四葉真夜と七草弘一の子供(非公式)ってハード過ぎない⁉︎ 作:例示
ヤミちゃんから見た真昼の印象。
訓練は真昼さんの体力が尽きて終了しました。
魔法力にはまだ余裕がありましたが、ほとんど動かないとはいえ長時間立って魔法を使っていたので、最後には魔法を発動しながらへたり込んでいました。
その時点で勝成さんが訓練の中止を宣言。
今は白川夫人が世話をしていて、入浴とマッサージを受けているはずです。
「皆、ご苦労だった。クールダウンしながらで良いので、真昼についての感想を正直に述べて欲しい」
勝成さんが身体を解しながらそう言うと、僕たちは一瞬言葉に詰まりました。
真昼さん。
つい先日四葉によって確保された当主様と七草弘一をベースにした調整体魔法師。
すさまじい魔法力と虚弱な身体、無表情で無感情なその姿、そして深夜様の精神の受け皿。
そして今日の訓練での実績。
とてもすぐには言葉にできませんでした。
「まずは私から述べよう。魔法力はおそらくあれ以上優れた魔法師は存在しない。深雪さんでも真昼には劣るだろう。魔法を使う技術も最高峰と言って良い。フラッシュキャストに始まり、魔法式の投影直前で待機させる技術、相手の防御を抜く干渉力の使い方、必要十分な障壁の展開、完璧な魔法の継続展開のタイミング……これだけなら、四葉本家の魔法師として全く恥じるところはない」
すらすらと出てくる賛辞の言葉に、僕を含めた皆も異論はありません。
さっきまでしていた実戦訓練では、後半何度も魔法力の差で打つ手がなくなって真昼さんが完全勝利しましたし、なにより最初に見せられた空間魔法はまさしく異次元の魔法で対抗策が思いつきません。
「だがそれを台無しにしているのが時々現れるミスだ。傾向が掴みにくいが、私の見たところ状況の複雑さにはさほど関係なく、集中度が高まると発生する。つまり視野が狭くなると起きやすくなるということだ」
「そうね。焦るというよりは、興奮してきたときにミスをしているのだと思うわ」
「魔法を使うこと自体に集中し過ぎて、状況が見えなくなる。確かに魔法師として魔法を使い始めた初心者にはありがちな失敗だ。だがあのレベルで魔法を使いこなす魔法師としてはあり得ない。たとえ研究所でしか魔法を使ったことのない調整体魔法師であったとしてもだ」
そう、真昼さんの唯一にして最大の欠点。
それが魔法に集中し過ぎるという悪癖。
確かに、真昼さんの魔法力なら大抵の相手を圧倒できるし、多少の隙もカバーできるだけの実力差がある。
けれど、そういった隙を逃さない実力者相手では、致命的な欠点となる。
「できるだけ早く、あの欠点は治さねばならない。そのためには実力の拮抗した相手との実戦を重ねるしかないだろう。これが私の今日の結論だ」
「私も大体同じよ。あんなに優れた魔法資質があるのに、時々信じられないミスをする。深夜様に全て任せた方が良いくらいよ」
夕歌さんも言う通り、普通ならありえないようなミスです。
相手である僕たちが、罠かと思うくらいに平凡で初歩的なミス。
けれども、深夜様に任せたらそれはそれで問題があることもわかりました。
「深夜様は精神干渉系魔法の使い手で、常にガーディアンが居た方ですから。真昼さん本来の戦闘スタイルとは違って、どうしても防御が疎かになりますわ」
「亜夜子の言う通りだ。深夜様は確かにミスはないのだが、同時に深夜様以上ではない。真昼ほどの脅威を感じない。なにより、精神干渉魔法は防衛として使っても検挙される可能性の高い、社会的に許容されない魔法だ。深夜様は真昼の資質を全て使いこなせてはいない。結局、真昼自身が強くなるしかない」
そう、訓練では深夜様に全面的に行動を任せたこともありました。
ですが、そうすると今まで出来ていたパラレルキャストや、魔法を発動直前で待機させて飽和攻撃するなどの魔法技能が一切使われなくなってしまったのです。
深夜様曰く、そういった魔法技能は真昼さんの方が持っているとのこと。
