四葉真夜と七草弘一の子供(非公式)ってハード過ぎない⁉︎ 作:例示
今回は達也視点です!
二セット目は9-13と、ロースコアな進行ながら一色がリードして終わった。
とはいえ、点差は4点。
次のセットを取ればセット数は引き分けになるため、合計得点での判定が行われる。
そうなれば、この程度の点差は問題にならない。
そのため、実質的に次のセットに全てがかかっていると言っていいだろう。
「真昼、負荷は大丈夫か?」
「あと1セットですから」
「明日もある。無理はし過ぎるな」
「それ込みで大丈夫ですよ」
「その後寝込むのは無しだぞ。深雪のメンタルに影響する」
「……善処します」
今年も深雪はミラージバットに出場する。
明日のアイスピラーズブレイクはバトルボードと重なるからいいとしても、その後真昼が倒れてしまえば新人戦後のミラージバットに影響するだろう。
実際、去年はモノリスコードで寝込んだ真昼を気にする深雪を宥めるのにかなり苦労した。
深雪だけでなく、他のメンバーにも少なからず影響するはずだ。
何より…
「四葉家としても、去年のような余裕ある勝利を望まれているんじゃないのか?」
「……わかりました。全力を出します」
叔母上が真昼の体調を気にかけないはずがない。
対外的にもそうだし、個人的にもかなり目をかけているのは明らか。
それを指摘すると、ようやく決心したようにそう宣言してコートへ戻った。
再び定位置であるコートの中心に立って、最後のセットが始まる。
最初の球が発射され、魔法とラケットによる応酬が再び繰り広げられた。
球数が少ない内は、どちらもノーミスで返していて得点は伸びない。
やはり勝負は最後、残り一分間で決まるだろう。
球数が増えてきたことで、再び『数学的連鎖』を使い始めた真昼に対して、ポイントとなる球を狙って撃ち落とす一色。
それに対して、撃ち落とされた球を再反射させたり、そもそも撃ち落とされないように球の手前で打ち返したりして対応する真昼。
これ自体は前のセットでも対応策として行なっていたので、一色も動揺することなく得点差を広げるように積極的に攻めていく。
激しい球の応酬に対してロースコアな試合展開だが、徐々にお互いに得点が入っていく。
そして7球目が発射された瞬間、真昼が目を開いた。
その数秒後、3個の球が同時に一色のコートに侵入する。
それまでのように返球した一色だが、その球は狙った球ではなく、真昼の魔法によって別方向へ飛んでいく。
同時に、離れた場所の球が
今までとは違う、
しかし、それらはまるでサンドバッグに撃ち込んでいるかのように受け止められ、別の球の集団に襲われ続ける。
得点源を奪われ、猛攻に晒された一色は急速に得点を奪われていた。
「っ…⁉︎ どうして…!」
「………」
歯ぎしりしながら必死に立ち向かう一色と、目を見開いてただただ前方を見つめる真昼。
真昼の戦法は一見大きく変わってはいない。
ただ、一色の攻撃に対するリカバリー能力が上がっただけ
しかし、『数学的連鎖』では一色の意図的な返球に対応し切るのは不可能。
それは一色の方がよく理解している。それ故に困惑しているのだろう。
真昼の切り札は『数学的連鎖』だけではない。
もう一つの切り札は『群体制御』
本来なら100以上の物体を、群体として魔法で制御する第七研の研究成果。
最大9球しか出ないこの競技には最適に思える魔法だが、そのままでは利用できない事情があった。
群体制御は多数の物体を制御するように調整された魔法であるため、対象の数が少なすぎると効率が悪く、特にクラウドボールのルールである『球の軌道を長時間変える魔法の禁止』に引っかかってしまう。
個々の球の運動を無視できるほど球の数があれば、『球の一群』の動きを一度に変えることで問題をクリアできるが、現実のボールを増やすことはできない。
そこで真昼は、この問題を仮想空間を使うことで解決することにした。
一色の
しかし、
発射点がある程度限定され、ポイントを得るための合理的選択をするならば、返球先はある程度絞り込める。
そう、
真昼がやっているのは、数秒後に
『群体制御するには球数が少なすぎる』『数学的連鎖では予測先が多すぎる』という二つの問題を、真昼は予想位置で球数を増やし、集団の予測に計算方法を変えることで解決した。
当然、真昼にとってはこれまでを超える大きな負荷になる。
そもそもの『数学的連鎖』が負荷が大きいことに加え、このハイスピードの試合の中で全ての球の正確な位置把握、返球先の予想、仮想空間への反映、仮想空間の群体制御と実際の発動魔法への変換が必要になる。
ただ予測するだけではなく、一色に勝つために返球しなければならないため『予測される返球先』と『攻撃に使用する球』を繋ぐ球集団の計算も追加される。
真昼の空間把握能力と情報処理能力を持ってしても、長くは持たない。
まさに『奥の手』だ。
打っても打っても有効打にならないまま常に複数個、仮想空間上では百数十個に上る球の群体に襲われ続けた一色は、最後まで抗い続けたものの31:18で最終セットを落とした。
セット数、一勝一負一引き分け。
総得点差40:31。
クラウドボール本戦ソロ決勝は、激戦の末前年王者の一色を真昼が倒して決着した。