四葉真夜と七草弘一の子供(非公式)ってハード過ぎない⁉︎ 作:例示
今回は菜摘ちゃん視点です!
新人戦ミラージバット、決勝戦。
とうとうここまで来ました。
注目されているのは、やはり亜夜子さま。
予選を暴風と共に勝ち上がってきただけあって、選手からも観客からも期待度が高いです。
ですが、私も負けていられません。
この日のために戦法を予測して、対策を練習してきたのですから!
『試合開始!』
アナウンスと共に夜空に光球が出現し、次の瞬間には暴風と共に亜夜子さまが天に駆け上がっていきます。
余波によって進路変更を余儀なくされる他の選手たち。
私はその残滓の中を、縫うようにして光球を追います。
再び側を通り抜ける亜夜子さま。
おそらく私への妨害も意図したであろうそれは、逆に私を少し早く次の地点へ押し出しました。
想定とは反対方向へ加速した私を見て、すぐに亜夜子さまもタネがわかったようです。
私が使ったのはベクトル操作術式。
通常はシールド表面に触れた物体を弾くためのものですが、効果対象と作用方向を逆にして使用しているのです。
亜夜子さまが作り出した風が私を押す、という運動ベクトルの方向を逆転して自分自身に作用させることで、風が押す分の力で向かい風へ進む魔法になります。
何度も恋路さまと練習した成果もあり、かなりスムーズに移動に組み込めていると思います。
「はぁっ……ふぅ…!」
ただ、完璧ではありません。
ガーディアンの任務では護衛が第一であり、その他の行動は優先順位が下がります。
なのでシールドを素早く展開するために発動寸前で待機させることや、複数の魔法を準備することは訓練でもしましたから得意です。
ですが、競技では妨害の対処はあくまで副次的なもの。
基本的には自分の『跳躍』や『飛行』に魔法力のリソースを割かないといけません。
特にミラージバットはあくまで光点の取得数で勝敗が決まる競技。
妨害があっても、敵として倒すことはできません。
妨害する相手をある意味無視して、自分のプレーを続けるというのは……これまでの経験と違っていて、違和感が大きいです。
いくら亜夜子さまが後方支援役で白兵戦向きではないとはいえ、既に何度も四葉家の任務をこなしている経験があります。
こちらは接近戦向きではあるものの、経験は訓練中心で実戦の量では負けていることは否めません。
ですから、私自身の強みを活かして……いえ、それを相手に押し付けるような戦いをしなければなりません。
そう、亜夜子さまのように。
「へぇ…」
「…っ!」
飛行魔法で得点した後、魔法を切って自由落下に身を任せます。
視界だけではなく、エイドス経由の空間情報からも他の選手や光球の位置を把握して、最適なタイミングで
何もない空間を
今度は両足で
これで飛行魔法のカウントはリセットされたので、再び連続で得点を狙いに行けます。
……ミラージバットのルールでは、他者への妨害となる行為は禁じられています。
そのため、事前にシールドを張っておいてそれを足場にするというのはできません。
一応踏み込む瞬間だけシールドを張ることで規制回避はできるのですが、タイミングが厳しく『跳躍』とのマルチキャストも難しいです。
代わりに恋路様に教えてもらったのが『虚段』という、古式魔法をベースにした空中機動用現代魔法でした。
これは元々、一足では超えられない段差を『まるでもう一段足場があるかのように』超えていく歩法をベースにしているそうで、平面移動の『縮地』に対する垂直方向の移動法だそうです。
それを『特定の速度で手足の関節を曲げることを条件に、曲げた手足に体重分の逆荷重を与える』という加重系の現代魔法に再構成したのが『虚段』です。
少しコツは要りますが、空中でも足場があるかのように動けますし、魔法式自体は小さいので『跳躍』と干渉しにくいのもメリットです。
恋路様は『透明な棒を足場にする』イメージでこれを使っているそうですが、私は『透明なシールドに手を着く/足で乗る』方がイメージしやすく、実際にすぐ使えるようになりました。
ベクトル操作が暴風対策の『盾』ならば、虚段は攻撃のための『矛』。
飛行魔法のリセット時間を繋いで得点を取りに行く、私にできる最大限の攻撃です。
「素晴らしい、ですが…」
亜夜子さまがそう呟いたような気がすると同時に、動きのキレがさらにあがりました。
それは疑似空間移動だけでなく、飛行魔法の動きまで。
一瞬追いつきそうだった得点も、差がなかなか縮まりません。
……飛行魔法は、空中移動に必要な魔法をタイムスケジュールを厳密にして連続発動可能にした『技術』です。
なので『飛行魔法』と一言にまとめてはいますが、中身は慣性制御魔法や移動魔法の複合術式です。
そして、そういった移動系の魔法の習熟度において亜夜子さまは一日の長があります。
確かに『跳躍』に特化した選手ほどではないかもしれませんが、その経験はどの選手よりも優れているのです。
達也さまが評した通り、亜夜子さまがこの競技に向いているのは疑似瞬間移動が妨害を兼ねて有利だから、というだけではありません。
そもそもの移動魔法の練度と経験が優れている。
ただそれだけで、しかし確固たる差なのです。
「……無念です」
結局、私の最終得点は亜夜子さまに僅かに及ばず二位になってしまいました。
他の選手が得点を離されているのを見る限り、おそらくは良い結果なのでしょう。
……でも、やっぱり悔しいです。
本流四葉家には勝てなかったよ…
一応恋路はちゃんと相手してくれてたのですが、そもそも恋路も経験は少ないのでたぶん亜夜子と競技になったら負けます。
恋路が練習相手になる最大のメリットは、いつも無駄に高温圧縮空気膜を張ってるので暴風を疑似再現できるところですね。
実際に対策自体はうまくいきましたが、普通に地力の比べ合いになって負けました。
あと虚段は完全オリジナル技です。
説明も完全に架空のものです。もしかしたらマジカル八極拳の中には二段ジャンプ技もあるかもしれませんが、私は知らないので適当に埋めました()
あとベクトル操作の移動は一方通行さんです。やっぱり便利ですよね、あの能力…
さあ、次は四葉の舎弟()になった拓磨だ。がんばれ!