四葉真夜と七草弘一の子供(非公式)ってハード過ぎない⁉︎ 作:例示
研究所は、山の頂上にいくつか分散して建っていた。
牧場や農園の面積が大きいものの、射撃場や路上試験場もあり、研究所として必要なものは一通り備わっているようだ。
そのうちの一つ、ケーブルカーの駅に一番近い大きな建物に入ると、入り口に設置されているスキャナーで全身スキャンされた。
【登録外物品、及びCADの所有を検出しました。その場で待機してください。この部屋から移動した場合、反スパイ法により実力行使します】
「ちょっと待っててください」
警報とランプが光り、部屋が封鎖される。
真昼が近くの柱にセキュリティカードをかざすと、壁面にタッチパネルが現れた。
それをしばらく操作していると、警報が解除されて通行可能になった。
「まずは戦略級魔法試験室に行きましょう。強力な結界があるので、魔法力を解放しても観測されませんから」
「任せる」
真昼の案内で研究所の地下へ進む。
何重もの防壁とセキュリティによって、外界とは隔離された研究所内部は扉一つ開くにも魔法と認証が必要な異世界だった。
そして、空間的には完全に隔絶されている一つの部屋に入ると、そこは広大な鋼鉄の箱の中だった。
分厚い防弾ガラスで仕切られた『向こう側』には、一定間隔で置いてある標的以外、文字通り地平線の果てまで何もない空間が広がっていた。
こちら側には試験用の大型CADと測定機器が並んでいる。
扉を閉じると、真昼が説明を始めた。
「ここは超高威力・非指向性の兵器・攻撃魔法を実験する部屋です。元々は空間魔法の性質、その中でも空間の拡張とワープの研究の副産物でしたが、今では秘匿された魔法実験に活用しています」
「この向こう側で魔法を使うのか」
「はい。この防弾ガラスの向こうは約100kmほどの広さがあります。当然それだけでは一部の戦略級魔法の威力を減衰できませんが、空間の性質を改変して
「……なるほど、そういうことか」
「はい。これによって通常空間より威力が1/256まで減衰します。そのため、50km先にある空間中心は実質的に約1.3万km離れているのと同等です」
「……すみません、お兄様。余剰次元とはどういうことでしょうか?」
深雪が申し訳なさそうに質問する。
この辺りは魔法理論には直接関係ないから仕方ないか。
「余剰次元というのは理論物理学の仮説の一つだよ。この世界は本来11次元の空間で、余剰次元は認識できない大きさに巻き上げられているとして、この世の力では重力だけがその次元に作用できる。そのために3次元空間では他の力より小さい力しか観測できないというものだ。この向こうの空間では、その余剰次元に本来は作用できない電磁気力も作用することによって、通常空間より早く拡散する」
「なるほど、つまりより多くの方向に威力が逃げるので爆発の威力が弱まるのですね」
「そういうことだ」
軽く頭を撫でてやると、頬を染めて嬉しそうに微笑む深雪。
少し間を置いてから本題に戻る。
「それで、魔法力の件だが」
「はい。今解放しますね」
そう真昼が言った途端、九校戦のモノリスコード決勝戦と同じように真昼の魔法力が爆発的に膨れ上がった。
あの時とは違って制御されているのか想子は噴き出していないが、それでも感じ取れるほどの変化だ。
「これが私本来の魔法力です。魔法力を制限する方法は達也さんも知っていると思います。私の場合は意識的に抑えているだけですが、原理としては『誓約』と同じです」
「それは分かる。では本来の実力以上の魔法力を発揮するのはどうやっているんだ?」
「いくつか方法はあるのですが、あの時に使ったのは『魔法の同調』です。複数の魔法師が想子パターンを合わせて魔法を行使した場合、出力される魔法は一人で行使したより大規模になります」
「確かにそうだが、それは一人では出来ないだろう。自我の消失等のデメリットを無視したとしても、複数人の魔法師が必要だ」
「正確には
その言葉でピンときた。
真昼の中の四葉深夜の精神、そして俺に造られた魔法演算領域。
……そういうことか。
「深夜様の『精神構造干渉』で魔法演算領域を分割して、それを同調させて使えば複数人の同調と同じことができます。まだ練習中ですが、完全に同調できれば『乗積魔法』の再現も出来るはずです」
「しかし魔法演算領域を分割するということは、無意識とはいえ意識を分割することと同じはずだ。それに伴って自我の衝突や多重人格の症状が出るリスクがある」
「魔法の強制同調を行えば自我が消失しますから」
……なるほど。
こんな実験をしていれば、同じ調整体の護衛があれほどまでに自我を失うはずだ。
本当にここの研究所では、調整体を実験体として扱っていたのだろう。
「安心してください。昔は手探りでしたから
「開発したのか」
「達也さんの代わりになるには必要でしょう? 一度実際に視て確認してもらいたいと思っていましたから、ちょうど良かったです」
真昼が大型CADに両手をつける。
起動式が読み込まれ、膨大な想子が放出された。
肉眼ではわずかな光が瞬いたようにしか見えないが、『精霊の眼』で視ていた俺にはわかった。
50km先の標的が、一回目は陽子崩壊によって、二回目はマイクロブラックホールの生成・消失によって爆発したことが。
「この魔法はまとめて『崩壊領域』と呼んでいますが、前者は『瞬時崩壊』、後者は『重力崩壊』を正式名称にしています。私が『質量爆散』を代替するために開発した戦略級魔法です」
「……ああ。厳密に測定すれば違うだろうが、確かに結果は似ている」
「達也さんにそう言っていただけると安心しました」
そう話す真昼から隠れるように、深雪が俺にそっと身を寄せた。
……魔法の研究は、どこまでが許されるのか。
以前深雪と二人で話したその問題が、再び俺の脳裏に重くのしかかった。
研究員「魔法を複数人で使うと強くなるなら、一人に複数の魔法演算領域を詰め込めばいいんだよ! どうせ自我は一つしか残らないんだし!」
四葉「それ真夜様ベースの調整体でやったんか? 絶許」
真昼さんのやべー部分が少し共有されましたね。深雪さん涙目。
ついでに戦略級魔法の紹介。
さらっとマイクロブラックホールを生成してますが、当然魔法式を工夫してパラサイトなどは侵入しないようにしています。
別空間で行ったプロトタイプの実験で何度も試行錯誤した結果なので、そのあたりは完璧です。
次こそはレリック行きたい…