それはつまり、深夜様が表に出て戦うと戦闘力が大幅に下がることを意味していました。
もちろん、精神干渉魔法は凄まじい熟練度だったので、勝てることは無かったのですが…
結論として、通常戦闘から本格的な戦闘まで対応できる真昼さんを鍛えるのが一番だと結論が出ました。
「文弥はどうだ? 何か感じたことはあるか?」
「えっと……大したことではないかもしれないのですけど…」
「構わない。どんな直感的な印象でも、何か参考になるかもしれない」
勝成さんに促されて、訓練の中で見た真昼さんをもう一度思い出します。
どんな危機的状況でも、無表情で対応してみせた自分より小さい歳上の女の子。
四葉で見た魔法師の中で最も強く、同時に弱々しいその姿は…
「……
「それは戦闘を楽しんでいる、ということか?」
「いえ、そうではなく……なんというか、魔法の応酬そのものに喜んでるというか……
「魔法自体が楽しい……か。それは確かに、私には欠けている視点だな」
「亜夜子さんも同じように感じたの?」
「……いえ。情けないのですが、私は恐怖を抑えるのに精一杯でそこまで感じる余裕がありませんでしたわ」
その言葉で初めて、姉さんの指先が震えているのに気づいた。
それは、最初に空間魔法でCADごと取られた方の手。
「仕方ないわよ、私だって怖かったもの。何の抵抗も出来ずに腕ごとCADを取られるなんて、考えたこともなかった。その気になれば、片腕と言わず首でもどこでも切断できたはずよ……いいえ、そんなに甘くないわね。
「それは達也くんでも深雪さんでも同じだ。『分解』も『コキュートス』も受ければ即死という点では変わらない。私たちは相手が『何を出来るか』ではなく、『何をしようとしているのか』で判断しなくてはならない。その点では、真昼は少なくとも私たちに敵対してはいない。決して友好的とは言えない扱いをした私たちに、必要以上の警戒をしていないし訓練でも必要十分以上の攻撃を加えていない」
「それは深夜様がいるからでしょう? もし本当に反逆するようなことがあれば、深夜様が止めているはずよ」
「確かにその一面もあるだろう。だが私は、深夜様が基本的に真昼の行動に関与していないという点にこそ注目すべきだと思う。真昼の能力は警戒すべき強大さだが、必要以上に警戒することによって本当に敵にしてしまうことだけは避けなければならない」
少なくとも私たちの誰も、四葉真昼を殺すことは出来ないのだから。
勝成さんが呟いたその言葉は、どうしようもなく事実で、事実だからこそ逃げ出したいような重苦しさがありました。
でも、僕はそんな真昼さんを避けようとは思えません。
それがたとえ、自分の身を滅ぼすものだとしても。
ヤミちゃん、主人公の内心を見抜いて気になり始めるの巻。
いまのところ、四葉家が真昼をそこまで警戒していないのは夕歌さんが言った通り『いざとなったら深夜様が止めるだろう』と考えているからです。
ここがストッパーを外付けしないと安心できない達也との最大の違いですね。
深夜様が魔法技能を真昼と共有していないのは、訓練中の最悪な思い出を共有したくなかったからです。そのためエピソード記憶関係ないフラッシュキャストはともかく、そのほかの練習が必要な魔法技能は全て真昼が専有しています。
亜夜子が主人公にビビってるのは自分の『極致拡散』を見破られた時の領域干渉が強すぎて、そのまま殺されるかもしれないと思ったのもあります。
流石に一日に2度も殺されると思ったことはそうそうない経験なので、感情が落ち着くまで時間がかかります。
文弥は逆に四葉では見たことない自分より小さくて弱々しい女の子を見て、ちょっと庇護欲が出ています。まあ思春期真っ只中の中学3年生ですからね。
訓練中は真昼が圧倒的過ぎて感覚が麻痺していましたが、体力が尽きて倒れたのを見てまた庇護欲が復活した感じです。はたして文弥は達也兄さんのような頼れる男になれるのか?