四葉真夜と七草弘一の子供(非公式)ってハード過ぎない⁉︎ 作:例示
「……ん」
朝。部屋に入る日光で目を覚ます。
今までで一番すっきりとした目覚め。
気分的な問題かもしれないけれど、体調も関係しているはずだ。
時計を見ると、食事までしばらく時間がある。
なんとなく散歩に行きたくなって、外に出るとわずかに魔法の気配を感じた。
すこしだけ警戒しつつそちらに向かうと、結界の中に真昼さんがいた。
「真昼さん…?」
「…おはようございます。体調は問題ないようですね」
庭にところどころ置いてあるベンチに座って、魔法の訓練をしていたみたいだ。
CADを待機させた真昼さんは、結界を解除してこちらに歩いてきた。
「すみません、お邪魔してしまいましたか?」
「いえ、他人の庭で魔法の練習をしていたのは私の方ですから」
「……もしよろしければ、練習しているところを見せてもらえますか?」
そう尋ねると、ちょっと考えた真昼さんは「いいですよ」と許可してくれた。
結界を張り直した真昼さんは、周辺の砂利を対象に収束系・発散系・吸収系・放出系の魔法を次々に発動していた。
収束系魔法で集めた砂利を、発散系魔法で気体に一瞬変えて粉末にする。
その粉末を再び収束系魔法で成分ごとに分離し、純粋物にする。
それらの酸化物を吸収系魔法で還元し、ペレット状に成形する。
ペレット全てを純窒素の空間に入れて、発散系魔法でプラズマ化する。
固体への相変化と結合によって、窒化物の大きな岩石を作る。
放出系魔法でその岩石を崩壊させ、元の砂利に似たサイズまでバラバラにする。
これらの一連の魔法を、流れるように行使していた。
「すごい……」
まるで錬金術のような光景に、僕はすっかり見入っていた。
やっていることは、岩石中の酸素を窒素に入れ替えるだけだ。
それだけなら僕でもできる。
発散系でプラズマ化させた後で、吸収系か収束系で酸素を追い出して窒素を入れつつ固体にするだけ。
だけど、真昼さんのそれはほぼ単一工程の魔法を複数組み合わせて一つの魔法として成り立たせ、かつ必要十分な魔法力を使って無駄がなかった。
特に還元と窒化の工程はそれなりに干渉力が必要なはずなのに、余計な魔法力が漏れていなかった。
初めから一つの魔法としてまとめられているものを使うのではなく、自分で工程を組み立てて無駄なく完成させるのは、魔法そのものの理解と地道な練習がなければできない。
「いつもこういった練習をしているんですか?」
「そうですね。使う魔法は違いますが、必要十分な魔法力のみを使うこと、魔法力をコントロールすることは意識しています。高い魔法力は暴走時の危険が大きいですからね」
「魔法力のコントロール……」
なるほど。結界があるとはいえ、魔法の気配をほとんど感じなかったのも納得できる。
いずれは僕も、このぐらい自分の魔法力をコントロールできるようになりたいな…
そう思っていると、真昼さんが砂利を散らしながら今度は僕のことについて質問してきた。
「光宣さんはやはり放出系が得意なんですか?」
「ええ、他の系統も苦手というわけではないですが。一番は放出系です」
「でしたら、まずはそこから練習するのがいいと思います。同じ魔法で必要な干渉力が違う、という条件でも適切な魔法力を出力できるようになれば、かなりコントロールが上達したと言えるでしょう」
しばらく真昼さんに魔法の練習方法を教えてもらっていると、家の中から使用人が慌てて探しにきた。
結界を解除するとこちらに気づいて安心したのか、食事の準備が整ったことを報告してくれた。
今日は午前中にCADを買いに行って、午後は術式を調整する予定。
ただ真昼さんはこちらに来るのが初めてとのことで、観光も兼ねて色々な店を巡ることになっている。
なので、軽めに朝食を取ってまだ涼しい内に京都市内の魔法用具店に向かうことに。
「やはり古都ですから古式の術具も多いですね」
「そうですね。大体は記念品のような扱いですが、職人の作品も高級品として売られています」
魔法協会がある関係で、魔法関係の店が多い通りを二人で見て回る。
真昼さんは特に伝統的な術具に興味を持ったようで、いくつか手にとって眺めていた。
その中には僕にはあまり馴染みのないものもあったけれど、戸惑っていないところを見ると古式魔法についても知見があるのだろうか?
「真昼さんは古式魔法についても詳しいんですか?」
「ええ。研究の関係で調べていますから」
「研究……相模野の研究所のメインは基礎理論でしたね。現代魔法だけでなく古式魔法も理論的に解析しているんですか?」
「現代魔法の幅を広げるためには必要ですからね。理論化出来ていなくても古式魔法として実現できている以上、解析すれば現代魔法でも再現可能なはずです」
結局、二、三点の術具を購入した真昼さんは、今日の本題であるCAD販売店に向かった。
今回は特化型…というより一種類のみの超特化型CADが必要なので、可能な限り小さくて携帯可能なものを選ぶことに。
「これはどうですか? ネックレス型ですからいつもつけていられると思います」
「そうですね……性能は十分ですが、想子消費量が大きいですね。常時使用することを考えるとこちらがいいのですが、ブレスレットだと普段使いと干渉しますし…」
あれこれと見て回っていると、緊張した様子の店員が話しかけてきた。
「あのっ! お客様…! よろしければ、オーダーメイドも承っておりますが…」
「そうなんですか?」
「はいっ! 中身だけでなく、デザインについてもお時間をいただければこちらで加工致します!」
その言葉を聞いた真昼さんは、少し考えると見ていたCADをいくつか指定して注文を始めた。
「では、外側はこのネックレス型で中身はこの二つから組み合わせてください。想子吸引機構をこちらから、その他の部品はそちらのものを使ってください」
「はい! かしこまりました! デザインについてはこのままでよろしいですか?」
「光宣さん、希望はありますか?」
「特にないので大丈夫です」
「ではそのように。二時間後にお渡しできると思います。お支払いは彼氏様ですか? それとも彼女様からのプレゼントですか?」
「かれ…っ⁉︎」
店員の言葉に言葉を詰まらせる僕。
一方で真昼さんは変わらずに平然としていた。
「家の方で購入するので、こちらに請求をお願いします」
「かしこまりました。仕上がりましたら連絡いたします」
ありがとうございました! という声を背に店を出ると、高くなった日差しに温められた空気がムッと押し寄せる。
「あの、さっきは…」
「男女がアクセサリーを見ていればそう思われますよ。兄妹と言われなくてよかったです」
彼女では嫌でしたか?
その言葉を勢いよく否定する。
否定した後で、それが意味することに思い至ってしまって余計に慌ててしまう。
結局、コミューターが到着するまで落ち着くことはできず、周囲からの注目を集めてしまったのだった…
あれ? なんでラブコメを書いているんだ…?
真昼さん的には特に意識しているわけではなく、普通に会話の流れに乗っただけです。
原作のお兄様の据え膳頂きます発言と同じですね…
さらりと他人の家の砂利を好き勝手に変えていますが、最後は気づかれないように『再成』で戻しています。
あと光宣くんなので感覚バグっていますが、おそらく普通の魔法師だとそこそこな量の石の組成を変換するのは干渉力不足で無理だと思います。
『スパーク』の原作説明でも、密度の低い空気をちょっとだけ電離させるのが精一杯、みたいな話だったので、少なくとも軽い訓練のノリでやることではないです…