四葉真夜と七草弘一の子供(非公式)ってハード過ぎない⁉︎ 作:例示
翌朝。
使用人に支度を丁寧に整えられた私は、また食堂で皆で朝食を食べた。
勝成さんと比べると量が少ないのは仕方ないけど、亜夜子にも負けてるのはちょっとショックだった。
これは身体が丈夫にならないはずだ…
「今日は昨日の続きですか?」
「いいえ? せっかく皆さんが揃っているのですから、それぞれ得意な魔法を教えてもらってはどうかしら?」
「私たちが、ですか?」
「特に亜夜子さんは『擬似瞬間移動』が得意でしょう? 空間魔法のカモフラージュのためにも、真昼さんは習得した方が良いはずよ」
確かにそれは思ってた。
亜夜子の擬似瞬間移動はほとんど不自然さが無いって原作でも言ってたし、万が一瞬間移動を見られても誤魔化せるかもしれない。
「それに接近戦についても少しは学んだ方がいいわ。体力が無いなら、無いなりの戦い方があるはずよ。いつでも遠距離から安全に仕留められるわけではないのだし」
「……障壁魔法ではいけませんか?」
「障壁魔法だって万能ではないのよ? 実際に昨日は何度か攻撃を許しているのでしょう? 別に身体を鍛えなくても、魔法で自分の身体を動かせばいいのではなくて?」
……あ、そうか。
そういえば十三束くんが『セルフ・マリオネット』で戦ってたっけ。
アレなら体力は関係ないから、私にもできるかも。
「逆に真昼さんは、皆さんに魔法式待機の技術を教えなさい。フラッシュキャストとは異なる魔法高速発動の手法なのだから、応用の幅が広いはずよ」
「お母様、それはかなり難易度が高い技術です。一日では習得するのが難しいと思います」
「時間加速すれば良いでしょう?」
「あの、私は構いませんが、他の方には精神的に辛いと思いますので…」
「ここにいるのは四葉家の魔法師よ? そのくらい耐えられるわ」
いやいや、本当に辛いんだって!
時間加速中は食事とかもろもろの生理的欲求を排除して訓練に集中できるように、開始時の身体の状態に中の時間で1時間毎に『再成』する。
たとえ魔法演算領域のオーバーヒートを起こしても、魔法の暴発で瀕死になっても、時間が経てば元通りになる。
そして目的の魔法が習得できるまで、ひたすら一つのことをやり続ける。
私はもうひたすらに無心で練習することで耐えてるけど、それでも内部で数十時間練習していて外では数分しか経っていないと時間感覚のズレで色んな問題が出る。
それをいきなり難易度の高い技術でやらせるって、確実に支障があると思う。
「一度、擬似瞬間移動の練習で使用して、その後本当に使うかを判断しませんか? すぐに習得しなければならないのでなければ、あまり多用すべきではないと思います」
「うーん……まあ、真昼さんがそういうならそうしましょうか」
よかった。
実際に体験しないと、加速空間の怖さはわからないからね。
効果だけ見ると便利だけど、そう簡単な話じゃないんだよ。
話もまとまったので、準備をしてから昨日の訓練場に移動する。
「それでは、これからこの訓練場の時間を外の世界の3600倍に加速します。皆さんの身体状態は今この瞬間に回帰するので、ここで何十時間経過しても時間経過による影響は受けません」
「つまり加速した分成長したり老化したりはしない、というわけか」
「はい。また疲労、空腹、睡眠といったものも発生しません。今のコンディションのまま、訓練を続けることができます」
「へえ、便利なのね」
便利なのがいいとは限らないんだ……夕歌さん…
ひとまず亜夜子に擬似瞬間移動を使ってもらって、それを私が再現する。
私の瞬間移動も使って、それぞれの見た目の効果が近くなるように調整する。
一番難しいのが、移動のための真空チューブを目立たせなくすること。
これが亜夜子が上手いから得意魔法になっているわけで、あまり一朝一夕にできるものではない。
短距離直線移動から、だんだん長くて複雑な経路で練習して、真空チューブが認識できないぐらい自然に移動できるようにする。
せっかくなので夕歌さんや勝成さんも練習しているが、魔法資質の関係で私が一番成長速度が早い。
それでも、10メートル程度の距離で瞬間移動と見分けがつかないようになるまで12時間はかかっていた。
そして、さらに数時間練習していると皆もこの加速空間の真の問題に気づき始めた。
いくら身体が疲れなくても、脳は今までの経験から時間経過と共に『身体が疲れているはずだ』と認識する。
その認識と現実のズレがどんどん大きくなると、身体は疲れていないのに脳が疲れたと感じてしまって動けなくなる。
しかし、この空間内でいくら休んでも身体自体は疲れていないので『疲れが取れる』感覚にならない。
結果として、この空間に連続で活動すればするほど解消できない『認識上の疲れ』が溜まっていく。
この問題の対策は二つ。
一つは加速空間の外に出て、実経過時間で充分に休むこと。
もう一つは認識の問題なので、精神干渉魔法で強引に打ち消してしまうこと。
私は最初の頃、効率重視で後者の対策をしていた。
けれど、この方法には別の問題がある。
こうして強引に魔法で疲れをとると、今度は逆に脳が時間経過での身体疲労を認識できなくなる。
この空間内ではいいけど、外で普通に生活した時に身体の限界に気づけず倒れてしまうことがある。
特に戦闘中に自分のコンディションを把握できないのは致命的になりかねない。
「真昼さん、一度外に出よう。このままではまずいことになる」
「そうですね。魔法もかなり上達しましたし、休みましょうか」
勝成さんの言葉で魔法を解除して外に出る。
中の経過時間は24時間だから、外の世界では24秒。
ほとんど経過していない時間に、私以外の皆が呆然とする。
本当に、最初はわけがわからなくなるんだよね。
浦島太郎の逆バージョンみたいな感じ。
「……えっと」
「……気が狂いそうだわ」
何も言えないぐらい混乱する文弥。
ボソリと漏れた夕歌さんの言葉が、体感的には昨日、実時間では一分前に見たばかりの朝の太陽の前に溶けていった…
加速空間での訓練の問題点でした。
たぶん時間の経過速度が違うと、エスカレーターに乗った時のなんとも言えない違和感の強烈版みたいなのが来ると思うんですよね。
特に人間が経験したことのない違和感なので、精神に多大な負荷がかかると思います。
さらっと使っていますが、真昼も『再成』は使えます。
ただお兄様と違って一瞬ではなくそれなりの時間をかけているので、お兄様の『再成』のデメリットである『痛みなどの感覚が圧縮されて流し込まれる』は緩和されています。
代わりに、自分が即死するような致命傷では使えなくなっていますし、自動で発動もしません。
あくまで普通の魔法の一つとして使えるだけです。