四葉真夜と七草弘一の子供(非公式)ってハード過ぎない⁉︎ 作:例示
夜、担当選手のデータを軽くまとめ終えた俺は、最近進めている別のプロジェクトをサーバーから呼び出す。
対ファランクス用攻撃魔法、仮称『バリオン・ランス』
遠夜達の『ファランクス』を解析して導き出した、最強の盾を貫くための魔法の矛だ。
冬に見たFAE理論を参考に基本設計を行い、ようやく一連の魔法として形になった。
とは言うものの、まだ課題は山積みだ。
最大の問題は、FAE理論が有効な時間内に次の魔法を発動する方法にある。
『ブリオネイク』は結界で有効時間を延長することと、リーナの発動速度によって問題を解決している。
『クラウ・ソラス』は最初の魔法をレリックによる自動発動にすることで、機械側でタイミングを合わせている。
この仕様上、FAE理論で魔法力を削減するには後発の魔法発動のタイミングを正確に把握する必要がある。
真昼の場合、機械学習に十分なデータが集まるまで実験を繰り返すことで統計データを完成させるという、かなり強引な方法でこの問題を解決している。
これは夏雲や恋路についても同じで、実質的にオーダーメイドのシステムといえる。
一方で四葉家に渡しているタイプは、発動速度を一律で落とす代わりに魔法発動タイミングそのものに余裕を持たせている。
用途が遮蔽物越しの暗殺のため、即応性より汎用性を採ったようだ。
問題は、どちらのシステムも『バリオン・ランス』では使えないことにある。
結界によって延長したとは言っても、それは『人間の認識速度未満』から『認識速度の限界近く』まで引き伸ばしたに過ぎない。
それでも数百倍の延長に成功しているのだから『ブリオネイク』の制作者は天才なのだが。
そして、その有効時間内に移動魔法を発動
レリックの補助を使うことも困難だ。
『分解』は複雑かつ大きな干渉力が必要な魔法なので、レリックにセットすることはできない。
そうなると移動魔法の方をレリックにセットすることになるが、今度は発動のタイミングが問題になる。
『クラウ・ソラス』ではプラズマ化という単純な魔法をレリックで発動し、その魔法終了時と次の移動魔法開始時でタイミングを合わせている。
レリックによるプラズマ化は対象物質の体積と質量が一定なら時間も一定なので、もう一方の開始タイミングのみに合わせれば良かった。
しかし『バリオン・ランス』では分解の
早過ぎれば定義対象不在で不発になるし、遅ければ干渉力不足で十分な速度を得られない。
実験を繰り返して分解の終了タイミングを予測できるようにしたとしても、射程・威力の変更を行うとレリックの移動魔法の完成時間も変わる。
分解終了までの時間に誤差がある以上、それを元にした移動魔法の完成予想時間は更に大きな誤差が産まれる。
その誤差を含めて確実に魔法が完成するように設計すると、規模が小さくなり過ぎて『ファランクス』の外から防御を抜く魔法としては成立しない。
威力・射程を完全に固定すれば規模の問題は解決するが、同時に運用の柔軟性が失われてしまう。
真昼とレリック側の性能を上げられないかも検討したが、現時点では難しいとのことだった。
「オリジナルのレリックを使用しても難しいか」
「はい。少なくとも携行可能なサイズにはなりません。車載サイズが限界かと」
「それはレリックの性能が足りないということか?」
「性能というより、安定性が足りません。レリックに保存された魔法式は運用上、必ず外部に露出させる必要があります。その状態で強い干渉力に晒されると魔法式が構造を保てなくなってしまいます。それを解決するとなると大掛かりな結界装置が必要になりますから…」
確かにそうだ。
特に分解魔法という強力な魔法の直後にレリックを作用させる以上、この問題は避けられない。
『クラウ・ソラス』はこの点も対策されていて、プラズマ化の後すぐにレリックを結界内に保護することで、その後の移動魔法の影響を受けないようにしているそうだ。
「それに、攻撃魔法に使えるほどの加速をレリックに行わせるのは荷が重いです。現状『クラウ・ソラス』も週に一度メンテナンスを行なって、レリックの性能を保っています。これは待機状態での話ですので、使用すれば数時間で魔法式どころかレリック自体が使用不可になります。コスト面を無視するとしても、達也さんが使うには手間がかかりすぎると思います」
「……やはり、自力でやるしかないか」
「お力になれず、すみません」
ぺこり、と頭を下げる真昼。
無理を言っているのはこちらなので仕方ないのだが、焦りが顔に出ていたようだ。
相談に乗ってくれた礼を言いつつ部屋を出ると、最近ようやく外での活動許可が出たらしい詩納斗が衣白と一緒にこちらへ歩み寄ってきた。
「達也じゃねぇか。なんか悩み事か?」
「ああ。まあそんなところだ」
「じゃあ一発俺と試合しないか! 今日こそ勝ってやりたいんだよ」
「相変わらずだな」
後ろの真昼はもう呆れ過ぎてスルーしているぐらい、ここの調整体は好戦的だ。
まあでも、気分転換にはなるかもしれない。
「どうせタダで帰す気は無いんだろう。早く済ませるぞ」
「話がわかってるじゃねぇか! 行くぜ! 達也、衣白!」
「なんで私まで…」
「お前も勝ってないだろ。やらないのか?」
「そんなこと言ってません! 勝手に話を進めるなと言っているのです!」
あーだこーだと言い合いながらも演習スペースへ向かう二人。
この後いつも通り二人を叩きのめしたのだが、『クラウ・ソラス』を使ってもらった戦闘は意外と参考になった。
特に詩納斗は『ファランクス』を使えるだけでなく、魔法の待機も使いこなすようになっていたので『フラッシュ・キャスト』とはまた違う発動時間短縮のアイデアを得られたため、無駄ではなかったと言えるだろう。
真昼は拗ねてしまった衣白のお世話が大変だったようだが…