゃんが一番私の身の回りのことにすぐ気づいて、細やかにお世話してくれるからいいんだよね。
甜奈は私が教えたことしかしないし。
その点菜摘ちゃんは本家から色々と仕込まれてるから、私が言わなくてもしてくれるし。
水波ちゃんが来たら大人しくなってくれないかな…
「…ん、すみません。電話が」
皆に一言断って出ると、研究所に外部から来た秘匿通信ということだった。
こっちの携帯端末に通話を切り替えてもらうと、そこには海軍秘密研究所の責任者の名前が。
……あれ? もしかして私悪役側になってる?
雑に始まる映画編。
そして悪役側に頼られる主人公です。
まあこれまでやってきたことがことなので…
リーナさんは……がんばれ!