四葉真夜と七草弘一の子供(非公式)ってハード過ぎない⁉︎ 作:例示
最初こそ驚かされたが、その後はそこまで変なこともなく兼六園までコミューターで行くことができた。
正直庭園や昔の街並みは渋すぎるんじゃないかと思ったが、真昼さんはかなり楽しんで見ているようだった。
そういえば相模野の研究所がある街は古風な雰囲気だったしな。
純和風のこちらとは違ってレンガ造りの和洋折衷だったが、何かしら通じるものがあるのかもしれない。
「お茶も飲めるんですね。少し寄っても構いませんか?」
「ええ。おすすめは……抹茶セットのようですね」
「ではそれにしましょうか」
庭園内のちょっと高めの茶店で一息つく。
正直この後のことを考えると、あまり時間に余裕はない。
それを知ってか知らずか、真昼さんは届いたお茶と菓子をゆっくり嗜んでいる。
雰囲気自体は非常に様になっているけれども、俺としては急いでほしい。
「この後ですが、お昼はどうしますか?」
「そうですね……海鮮なども良いとは思いますが、せっかく金沢に来たのですから、ご当地料理も良さそうですね」
真昼さんはそう言うが、俺としては困りモノだ。
それなりに色々な店を知ってはいるが、それは地元の人が行くような雑然とした店であって他から招いた人と一緒に行くような所ではない。
かといって親父とその来客に連れられて行ったような、接待用の高級店に学生二人で入るのはさすがに気が引ける。
同じ女子でも三高の奴らなら迷わずその辺の安くて美味しい店に行くのだが…
「……お悩みなら少し高めで、食事もできるカフェにしませんか? 私はデザートの方が楽しみですが、将輝さんはきちんとした食事が取れる方が良いでしょう?」
「え、あ……はい。なら東山の近くに洋食店があるので、そちらにしましようか」
「ええ、お任せします」
なんとか昼食も決まったところで休憩も終わり、茶店を出る。
すると、コミューター乗り場に向かう俺の手を、真昼さんがするりと掴んだ。
「え……っと、どうしましたか?」
「将輝さん。少し手を繋いでいても良いですか?」
……本当にどうしたんだ?
真昼さんの提案の意味がわからない。
何か問題が起きたのか?
「将輝さん、あまり女性とこうして出かけることがないのでしょう?」
「そんなことは…」
「端的に言いますと、歩くのが速いです。ローファーとスニーカーでは歩きやすさが違いますから」
「あ…すみません!」
気づかなかった。
妹たちは俺を置いてくくらい走り回っているし、休みの日は男連中としか遊ばないしな。
たまに女子がいても、基本的に運動部系の人が多い。
そのせいで男女の靴の違いに気づかなかった。
「あまり他の人を引き合いに出したくはありませんが、達也さんは普通に合わせてくれますよ? 比較されると困るのは将輝さんの方では?」
「……仰る通りです。気をつけます」
言外に「司波さんを誘うなら」とついているあたり、本気で自分が情けない。
そして、それに気づくと先ほどの休憩の理由も分かってくる。
……本当に、情けなくなる。
「では、エスコートをお願いしますね」
「…はい。しっかりとさせていただきます」
かなり気分が落ち込んだが、ならなおのこと挽回しなければならない。
意気込みを新たに歩幅を合わせて昼食へ向かい、昔の街並みが保存された通りを歩く。
普段の訓練からすれば全然大したことのない運動量であるにも関わらず、普段気を使わないところに気を使っていたからか、どんどんと疲労が溜まる。
また、会話も気疲れの原因の一つだ。
真昼さんは二年連続で主力として九校戦に出場していたこともあって、スポーツ競技に関心があると思っていた。論文コンペにも出ていたし、体格のこともあるので熱中するほどではないにしても、話のネタとしては使えるだろうと。
ところが、実際には真昼さんはほぼ研究に没頭していて、九校戦については魔法力で選出されたため、必要な分のトレーニングを行っているだけだとわかった。
こうなると俺としては話題に困る。
もちろん、俺だって魔法研究について全くの無知というわけじゃない。ジョージがその手の研究をしているのだから、普段の会話でもそれなりにそういった話題は出るし、なんなら研究所に行ったことだって何度もある。
ただ、そこでは俺はあくまで聞き手として参加しているだけだから、突っ込んだ深い話にはついていけない。
一方で真昼さんは研究所の所長として日々仕事をこなしている人だ。
専門家に対して浅い知識で話すのはさすがに無理がある。
巷で話題のアイドルグループや人気の遊び場、流行品についても真昼さんはあまり興味がないようで反応がイマイチだったし、そもそも大抵のことはあちらの方がよく知っていて単純な知識については教えてもらうことの方が多い。
結局、お互いに話が合ってそれなりに盛り上がるのはそれぞれの学校生活についてしかなかった。
ただ、そうなるとフローラさんの暴れ場合について言及することになるのが…
「……そういうわけで、フローラさんは勝利数をまた増やしました」
「別に私は実力をつけさせるために三高へ送り出したわけではないのですが……まあ、受け入れられているようならよかったです」
「その点は問題ないです。少なくとも周りの生徒から嫌われていたりはしていないので」
「ということは、先生からは多少睨まれているのですね…」
「いや、まあそれは……時々謹慎処分を出されている首席入学者なので仕方ないというか…」
他の話題に比べれば話は続くけど、他の女の子の話で盛り上がっているのはどうなんだ?
俺でもさすがに良くないのはわかるぞ?
こんなことなら、まだ話しかけやすい一色や四十九院と日常的に会話をしておくべきだった…
はい。こちらのペアは前途多難ですね…
冷静になって考えると、二人とも恋愛経験値的にダメなんですけどね。
将輝:取り巻きがめっちゃ話しかけてくるのを適当にあしらってればいい
真昼:四葉に交際目的で話しかけてくるのは校内に十文字先輩くらいしかいない
結果:どっちもまともに相手のこと考えてデートした経験値がない。
将輝は今まで相手が勝手に突っ込んできたので、自分から捕まえに行くのは経験不足でなかなか上手くできません。
真昼さんも年下の男子相手なら、光宣や文弥のようにからかったりでそこそこ小悪魔ムーブできるのですが、同年代でやっちゃうと普通にイラつかせる可能性があるので控えめにしています。
しかも性格的にも正義感が強く真っ直ぐな将輝と、謀略上等で義理人情も利用する真昼さん(というか四葉家)では考え方が合いません。
下手すると四葉家の中では直情型の深雪が、一番将輝と性格は合うかもしれませんね…